ミミック転生~人食い箱の食味記録~   作:LA軍

120 / 124
第120話「沸点」

 むわぁぁ!!

 

「ゲーホゲホゲホッ!」

 ぶッはぁぁ!!

 

 猛烈な水蒸気が一瞬にして視界を埋め尽くす。

 まるで蒸気サウナのそれだが、一体全体何事だ?!

 

「な、なんだぁ?! この熱量はいったい……あ、あっちー?!」

 

 嘘だろ?!

 本来なら、サウナどころか、部屋全体が極低温に晒されていてもおかしくはないってのに、

 

「な、何事だよ──……って、」

 

 ……お、おいおい、

 

「ま、まさか……。そんな──」

 

 なんてことだよ。

 

「ふ、ふふふふっ。うふふふふふふ……!」

「……て、てめっぇえ」

 

 なんだなんだぁ?

 

 水路に落ちて氷漬けの死体になったはずのアマリアが、フワフワと浮いているではないか。

 

 それどころか、二人の弟子もぐったりとしたままではあるが、同じく五体満足で生きたまま魔法でフワフワと──。

 

 どうやら気を失っているらしいが、

 それを優しく包み込むようにして、魔法で浮遊させつつ背後に庇うアマリアは表情を昏くしたまま、延々と笑う、笑う。嗤う。

 

 まぁ、浮遊魔法時代はさっきも見たので珍しくもないけど、

 こっち見てほの暗く哂(わら)う、その顔よ!

 

「うふっ、うふふふ、うふふはははははは」

 

 そうとも、

 ──くつくつと嗤う女のエルフの、あの顔!!

 

「な、なにがおかしい! っていうか、あの極低温攻撃をどーやって?!」

「は! どうもこうもありはしませんよ」

 

 バサリと濡れた髪をかきあげると、全身のうち半分以上が大やけどになったそれがあらわとなる。

 

 ──なんともまぁ、痛々しい見た目。

 シュウシュウと肌が溶けているではないか。

 

 

 ……ってことは、コイツまさか!

 

 

「お、お前。もしかして、あの水の中で熱系魔法使ったってのかよ?!」

「ご名答」

 

 んなぁー!!

 ば、馬鹿か?!

 

「そんなの、自殺行為もいいとこだぞ!」

 

 そりゃーたしかに氷も水も蒸発させられるが、

 急激は高温は水蒸気爆発を引き起こす。

 それは自身もその熱湯にさらされるも同然の行為──。

 

 なんというか、

 熱湯に飛び込んで、高温のスチームの中で蒸されるのと同義なのだー!

 

 ふつうは、思っていても、とてもやれないはず──。

 

 ……なのに、やった?!

(コ、コイツ……思った以上にやる!)

 

 実際、見ればなんてこった。

 水路を埋めていた大量の水が蒸発して底にわずかに残るのみ。

 

 さらには、ボコボコと熱で茹であがったスケルトンが十数体ほど、崩れ落ちている始末。

 

 ……つまりそれほどの高温だ。

 

「えぇ、危うい所でした。オマケに賭けもいい所──正直ここまで追い詰められるとは思ってもいませんでしたよ」

 

 言うなり、物入れからポーションらしきものを取り出すと、傷に掛ける。

 途端に、ジュウウウ♪ と肌の焼けるいい音がしているが、かわりにみるみるうちに傷が治っていく──……相当に痛そうだけど。

 

「くぅ、ぐっ……」

 

 わーぉ、超痛そう。

 その分、回復力がえっぐー!

 

 ただのポーションじゃなく、ハイとかエクストラポーションとかそういうやつかね?

 

「へ、へぇ……いいもん持ってじゃんー」

 

 じっさい、痛みに顔を歪めたのも一瞬のこと。

 あとには何も残らない綺麗な肌が顔をみせた。

 

「当然でしょう? お前のような厄介な魔物を相手にするのに、準備をしないとでも?」

 

 そりゃそうだ。

 

「そして、よくもまぁ、やりにもやってくれましたね? おかげで可愛い弟子が酷いあり様です」

「けっ。見捨てりゃお前さんなら無傷だったのでは?」

 

 バリアーなら、

 水の中だろうが、極低温の中だろうが有効だったろう。

 それくらいに理不尽な魔法だ。まさにチートだ。

 

 しかし、それを良しとせずに弟子を庇う方に力を使うとは、まー……不合理極まりない。

 

「ええ。まさにその通りです──正直、今となっては連れてきたことを後悔しています」

「けけけっ、まさに今更って奴だね~」

 

 しかし、「私」にとってはまさに僥倖(ぎょうこう)だぜ。

 自分から足枷をつけての縛りプレイ。

 しかも、こいつを倒したらもれなく高級ガキ肉がセットというボーナス付き。……げ~へへへ。

 

「そのとおり、今更ですね。そして、今更ながら、さっさと決着をつけなかったことにも後悔していますよ」

「はーん? アホ面して、のこのこ部屋に入ってきたのはお前だろうに、な~にを。……それこそ、今更じゃね?」

 

 つーか、

 こっちが初手で殲滅されないようにどれだけ腐心してると思ってるんだか。

 

「──わかったら、さっさと死んでくんなましー! そんだけ消耗してたら、もう弟子を庇いながら戦うなんて無理だろうしね!」

 

 そしたら大事に大事にジャーキーにして食ってやるぜぇぇ!

 

 けーけけけ!

 

「つーかさぁ、お前はもう詰んでんだよ! バリアー戦術を使おうが、もう攻略法は見えているんだぜぇ!」

 

 コイツの弱点は自分以外──……すなわち、ガキとか弟子!!

 

 それさえわかれば、アマリアを狙わずに弟子を狙えば、あのエルフは絶対に庇う!!

 

 そして、勝てる!

 勝利する。

 

「当然「私」はそれを狙ーーーーう!」

 

 ひゃはぁ!

 勝ったあとの調理法まで見えてきたぜー!

 

「というわけで、まずはガキ肉の串打ちだぜぇぇえ!!」

 

 串打ち3年、

 裂き8年!

 

「ガキは一生、毎日食っても飽きねーってねぇぇえ!!」

 

 ジャキーーーーンッ! さっそくボウガンを準備すると、弟子に狙いをつけて大笑い!!

 

 ぎゃーははははははは!

 

「さ~て、どーう料理してくれようか~!」

 

 3人もいるんだから、今から楽しみでしょうがないぜぇ!!

 

 男のガキは丸かじりー!!

 

 メスガキの方が、生きたままその様をじっっっくり見物させて、泣いて漏らして絶望させてからの、命乞いする様をたっぷりと見物しながら、最後は足からバーリバリと食いいつつ、

 

「──お前は、自らの甘さとミスで食われた弟子を見ながら、「私」の喉奥で嘆くがいいわぁぁぁ!」

 

 ぎゃはぁぁ!

 

 エルフの味はどんな味ぃぃぃ、ぎゃはは、ぎゃははは!

 

「ぎゃーーーはははははははははは!」

「……ええ。その通り。この子達を庇い、教育し、教え導き、戦う術をと──お前を侮った私のミスです」

 

「でっしょー!」

 

 へへーん。

 所詮は戦力は足し算じゃねーんだよ

 

「戦う力は掛け算!」

 

 足手まといがいれば、それはすなわち枷でしかなーい!!

 

「──つまり!」

「──つまり!!」

 

 「私」と奴の声がシンクロする。

 互いに、戦い方を見つけたそれだ!!

 

「弟子を狙う限り「私」の勝ち!!」

「弟子たちには避難してもらいましょうか──!」

 

 

  は?

 

 

「あ、ああーん? 避難って、そりゃどういう──……って、」

 

 んなぁぁぁぁあああ?!

 

「おま! それは──」

「こういうことに決まってるでしょう!!」

 

 ──ぶんっ!

 

 言うなり、アマリアは弟子たちが気を失っているのを幸いと、情け容赦もなく、その腕をジャイアントスイングのごとく振り回すや否や……そのまま、思いっきりぶん投げたーーー!

 

 それも、閉ざされたままの入り口に向かって──……って、

 

「おおおーい! む、無茶苦茶すんなし!!!」

 

 そこを塞いでいるのは、槍罠。

 Aランクの戦士系でなんとか破壊できるってくらいには頑丈……。

 

 ──ドーーーーーーン!!!

  ガシャーーーーーーーンン!!!

 

「な、なーーーーーー!!」

 

 マ、マジかコイツ?!

 投擲の腕力だけで、槍罠をぶち抜きやがったぞ?!

 

「そ、そうか、強化魔法か!!」

「それも御名答。そも、私の仲間はこれくらいでは、ビクともしませんよ!」

 

 いやいや!

 だからってガキを投げるなよ!!

 

「大事にしてたんちゃうんかーい!」

「時と場合と限度によりますよ!」

 

 それはそう!

 

 ──しかし、畜ッ生!

 これじゃ、弱点がなくなるじゃねーか。

 

「だけど、あのままじゃ下手すりゃ死ぬぞ?!」

「狙われるよりは、何倍もマシです!」

 

 そ、それはそう!

 そしかにそうなんだけど、だからって──。

 

「あぁ、もう!」

 

 畜ッ生ぉ、吹っ飛ばしただけなら、いざ知らず。

 その勢いのまま元の部屋のほうへゴロンゴロンと転がって消えてしまったじゃねーか。

 

(ちぃ! 思い切りがいい!……さすがは腐って大賢者とやらかー)

 

 ぶん投げただけでなく、ちゃっかりと、少年のルドルフ君とやらクッションにシェイラちゃんをかばいつつを槍罠にぶつけやがった!

 

 男のガキのほうが頑丈だし、理に適ってるわな!

 

「ホント、やってくれるぜー」

 

 あれだと骨の数本折れていそうだけど、確かに、避難自体は完了する。

 

(しかし、こりゃ、まずいぞー!)

 

 弱点が消える。

 そして、このままだと……!

 

「さーて、これで、憂いなく戦えるというものです」

「ひぇ!」

 

 や、やっぱりそうくるわな!

 

 パンパンと、悪びれなく手の埃を払うアマリアの仕草に少し凄みを感じるのは、なんでだろう?

 

「な、なんだぁ! さっきまでビビってたくせに、「私」とやるってのかー!」

「もちろん、そのつもりですよ?」

 

 げ!

 ……や、やっべ。

 

 即答じゃ〜ん。

 ちょっと調子に乗りすぎたかもー。

 

 弱点がある限り、奴ぁダセぇ戦いかたしかできないと思っていたけど、

 なんとまぁ、強引に弱点を退場させるとは!!

 

 こ、こうなったら、ガキどもか気絶したままなのはかえってまずいぞ!

 

 意識があったならば、人の言うことなんか聞きそうにないあの弟子どもは意地でも踏みとどまろうとしたかもしれないのに、これだと──……!

 

「──というか、なにをブチブチと言っているのです? そも、お前は分かっていないのですか?」

「は?」

 

 え?

 

「な、なにが?」

 

「何がもカニもありませんとも。お前の喋りすぎというものです。……そも、何を勝ち誇ってか、私の弱点をよくもぁべらべらと」

 

「……あ」

 

 あー!

 た、確かに!

 

「そして、もうひとつ分かっているのですか?」

「も、もうひとつッスか?」

 

 え~っと?

 な、なんでしょうか?

 

「弱点がなくなったことの他に、もう一つッていうのは??…………あ、」

 

 あー……。

 も、もしかして。

 

 

 

「……「私」怒らせすぎちゃいましたぁ?」

 

 

 

  ──チラッ。

 

 

 

「正解」

 

 

 

 ニコッ。

 あ、笑った顔が綺麗────……ブワッッっ!!

 

「ど、どわーーーーーー!」

 

 刹那、アマリアを中心にボンッと、猛烈な魔力が吹き荒れる。

 そのあまりの濃度に、空気が破裂し、渦巻くほど!

 

「う、うひー!! な、なんだよ、その魔力はぁっぁああ!!」

 

 しかも、なんか、ゴゴゴゴゴとかいってるし!

 それ、完全に漫画を間違えてるとしか……。

 

「っていうか、魔力って可視化できるもんなん?!」

 

 髪とかも膨大な魔力で浮き上がって、どっかで見た野菜星人みたくなってるぞ?!

 

 

 ──いや、サイヤなんとかが何かは知らんけど以下略ぅぅううう!!

 

 

「それくらいに怒っているということですよ。……守るべきか弱き命を弄び、あまつさえ子供食らうだけでなく屍を弄ぶとは言語道断!」

 

 ひ、ひえっぇえ!

 まずいまずいまずいまずいまずい!!

 

 ここは、いっちょ。

 

「ご、ご、ご、」

「ご?」

 

 

 

 ごめんなさいいいいいいいいいいいいいいい!!

 もう二度としませーーーーーーーーーーーーん!

 

 

 

「…………って、言うと思ったかー! ボケっぇぇ!」

 

 ジャキ!!

  ジャキ、ジャキ、ジャキンッッ!!

 

「こうなったら全火力開放じゃぁっぁあ!」

 

 バリアーがなんぼのもんじゃーい! と「私」はストレージを解放し、装備の大判振る舞い!

 

 そして、ありったけの武器を準備す~る!

 

「へっへっ、どーだい!」

 

 この自慢の武器庫全開放はよー。

 

 ボウガンはもとより、爆弾もたっぷり。

 嘔吐の応用で刀剣に槍も射出準備完了!

 

 ラン〇ーもびっくりのワンマンアーミーだぜ。

 

 ま、ラ〇ボーが何か知らんし、

 そもそも、ワンマン(・・)ならぬワンボックス(・・・・)ですけどねぇぇ!

 

「かかってこい、エル~~~~フ!!」

「──望むところです!!」

 

 

 

 

   ドンッッッ!!

 

 

 

 こうして、準備万端(・・・・)の「私」の全火力 VS 大賢者アマリア の死闘が始まるー!

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。