※ 悲鳴が響き渡る少し前のこと──。 ※
「おー。来た来た♪ 遠くでウロウロしてるから来ないのかと焦ったわー」
結構な人数がばらけているのか、
どうやら約50人全部がひと塊に動いているわけではなく、5、6人に分かれて移動しているらしい。
これは好都合。
さすがに一遍に来られたら取りこぼしが出るからね。
素人っぽい連中に返り討ちに会う気はまったくしないので、懸念は取り逃がすことだもーん。
「これはうまくすると各個撃破できるかも。そうすりゃ、夢の50人食いができぞー」
えへへ、ぜーんぶ捕まえてやるんだ!
「なので、まずは近づいてきたグループを順繰りに捕まえて、締めて、殺して、食べて……」
──じゅるり。
「おっと、よだれよだれ──」
まだ食べてないのについ、ね。
舌で涎を拭いつつ、
「それよりも、大事なのはなるべく死体を損壊しないようにしないことだねー」
──や、別に鮮度とかの話じゃなくて、匂いの問題。
血とか臓物は、いい匂いなんだけど、その臭気で部屋の異常に気づかれたら
「だから、なるべく血とか臓物が出ないように仕留めて、素早くストレージにしまう。そんで、綺麗に片づけてから次を待つ──」
名付けて、
「いえー!……ん? ミユちゃん?」
『はぁはぁはぁ』
そこにはいつの間にか戻ってきたゴースト(化)したミユちゃんが荒い息をつきながらフワフワ浮いている。
……つーか、ゴーストって息荒くなるもんなん?
「なに? 警告はうまくいったー?」
無理だろうけど。
『くっ……! コイツ──』
「はいはい、残念だったね」
この様子だと、多分、だいぶ頑張ったんだろう。
なにせ、「はぁはぁ」言うくらいだもん──…………って、なになに?
「ど、どーしたの?…………それ土下座?」
怖いんだけどー。
あと、土下座が何か知らん以下略──。
『くそっ! アンタなんかにこんなこと頼みたくないけど、』
「はい?」
いやいや、
なになになに?
「……あ、まさか命乞い? やめてよーそーいうの。無駄だよー。全部たべるよー」
どーせ子供だけでもー!
とか、そういうこと言う気でしょ?
無駄無駄。
子供の肉が一番楽しみなんだから。
「なにせ、子供なんてダンジョンではまずお目にかかれないからねー」
『わかってる! アンタがそういうモンスターだってことは分かってる──だから、』
「だからー?」
一応、聞くだけ聞いたげる。
全部殺して、食うけど。
『──せ、せめて一撃で! く、苦しまずに殺してあげて!」
「…………はい?」
何言ってんのこの子?
サクッと殺せって?
「……………………あー。この前の忍者の話?」
『くっ』
あーはいはいはい。
青忍者の話ねー。
たしかに、じ~~~~~~~っくり足から食ってやったわ。
見ててドン引きしたとか言ってたな。
「そんなに見るのがイヤなら、どっかいけばいいじゃ~ん」
何を言われても、
食うのはやめない。
ぜ~~~~~~ったいやめない。
『ち、違う! アタシが見たいとか見たくないとかじゃない!』
「……じゃーなに?」
『そんなの……』
「ん? はっきり言ってプリーズ」
聞くだけ聞く。
『ア、アンタがいっつも言ってるじゃん! 食材に対する畏敬とか敬意とかそう言う話よ!』
「……ん? ごめん、意味が分からない?」
マジで何言ってんの?
『くそっ、この化け物! い、痛いのが嫌だって言ってんの! 苦しいの──本当に痛いの!』
「や、君はもう──ほら、死んでるし」
痛かったのはゴメン。
でも、ミユちゃんも割と一瞬だったと思うよ? 青忍者ほどじゃない。
『だからこそ! ほんとうに……本当に、身体を食いちぎられるのは痛いの、苦しいの──熱くて、惨めで、寒くて、つらくて、悲しくて……。そ、それをあんな小さい子たちが!』
あーん?
「やー。な~~んとなく、言いたいことは分かるんだけどさー。それ、君に関係なくない? 別にミユちゃんが痛みを肩代わりするわけじゃなし」
そもそも、痛いの割と一瞬だと思うよ?
青忍者は──……何秒くらいだったっけ? いや、何十秒だったかな?……ま、忘れた。
『──わかってる! だけど、わざわざ苦しめる必要はなくない!? 何も悪いことしてない子たちだよ』
「あー。あー。あー。なるほどね」
はいはいはい。
わかったわかったわかった。
「ミユちゃんさー。「私」をなんだと思ってるの? ただのミミックだよー。食べるのは好きだけど、別に拷問したいわけじゃないよー?」
そういうのが好きなモンスターがいるか知らんけど、
少なくとも、ミミックである「私」にあるのは食欲だけだ。
拷問して楽しくは──……ない、はず。
や。
青忍者は別よ!
だ、だって、アイツ等なんか爆弾とかずるいじゃーん? むかついたし。
『そ、それなら──』
「んー……。「私」と
食べた人と
食べられた人だし。……あ、食べた箱か。
「一応言っとくと、なにも、別に無理に青忍者みたいなことはしないよー」
多分。
でも、爆弾投げてきたりしたら、知らん。
あと安全地帯からチクチク攻撃してきたりしらた、絶対許さん。
『ほ、本当?』
「ん。多分だけどね。──まぁ、食べる時に
丸飲みで喉越し楽しんだりとか、
端から齧ったりくらいはする。長く味わいたいし──。
あとは、
『く、工夫って……』
「工夫は工夫だよ。煮たり、焼いたり……あ、いや、別に無理に意地悪したり拷問する気はないよ? 前の青忍者のときも、カジカジカジしまくっても味は変わらなかったしね──」
あれはムカついたからやっただけだし。
「あー、でも、丸飲みはするよ。あのチビっ子を丸飲みしたときはさ、ミニボディが喉で暴れた喉越しが結構よかったんだよねー」
ジュルリ。
あれは多分やる。
……絶対一回はやる。
一口サイズのは絶対に、ね。
まー、毎回するもんじゃないから、多分一回だけだと思うけど?
「それ以外は普通に食べるつもり。──まぁ、いいアイデアが思いついたら、
だって、50人くらいでしょ? 色々試したいじゃーん。
『コイツ!』
うっさいなー。
「とにかく、拷問みたいな変なことはしないよー。食べるだけ食べるだけ」
──美味しく食べるだけー。
つーか、
それをとやかく言われたら存在意義に疑義を
『わか……った。お願いよ! 小さい子もいるの──だから、なる%&%&’%(’』
お。
バグった。
「さて、久々の餌だ──どうやって楽しもうかなー」
まず一匹目は踊り食いは決定──……あ、一人目ね。
尊厳尊厳。尊厳大事、汝食材を愛せよ。
よーし、張り切っちゃうぞー!!