「ぐわぁぁああ!」
「あっはっはー!」
口から大量に吐き出しただいたい3、4人分くらいに肉片やら骨が胃液に交じって命中ッッ!
そして、わかったぞー!
(コ〜イツ、ダンジョンに不慣れだな?)
だからアホみたいにこの狭い空間で刀を振り回すし、間合いの詰め方が雑なんだ!
ははっ、勝機みたりー。
「大方、野外剣術は得意なんだろうけどさー」
あいにく、ここはダンジョン内で「私」部屋だ!
そして「私」の胃袋でもある。
「そこで簡単に勝てると思うなよー」
「く、くそぉ!」
「サンダースどの!」
おぉ~っと、フルプレートアーマーどもめ、ついに見せたな、隙をぉぉ!
そして返せ!!
「それは晩飯だって言ってんだろー!」
サンダースに前衛を任せて、学生を逃がそうとしていたフルプレートアーマーどもが、
彼が目つぶしをくらったのを見て、わずかに動揺していた。
なので、すかさずそいつらめがけて再びの舌撃をくりだしたッ!
──もちろん武器付きだ!
「死ーねー!」
「馬鹿め! 貴様の攻撃など効かんと言ったー!」
しかし、立ち直りが早いッ!
こっちが舌撃を繰り出しても、連中ときたらよほど防御力に自信があるのか、躱すそぶりも見せずにその一撃を受けやがった。
……だが、それが誤りだ!
「がひっ?!」
「ヒットー!」
予想通り、呆気なく貫かれてやんの──♪
「ぎゃはは、ざまぁー!」
「な?! ば、馬鹿な?!」
膝をつく仲間を見て驚愕しているフルプレートアーマーどもが二匹。
「あーっはっは。舐めてかかって、まともに受けるからだよー」
そして、あのフルプレートを貫いた
別に鎧の隙間を狙ったとか、
突然、剣術に目覚めたとかそういうんじゃなくて、たたの
「どーだい。思った通り、これは
舌に握られているのは、ギラリと輝く小さな剣。
それは、あのグラハム少年が使っていた
ガキが「私」の舌を切った時点で、かなりの業物だと思っていたけど、やっぱりそうらしい。
そいつを思いっきり突き刺してから引き抜いてやると、フルプレートアーマーの一匹から、ビピュ~と面白いくらいに血が噴き出した。
「おー、うめぇうめぇ」
舌で血を拭ってみえると、まー美味しい。
やっぱ、つえー奴の血はうめーわ。
「プ、プルート?」
その後、力尽きたのか、ドシャリと湿った音を立てて倒れる、フルプレートアーマーのプルート君に動揺する、仲良しの鎧たち!
けけけっ、てめぇらなんかもう怖くねーぞ。
「きゃっぁああ!」
「いやぁぁああ!」
そんなフルプレートアーマーの無残な姿に、救出されようとしていた学生が悲鳴を上げる。
なのでついでに……。
「お前らは。逃げたバ~ツ♪」
「ひっ!」
「げぅ!」
返す刀で──というか、プルート君を貫いたついでに業物の細剣でガキの首をかき切ってやった。
これで逃げられまーい。
「な! き、貴様ぁぁぁ!」
「あはは、ひとの飯を取るからそうなるんだよー」
ほらあれだよ、あれ。
ってことで、すかさず、
「うりゃー!」
「ぬっ!」
キィン!
「ありゃ?」
しかし、敵もさるもの。
動揺をみせたフルプレートアーマーのリーダー格を狙い、業物の細剣で凝りかかるが、さすがにこれは弾かれてしまった。
「ひょー。や~るぅ♪」
「くそ! プルート、プルート!」
「よせ、シギンズ!! 諦めろ!」
おっ!
さすがベテラン──切り替えが早い。
ジナちゃん以来の切り替えの早いパーティを見て、少し見直すが、それでも仲間を失った動揺は見逃せなかった。
なにより、3人で死角を隠す戦闘スタイルなのか、いまや隙だらけだ。
……
なぜなら、コイツがいるからな──。
「……君ぃ、復帰が早いねー」
そう。
コイツこと野武士のやつがここで視力を取り戻し再び参戦。
「ふんっ!
もぐもぐとしていた口から骨片を吐き出しつつ、ニヤリと口角を歪める野武士。
「……わ、わーお、もしかして食ったのー?」
顔面直撃──間違いなく口にも相当量が入ったはずだが、まったく意に介さない野武士。
どうやら、コイツには目つぶし以外の効果はなかったらしい。
「すげー。普通の冒険者なら、死体が目とか口とかに入った時点で、結構動揺するんだけどねー」
顔に直撃した学生ビームが口に入ったというのに、コイツ全然物おじせずに立ったやが~んの。
「笑止ッ。肉など、何を食おうと同じことよ──」
「やー。人間は一味違うと思うよ」
文字通り味がねッ!
「とくに学生肉は超美味いぞー!」
「ふっ! 語るに及ばず──」
「語る気もないけど、ね──!
ま、実際に食ったかどうかは知らないけど、普通は吐き気を催すものだが、コイツは違うらしい。
むしろそれでスイッチが入ったかのように、もはやこちらをただの魔物と侮るような空気は一切なかった。
そして、次の瞬間、壮絶なつばぜり合いが繰り広げられる!
──ドンッッッ!
「おぉぉぉおおおお!」
「うおーーーーーー♪」
激突からの剣戟!
そして、目にもともらぬ打ち合い。キンキンキンッ! と、頭上で繰り広げられる高速剣撃の乱舞!
向こうは太刀を刺突し、時に振り下ろし! 時に逆袈裟斬り。
そして、こっちは舌撃でそれを迎撃する。
もっとも、迎撃なんて言ってはみたけど、その実、野武士の攻撃の大半は「私」のボディを抉りまくっている。
「ぬぅぅぅぅうう?!」
「いってーーなーー!」
……まぁ、ご覧の通り
なにせ、宝箱ボディに「刺突」はそこまで効果はない。
だって、喋るし、痛がってはみせるものの、その実態は宝箱だからねー。
(ま、構造さえ無事ならなんとでもなるものさッ!)
なので、危ないのは大上段からの「振り下ろし」のみ……ッ!
それさえ気を付ければ、正直、刺突はすべて無視して、振り下ろしのみ迎撃しているというわけだ。
これなら相手が格上でもなんとかなる!
それに、こっち1×1のマスの中に入っているので、実は剣戟のほとんどは通らないのだ。
「ぐぬー?! 貴様っ、不死身か?!」
「そ~んなわけないでしょー!」
ただ、ちょ~っと耐久力と回復力が並み以上なだけさ。
なにせ、ついさっき魔力たっぷりのガキども食いまくったおかげで、現在進行形で満腹効果による回復ボーナスがついているので、攻撃を食らった瞬間、片っ端から治療していってるわけよ。
「ひゅー! どうだい? 子供たちが「私」を支えてくれてるよー♪」
なによりグラハム君。君にはとくに大感謝。
──
「いぇー! グラハム君、ありがとー!」
この剣が超つぇー。
めっちゃ、いい拾い物だったなー……いちちち!
「ぬ、ぬぅぅ! 一撃が決まらんっ!」
そりゃそうだろう。
天井にあたることを気にして小ぶりに振った一撃なんて、勢いも速度もないから剣で防ぐのは容易だ。
こちとら、ミミックだぞー?
ここから動けないんだから、重心は遥かにうえ!
オマケに、野武士の攻撃は単調にならざるを得ない。
なにせこっちは1×1のマスの中に鎮座しているのだがら、どうしても野武士の攻撃軌道は限られて来る。
対して「私」は、あの振り下ろす一撃にさえ警戒していればいいのだから、簡単簡単!……いってー!!
「だけど、全然よゆぅぅぅぅうー!」
い~や、
マジでガキんちょ踊り食いしといてよかったー♪
「こォオオのぉぉぉおおおおおおおお!!」
回復ボーナスで傷を治しながらの、
狭い部屋の中で繰り広げられるすさまじい刃の打ち合い!
──だが、いくら回復し、いくら決定打を防げると言えど、いずれ野武士のほうに軍配が上がるだろう。
なにせ、「私」は防御一辺倒!
そして、敵は斬撃はともかく刺突は命中させられるのだ!
このまま押し切られれば、
死ぬ、やられる、負ける──────…………。
「────……な~んて、思った?!」
ガンッッッッ!
「ぬ?!」
何十撃目かわからない斬撃が、ついに
しかし、それは今までのそれではなく、グラハム君の剣によるはじき返しでもない。
ただただ、
野武士自身の
「お、きたきた♪」
「ぬ?! こ、これは一体──……!」
「サンダースどの!?」
そして、ついに膝をつくサンダースこと野武士に呼びかけるフルプレートの二人。
しかし、彼らもまた援護に駆け付けることなく、膝をつく。
「な、がはっ……こ、これは──?」
どうやらフルプレートの中で血を吐いたのだろう。
目のスリット部分がドロリと血で汚れる。……つまり、ようやく
「ふっふっふー♪」
思わず、にんまりと笑みがこぼれる。
「ぬぅ!……き、貴様か?! い、一体なにをした!」
野武士も吐血し、刀を杖に立っているのがやっとのあり様だ。
フルプレートどもも順次膝をつき、倒れていく。
あはッ♪
「やー。何をしたっていうか、ずっとしていたというか────……」
気づかなかった?
「……ここ、すっごい毒ガスで充満してるんだよ?」
魔法使いなら多少は耐性があるようだが、
近接専門は思った通り、耐性が低いらしい。
学生の中でもガスに倒れる奴とそうでなう奴がいるから、もしやと思ったが、どうやら間違っていなさそうだ。
「ど、毒ガスだと?」
「いつのまに──……」
フルプレートどもも、グググッとなんとか立ち上がろうとするが、無理無理ー。
「いつの間にも何も、ずっ~とだってば」
そこに勝手に入ってきたのは君らー。
あはははははー。
「あー、あとさ。そこの鎧君たちさー。
「は?」「え?」
思わず顔を見合わせるフルプレートの二人。
「多分、君らくらいなら解毒剤くらい持ってるんだろうけどさー」
あははは。
そんな重そうな兜をしている中でどーうするのか……あーはははー。見もの見もの~。
「くっ! な、舐めるな!」
しかし、さすがにベテランだ。
思った通り、こんな時の対策を取っていたのか、解毒剤はやはり持っていた。
だが、それを腰のポーチから引き出すが、動きが遅い!
オマケに、彼らはフルプレート! 薬を飲むには、一度メットをあげなけれならないのだが、
「ばーか。そんな、何手順もあるのを待つわけないじゃーん!」
スッカーーーーーーーン!!
しっかり握り(?)しめた舌撃&グラハム君ソード(今名付けた)を、思いっきり振り上げると、無防備にメットをあげたフルプレート君の脳天にお見舞いしてやった。
「げぶっ?!」
「シ、シュウジーーーーー!!」
うわ……、いったそー。
刺しといてあれだけど、全力でぶち込んだもんだから、ブチュと、目が飛び出て血の涙が出てるー。
うん。これなら、間違いなく即死だろう。
「き……、貴様、よくもシュウジをぉぉぉお!」
いや……言ってる場合?
次は君の番──……ああーん??
「……なに? 君からやられたいのー?」
残るフルプレートを仕留めようとしたところに、
ゆっくり起き上がる野武士の野郎が、血を吐きながらも立ちはだかった。
「はぁ。順番くらい待ちなよー」
「ぐぬぬ、まだだ。まだ終わらんよ……」
はーん?
「刀も握れないくせに何ってんだ──って、ちょ!」
バコーン♪
「あいだー?!」
い、いだだだ?!
お、おい。
コ、コイツ何してんのー?!