「ちぃぃぃい!」
やっぱあれしきでくたばるタマじゃないわな!
そして、忘れそうになってたけど、コイツってば、
ってことは、
意識があろうがなかろうが、あの魔法が発動直前ということは、もはやエルフの形をしただけの危険な爆発物に違いはなかったのだー!!
「……ふっ。まさか、まさかのシェイラが、最後の最後でよく成功させてくれました」
あ〜ん?
「ア、アマリア様──」
涙目のシェイラ。
すでに二酸化炭素のせいで意識は濁り切っているはずなのに、辛うじて意識を保っていやがる。
そして、
「そして、ルドルフ──……アナタもよくぞ立ってくれました。よくぞ……!」
「へ! と、当然だろ! なんのための前衛だと思っているんだよ!」
全身から血を吹き出しながら片目で不敵に笑うルドルフ君。
もはや立っているのもやっとだろうに、攻撃の手は緩めない──さすがだ。
「ですが、ここまでです。……あとは私に任せて、シェイラとともに撤退をッ!」
「あ?! 何言ってんだよ、ここまでくればあと一息じゃねーかよ!!」
「ダメです! その箱を甘く見ないことです。まだいくつも切り札があるに違いありません──ならば、ここは私が一命を賭してでもコイツを仕留めます!」
「馬鹿な!! お前が死ぬ必要なんてどこにも──!!」
「いーえ、あります。そうでもしなければコイツは、この箱は倒せない!……そして、その覚悟はアナタが
「アマリア、いい! いいから!!……見ろよ、俺を。俺だって、もう立ってるのも精一杯なんだ!……だから、だから最後まで共をさせろよ!!」
血をドクドクと零すルドルフ。
見れば片目は欠損、心臓だって微量のエリクサーとやらのおかげで治ってはみえるが、失った血は戻っては来ない。
つまり、コイツはマジであと数分といったところの命なのだろう。
そりゃあ、ここに残ろうとするわな!
「ダメです。ダメです、ダメです!!……ダメなんです! 必ずシェイラとともに脱出を! あの子を──あの子たちを守ってください!」
「馬鹿な! それじゃアマリアは──」
しかして、なおも言いつのろうとするルドルフにそっと体を寄せると、アマリアは囁いた。
小さくて聞こえ辛かったけど、「実はさっきのがファーストキスでした──」だとか、なんとか……けっっっっぇ!!
「
──舐めるなッッ!!
「「私」はミミ~~ック!! とうぜん、罠にかかった獲物は一匹残らず、全部食うに決まっとるやろがーーーーーーー!!」
しかも、限定メニューの、
高級ガキ肉エルフ定食を、この「私」が逃すわけねーーーーーだろうが!!
「そうとも! この「私」が食事しようというのだよ……!」
この「私」が!!
なぜなら、「私」はミミック!!
ダンジョンに生れし『人食い箱』じゃぁぁぁああああああ!!
「そしてぇぇぇええええ!」
「そしてっっ!!」
「私」は叫ぶ!
同時にアマリアも叫んで立ち上がる!!
目はすでに見えていないのだろう。
口からは得体のしれない液が出ているし、尿だって漏らしている。
髪だって抜け落ちていくし、肌はひび割れそこから体内を暴力的にめぐる魔力が漏れている。……だが立つ!
立つのだ、大賢者アマリアは!!
さすがは数百年は生きている長命種のエルフ。
そして、近代魔法の祖にしてすべての魔法使いの母よ──!!
「──だから、二人は行けえっぇぇえええええええええええええええええええええ!」
「だからこそ、全員食ってやるぁっぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!」
ごはっ!
もはや吐血するそれすら高濃度の魔力の混じった光を帯びており、アマリアの全身は小型の戦術核なみの暴走した『魔力爆弾』状態だ。
それを知った二人は、一瞬だけ逡巡するも、
そっと二人して彼女の頬に触れるだけであとは振り返らない!!
ルドルフは左頬を
シェイラが右頬を
「ッ……アマリア様、おたっしゃで」
それだけ言うと、アマリアの覚悟を知ったシェイラはふらつく体で起き上がり、唇をかみしめながらなんとかルドルフに肩を貸して元来た道を行く。
そう。
あの忌々しいバリアーを展開しながら!!
「……ちぃぃい!」
逃がすか!
あのバリアーがあるから、アマリアは自爆を決心したのだ!
つまり、後顧の憂いなく、ガキどもの安全を確保したからこそ、安心して自爆できるってかー?!
「舐めんなよー!」
そうはさせるかってんだ。
そうとわかってるなら、
あの程度の満身創痍状態のバリアーなら舌撃をブチかませば破壊くらいは──……。
「食らえーッ!」
「──させませんよ!」
ブシュッ!
「んなー?!」
お、おまッ!
舌撃を繰り出したところを、なんとアマリアが身体で受け止める。
当然、いまの状態のアマリアにはバリアーはなし。もはやバリアーを出すこともできないほど消耗しているのだろう。
だから、簡単にその小さな体を貫くことができた。
しかして、さすがはエルフ!!
その後に及んでどこにそんな力があったのかと思わせるほど、貫いた私の舌をガッシリと掴んで放さなーい。
「な、ななな、なぁっぁあああ?! こ、この死にぞこないがー! てめぇ、それで見えてんのか?!」
「ふっ、見えずとも、貫かれれば分かるでしょうに」
そ、それはそう!
そうれはそうなんだけど──……なんか舌先がビリビリくるの、なに?!
こ、これって、もしかして爆発寸前の体内を巡ってる魔力かー?!
「おや、時間切れの様ですね」
「げぇぇー! ってことは、ま、まさか──……!」
キュィィィイイン!
「ふっ。決まっているでしょう。ミミ~ック」
そういって、「私」の顔を
つ、つまりこれは──……。
「いよいよ、
「ふふ、その通り──えーと、こういう時は、ジーザス……でしたか? あは、あはは、あはははははhhhh────」
カッ!
突然、強烈に光り出すアマリア
まるで体内から核爆発でも起きるかのように、目や鼻口──そして、体中のひび割れた部分からとめどなく、光を溢れさす!
「ぅあぢぃ!?」
な、なになに?!
しかして、その光は温かにあらず、柔らかにあらず! その光は、その光は──…………凄まじく、攻撃的で暴力的で破壊的であったーーッッ!!
「あぢ! あぢ!! あっぢぃ〜!!」
──そ、そりゃそうだ!
本来、室内どころかダンジョン丸々吹っ飛ばす魔法を発射寸前で留めて、エルフ自身のこの小さな体に溜め込んでいるのだ。
当然限界が来る。
自爆する。
死ぬ。
それが今。現在! ナーーウ!!
「……ぅ、うぎゃーー!! マジかよー、あ、あーちちっ! あちちちっ! そ、その光、あっちー!!」
「ふ、ふふふっ。こんなことならもっと早くにシェイラに防殻の魔法を特訓しておくんでしたねぇ」
そっと首だけで振り返り、
見えないはずの視力で弟子たちの背中を見つめるアマリア。
それは死ぬ征く者からの手向け。
あとはそう。
触れただけで箱を焼く強烈な光が部屋中を貫き、
数発はヨロヨロと逃げるシェイラとルドルフ達にも命中したようだが、それらはバリアーによって辛うじて弾かれる。
なにより、爆心地にいるアマリアは地獄の猛火の中心にいるはずなのに、なぜか自愛の笑みを浮かべていやがるーーーー!!
「ち、ちぃぃいい! テ、テメェぇぇぇえ! は、放せ! 放せッ! 「私」の舌を、はーーーなーーーーーせぇっぇえええ!」
──がぁぁぁあああああ!!
ガキが、高級ガキ肉がヨロヨロと逃げていくし、
そしてコイツ自身の自爆が止まらねぇぇぇえ!
「畜生! だぁっぁあ! あ、ほら! ミンチちゃんいるよ?! 見ず知らずの子供を犠牲にしてもいいの〜?!」
ほらほら、ほらぁ!
見てみてぇ!!
そこに転がってるのは哀れな王族の成れの果てで、君にも由来の魔法学校の生徒だよー?!
それでもいいのー?!
「はて? もうしわけありませんが、もう目もみえませんものでー」
「んなぁぁぁああああああああああああ?!」
コ、コイツ……!
よくもぬけぬけと──!!
「というのは、冗談です。彼女にはもうしわけありませんが、お付き合いいただきます。……少なくとも見捨てはしませんよ」
「なああああああああああああああああ!」
いやいや、そういうことじゃなくて!!
あ、駄目だ。
これ、覚悟ガンギマリしちゃった奴だ。
(つ、つまり、この状態って、特攻?!)
……や、
「やっべーーーーーーーーーーーーー!!」
し、しぬ!
死ぬ死ぬ死ぬ!!
ついに死ぬーーーーーーーーーーーーーーーー!!
「あは、あは!」
あはははははははははははははははははははは。
「そうだ、死ね!! 死ぬがいいわ、醜悪な魔物よ!!」
あはははははははははははははははははははは。
あはははははははははははははははははははは。
あはははははははははははははははははははは──────。
「あーーーーーーはははははははははははははははははははははは!」
狂ったように笑うエルフの女。
数百年は生きていたであろう大賢者アマリアの覚悟と覚悟と覚悟の決った最後の笑い声に「私」は絶望の顔を浮かべて、
ついに────。
「──な~~んてね。諦めると思った~?」
ぎゃは♪