「うぎゃぁっぁああああああ!」
い、いってぇっぇええ!
「ふ、蓋が……」
蓋がぁ……。
「「私」の可愛い、上蓋がぁぁぁああああああ!」
あわわわわわ。
ど、ど、どどど、どないしてくれんねーん!
「こ、こここ、これ、治んの?! ねぇ、直るのかな、ねぇぇ?!」
──ねぇぇぇええ!
バラバラバラと、血液の替わりにまき散らされた木くず──というか、上蓋の半分近くの欠片をみて顔面(?)蒼白の「私」。
い、いやー!!
「しぬしぬー!」
これはマジで死ぬー!!
人間で言うところの下顎が半分ほど欠損したような状態が今の「私」です!
「大げさな……それだけ喋れれば十分でしょうに」
やかましわっ!
いてーもんは、いてぇぇえんだよ!!
「ちっくしょー。魔法使いが素手で殴ってくるとか卑怯だぞ?」
無敵のバリアーに、
無慈悲のパンチて、お前ゲーム間違えてるだろ!
「卑怯?……そんなデタラメな耐久力の持ち主に言われたくはないですね。一撃で仕留めるつもりが、どうなってるんです? その体は」
やっかましいわ!
人様の──……いや、箱様の体を他人にとやかく言われたくねーわ!!
アマリアとやらが言うように、たしかに一撃で死ぬほど「私」は
爆弾や範囲魔法のような攻撃で全身バラバラにされれば別だが、局所程度の攻撃なら、これ──このとおり!
ミチミチミチッ……!
「にひひひーっ!」
どーだい。
あっという間に──というほどではないけど、砕かれた上蓋が徐々に直っていく。
「ほぅ、自動回復ですか……これまた厄介な」
へへ。
正確には満腹ボーナスだけどね。
いやー、危ない危ない。
これより前に眷族どもが軍人達をガッツリ食ってくれたおかげで「私」は今日も元気です!!
「とはいえ、それにも限界がありそうですね」
「へっ。だとしてもテメェを食いちぎればそれでチャラよ!」
もっとも、食いちぎれる未来が全然見えないけどね!
つーか、なんなん、コイツ!!
魔法使いかと思いきや、格闘家?!
いや、それ以外にもなんか色々やりそうだぞ?!
そして、それよりもなによりも、あのバリアーがやばくね?!
「ほーう? 私を食べると?……面白いことを言う箱ですね」
「そうかい? だったら……──もっと面白くしてやろうかい!!」
先手必勝!!
正面から戦っても勝てないなら、絡め手勝負!!
「食らえ、トラップ地獄ー!!」
ガチンッ!
ピラミッドのアチコチに仕掛けて置いたトラップを自ら起動!
すると、途端に天井から地響きがー!!
「ぎゃはぁぁ! これは躱せるかぁ!!」
ポイント3000ポイントの大判振る舞い!!
「『吊り天井』じゃぁぁああ!」
「な!?」「アマリア様!」
焦る弟子ども二人の視線の先。
この部屋中央付近、
3×3程度の天井が一気に落下ぁ!!
それは、部屋の構造上、ピラミッドの頂点にいるものには一番の打撃を与えるであろうー!
つまり、あのクソ女エルフの真上ぇ!!
「ひゃはぁぁあ! 「私」を下まで吹っ飛ばしたのが運の尽きよ!」
そのまま潰れろ!
いくらバリアーが強力でもその質量からは──……。
「舐められたものですね──はっ!」
バッコーン!
「な、なんぁっぁあ?!」
え?
は?!
え!?
「はぁぁあ?! い、今、アッパーで押し返したぁぁあ?!」
じょ、冗談きっつ……って、
「うぉぉお! こっちに天井が倒れて来たぁぁ?!」
あろうことかトラップの吊り天井を破壊!
それどころか、その破片が四方に飛び散り、「私」にも降り注ぐ──ので慌ててストレージから適当な盾を取り出しガード。
「あで! あでででー!」
な、なんちゅうパワーと攻撃力。
しかも、トラップってあんなふうに物理で破壊できるのー?!
驚く「私」を尻目に、残りの釣り天井の破片は水路におちて水しぶきを上げて消えていく。
ひぇぇぇ……。
奴ぁ半端ねーぞぉ?
「ふんっ。これで終わりですか? つまらないですねぇ」
埃をパンパンッ、手をプラプラと振りつつ、
不敵な笑顔で、のっしのっし。
──こ、こわぁぁぁぁ!!
このエルフ怖ぁぁあッ!!
「だ、だけど、ひとつ潰しただけでいい気になるんじゃねーぞ!」
そのトラップだっていくつもあるうちの一つでしかないわーい。
そして、当然これしきで次の手がなくなるほどではなーい!
今でこそ、潜伏場所からつき落とされて下段に吹っ飛ばされたけど、それならそれでまだまだやりようはあるのだー!
な・の・で、
「──とっとかかかって来いやぁぁあ!」
舌をベロベロ振って、挑発挑発ぅ♪
へいへーい。
頭上からの攻撃もダメなら、正々堂々正面対決じゃぁぁあ!
「ほう。正面攻撃ですか?……いいでしょう。その意気や買いましょうか!」
言うや否や、
──ガチン、ガチンッ! と、ガントレットでも装備しているかのように、オーラを纏った両手を打ち合わせたアマリア。
そして、拳を構えるなり、数段ほどの段差の先にいる「私」に向け、気炎を吐きつつ一気に肉薄ッ!!
「はっ!」
──ドンッ!
「どわッ!」
は、はやッ?!
「……き、来やがったなー!」
しゃおあらぁぁあ!
上等じゃ、この野郎!
「──必殺、マルチアターーック!」
(※注 技名は今考えたー!)
「む!」
キィン!
無防備に突っ込んできたアマリアめがけて、いつものボウガンを発射!
しかして当然防がれるが、その矢を追うようにして舌撃を載せてやるあっぁあ!
「どうだぁっぁ! これは躱せるかぁぁ?!」
「これはまた、器用な真似を!」
「そりゃどうもー!」
当然、ボウガンは囮!!
本命は舌撃ッ──いっっっけぇぇえ!
「だけど、まだまだ甘いですねっ!」
「んなー?!」
──ガーン!
なんと、ガードが上がったので、胴ががら空きかと思いきや、すかさず裏拳!
それもノールックでのはじき返しだとぉぉ?!
「ちぃぃっ!」
さすがは手練れ!
並みの冒険者ならば絶対に必中の一撃が完全に防がれてしまったぜ……。
──だけど!!
「それも想定内ッ!……ここぞと追撃じゃぁぁぁあ!」
うらぁっぁあああ!
弾かれたからと言って、それで仕舞と思ったか!
「甘いんだよぉ! こっちの舌はそんじょそこらの腕とは違って柔軟性があるところを見せてやるぁぁあ!」
単発、舌撃からの~……連撃、連撃ぃぃ!!
「むむ!」
「はっはー!!」
人間の剣撃とわけが違うぜぇぇ!
言ってみればこっちは筋肉を持った鞭のようなもの!
つまり、
見た目よりも遥かに硬くて重い高速の一撃をぉぉ、
ラッシュ、ラッシュ、ラーーーッシュ!!!
「おりゃぁっぁああああ! コイツを防げるもんなら防いでみなぁぁあ!」
ドガガガガガッ!
ドガガガガガッ!!
ドガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!
「はーっはっはっはっはー!」
どうだぁ!!
猛烈な追撃がアマリアを覆い、追撃の衝撃でバリアーが震え、その姿がブレるほど!
(よーし、パターン入ったぁぁぁ!)
いくらあのバリアーが優秀でも、限界はあるはず!
だから、一撃必殺を諦めてとにかくどこでもいいから削れとばかりに、変幻自在の舌撃をありとあらゆる角度から繰り出し、切りかかるのだー!
「見ぃたぁか! 鍛え続けた舌撃の威力! これなら、一歩も動けまーい!」
「それがなんです?」
──それがそうなんです!!
「けーけけけっ! 強がっているのも今のうち! そのバリアーとて、いつまでもつかなぁ?」
ぎゃはぁ!!
そして、動けないならば、動かなくて結構!!
その間ドンドン魔力を消費していくがいいわ!
「ほ~う。たしかにこの魔法もかなりの魔力を消費します。……少しは頭が回るようですね」
「でっしょー!!」
そうして、魔力が尽きたが最後──!
「お前を頭から丸かじりしてやるぁぁあ!」
おらぁぁぁあ!
強撃、強撃ッ!!
「アマリアーー!」
「アマリア様ぁぁ!」
ひゃはぁ!
ガキどもも心配してっぞー!
だけど、安心しな!!
最後にゃ皆一緒に食~べてやるからよぉぉお!!
「ぎゃーははは! もはや、反撃の
つまり、「私」の勝ちぃ!
このまま押し切ってやるぜぇぇぇえ!
──ドガガガガガガッ!
「そして、バリアーが消えた最後にゃ、その身を頭からバーリバリと……」
……って、ありゃ?!
「お、おいおい。動けんの?」
「はい? あぁ、これですか?」
連撃を受けて、バキバキバキッ! と震えるバリアー。
今も絶賛「私」の舌撃の連続攻撃を受けているので、追い詰められているはずなんだけど……アマリアは、なんとまぁ! まったく気にした風もなく、ズンズンと!
「お前、何か勘違いしているようですが」
「へ?」
のっしのっしのっし!
「──私にとっては、こんなもの魔力消費のうちに入りませんよ?」
「んなぁぁ?!」
「私」が驚くのも無理はない。
「だ、だって、さっきは拳で舌撃を弾いたじゃん!」
だから、
てっきり、バリアーにも何かしら限界があるのかと思いきや、今度は防ぐそぶりすら見せずにそのまま無造作にこっちに向かって突っ込んでくるではないか。
それも大股で。
一歩一歩無防備に──!
「お、おかしい、おかしいって!」
──ちょっとぉぉお!
そんな強力そうな魔法を使っといて、無限とかおかしいってーーーー!
「いやいや、拳で弾いたのは、お前の舌が単純に気持ち悪かったからですよ。誰だって他人の舌なんて気持ち悪いでしょうに」
……そ、それはそう!!
「だ、だからって──今さら、なんでー!」
「そりゃー、お前にそれ以上、手札がないようなので
んなー!!
「ざ、ざっけんなよ! これしき──」
「ふっ。これしきもなにも、他に何ができるというんです、
ッ!
「こんの、クソアマァァぁぁああ!」
激昂する私は、グラハム君ソードを大上段に振りかぶる!
そしてぇぇっぇええ……!
振り下ろした!!
「死ねおらぁっ!」
「お前が、ねッ!」
ガッ!
「んなー?!」
な、なんてこった!
怒りのあまりに振り下ろした単純な一撃が、大きく一歩踏み出したアマリアにガッチリと止められてしまったーーーーー!!
「ぐ、ぐぬー」
ギリギリギリ……!
「……そうやって、アホみたいに一撃するのを待っていたのです。そして、これは私の剣──のちに教え子たちに渡した剣です。返してもらいますよ」
言うや否や、その手に力がこもっていく!
みし、
みしみしっ。
「ぐげげっ。い、いだいいだい!! な、なんで直で掴んでんだよ!! お、お前舌が気持ち悪いっていったじゃーん!」
「そんなの洗えばいいのですよ」
──そ、それはそう!!
マジでそう!! そうなんだけど……。
「あ、あぎゃーーーーー!」
しぬしぬしぬー!!
「いででででー! やめろっぉぉおお────」
舌を掴まれ、
そのまま引き千切られそうになった「私」は悲鳴を上げる────
「──な~んてね」
にひっ。
「なにを?…………はっ!」
へっへー。
今頃、気づいたー?
「馬鹿正直に真正面から近づいて来たのはどっちだよ」
にひひっ。
この神殿風の部屋の正規ルートは、入口から橋~そして頂上までの一本道。
それ以外は当然、道なき道ぃ……。
「そしたら、そこらはトラップだらけに決まってんんだろ!!」
「ちっ……! これは、やられましたね」
そうとも、やってやったのよ!!
アマリアによって吹っ飛ばされた「私」は
ここはもともと正面から回ってこないであろうローグ用に設置したものだけど、この際どーでもいい!!
「ぎゃは! 吹っ飛べ、エル~~~~フ!」
カチッ!!
不気味な起動音をたてるのは、
そこに仕掛けたトラップ、ポイント3500ポイントの『地雷』だー!!
踏んだが最後、宇宙までスッ飛んで行くぜぇぇえ!
「というわけで、アデュ~♪」
ボーーン!!
「ひゃはぁ!! そのまま月までスッ飛んでいきなー!!」
──ボラーレ・ヴィーア!!!
部屋中に響き渡る大爆発に、「私」の声と弟子どもの悲鳴が交差する。
「アマリア!!」
「アマリア様ー!!」
ひゃははああ!
エルフの丸焼きいっちょ上がりー!!
さーて、この後は高級ガキ肉定食といきますかー……………って、
「お、おいおい……」
しかして、
なんたること……。
「マ、マジかよ」
喜びから一転。
わななく「私」の視線の先……。
濛々たる爆炎のあとから出てきたのは、何と──……。
「……さすがに驚きました。トラップをこんなところにまで仕掛けているとは」
ん、んなあぁぁあ?!
「む、無傷って、おまー?!」
うッそでしょー?!
じ、地雷だぞ?!
鎧騎士だって木っ端みじんにする地雷だぞー!
だのに、あのバリアーが、パリリッ……! と紫電を弾いてるだけでのその先のアマリアには傷一つない。
それどころか、髪の毛一本、衣服に至るまで、爆炎どころか埃すら……。
「そ、そのバリアー強すぎーーーーん?!」
「何を今更。……バリアーが強いのではなく、お前が弱いのでは? これしき、突破するモノはいくらでも突破してきますよ」
う、うそつけー!
そんなチート級の魔法突破できるわけねーだろ!!
「チ、チックショー、ずるいぞ!……だけど、まだまだトラップならあーる!!」
衝撃のおかげで掴まれていた舌は抜けられたので、さらに奴をトラップゾーンに誘い込むべく挑発しようとする。
……だけど、そんなのは必要なかった。
地雷の爆風でさらに下へがった「私」を、頂上からノシノシと追いかけてくるアマリアとの間には、まだ無数のトラップがある。
そこにどうやって誘導しようかと考えていたのだが、なんのことはない。
だって、奴は──……奴こと、大賢者アマリアは!
「ならば、見せてもらいましょうか。お前の悪あがきというものを!」
「んなぁっぁあぁぁあああ?!」
どーん!!
ボカーン!!
ドシュン!!
ぶしゅうううううう!!
「マ、マジかこいつーー?!」
なんと、小細工抜きで全部踏みやがったー!!
「い、言うだけのことはあるじゃん!!」
しかも、今も絶賛仕掛けに仕掛けて置いたトラップの中を堂々とこちに来るではないか。
それも、火炎トラップに、毒ガス、クロスボウ、
当然、一個たりともダメージを受けずに堂々と!
「ば、化け物かよ?!」
「おやおや? もう品切れですかー?」
んなぁぁ?!
ば、馬鹿にしやがって!!
「ま、まだまだあるわーい!」
「ほう? どこにです?」
決まってんだろ!!
テメェが今踏み抜いた
「そいつは一味違うぜぇぇぇえ!」
カチッ!
ジャキーーーーーーーーン!!
「ぎゃはぁ♪ みーーーーたかぁぁあ! 数多のガキを刺し貫いてきた、槍罠じゃあ──……って、曲がっとるしーーー?!」
え、えええー?!
今も入口を封鎖するほど強力な槍罠が起動して、今度こそアマリアを貫くかと思いきや、なんと飛び出した途端にバリアーにあたってぐにゃりと曲がってしまうーーー。
「……どれです? 見当たりませんねぇぇ」
「ぐぬぬぬぬぬ……!」
ま、マジかコイツ!
マジかこいつぅぅ!!
「マジかコイツぅぅぅうううう!!」
つーか、あのバリアーつえー!!
「は、はは。出たよ、アマリアの無敵モード」
「当然です。アマリア様がそんじょそこらのトラップに引っかかるわけがありません」
いや、ひっかかっとるがな!
かかってるけど、効いてないだけやがな!!
「つーか、黙ってろガキどもー!」
て、てめぇらは後でグッチャグチャに痛めつけて食ってやるからなー!
「ふふっ。子供に八つ当たりとは大人げない」
「やかましいわ! ガキはボッコボコにしたほうがうめーんだよ!」
しかし、そうは言うものの、これ不味いぞ!
もう、トラップも品切れだし……。
一応、部屋の中にはまだまだあるけど、このままこっちに一直線上にはすでにない────……ならば、
「こ、ここは一時撤退!!」
え~っと、
え~っと、
配置モード、配置モード……って、はわわ!!
──メキキキッ!
「何の真似かは知りませんが、逃がすはずがないでしょう」
「あぎゃぁぁ!」
いたたたたッ!
い、いつの間にか間近に迫っていた、アマリアの今度こそガッチリと掴まれる。
そして、蓋をメリメリと引っ張られて──……あでででで!
「や、やめー! むりむり! そ、それ以上
あがががが!
べキンッ!
「あぎーーーー!!」
そのまま、蓋を180度回転って──そ、それ以上、っていだだだだだだだ!!
「ち、千切れるー!」
「折り曲げて、千切ってやるのですよ。今まで散々に人々を引き千切ってきたのでしょう? ならその報いを受けてもらいましょうか!」
ぎ、ぎぇぇぇえええー!
殺されるぅぅぅううう!!!
──誰か男の人呼んでぇぇえええ!!!