──ミミックだ!
クレイン主任の叫びに応じて、すばやく臨戦態勢をとった教員たち。
もちろん、生徒たちも慌てて追従する。
「総員聞けッ! ここはダンジョン内だ──ゆえに火魔法は厳禁。全員で放つと酸欠になるぞ!」
「あと爆破系、重力系もやめなさい──! 天井や床のトラップが発動する危険があるわ!」
「「は、はい!」」
カーデル先生とメリッサ先生が、教員らしく具体的に指示を出す。
その声に、生徒たちの表情が引き締め、魔法杖を構えると魔力を練り始めた。
「よーし、いいぞ! わかったならば、全員トラップの誘発に警戒しつつ────……放てぇぇぇええ!」
「「う、うわっぁぁあああ!」」
ドッコーーーーーーーン!
クレイン主任の発射指示とともに、教員と生徒あわせて13名の魔法使いからなる攻撃魔法が一斉に放たれる!
──その威力よ!!
ドカンッドカンッドカンッ! と、
銘々が得意魔法を放ちつつも、禁止された魔法以外が一気呵成にぶっ放されていくッッ!
その威力と輝きが薄暗いダンジョンを真昼のように染め上げた!
さ、さすが魔法学校の生徒と教師の放つ魔法だ。
それはまさに一斉射撃! まさに炸裂に次ぐ炸裂!
まさに総攻撃!
「撃てぇぇぇえ! 撃てぇぇぇええ!」
「「わぁっぁぁああ! わぁぁぁああああ!」」
──うわぁぁぁあああああああああ!
その間中も、誰かの絶叫が響き渡り、
ありとあらゆる種類と輝きを放つ魔法が、箱に向かって殺到し、そのままほぼ全員が魔力が切れるまで撃ち続ける。
そうしてまばゆい光が室内を染めるたびに、無数の魔力が渦巻き破裂していくが、ついに一人、また一人と魔力が切れて膝をついていく。
「はぁはぁはぁ……」
「ふぅふぅふぅ……」
さすがにこれほど濃密な連続射撃だ。
周囲には溺れるほど濃密な残留魔力が漂い、オゾンの香りが立ち込めていた。
そうして、ようやく魔力切れととも周囲に静けさが訪れるたころ──。
「……や、やったか?!」
誰ともなく
だが、まぁ、やったのは間違いない。
なにせこれほど高威力の魔法が──…………「あう゛う゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛」
「「ッ?!」」
「な、なんだ?!」
「馬鹿な、これは一体!」
思わず声を上げるクレイン主任たち。
だが、それも致し方なし。
なぜなら、すでに多数の魔法が直撃した木箱は、ほとんど原型を留めていない──……だのに、まだなにかが這い出して来るのだ!
「ちぃ! 総員警戒ッ!」
まだ生きていたかと、
クレイン主任は残った魔力をかき集めて『魔力の大剣』を作ると全員を背後に庇い一歩前に出る。
その左右を固めるのは、教員二人。
もちろん、
カーデル先生とメリッサ先生だ。
「二人とも、私に攻撃のあとに一斉射!」
「了解」「お任せをっ!」
さすがにしぶといが、これなら万が一もないだろう。
なにせ教員3名からなる至近距離からのトドメの一撃だ。
「死にぞこないめ。さぁ、顔を出せ!」
すでに相手の動きはにぶい。
そのことからも満身創痍と推定。実際、それほど危機感を感じない。
そして、目の前の爆炎のベールの向こうに蠢く影はすでに予想通り重傷を負ったのか、動きが鈍くズルズルと這いよるのみ……。
そんなのに遅れをとるほどの教員3人ではなかった。
だから、今か今かとその瞬間を待ち、魔法を放とうと、杖を思いっきり振り上げた!!
「くたばれ化けも──……………………は?」
……しかし、必殺の一撃を放とうとしたクレインのそれは寸前で不発となる。
なぜか。
なぜだろう。
……否、考えるまでもない。
湛えた魔力の大剣は霧散し、思わずたたらを踏むクレイン主任。
いや、彼だけでなくカーデル先生もメリッサ先生も大きく目を見開いたまま硬直していた。
それもそのはず。
今しがた全員が魔法を撃ちこみ、
そして、たった今とどめを刺そうとした
「……う、嘘だろう」
「クレイン主任、こ、これは──」
思わずたじろぐ教員たち。
だって、だって。
……つ、つまり。
このボロボロに溶けた体と、
骨を剥き出しにしつつも、
少女の面影を残したこの顔は──────う、うそだろ? 嘘だろ?! こ、この子って、まさか。
「…………リ、リーンさん?」