「な、こ、これは──?!」
ガクリと膝をつくアマリア。
その瞬間、フッと消えていくケルベロスヘッドたち。同時に、自動迎撃システムとやらもボトンッと床に落ちて転がる。
……バリアーだけは辛うじて維持しているようだが、じじじ──と不安定に揺れて今にも消えそうだった。
「へっへっへー。バーカめ、切り札は最後まで取っておくものだぜー」
「なん、ですって?」
にひっ。
はーい、なんだと、の類似いただきましたー!
「き、切り札なんて、いつの間に……!」
はっ!
いつの間にも何もぜーんぶ譜石だっての!
「ったくよー。私がまんじりと武器を無駄打ちしてるとでも思ったのか、バーカ」
ボウガンの斉射にせよ、
大型爆弾にせよ、
胃酸にせよ、
こいつに効かないのは百も承知だっつーーーーーーの!
「だ、だったら、なぜ?!」
「へっ。……そのバリアーはよぉー、あれだろ? ありとあらゆる攻撃を跳ね返すとかなんとか、そういう感じだろ?」
それは状態異常攻撃も同様らしい。
おそらく、呪いとか、石化などの、チート級の攻撃ですらそうなのだろう。
「なら、なぜ?!」
ぐぐぐっ、となんとか起き上がろうとするアマリアだが、身体に力が入らないらしい。
かろうじて膝をついているが、油断すればそのまま倒れるかもしれない──それだけでも、相当な精神力だと言えよう。
「だけど、あの時みて気づいたのさー」
そう。
やけくそ紛れのブレス攻撃を放った時、そのほとんどが通用しなかったが、直接攻撃にはならに、腐敗ガスだけは通用した。
あれは臭いは少々するが、基本的には無害。
微量のメタンとか、なんとかそういうガスだからね。そして、当然威力を発揮するためには火元が必要。
つまり、
「ま、
にーひひひひっ。
「ま、まさか……」
ハッとしたアマリア。
どうやら、なにか思い当たるふしがあったのだろうが、もう遅い!
「そう!! 仕掛けたのは空気!! それもどこにでもあって、誰だって吸ってる空気さぁぁぁあ!」
もっとも私には関係ないみたいだけど、人間はそうもいかんわなぁぁぁ!
「お前が知ってるかどうか知らんけど、ただの空気にだって猛毒はいっくらでもあるんだぜー」
例えば、酸素!
例えば、窒素!
「そして、二酸化炭素とかなぁっぁああ!」
ひゃはー!!
「いつのまに……!」
ようやくなにをされたか気づいたアマリア。
しかし、種は? そもそも、どこにそれを発生させるものがあったのか──……決まっている。
「そ、そうか! 人骨と胃酸?!」
「正解ー!!」
さすがは大賢者!
まさか、実験室レベルのことまで知ってるとか脱帽者だぜー。
人骨の中には、炭酸カルシウムが豊富に含まれている。
そこに強酸をかけるとどうなるか──!
当然、沸き立つように骨が沸騰して、二酸化炭素を猛烈に吹き出すのさぁぁぁ!!
「そもそも、な~~~~~んのために効きもしない爆弾をぶん投げて、それを胃酸で不活性化させるなんて迂遠な手段をとったと思ってるんだか」
それもこれも、
コイツの目を欺くためのブラフだよ!
「っていうか、お前さんの頑張り過ぎさー!!」
──ぎゃはぁ!!
水路に仕込んでおいたスケルトンは、あくまでも水路からの侵入妨害とゴミ捨て場程度にしか考えていなかったのだけど、こいつが水をほとんど消し飛ばしやがったからその目が生きてきたのだ。
オマケにただの生の人骨なら、さほど効果はなかったのだろうが、コイツが煮込んでくれたおかげで骨のなかのカルシウムがむき出しになったのだ。
つまり、周囲に満ち満ちた炭酸ガスは全てその偶然の産物なのだ!!
「へっへっへー。さーてどう料理してくれようかなー」
「くっ。これは油断しました」
はっ、はっ、はっ、と浅く呼吸するアマリア。
多少は新鮮な空気を吸えばマシになるのだろうが、残念! ここはダンジョンの袋小路だ!
ましてや高濃度の二酸化炭素が満ちてきたら、もう今更換気したところでおそーい!!
体内に3~5%程度の二酸化炭素を吸っただけでもう自覚症状が出るのだ!
そして、アマリアの状況からしてすでに室内の濃度は7~10%程度と予想! いまから、これを回復させるには、新鮮な空気を取り入れて安静にするしか方法なし!!
「つまり「私」の勝ちぃ!!」
言っただろう~。
「切り札は最後にとって置くもんだってなぁっぁああ!」
ぎゃははは!
「私」最強ぅぅぅうう!
「といわけで、エルフちゃんをいっただっきまーす…………あん?」
「えぇ、同感です。切り札は最後まで取っておくもの──」
ニッ。
「こんなこともあろうかと、準備くらいしておきますとも」
な!
そ、それは──……。
まさに今から丸飲みしようと舌を伸ばした、その一瞬のこと。
膝をつき荒い呼吸をしていたアマリアが不敵にニヤリと笑う。
そして、懐から、なにやら毒々しい色のポーションらしきものを取り出したかと思うと、一気に呷りやがった!!
「お前がとっておきを隠していたように、こっちにもとっておきはあるのですよ!!」
「んなぁぁぁあああああ?!」
ブワッ!!
刹那、アマリアから猛烈な魔力が噴き出してくる!
それも、この部屋に入った時と同様──……否、それ以上のそれ!!
まるで、突如全回復でもしたかのような奇跡を見せる。
いや、違う。
奇跡なものか、奇跡であってたまるか!!
あ、あれは──。
あれは────……!!
「エリクサーって奴かー?!」