そして、そうとは知らないミミックはと言えば──。
「かんせー!」
いえー♪
『最悪よ……』
額に手を当てたミユちゃんを尻目に、
ダンジョン内での、「私」はといえば、あいかわらずゴーストなままの彼女を相手に歓声を上げていた。
やー。
だって、苦労したんだよ?
「──みてよ、これ!」
『見くない見たくなーい』
いやいや、そう言わずにさー。
結構頑張ったんだよー。
「味も……んッ。悪くない」
ブラ~ンとぶらさがった
いけるいける。
「むー。でも乾燥がいまいちかな。まだちょっとしっとりしてるね」
これはこれで美味しいけど。
本当はもっとカラカラになるはず。
「まー、本当は太陽の下でじっくりやるもんだしね」
しかし、そんなものはない。
なぜならここはダンジョンだからだ。
太陽はおろか、
電気もねぇし、
普通なら
そもそも太陽、見たことねぇ!
……だから、こうしてストレージに入りきらなかった生徒数名をどうにかして、ミートフックに吊るして干物にしていたんだけど──うんうん、なんとかうまくいった。
干物にするには、ようは水分を抜けばいいということで、なぜか消えない不思議な松明の照明を使ってじっくり遠火で炙ってみたのだ。
するとなんということでしょう~!
見事に水分が抜けて、いーい感じに干物っぽくなったではありませんかー。
もぐもぐ。
「ん~……。これこれ。これだよこれ! ソフトなスルメだと思えば、これもありだね。なんとなく、魔力の味も濃縮されてる気がするしー」
『気がするだけ気がするだけ。……ほんっと最悪の絵面だわ。一国の王子が干物に──』
おーじ?
あー、キングハム君だっけ?
『グラハム』
「あーそれそれ。うん、やっぱあれだね。育ちがいいと肉がうまい」
干物にしたらなおのこと美味い。
リーデルちゃんとかも、干物にしたら絶対うまいだろうなー。
ジュルリ。
『よだれ』
「おっと」ふきふき。
「ま、早々うまくいかないだろうけど、今度似たようなの捕まえたら干物にしてもいいかもしれないなー」
公女だとかいう
『ばーか! そんなに育ちがいい貴族がホイホイ来るもんですか!』
「だよねー」
この前の大漁はかなりの幸運が重なったようなもの。
詳しくは知らないけど、なにかのイベントでダンジョンを訪れていたであろう魔法学校の生徒だ。
危険だと思っていなかったのか、面白いくらいに獲れたし、狩れた。
まさに入れ食い状態だった。
そして、先生たちは先生達で、間抜けにも、残る生徒を連れて
いやー大感謝だね。
……一匹逃しちゃったけど。
(ま、いっか)
どうせ、
あの冒険者ともども毒ガスを吸ってたし、途中でくたばってるだろうさ。
「まー、貴族かどうかはおいといて、ポイントもたっぷり。おかげで色々作れて、ボカぁ大満足ですよ」
『こっちは不満足よ! なによ、干し肉って! アンタってそんなに死にたいの?』
あーん?
死ぬ? なんで??
「どうしてその発想になるのかわからんのだけど……。え? 子供って干し肉にすると、毒になるとか?」
『ならんわ!……いや、やったことはないけどさ』
そりゃそうだ。
ミユちゃんが子供干し肉作ってたら、さすがの「私」もドン引きですよ。
『そうじゃなくて! こんな風に貴族や王族の死体を冒涜しておいて、ただで済むわけないでしょ! アンタ王国に喧嘩売ってんのよ!』
ビシッ! と、『こんな風』こと、キングハムを指さすミユちゃん。
「……いや、冒涜はしてないよ?」
むしろ、余すとこなく使って食材は無駄にはしていない。
なんなら、長く、たっぷり、じっっっくり楽しんですらいる。
味も最高だし。
「あと、別に喧嘩売ったつもりもないよ」
まぁ売られたら買うけどさー。
『いや売ってる売ってる! 超売ってるから! 干し肉にまでしといて、それはないわー」
「えー。調理方法は関係なくなーい?」
なに?
干し肉じゃなくて、焼肉だったらオーケー!!……とかそういうのはないでしょ?
『関係あるわよ! 遺体が残ってる以上、王国は絶対に回収に来るわよ!? この子なんだと思ってるの!」
なにって……。
「ハム?」
『グラハム! だから、おーじ様だって何回も言ってるでしょ。ハムはハムでもキングなハムなの!! そんなのがダンジョンから帰ってこなきゃどうなると思ってるのよ!』
え?
あー。
「やっぱ捜しに来ちゃう系?」
……つーか、キングハム言うとるやんけ。
『当たり前でしょ! そりゃ来るわよ、わんさかと来るわよ! なにせ、王子様よ、おーじ。山ほどくるに決まってんじゃん』
「まぁ、腐っても王族だし、そっかー」
あ、乾いてもか。
『ん?……あ、ああああ!! ま、まさか、アンタ! それを見越してミイラにしたの?! 囮とかにするつもりで、わざわざ
ほへ?
「あー、いやいや。これは純粋に試したかっただけ……おいしい」
もぐもぐ──。
「──つーか、ミイラって言うなし! キングハム君が可哀想でしょ!」
これは食べ物なの!!
そんな埋葬死体みたいに失礼なー。
もっとこう、
『お前が言うなしっ!』
「あと、この部屋は別に作ったわけじゃないよ。なんつーか、再利用?」
『人の話聞かないのは相変わらずねー。……で、再利用ってなによ? こんな部屋前なかったじゃん』
「いや、あったよ? ミユちゃん気づかなかった?」
ミユちゃんが気にしているのは、まさに今いるこの部屋のこと。
内装はシンプルで照明の他は、天井には多数のミートフック(お肉付き)が吊るされているだけ、入口はなーし。
『ええー? 気づくもなにも……あれ? この広さと位置的にここってもしかして』
お、気づいたかな?
「うん。実はここ、隣の空間でーす」
『へ? 隣?!』
うん、隣、となり。
最初に「私」が出現した5×5の部屋の隣で、広さ的には6×6くらいの場所ー。
『え? うそ、でも、なんで……』
ふふーん、そんなに気になるか。
では教えて進ぜよう。
「実はさー。この前ポイントがガッツリ入ったじゃん? だから、次なる獲物に備えて準備をしてたら、ちょっとした発見があったんだよねー」
『は、発見って?』
ふふ、
聞きたい?
「ミユちゃんも知っての通り、ポイントを使えば1×1の拡張ができるんだけどさ、それが隣の部屋とかに貫通したらどうなると思う?」
『え? どうって…………あ、まさか!』
はい、そのまさかー!
「多分正解でーす! なんと、通路で繋げた場合、隣の部屋が丸っとこっちの建築範囲に入りまーす!」
すると何ということでしょう~。
今までいた部屋だけでなく、支配下に置いた部屋まで自由に
『うっそ……。じゃ、じゃあ、ここって元は隣の部屋なの?!』
「そうなるねー。あ、入口は地形をかえて塞いどいたよ?」
何カ所も出入口があったら、奇襲効果が失われるし、待ち伏せる側としても不利だからね。
あと、密閉しとかないと干物の匂いが漏れるし、
水分が飛ばせないので、うまく作れないもーん。
『マージかよ。コイツ、ついに行動範囲まで増やしやがったわ』
「えへへ」
『褒めてない褒めてない。……もう、最悪よ。ダンジョンの空間は増やすし、しまいには隣部屋まで乾燥室にするし』
「えへへ」
乾燥室っていうか、加工室兼貯蔵庫だけど。
『だから褒めてねーわ。……ねぇ、お願いだから、ぜめて亡骸だけでも親元に返してあげてよ』
「やだよ。せっかく作ったのに」
味だっていいのに。
なんで返さにゃならんの? 意味わからん。
『はぁ、コイツに頼んだのが間違いか……』
うんざりした顔のミユちゃん。
『ほんと、マジ最悪。……子供は食べるわ、煮るわ、焼くわ、揚げるわ、あげく干物にするわ──』
「えへへー」
『だから褒めてねーわ! いますぐ死ねっ!』
「ひっどーい」
「私」だって一生懸命に生きてるのにー。
「つーか、君こそ、ここ最近はしばらくどこかに行ってたのか知らないけど──帰って早々酷くなーい?」
頼んでもいないのに、
わざわざは干物が完成した「私」の歓声を聞きつけてやってきた途端に、くどくどくどくど、くどくどと、うーるさいったらありゃしない。
「だいたい、干物が嫌いなら見なきゃいいのにさー」
『見たくて見てんじゃないわよ! ほっといたら手が付けられなくなるでしょ! だいたい、いつの間にかドンドン強くなってるし、ダンジョンは広げるし──』
いや、手が付けられなくなるも、なにもYOUはゴーストだからね。
手も足もでないからね?
『え? でも、ちょっと待って。広げるってことはまさか……』
「あ、気づいたー?」
えへへー。
そう!!
通路をつないで隣部屋を支配下に開けるということは当~然、他の部屋も可能というわけ♪
「なので、他にも罠部屋を作っておきましたー!」
ドンドン、
ぱふぱふー♪
『ど、どーりで……来る途中でなんか見覚えのある錬金部屋があるかと思えば──』
「あははは。再利用再利用」
なにせ建築モードの「ログ機能」で簡単に部屋が再現できるのだ。
なので、以前使って好評(?)だった『錬金部屋』を再現するほか、他にも色々つくってみましたー。
「あ。よかったら、他の見てみるー?」
『──……み、見せてもらおうじゃないの』
お、ノリいいねー。
いつもの情報収集ってやつかな? いいよいいよー。好きなだけするといい。
無駄な抵抗かつ無駄なあがきだと思うけど、
ミユちゃんは少しでも、こっちの情報を集めてダンジョンに入ってきた冒険者に伝えられないか試しているみたいだしね。
ここ数日のように、最近はたまーにダンジョンの外にも行ってるのは、そういう検証もしてるっぽい。
まー。どこまでやっても、ゴーストはゴースト。現世の人と関われないから無駄だけどねー。
「──じゃ、こっちこっちー。こっち来てー」
55話目です
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