「おーい、お嬢ちゃ~ん」
ザクザクザク!!
「ほーら、戻ってこないとお兄ちゃんが大変なことになるぞー」
ザーク、ザクザクザクザク。
「ほらほら、半分になっちゃうぞー」
ざっくり……。
「……ちっ」
『ちっ、じゃないわよ……相変わらずドン引きよ』
あ、出たなミユちゃ~ん
ってことは──……。
「ちっ」
『だから、チッじゃないわよ! なんでその子、ズタズタにしてんのよ!』
うっせー。
おびき寄せてんだよー。
「逃がしたガキが、この子の兄妹っぽいからさー」
お兄様て言うてたしな。
手も繋いで仲良さそうだったし──。
『きょうだ、いって……。あ、アンタさいてーよ』
「あーん?」
なんだこのガキ。
今日の「私」は機嫌が悪いんだ。
「んなことより、あのガキとフルプレートアーマー野郎はもういないのな?」
まぁ、
コイツがいる時点で近くにはいないのはわかる。
『え? あー、ざ~んねんね。見てないけど、この近くにはいないわよー。うふふ』
「あっそ」
うーわ。
むっかつくわー。……何そのドヤ顔?
「まぁ、君が出てきた時点でわかってたけどねー。……は~あ」
しょうがない。
あのガキのことは惜しかったけど、あの傷ついたフルプレートアーマーだけではダンジョンの外まで逃げ切るのは無理だろう。
必然、あのガキもその場で死ぬことになる。
なにせ、最後に打ち込んだボウガンには
その辺でくたばってるだろうし、それで良しとしよう。……悔しいのはそれが食べれないこと──。
(あーあ、そのへんのゴブリンの餌かー)
惜しいことをしたな。
「私」が一番おいしく食べる自信があるのにさー。
蒸したり、焼いたり、丸飲みしたり……は~ぁ。
「あのガキが一番豊富な魔力を持っていたし、なにより小さくて美味そうだったんだよー」
だから最後までとっといた。
それが仇になった。
ついでに言えば、フルプレートも中々に鍛え上げられていて、ポイントも高そうだったのに──……はー。
初めて目の前で獲物を逃がしてしまった。
しかも、滅多に食えないガキも一匹──……とほほ。
『なに残念がってんのよ。これだけ殺したらもう十分でしょ……。しかも、あれだけ言ったのに無茶苦茶いじめてたし』
はーん?
「──……いじめてないよ?」
『丸飲みしてたじゃない!』
え?
あー。あれか。
「……え? そこも否定すんの?」
じゃあ、どうやって食えと?
『するわよッ! 皆、めちゃくちゃ悲鳴上げてたでしょ! 痛いのよ! あんたいっぺん自分の口見たら?!』
いや、知らんがな……。
そんなこといわれても、そういう身体なんやし、どうせっちゅうねん。
「そも、どうやって見るんだよ。まぁ、なんとなくわかるけど──」
自分の身体だしある程度は分かる。
胃の中はだいたい人間が2人無理やり入れれば入るくらいの大きさで、喉まではワーム類のように無数の牙とも歯ともつかぬものがついている。
これは固い装備と骨ごと人間を砕くためのもので、圧搾機に近い。
そして、もちろん、牙は内向きでで一度飲み込んだ獲物を逃がさない構造になっている。ここから出れるとしたら、「私」が任意で嘔吐したときだけ──……まぁ、こら痛いわな。
『だったらぁ!』
「うっさいなー。喉越し楽しんで何が悪いの?──だいたい、なに? 君らは人間はどうなの、牛とか豚とか羊を食べる時に食べ方を一々お伺いたててんの~~~~ん?」
『そ、それは──』
ふんっ。
くーだらねぇ。
食うか食われるかの違うだろうに。
「私」だって、冒険者に負けたら食われるの!…………いや、食われはしないか? ま、それはどうでもいい。
「だったら黙ってなよ──それより、見てよこの量」
えっへん!
頭(?)を切り替えて、狩りの成果を誇ってみせよう──どうだ、この大漁の学生の山ぁ!
わーっはっはっは!
これから一か月は学生肉食い放題だぜー。
「まさに学食!」
──学食が何か知らんけど。
「まぁ、さすがにこんな機会滅多にないだろうから、大事に食べるけどねー」
ゆっくり一人ずつ、
たまには半分にしてー。
『大事にって……あーあーあー。親御さんが大切に育ててた将来有望そうな子がこんなに……さいってーの絵面ね』
そうかね?
最高の間違いでは?
だってみてよ、この35……や、34匹の学生を!
一部食べちゃたけど、素晴らしいと思いませんかー!
「あと、ほらほら、みてみて! こっちの先生達のほうも魔力たっぷりで美味しそう!──しかも、なんとひとり3000ポイントくらいあったよー!」
『見えないわよ』
あー。そうだったっけ?
まぁいいや。それより、これこれ!
たしか、メリッサ先生とかカーデル先生とかそんな感じの二人。
あと、こっちは名前はクレイン主任とかなんとかさんも! 皆して、ポイントうまうま! 味も良さそうだし、こっちも楽しみなんだよねー。
「あとは、アイツかなー」
『アイツ?』
「ほら、あのむかつく──あの野武士みたいなやつ。あれも美味かったわー」
武者なだけに、
足先から、ゆ~~~~~っくり、ムシャムシャしてやったら、うめぇのなんの!
なんかこう──……肉ぅッ! って感じの味がして、ちょっとびっくり。
正直、今までのお肉とはなんかこう……種類もグレードも違う感じ?
『あー。あの人ね。……はー、そりゃそうでしょ。見てたけど、あれAランクよ』
「Aランク?」
……A5のお肉的な?
「あー。どーりで」
『いや、肉質の話はしてないからね』
わ、わかってるよ!
「まー、たしかに強かったなー」
正直、今回勝てたのもたまたまだ。
あのA5牛肉ランクの霜降り野郎がダンジョン慣れしていなかったことと、
救出任務を負っていたことが、奴等にとって枷となったのだろう。
それがなければ、おそらく負けていた。
実際、あれくらいに経験がある奴なら、
純粋な討伐任務だったならば、すぐに安全地帯からの攻撃を思いつくだろうし──なんなら、もっと大掛かりな攻撃を繰り出すこともできたはず。
……それをしなかったのは
結果、それで負けたのだが、それでも一人を取り逃がしている────……ぐぎぎぎぎ。
『な、なによ? 歯ぎしり?』
「うん。ちょっと思い出しむかつき」
あの件については反省しかない。
とはいえ、勝てたのラッキーによるところが多いのは事実。
実際、
そしてラッキーといえば、
「──あと、この剣がおかげかなー……」
チャキリッ。
舌で拾って掲げてみせたのは、グラハム君ソードだ。
正式名称は知らんけど、
軽くて、鋭く、頑丈──。
最近はミユちゃんナイフがお気に入りで使ってたけど、こっちの威力は群を抜いて強かった。
切れ味しかり、
耐久性しかり、
これがなければ、サンダース何某に押し負けていたに違いない。
「そう考えるとつくづく運がいいよねー」
『……むしろ、つくづく皆の運が悪すぎるのよ…。おかげさまで大惨事よ……なんで、こんな──』
んーー?
……泣いてんのー?
「ミユちゃんは、他人の事なのに、気にしぃだねー」
誰が食われようが、どーでもよくなーい?
それより、ぶちまけた肉片回収しよーっと。
あーん……っと。
『ばかっ! 子供が死んだのよ、子供が! そ、それも、こんな……こんなひどい死に方──』
「酷い死に方?……あー」
ミユちゃんの前には、まだピクピクしてるリーンちゃん。
ゾンビ化して槍罠で貫かれたとはいえ、さすがはアンデッド……しぶとい。
まー、なかなか死なないというだけで、自動回復とかはしないみたいだけどね──。
「今更、な~に言ってんのさー。君らだって、子牛とか子羊とか食べるんでしょー」
『そ、それとこれとは──』
はいはい。
同じ同じ。
「──それともなにー? 子羊がやめてっていったら、やめるの~~~ん?」
やめないっしょ?
『ひ、羊はしゃべらない!』
あああーん?
「……ふーん。なんだ、喋るからダメなんだー?」
そりゃ都合がいいことでー。
『そうよ! ア、アタシだって、羊が喋ったら食べないわよ!──なのに、アンタは言葉が通じて意思だって通じるのに、よく食べれるわね!』
「やー。
その方が怖くなーい?
『それが人間なの!!』
「ほーん」
ま、、君はゴースト(?)だけどね。
っと、それはそれとして──。
「じゃーさー。言葉が通じない外国の人は食べるんだ? 他種族はー? それとも、ゴブリン、オークにオーガにトロールさんはー?」
もっと言うなら、
乳児に、ボケちゃったお爺ちゃんお婆ちゃんに、失語症の人とかどーすんの~~~~ん?
『そ、それっは……』
はいはい。
答えに詰まるっと──ま、そういうことだよ。
「結局、価値観の違いだよー。羊や豚を食わない国の人だっているんでしょ? あるいは犬や猫は? 虫にクジラにタコやクラムボーン!」
『…………』
や。
クラムボンとかクジラがなにか知らないけどねー。
「つまり、「私」は人間を食べるし、君は食べない──それだけじゃない?」
『で、でも……だからって、わざわざ苦痛をあたえなくったって……』
んー。
そこかー。
51話目です
毎日12時ちょっと前に更新予定!
次回、
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