──そうして、こうして、のこのことやってきたミンチちゃんであるが。
「ぎゃははぁあ!」
──お前って、
ニッチャァァア!
「私」は会心の笑みを浮かべると、引き寄せたミンチちゃんに舌をしゅるりと巻つけて、その細い顎に舌先を当てる。
いわゆる、なんちゃってチョークスリーパーだ。
こうすることで、ちょ~~っとでも、力を入れたらその細い首がぽっきり折れるようにも見えなくはな~い。
「へっへっへ~」
ど~うだい、この構図!
いい眺めだろ~。
「くっ! お、お前ぇぇ……」
「あーん?……へいへいへーい、だ~れが「お前」だってー。口の利き方に気をつけなー!!」
メリリッ……! とミンチちゃんの首に力を入れると普段はあまり反応しないミンチちゃんがかすかに苦悶の声と表情を浮かべる。
そりゃそうだ。マジで折る気で力をいれてるからねー。
「や、やめなさい!!」
「ひゃは! なら、態度を改めろ、ボケェ!」
「くっ!」
けっ!
何を悔しがってんだかー。
ミンチちゃんの生殺与奪は「私」にあるんだよ~ん。
……しかし、けーけけけっ!
思った通り──この女、激アマだぜ。
いつでも撃てる状態だというのに、例の極大魔法とやらが放たれることは、ついぞなかった。
それどころか苦々しい顔で、脂汗を浮かべる始末。
「くぅッ……よ、よもやそんな古典的な手を打ってくるとは──」
だろぉ?
「むしろ、こっちもこれで止まるなんて、信じらんねーぜぇ」
けーけけけけ!
見も知らぬガキのために、千載一遇のチャンスを逃すとはアホとしか言いようがな~い。
つーか、魔法を打とうが打つまいが、最終的に「私」がこの子を食べるとか思わないんだろうか?
(……思わないんだろうなー)
なぜなら、ガキを見捨てられないような奴は馬鹿だから!!
「うけーけけけけけ-!」
けーけけけけけけけけけけけけけけけ!!!
よくよく言うような災害の現場などで、女子供老人を先に──な~んて話あんじゃ~ん?
あんなもんアホの極致よな。
労働力かつ、戦力になる成人男性が一番貴重に決まってんだろうが!!
その次に若い女で、
次にガキ、
──年取った中年女とジジババは死ねぇぇぇえ!!
当然、
もし、「私」があのアマリアと逆の立場だったなら、どうせ死ぬなら今ぶっ放してサクっと殺してあげるけどねー。
戦力になる大賢者のほうが絶対に重要に決まってんだろうが、ボケがよー!
「そして、それができないお前の負けだよ──エル~フッ!」
「くぅぅ!」
ひゃは、
ひゃははははは!
「ひゃははははは~ん♪」
撃てまい撃てまい。
そして、撃てないなら撃てないで、そのあとどうするー?!
「つーか、その状態をいつまで保っていられるかなー?!」
「な、にを……!」
しかし、「私」の指摘が真実であったかのように、アマリアがぶわりっと脂汗を吹いた。
つまり図星。
つまりビンゴだ!!
「やー〜っぱりそうか!! つまり、その状態は相当キツイんだろうぉぉぉおお?!」
「ぐっ!?」
ぎゃは!!
顔面蒼白になったことからもおそらく
「ぎゃははははははは!──そうだと思ったんだよなー! 空気の汚染もさることながら、そもそも、その魔法ってばよおぉぉお……」
ぎひひひっ!
「──撃たないとそのまま霧散するような代物じゃね~ってこったぁ!」
「ッ!」
否定もしない、肯定もしない。
撃てない魔法を引っ込めるもしないことから、
ぎゃーははははは!
「いやいや、やっぱそうじゃないかとは思ったんだよなー」
なにせ、全力で撃てば星に穴をあけると豪語する魔法だ。
そんな威力の魔法が、「撃ちます、はい止めます──」な〜んて簡単にできるはずがないのだ。
言ってみれば、発射寸前──燃料満載でロケットエンジンに点火した状態の核ミサイルみたいなもんだ。
発射シーケンスの最終段階。
エンジン点火とリフトオフ済み、
今はブースター点火からの発射直前ってとこかー?
いやぁ、
もっと簡単に言えばよぉぉ!
「今のてめぇは、便所でケツ出して下痢便を発射寸前のそれだろーがよ!」
「くっ、なんと下品な!」
ぎゃははははあぁぁあ!
ぎゃーははははははは!
「下品で結構、下品で上等! ボカぁミミックだよ〜?──ぎゃ~~~はははははははははー!」
つーか、そうなったら絶対無理に決まってる!
あとはケツから下品に水みたいなクソをひねり出すしかねーわなぁ!!!
「へっ! そんで、その状態で止められるもんならよぉ……止めてみなぁぁあ!!!」
ぎゃは!
ぎゃは!
ぎゃーははははははぁ!!!
「げ、下衆がぁぁぁあ!」
はっ!
下衆で結構!
「下痢便よりマシさー」
その下痢便にしたって、
ぶっぱなしゃ~そりゃ凄い威力だが、一度出す寸前までいって簡単に引っ込められるようなもんじゃないとは思ってたんだよね!
そして、デカい魔法なだけあって、発射寸前はコントロールが困難で他の魔法とのマルチタスクはほぼ不可能!
「つまーり! 今のお前はあと数秒で爆発するだけの時限爆弾さぁぁ!」
ぎゃはははあ!
「ぐっ、くくっ! な、ならそれを分かっていたら、どのみちお前も!」
「そーーーーで-------す!」
その通りでーーーーーーす!!
「お前が自爆したら、「私」も死ぬぅ」
だ・け・ど、
「お前に
「ぐ、ぐぅぅぅ……!!」
ぎゃははははは!
やっぱできねーわなぁぁ!
ギリギリまで踏ん張るわなぁぁ!!
「そういうとこだよ、間抜けなエルフが!」
ケツを便器に向けたら、ためらわずにぶっ放せやボケぇ!! と、散々に煽りに煽って舌をだす。
ついでに、
ベ~ロベロベロと、身じろぎ一つしないミンチちゃんを舐めまわーーーす。
あ~……甘いねぇ。
やっぱりこの子は高級肉だわー、いっそこのまま食べちゃいたいくらいだぜぇぇ。
(ま、ここで食ったら「私」の負けだけどねー)
しかして、そんなことを知る由もないアマリアは、
脂汗を流して、汚染された空気と発射寸前の巨大な魔力に翻弄されている。
「けけっ」
こうなったら、ハッキリ言って詰みだ。
この状態のアマリアが生存できる可能性は限りなくゼロに近い。
「つーかさー。どうせ死ぬなら、一か八か、最初の予定通りに、極大魔法とやらをブチかまして、同時にバリアーを展開して逃げればいいのねー」
ギャハハハ。
ばっかで~。
ま、それをすると、「私」とミンチちゃんは確実に死ぬ。
ただし、アマリアが助かる可能性は大幅にアップ──たぶん、五分五分といったところかな。
そして、今のまま耐え続けて魔力がオーバーフローし、自爆したとしても……どのみち、「私」は死ぬ。
もちろん、ミンチちゃんもただでは済まないい、当然アマリアも──死ぬ。
──つまり、結果はほぼ同じ。
違うのは自分の意志で撃ったかどうか。
そして、アマリアが生き残るか否か──ただそれだけ。
……だったら、そんなもん、本来なら一考するまでもなーーーーい!
そして、「私」が逆の立場なら、間違いなく後者だ。
「そもそも、迷うことなく、全力でぶっ放してから、一か八かでとんずらこくっつーーーーの!」
バーカ!!
「そ、そんな簡単に選べるはずが……」
ぎゃははは!
そーだよねー!!
「お前はそう言う奴だよねぇぇぇ!」
「だ、だけど、こ、これ以上は──……ぐぅぅ」
ボタボタと滴る脂汗。
その魔力が体中をめぐり今に暴発せんとしているのだろう。アマリアの白い綺麗な肌が内側から不気味に輝き始めていた。
「おっほぉぉ。限界か? ついに限界かぁぁああ!」
そのまま、ドカーーーーーンってかぁぁあ!
ぎゃーーーーっはっはっは!!
こりゃ~汚い……おっと綺麗な花火が見れそうだぜー。
「──あ、そうそう。一個言い忘れてたけどさー」
ぐぱぁぁぁあ!!
にちゃぁっぁあ……!
「……へっへっへー。こうして、「私」に一口で食いちぎられて魔力ごと消化されるっていう案もあるぜぇぇえ」
そうすりゃ皆ウィンウィン!!
私も美味しい、
ミンチちゃんも生存!
そして、アマリアたんは、自分の矜持を最後まで貫け―る!!
──ひゃはぁぁぁあ!
「ど~う? どこを取ってもいいこと尽くし!! んねー、そうしてみなーーーい!」
「げ、下道が!!」
ぎゃはははぁあ!
はい、『下道が!』貰いましたー!!
「つーか、そうするに決まってんだろバーカめぇっぇええ!」
「くっ!」
それでも、最後まで魔法を使おうとしないアマリア。
一瞬くらいは逡巡してもよさそうだけど……コイツ徹底してるなー。過去に何があったか知らないけど、マジでガキが撃てない様子──。
「……ま、安心しなぁぁ! 寂しくないように、あの弟子どももすーぐに見つけ出してお前の後を追わせてやるぜぇぇ!」
とっくにダンジョンの外に脱出しているだって?
──はっ!
「甘いんだよぃ、クソエルフ!!」
人間ってのはよーーーーーー!!
時々、とんでもなく馬鹿なことをすんだよ!!
「アマリアッ!」「アマリア様ッ?!」
ほーらねぇ♪
「こんな風にさぁ!」