ミミック転生~人食い箱の食味記録~   作:LA軍

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第50話「武者をむしゃむしゃ」

「て、てめー! 「私」の頭(?)を、がっちり抑えて蓋を閉めて、なんのつもりだよ?!」

 

 いッだだだ!

 挟まってる挟まってる!

 

「し、舌! 舌あぁ! し、舌が挟まってるからー!」

 

 いッだだだー!

 

(コ、コイツ、刀なしで直接(・・)宝箱の口を閉め(・・・・・・・)に来やがったぞ?!)

 

 おまけになんてこった。

 

「くそー! ふ、蓋が閉まって、し、舌が挟まって、潰れるって!」

 

 いだい、いだい、いだーい!

 

「笑止──潰してやるのよ!」

「なー?!」

 

 なんちゅうことを!

 酷くない?!

 

 「私」がいったい何をしたっちゅうねん!

 

「うぉぉおお?! ど、どけー!」

「くくく! 最初からこうしておればよかったわ!」

 

 それはそう!

 だけど──どけッ!

 

「サ、サンダースどの!」

「引けッ、シギンズ! 此度(こたび)の戦は負けじゃ。……拙者もろとも見捨てて、その子だけでも連れて逃げよ!」

 

 な?!

 

「そ、それはダメだって! あ、ちょ、いたたた!……どけよ!」

 

 最後に残しといた一番おいしそうな子がー!

 丸飲み予定の子がー!

 

「させるものかよ……ぬぅぅん!」

 

 くっそー!

 

 知らなかったー……ミミックの身体の構造って、閉める力は人体を一撃で引きちぎるくらいはあっても、開ける力が弱いのかぁぁあ!

 

 あと、単純にコイツがつぇーんだよな!

 

「サ、サンダース殿……すみません!」

 

 ガタガタと口をあけたり閉めたりして、なんとかわずかに見える隙間から見れば、

 あのフルプレートの野郎が、兜を脱ぎ捨て解毒剤を飲み干すなり、仲間のそれをも拾い上げて、グラハム君の死体を抱きしめたままの少女に含ませている──あ、ああ、ちくしょー!

 

「ごらっぁあ! どけぇぇ!」

「ふ、ふふふ! どうやら、開ける力はさほどではないようだな!」

 

 あーそうだよ!

 だけど、こっちも分かってんだからな──……!

 

「テメェもそろそろ限界だってなぁぁあ!」

 

 あの毒ガストラップの威力がどれほどかは未検証なので、はっきりとは言えないが、それなりに強力なのは間違いない。

 

 でなければ、このベテランが膝をつくこともないし、

 なんなら体の自由を奪われることもない────……つまり、コイツは徐々に死につつあるのだ!

 

 だから、一瞬力が弱まった隙をみつけて、バッッッカーーーーーーーーーーン! と口を開いて、サンダース何某を跳ね飛ばす!

 

「おらっぁぁあ!」

「ぐわーっ!」

 

 そして、ついに口と舌が自由になった瞬間を見計らって、素早く剣を握りしめると、逃げるフルプレートアーマーのシギンズ君とやらを狙う。

 

「待ぁぁぁてーーーーーー!」

 

 うぉぉぉお、

 舌撃&グラハム君ソーーーーーーーード!!

 

 ……ついでに、その腕に抱いているぅうう、

 

「ガキぃぃぃ、置いてけぇぇえええ!!

「ぐがあっぁああッ?!」

 

 よっしゃー!

 

 確実に当たったと思った……!

 だのに、なぜか舌撃がそれてしまった。

 

「はぁぁあ?! な、なんでぇ!!??」

 

 おかげでシギンズの心臓を狙った一撃が、下に大きくそれて奴の脚を一本切り落としたに留まった!

 

「させんっ!」

「ちぃぃ……! ま、またお前か!」

 

 見れば舌撃を逸らすために、野武士が妨害してやがる。

 

 くそっ。

 

「だけど、まだいけるぞー! あと一撃すればぁぁあ……!」

 

 残る脚はあと一本!

 

 そんなケンケン足で逃げ切れるものか、そのまま無様に這いつくばれー!

 

「トドメェぇええ!」

 

 足を失いながらもヨロヨロと逃げるシギンスの背中を狙うと振り下ろす!

 

 

 ……だーのに!

 

 

「させんといったぁぁぁあ!」

「だぁぁ?! て、てめぇぇえは、しつけーよ!!」

 

 なんと、先の一撃の時もそうだが、まだまだ往生際の悪い野武士ことサンダース何某が、今度は舌を直接掴んで妨害していやがるではないか。

 

 くっそ!

 コイツから仕留めればよかったか?!

 

 でも、そうすると両方逃がすし、

 おかげでシギンズの野郎が──ガキとぉぉおおおおおおおおおお!!

 

 

 

 

「ぅがぁぁああああああああああああああああああああああ」

 

 

 

 畜生ぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!

 

 逃げんじゃねぇぇぇえええええええええええ!!

 「私」の飯がぁぁぁああああああああああああああああああ!!

 

 ──ドシュン!!

 

 しかし、最後っ屁に放ったボウガンにも、叫び声にもまったく一瞥(いちべつ)すらくれずに、片足を失いながらもシギンズの野郎が部屋の向こうへと消えていくではないか!

 

  クッソがー!!!

 

 よ、よりにもよって、

 よりにもよって、あの一番うまそうな女のガキを一匹連れてぇぇえええ!

 

「ああああああああああ! くそ、くそくそくそくそぉぉお!」

 

 クソがぁぁぁあああああ!!

 

「は、はははははは! わはははははは!」

 

 笑ってんじゃねぇぇえ、ごらぁっぁああ!!

 

「ごぶっ!」

 

 ふざっけんな、この筋肉だるまの野武士の武者やろうがぁぁぁあ!

 

「いいだろう! 武者なら武者らしく、」

 

 ムシャムシャしてやらぁっぁあ!

 

「わは! わははははははははは!」

 

 どうやらよほど爽快だったのか笑い続けるサンダース何某。

 その笑い声に混ざるように、ズルズルとしたおぼつかない足音が遠ざかっていく。

 

 それはどうしても追いかけられない距離。

 

 このダンジョンに、

 そして、この部屋に捕らわれたミミックにはどーーーーうしても届かない恐ろしいまでの距離だった。

 

「くっそがぁっぁあああああああ!」

 足先から、ちょ~~~っとずつ食ってやるわー!

「わは、わはははははは────ぎ、」

 

 

 ぎぃやぁっぁああああああああああああああああああああああああああああ!

 

 

 ……そして、怒りに任せた「私」の齧りつきに、笑い声が絶叫に代わるのはそう遠くはなかった──。

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