「なら、スパッと殺して食うならいいの?」
『……そうは言ってない』
言ってる言ってる。
ほぼ言ってるよ。
「言っとくけどさー。「私」だって別にわざといじめてるわけじゃないよ? 弱い者いじめや拷問趣味もないし。……そりゃ、追いかけまわすのはちょっと楽しかったし、踊り食いするのは最高だよ?」
ガキが喉の奥で暴れて、圧搾されて新鮮な血を噴いてさぁ──泣いて喚いて悲鳴と臓物を口からびゅーびゅー吹き出すのをさー、
こう、た〜〜っぷりと見て味わうのはま~た格別なんだ。
へへッ。
「……それが痛いって言われてもそういうもんだし、しゃーないじゃん」
やめるつもりは毛頭ない。
だいたい、痛いゆーても数秒やん?
足からガジガジされた青忍者とか野武士よりは短いよ? あれは数十秒くらい叫んでたしねー。
……まぁ、たまにガキもゆっくり咀嚼してもいいかもだけどー。
「どっちにせよ死んだら同じだよー。──カマキリだってバッタを捕まえたら目や頭からバリバリ食うじゃん。……つーか、人間だって、ゴブリンとかに捕まったらどうなると思う? 奴等に命乞いして聞いてもらえると思ってんの~?」
ないない。
むしろ面白がって、ぜ~ったい余計にひどくなる。その点「私」は
『……言いたいことは分かるわよ。アタシだって冒険者だし、一度死んだから、なおのこと分かる。──でもさ、アンタは
説得って、君ぃ。
ボカぁ、人食い箱のミミックだよ……?
人間食うな言われたら、存在意義失うがな──……あ、失ってほしいのか。
ホント難しい子だなー。
「はいはい。でも、言葉が通じてコミュニケーションができるからって、それはそれ、これはこれだよ──……君だって生前、急に「肉たべるなー!」とか知らん奴にいきなり言われたらどうしてたのさ?」
──多分、言うことなんて聞かんでしょー?
『そ、そりゃー』
「でしょ? そーいうこと。まー、悪いけど諦めてよ。「私」は人を食う、そんでチビっ子は丸飲み」
これはたまにやりまーす。
だって、小さいのが悪いのだ。
一口サイズでパクッと飲み込めたら、そりゃー飲むでしょ? 喉越しを楽しむでしょ?
それが一番味がいいのだからしゃーないやん。
むしろ、もっとこう……喉で一生懸命に暴れてほしい。リーンちゃんは、すげー抵抗してて最高だったぞー♪
「……ま。惜しむらくは、ダンジョンにチビっ子は滅多にいないことだけどねー」
だから、なおさら捕まえたら丸飲みするのだー♪
『はー……無駄みたいね。だけど、ほんとうにわずかでも可愛そうだと思ったならやめて』
思わない思わない。
絶~対思わないし、
「やめないやめない。絶~対やめない。……でも覚えとくね」
ミユちゃんは丸飲みが嫌いっと──。
『はぁ。もうそれだけでいいわ……って、さっきからなにしてるのよ?』
ん?
あー……。
「これ? ほら。いっぱい捕まえたじゃん? 35……34匹の学生をさ」
あと、雑魚の冒険者が6に先生が3。
そんでベテランのAランクが1にBランクが2匹ー……。
「で、合計で他もあわせると40匹くらいのお肉があるわけ。あ、すでに食べた分はあれだけど」
『……えっと、それと新しい家具とか発注するのに何の意味があるの? あと、なんか変なトラップ買ってるし……それ、
うん。それそれ。
ちなみにミートフックってのは、
食肉工場とかにある、天井からぶら下がってる「J型」の鉄の器具ね。
「さすがよく知ってるねー。実は、この煮え湯はトラップも兼ねてるんだよ。今回は調理用に買ってみたけど──」
『調理ってアンタ……』
調理は調理さー。
ほら、見てみて。これなんてそのまま使えそう。
「ほらこれ。『煮え湯』ってトラップなんだけど、これグツグツの油が入った鍋なんだよねー。間抜けが罠にひっかかると、このグツグツした中身が、上とか下からドバッ! って感じに吹きかかるの」
『えっぐ……』
んねー。
ちなみに、これに似たタイプで、ガストラップのやつで霧状になった脂が噴出タイプのもある。
もっとも、それをわざわざ買うくらいなら鍋タイプのほうが威力が強いだろう。ガス噴霧のほうは散布域が広いというメリットはあるのだが、どっちかって言うと、火魔法の使用を防いだり、火炎系の罠とのコンボ用らしい。
だから、今回は鍋タイプを購入。
こちら、お値段なんとポイント:2800!──たっかーい。
「んで、これらを使って──とりあえず、揚げて食べようかなーって」
『あ、揚げるって……。へ、変なとこに情熱注ぐわね、アンタ。っていうか、子供を調理って……──さいってー』
うっさいなー。
仕留めた以上ちゃんと食べないとそれこそ可愛そうでしょ! ほら、命の畏敬の念──とかなんとか。
『っていうか、何人食べるつもりよ!? ここに子供だけで10人くらい置いてるけど……これ全部食べるの?!』
「いやいや、無理無理! いくら「私」でも一日一匹が普通だよ」
もっとも、一日一匹なのはさっきまでの話。
Aランク含む戦闘を繰り返したせいか、どうやら多少能力が上がったらしい。その影響もあってか、なんか胃の要領が増えてる気がする。今なら、3、4人いけるかもー。
(……ま、あくまで気がするだけだし、未検証だけどね)
それに無理して食べることもない。
詰め込むと入るとは思うけど、吐いちゃうともったいないし。……貴重なガキ肉だもん。
『なら、なによこれ!』
「だーかーらー、今言おうとしてんじゃんー。調理して食べる分は別にしてさ、まずはストレージに仕舞おうと思ったわけよ!」
『いやいや、だから仕舞ってなくない?!』
うるさいなー。
わかってるよ。最後まで聞けや。
「これでも、ある程度片づけたほうだよ?」
──部屋の整理整頓は大事。
『ど・こ・が・よ!』
「だから、それを説明してあげてんのー」
ホント、人(?)の話を聞かない子だなー。
「ほら。……見ての通り、死体を置いたままにすると警戒されちゃうし、匂いも残るでしょ?」
『そりゃそうよ』
「うん。だから、それは「私」としてもそれは困るわけ。いつまた獲物が来るかわかんないし、匂いとかで警戒されるのは困るのよ。なので、そうなる前に、なるはやで片づけたいのー」
獲物が来るタイミングはいつも突然だし、
なんか毎回毎回タイミングが悪いのだ。
『ならさっさと──』
「なんだけど、ここで問題発生ー!」
『へ? 問題』
イエス。
「──で、ここでミユちゃんたーいむ!」
『ミ、ミユちゃんたいむ……』
はい、
問題です!
「ミミックの
『へ? ストレージって……あれよね? アンタの胃袋とは別の入れ物』
そそ。
いわゆる異次元BOXとかアイテムBOXってやつ。中に骨とか装備とか生徒肉が入ってまーす。
『──えー、無限じゃないのー?』
ぶぶー!
「違うんだよなー。実は「私」もそう思ってたんだけどね、ほーれこの通り──」
オロロロロロロ!
『うわ! 吐くな吐くな!!……って、ゲロじゃなくて、装備に骨に……生徒たち?』
「う、うん……おぇ。……ほら、見ての通り全部は入んないんだよねー」
やー。
頑張って口の中のストレージに押し込んだんだけど、無理だったわ。
それでも、頑張ってなんとかして、
サイズの違いも踏まえつつ、詰めたり折ったり切ったり、骨から外したりして入れていたけど──2、30匹入るか入らないかくらいだった。
──あと、回収した装備とかもあるしね……。
『あー。それで困ってるんだー』
「ですです。いや、まいったねー」
せっかく新鮮なまま生徒の肉を保存できると思ったのに、
どうしても多少は
「でもさ、それはさすがにもったいないじゃん? せっかく捕まえたのにさー、捨てるとかありえない」
それに頂いた命への……あー、なんとかがあるし。
『敬意ね』
あーそれそれ。
「で。今回は、雑魚の冒険者どもはそのへんに置いといて早々に消費するとしかにしても、生徒達は美味しく食べたいので、なんとしても保存したいなーと思ったわけ!」
『……その執念はどこから来るのよ』
は?
食欲に決まってんじゃん。
「だから、入りきらない分には、ちょっと工夫を
『いや、待って! く、工夫って何よ?! な、なんかスゴイ嫌な予感すんだけど。……あ、それよりもさ、たまには見逃したらいいじゃん! ほら、アンタってば食べ過ぎだし、せめて遺体は遺族に返してあげるとか──』
「──なので、干すことにしましたー!」
いえーい!
パチパチパチ……!
『いや聞けよ。……って、干すのぉ?!』
「はい、干します。
そして、
こちら、まずは
「じゃーん。下処理かんせー」
内臓は先に食べて、お腹の中身を空っぽにし、
すっかり血抜きの完了したグラハム君を高々と──。
『え? じゃなに?! その子、サクサクしてたのって……血抜きも兼ねてたの?!』
「そうだよー。じゃなきゃ切る必要ないじゃん?」
悲鳴袋じゃあるまいしー。
『えー……。な、ならそっちの切り分けた子は?』
恐る恐るミユちゃんが指さすのは、片手間に解体したばっかの生徒がひとり。
「ん? あー。ほら、言ってたじゃん? 色々試したいって──で、さっきちょっと味見してみた」
じつは、ポイントで家具が買えるので色々できるのだ。
しかも今回は大幅ポイントゲットなので、贅沢三昧してみたの。
「具体的には鍋買って、まな板買って──」
あとはさっき買った煮え湯(油)の罠をさっそく使ってみましたー!
「で、煮たり焼いたり、蒸したりしてみたよ。もち、揚げ物も!!」
『結局試したのね……』
「そりゃね。他にも色々考えたけど保留中。だって、調味料がないじゃん?」
塩とか砂糖とか……。
『やめろやめろやめろ』
で、結論。
「──……結局、今んとこ一番おいしいのは、やっぱ生だわー」
つーか、味わかんね。
うまいはうまいんだろうけど、手間暇かけるようなもんでもないし──単純に面倒くさい。
水は給水所があるし、火も松明とかランタンのが使えるから何とかなるんだけど、費用対効果が悪いのです。
……だから多分、二度とやらない。
「あ、でも一応、冒険者の荷物に入ってた岩塩を使った塩焼きは結構うまかったけどね」
ジュー♪ ってやつ。
こっちはたまにやるかもー。
『やっとるやんけ』
そりゃね。
「ま、そういうわけなので、余ったお肉は全部干しまーす!」
『だーかーらぁっぁああ! そーゆーのヤメロッ』
えー。なによ?
そのへんに放置しろって言う気?
「やだよ。腐るし、もったいないじゃん」
まぁ、ミミックの生体的に腐っても食えそうだけどね──。
『──あ! それで、このなんか凶悪そうなミートフックなのね?!』
「あ、わかる?」
干すにしても、水分抜かないとダメだし、
塩なんてドロップしたもの以外ほとんどないし──干すのが一番!
「一応燻製も考えたけど、ダンジョンで燻製ってどうなん? って感じ」
なので、
手っ取り早く、余った生徒たちを捌いてミートフックに吊るしておこうかと。
「だからちょっとそこどいてー」
『どくもなにも、邪魔できないわよ!──つーか、1×1のスペースをさっそく有効活用すな!』
やー。
だってせっかく作ったしー。
もちろん、ガキ肉とかの数が多いから、あとで干物部屋は別に作るつもりだよ? 匂いが残るとバレるしね、それにポイントはたっぷり入ったからちょっと贅沢に部屋を作っても問題なーし──。
「というわけで、よっと」
足にフックをプスっと掛けて、ブラーンとさせる。
『……う、うわぁ、本当に干し始めたし──つーか、その子って』
「ん? あーグラハムくんだね」
ハムなだけに。
『…………やっぱり間違いないわ』
「なにが?」
主語がないよー。
『さっき、この子が着てた服と学生証がちらっと見えたけど──……この子、王族よ』