ミミック転生~人食い箱の食味記録~   作:LA軍

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第49話「VS Aランク」

「ぐわぁぁああ!」

「あっはっはー!」

 

 口から大量に吐き出しただいたい3、4人分くらいに肉片やら骨が胃液に交じって命中ッッ!

 

 そして、わかったぞー!

 

(コ〜イツ、ダンジョンに不慣れだな?)

 

 だからアホみたいにこの狭い空間で刀を振り回すし、間合いの詰め方が雑なんだ!

 ははっ、勝機みたりー。

 

「大方、野外剣術は得意なんだろうけどさー」

 

 あいにく、ここはダンジョン内で「私」部屋だ!

 そして「私」の胃袋でもある。

 

「そこで簡単に勝てると思うなよー」

 

「く、くそぉ!」

「サンダースどの!」

 

 おぉ~っと、フルプレートアーマーどもめ、ついに見せたな、隙をぉぉ!

 そして返せ!!

 

「それは晩飯だって言ってんだろー!」

 

 サンダースに前衛を任せて、学生を逃がそうとしていたフルプレートアーマーどもが、

 彼が目つぶしをくらったのを見て、わずかに動揺していた。

 

 なので、すかさずそいつらめがけて再びの舌撃をくりだしたッ!

 

 ──もちろん武器付きだ!

 

「死ーねー!」

「馬鹿め! 貴様の攻撃など効かんと言ったー!」

 

 しかし、立ち直りが早いッ!

 

 こっちが舌撃を繰り出しても、連中ときたらよほど防御力に自信があるのか、躱すそぶりも見せずにその一撃を受けやがった。

 

 ……だが、それが誤りだ!

 

「がひっ?!」

「ヒットー!」

 

 予想通り、呆気なく貫かれてやんの──♪

 

「ぎゃはは、ざまぁー!」

「な?! ば、馬鹿な?!」

 

 膝をつく仲間を見て驚愕しているフルプレートアーマーどもが二匹。

 

「あーっはっは。舐めてかかって、まともに受けるからだよー」

 

 そして、あのフルプレートを貫いたタネ(・・)はそう大したものじゃない。

 

 別に鎧の隙間を狙ったとか、

 突然、剣術に目覚めたとかそういうんじゃなくて、たたの武器の差(・・・・)だ。

 

「どーだい。思った通り、これはいい剣(・・・)だろー!」

 

 舌に握られているのは、ギラリと輝く小さな剣。

 

 それは、あのグラハム少年が使っていた上物の剣(・・・・)だった。

 ガキが「私」の舌を切った時点で、かなりの業物だと思っていたけど、やっぱりそうらしい。

 そいつを思いっきり突き刺してから引き抜いてやると、フルプレートアーマーの一匹から、ビピュ~と面白いくらいに血が噴き出した。

 

「おー、うめぇうめぇ」

 

 舌で血を拭ってみえると、まー美味しい。

 やっぱ、つえー奴の血はうめーわ。

 

「プ、プルート?」

 

 その後、力尽きたのか、ドシャリと湿った音を立てて倒れる、フルプレートアーマーのプルート君に動揺する、仲良しの鎧たち!

 

 けけけっ、てめぇらなんかもう怖くねーぞ。

 

「きゃっぁああ!」

「いやぁぁああ!」

 

 そんなフルプレートアーマーの無残な姿に、救出されようとしていた学生が悲鳴を上げる。

 なのでついでに……。

 

「お前らは。逃げたバ~ツ♪」

 

「ひっ!」

「げぅ!」

 

 返す刀で──というか、プルート君を貫いたついでに業物の細剣でガキの首をかき切ってやった。

 これで逃げられまーい。

 

「な! き、貴様ぁぁぁ!」

「あはは、ひとの飯を取るからそうなるんだよー」

 

 ほらあれだよ、あれ。

 食べ物(・・・)の恨みは恐ろしいって言うでしょー。

 

 ってことで、すかさず、

 

「うりゃー!」

「ぬっ!」

 

 キィン!

 

 「ありゃ?」

 

 しかし、敵もさるもの。

 動揺をみせたフルプレートアーマーのリーダー格を狙い、業物の細剣で凝りかかるが、さすがにこれは弾かれてしまった。

 

「ひょー。や~るぅ♪」

 

「くそ! プルート、プルート!」

「よせ、シギンズ!! 諦めろ!」

 

 おっ!

 さすがベテラン──切り替えが早い。

 

 ジナちゃん以来の切り替えの早いパーティを見て、少し見直すが、それでも仲間を失った動揺は見逃せなかった。

 なにより、3人で死角を隠す戦闘スタイルなのか、いまや隙だらけだ。

 

 

 ……だが隙がない(・・・・・・)

 

 

 なぜなら、コイツがいるからな──。

 

「……君ぃ、復帰が早いねー」

 

 そう。

 コイツこと野武士のやつがここで視力を取り戻し再び参戦。

 

「ふんっ! (しかばね)の吐しゃ物か。……舐められたものだ。プッ」

 もぐもぐとしていた口から骨片を吐き出しつつ、ニヤリと口角を歪める野武士。

 

「……わ、わーお、もしかして食ったのー?」

 

 顔面直撃──間違いなく口にも相当量が入ったはずだが、まったく意に介さない野武士。

 どうやら、コイツには目つぶし以外の効果はなかったらしい。

 

「すげー。普通の冒険者なら、死体が目とか口とかに入った時点で、結構動揺するんだけどねー」

 

 顔に直撃した学生ビームが口に入ったというのに、コイツ全然物おじせずに立ったやが~んの。

 

「笑止ッ。肉など、何を食おうと同じことよ──」

「やー。人間は一味違うと思うよ」

 

 文字通り味がねッ!

 

「とくに学生肉は超美味いぞー!」

 

「ふっ! 語るに及ばず──」

「語る気もないけど、ね──!

 

 ま、実際に食ったかどうかは知らないけど、普通は吐き気を催すものだが、コイツは違うらしい。

 むしろそれでスイッチが入ったかのように、もはやこちらをただの魔物と侮るような空気は一切なかった。

 

 そして、次の瞬間、壮絶なつばぜり合いが繰り広げられる!

 

 ──ドンッッッ!

 

「おぉぉぉおおおお!」

「うおーーーーーー♪」

 

 激突からの剣戟!

 

 そして、目にもともらぬ打ち合い。キンキンキンッ! と、頭上で繰り広げられる高速剣撃の乱舞!

 

 向こうは太刀を刺突し、時に振り下ろし! 時に逆袈裟斬り。

 そして、こっちは舌撃でそれを迎撃する。

 

 もっとも、迎撃なんて言ってはみたけど、その実、野武士の攻撃の大半は「私」のボディを抉りまくっている。

 

「ぬぅぅぅぅうう?!」

「いってーーなーー!」

 

 ……まぁ、ご覧の通り(えぐ)られているだけだが、軽口を叩けるくらいには平気だ、

 なにせ、宝箱ボディに「刺突」はそこまで効果はない。

 だって、喋るし、痛がってはみせるものの、その実態は宝箱だからねー。

 

(ま、構造さえ無事ならなんとでもなるものさッ!)

 

 なので、危ないのは大上段からの「振り下ろし」のみ……ッ!

 それさえ気を付ければ、正直、刺突はすべて無視して、振り下ろしのみ迎撃しているというわけだ。

 

 これなら相手が格上でもなんとかなる!

 

 それに、こっち1×1のマスの中に入っているので、実は剣戟のほとんどは通らないのだ。

 

「ぐぬー?! 貴様っ、不死身か?!」

「そ~んなわけないでしょー!」

 

 ただ、ちょ~っと耐久力と回復力が並み以上なだけさ。

 

 なにせ、ついさっき魔力たっぷりのガキども食いまくったおかげで、現在進行形で満腹効果による回復ボーナスがついているので、攻撃を食らった瞬間、片っ端から治療していってるわけよ。

 

「ひゅー! どうだい? 子供たちが「私」を支えてくれてるよー♪」

 

 子供たち(ガキ)の血肉に感謝♪

 なによりグラハム君。君にはとくに大感謝。

 

 ──この剣(・・・)が圧倒的に有利で刃こぼれ一つしねー!

 

「いぇー! グラハム君、ありがとー!」

 

 この剣が超つぇー。

 めっちゃ、いい拾い物だったなー……いちちち!

 

「ぬ、ぬぅぅ! 一撃が決まらんっ!」

 

 そりゃそうだろう。

 天井にあたることを気にして小ぶりに振った一撃なんて、勢いも速度もないから剣で防ぐのは容易だ。

 

 こちとら、ミミックだぞー?

 

 ここから動けないんだから、重心は遥かにうえ!

 オマケに、野武士の攻撃は単調にならざるを得ない。

 

 なにせこっちは1×1のマスの中に鎮座しているのだがら、どうしても野武士の攻撃軌道は限られて来る。

 対して「私」は、あの振り下ろす一撃にさえ警戒していればいいのだから、簡単簡単!……いってー!!

 

「だけど、全然よゆぅぅぅぅうー!」

 い~や、

 マジでガキんちょ踊り食いしといてよかったー♪

「こォオオのぉぉぉおおおおおおおお!!」

 

 回復ボーナスで傷を治しながらの、

 狭い部屋の中で繰り広げられるすさまじい刃の打ち合い!

 

 ──だが、いくら回復し、いくら決定打を防げると言えど、いずれ野武士のほうに軍配が上がるだろう。

 

 なにせ、「私」は防御一辺倒!

 そして、敵は斬撃はともかく刺突は命中させられるのだ!

 

 このまま押し切られれば、

 死ぬ、やられる、負ける──────…………。

 

「────……な~んて、思った?!」

 

 ガンッッッッ!

 

「ぬ?!」

 

 何十撃目かわからない斬撃が、ついに()れた。

 しかし、それは今までのそれではなく、グラハム君の剣によるはじき返しでもない。

 

 ただただ、

 野武士自身の空振り(・・・)であった。

 

「お、きたきた♪」

 

「ぬ?! こ、これは一体──……!」

「サンダースどの!?」

 

 そして、ついに膝をつくサンダースこと野武士に呼びかけるフルプレートの二人。

 しかし、彼らもまた援護に駆け付けることなく、膝をつく。

 

「な、がはっ……こ、これは──?」

 

 どうやらフルプレートの中で血を吐いたのだろう。

 目のスリット部分がドロリと血で汚れる。……つまり、ようやく効いてきた(・・・・・)のだ。

 

「ふっふっふー♪」

 思わず、にんまりと笑みがこぼれる。

「ぬぅ!……き、貴様か?! い、一体なにをした!」

 

 野武士も吐血し、刀を杖に立っているのがやっとのあり様だ。

 フルプレートどもも順次膝をつき、倒れていく。

 

 あはッ♪

 

「やー。何をしたっていうか、ずっとしていたというか────……」

 

 気づかなかった?

 

「……ここ、すっごい毒ガスで充満してるんだよ?」

 

 魔法使いなら多少は耐性があるようだが、

 近接専門は思った通り、耐性が低いらしい。

 

 学生の中でもガスに倒れる奴とそうでなう奴がいるから、もしやと思ったが、どうやら間違っていなさそうだ。

 

「ど、毒ガスだと?」

「いつのまに──……」

 

 フルプレートどもも、グググッとなんとか立ち上がろうとするが、無理無理ー。

 

「いつの間にも何も、ずっ~とだってば」

 

 そこに勝手に入ってきたのは君らー。

 あはははははー。

 

「あー、あとさ。そこの鎧君たちさー。その状態(・・・・)で、どーやって解毒剤とか飲むのー?」

「は?」「え?」

 

 思わず顔を見合わせるフルプレートの二人。

 

「多分、君らくらいなら解毒剤くらい持ってるんだろうけどさー」

 

 あははは。

 そんな重そうな兜をしている中でどーうするのか……あーはははー。見もの見もの~。

 

「くっ! な、舐めるな!」

 

 しかし、さすがにベテランだ。

 思った通り、こんな時の対策を取っていたのか、解毒剤はやはり持っていた。

 

 だが、それを腰のポーチから引き出すが、動きが遅い!

 オマケに、彼らはフルプレート! 薬を飲むには、一度メットをあげなけれならないのだが、

 

「ばーか。そんな、何手順もあるのを待つわけないじゃーん!」

 

 

  スッカーーーーーーーン!!

 

 

 しっかり握り(?)しめた舌撃&グラハム君ソード(今名付けた)を、思いっきり振り上げると、無防備にメットをあげたフルプレート君の脳天にお見舞いしてやった。

 

「げぶっ?!」

「シ、シュウジーーーーー!!」

 

 うわ……、いったそー。

 刺しといてあれだけど、全力でぶち込んだもんだから、ブチュと、目が飛び出て血の涙が出てるー。

 

 うん。これなら、間違いなく即死だろう。

 

「き……、貴様、よくもシュウジをぉぉぉお!」

 

 いや……言ってる場合?

 次は君の番──……ああーん??

 

「……なに? 君からやられたいのー?」

 

 残るフルプレートを仕留めようとしたところに、

 ゆっくり起き上がる野武士の野郎が、血を吐きながらも立ちはだかった。

 

「はぁ。順番くらい待ちなよー」

「ぐぬぬ、まだだ。まだ終わらんよ……」

 

 はーん?

 

「刀も握れないくせに何ってんだ──って、ちょ!」

 

 バコーン♪

 

「あいだー?!」

 

 い、いだだだ?!

 

 お、おい。

 コ、コイツ何してんのー?!

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