※ 時はもどって──。(第31話の最後) ※
ぎゃぁぁぁあああああああああああああああああああ!
ダンジョン中に響き渡ったその声に、入口付近で待機していたクレイン主任を含め教員3名と、残留していた冒険者。
そして、広場に残っていた2組の生徒たち10名が一斉に顔を上げて見合わせる。
「な、なんだ?」
「しゅ、主任。こ、これは……」
ざわざわっ。
ざわざわっ!
「い、言わんこっちゃねぇ……!」
そして、悲鳴を聞きつけたDランク冒険者は、ほれ見たことかと顔を
「な、何だ? 君、今のはどういうことだ?!──そ、それにこの悲鳴はなんだ?! 何を知っている!」
クレイン主任は、ただただ驚く。
何が起こったのか分からないのだから当然の反応だ。
「はぁー……。いいか、一回しかしか言わねぇから、よく聞け! 俺は助けを呼ぶからアンタも──いや、アンタたちも絶対にここを動くな?! それか、ダンジョンからさっさと出ちまいな!」
そう言うなり、一人の冒険者がダンジョンを出てどこかへ向かおうとする!
「お、おい! 待て!」
もちろんクレイン主任も呼び止めようとしたが、現役冒険者の脚にかなうはずもない、
……くそっ!
「あ、お、おれも──」
「そうはいくか!」
しかし、幸いにもう一人残った冒険者もこれ幸いと外に出ようとするのを、押しとどめることに成功した。
何が起こっているのか知れないのだ。
ここで現役のプロに逃げられたらとんでもないことになる。
しかし、そう思ったのも束の間、生徒たちが何事かと困惑しているまさにそこに再び悲鳴のようなものが響き渡る──それもさっきよりも深く長く……。
ああああああああああああああああああああああああああああ!
あああああああああああああああああああああああああああああああああ!
「……くっ! こ、これは奥に行った生徒の悲鳴か?!」
「し、主任どうします?!」
クレイン主任の懊悩に、メリッサ先生も顔を真っ青にして言う。
いや、メリッサ先生だけでなく、カーベル先生も同じく真っ青だ。……そしてクレイン主任自身の顔色もきっと同じ色をしているに違いない。
「ど、どうもこうもない。……これは一刻を争う事態だ!」
「しかし、さっきの彼が助けを」
あの冒険者のことか?!
「──そんなのを待っていられるわけがないでしょう!」
そもそも戻ってくるかどうかも怪しい。
「なので、まずは我々で様子を見に行きましょう! とくに怪我をしているなら、生徒たちだけでは手に負えませんからね」
一応ポーションなども持たせているが、大怪我をしたらそれだけでは心もとない。
そして、そのための回復専門のカーベル先生だ。
「し、しかし、我々はこのダンジョンに不慣れですよ? いったいどこに向かえばいいのか──」
「そこにいるじゃないですか。……君、頼むよ」
カーベル先生が不安げな顔をしているので、クレイン主任は、近くで引きつった顔をしている冒険者の肩を掴んだ。
「え? お、おれぇ?!」
「ああ、君以外にいないだろう──なにかね? 案内も護衛もできないと? まさか、仕事を放棄するいうのかね」
この、貴族や王族すらいる魔法学校の生徒と教師を相手に?!
「い、いや。そ、そういうわけじゃないけどよ──……お、おれは入口までって契約で」
「何を言ってる。君の仕事は我々の案内と護衛だろう。さ、頼むよ──なに、別に先陣を切れと言っているわけじゃない。いざとなれば我々が矢面にたつとも」
そのための冒険者で、
こっちはそのための魔法学校の教師だ。
「ほ、ほんとうかよ──」
「3人もの魔法学校の教員だぞ? しかも、前途有望な彼らを引率する我々の実力が、その辺の魔物に劣るとでも?」
「そ、そこまでは思ってねぇけどよー……ほんとうに前に立ってくれるんだな?」
ちっ。
腰抜けが──なにが冒険者だ。なにがプロだ。
だが、コイツの案内がいるのは事実──。
「あぁ、もちろんだ。家名に誓うよ」
魔法学校教員の大半は貴族家出身だ。
そして、貴族の家名はときには命より重い──。
「うーん。家名とかはどうでもいいけど、ボーナスを頼むぜ」
「もちろんだとも!──さぁ行った行った」
金くらいならいくらでも。
それよりも、生徒の無事のほうが大事に決まっている。
「わ、わかった。おそらくこっちだ────だいたいの位置は分かると思う」
「おぉ、頼もしい! では行くとしよう──
生徒に振り返りそういうと、
のこる10名の生徒が不安げな表情をする。
「大丈夫だ。すぐに戻る──……殿下、殿下はおられますか?」
「──ここだ」
残る2組でそれなりの地位のものを呼ぶ。
公女、リーデル委員長に次ぐ立場である副委員長をつとめるグラハム王子だ。彼ならば適任だろうとこの場を任せることにした。
「申し訳ありません。殿下──ここをお任せしても?」
「……あぁ、わかった」
口数少なく答えるグラハム殿下。
彼は王族なだけに発言に気を使っているのだ。
それだけに、本当は外に出したほうがいいのかもしれないが、彼らは要人子弟だ。
なんの援護もなくダンジョンの外で待機させるのも、それはそれで怖い──……外だって誘拐に暴漢、野生動物に盗賊やらと、決して安全とはいえないのだから。
それくらいなら、いっそ比較的安全なダンジョンに入口のほうがいい。
少なくとも、並みの暴漢だの野盗はダンジョンまでは来ないからな。
あと、いうなれば教員を一人残すべきなのだろうが……さすがに戦力が不安だ。
何があるかわからいのだから、万全の体制で望んだほうがいい。
「ではいきます!……1時間して戻らなければ、先ほどの行動を!」
それがリミットで、
それが限界だろう。
こっちはただの教員で、この先は初めてのダンジョンだ。
装備も経験も足りないのだから、無茶はすべきではない──……さて、いくか!