ミミック転生~人食い箱の食味記録~   作:LA軍

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第56話「トラップベース」

『うーわ。ホントに広げてやがる』

「へへ」

 

 驚くミユちゃんに向かってちょっとドヤ顔。

 

 いやー、マジで生徒たち(ガキ肉)に大感謝。

 なんせ、殺しも殺したり40人越えー。おかげでポイントザックザクだわ。

 

 それでいて肉も美味しいとか、最高かよー!!

 

 そして、そして、頂いた(ポイント)をふんだんに使って、いくつものトラップ部屋を作らせてもらいましたよー。

 

「──というわけで、まずはこちら!」

 

 ババンッ♪

 

 ステータスの『配置』で移動しなおすと、フワフワとついてきたミユちゃんに見せてご覧ぜるー。

 

『え?……なにこれ? きょ、教室?』

「うん、それ。ほら、この前、学生諸君や先生らが色々と置いてってくれたからねー」

 

 制服とかリボンとか、

 教材とか魔導書とか杖とか色々。みんな、ちっちゃくてかーわいいの♪

 

「なので、作ってみました。なんちゃって魔法学校ー!」

 

 テッテレー♪

 

「──の講義室っぽい感じー」

 

『へ、へー……。こんな感じなのね魔法学校って』

 キョロキョロと、

 きょどきょどと不審な動きのミユちゃん。

「いや知らない。想像」

『そ、想像……?!』

「そりゃそうでしょ?」

 

 ボカぁミミックですよ、ミミック。

 学校にいってるわけないじゃん。

 

「むしろミユちゃんのほうが知らないの?」

『し、知らないわよ! 貴族様じゃないんだから、学校なんて行かないわよッ』

 

 そりゃそうだ。

 頭悪そうだもんね、ミユちゃん。

 

『殴るわよ……』

 

 やれるもんなら、やってみー。

 ケケケ。

 

「じゃー、それはいいや。なんとなくで見て、」

 

 聞いて・感じてー!

 

『はいはい……』

 

 ちょっとげんなりしたミユちゃんを尻目に、

 建築モードを使用すると、部屋の奥の教壇の位置にどすんっ! と自身を『再配置』し、舌で教鞭をとってそれっぽく構えてみせた。

 

「えーこほん。……それではこちら。魔法学校講義室風の部屋についてご説明しまーす♪」

 

 ついでに、メリッサ先生からドロップした血塗れの眼鏡も蓋の上にちょこんと載せて置く。

 

 どうどう?

 なんか先生っぽくな~い?

 

『わー。ぱちぱちぱちー』

 

 うーん棒読みー。

 まぁいいや。

 

「ではでは、ご来場のみなさまー。まずはこちらをご覧くださーい」

 

 舌を使って、部屋を見ろのジェスチャー。

 

「えー。こちら、ちょっと広めの15×15程度の大きな空き部屋をつかってござーい」

『わー、ひろーい』

 

 だよねー。

 

「そのお部屋の地形をちょ~っと(いじ)りまして、このように段差や床材を変えてみましたー」

 

 こうすることで、なんと!

 

「──このように高低差を出し、見た目以上の広さと空間……そして、視野の広さを提供してございまーす!」

 

 いわゆる見下ろし型の教室ってやつだ。

 

 入口は一か所。

 そこが一番高くて、そのまま下に下にと、緩やかに下がって扇状に教室が収束していく形。

 

 そこに長机や椅子を配置し、一番底にあたる部分には、教壇と湾曲した大きめの黒板を備えた。

 

 大学の講義室が一番近いかなー?

 

 ちなみに、明かりはそれなりに。

 窓の代わりに、魔力灯で視界を確保できるように壁際に工夫してみた。

 

「どうですどうですー? これなら、35人程度の生徒なら丸っと収容できますし、なんならそれ以上も収容可能でーす!」

 

 生徒……35人。

 ジュルリ。

 

『……思い出し涎を垂らすな』

「おっと」

 

 いかんいかん。

 ふきふき。

 

 二番目のドジョウを狙おうとしているのがばれるところだった。

 ここに、料理待ちの35人の生徒がいる姿を想像して……つい。

 

「そ、そしてこちらを見てください! どうですー、まるでついさっきまで生徒がいたような雰囲気をだすため、生徒達からドロップした筆記具や魔導書、それに制服や魔法の杖なんかも席に立てかけて置きました~!」

 

 すると、すると──。

 

「なんとまぁ。まるで、ちょっとした休憩時間に生徒が席を外しただけに見えませんか~?」

 

  楽しげな笑い声に、

  澄ました貴族の立ち振舞。

   それは、

  いつもの日常、

  いつもの教室。

 

  ちょっと暑い陽気につられて、

  室内に上着を脱いで生徒たちは休み時間──……。

 

 

「どうです~? そんな雰囲気が出ていませんかー?」

 

 それもそのはずです。

 なんとのこの制服、ご本人たちのものでーす!

 揃えも揃えて脱がしたりー。計34着ありまーす♪

 

『……怨嗟しか聞こえないわよ』

 

 そんなこと言うなし。

 

「そこはノッてよー。……ちゃんと洗って干して、(しわ)も伸ばしたじゃーん」

『誰が皺の話をしてるのよ!!──血がついてるでしょ! 血がぁぁぁ!』

 

 うん。

 

 そりゃ、食べかす(・・・・)だし、しゃーないやん。

 血とか内臓の汁くらい、そらーついてるわい。

 

 ──あ、これリーデルちゃんのだ。……いい匂い。

 

『嗅ぐな、変態』

「うるせーぞ、37番」

 

 下から数えたほうが速いくせに。

 

『誰が37番よ! 誰がぁ!」

 

 おめーだよ。

 

『だいだい、アンタ最低よ! 生徒から持ち物奪うだけじゃなく、裸に脱がすは、人様の遺品を弄ぶは、人としての矜持はないの、矜持は!』

「いや、「私」は箱だよ」

 

 人どころか、

 箱の矜持しかねーよ。

 

「それより、凄いっしょ! これ結構頑張って作ったんだー。値段はだいたいた3000ポイントくらいかな?」

 まぁ、家具は格安のを使ったし、

 地形を広げたわけじゃないから意外とお安いのだ。

『それは知らないけど──……それより、ダンジョンにこんなのあったら違和感しかなくない?』

 

 それはそう。

 

「だけど、生徒を捜索に来た連中なら絶対入るでしょ」

『…………入るでしょうね』

 

 それが狙い目でーす。

 

『い、いやでも! 全員が全員、生徒の捜索隊とは限らないわよ。純粋にアンタを討伐に来る冒険者だっているでしょ! そんな人らがこんな怪しいとこに来るわけないじゃん!』

「あはは。痛いとこつくねー」

 

 実際、ダンジョンにこんな部屋があったら怪しいどころじゃない。

 むしろホラーだ。

 

 ……ただし。

 

『な、なによ』

「ふふーん。……その違和感しかない場所がいくつも(・・・・)あったらどーう?」

『へ? い、いくつもって……。あ、まさか!』

 

 イエス。

 そのまさか、多分正解です。

 

『うっそ……。じゃ、じゃあ、まさかここ以外にも作ったの?!』

「あったりまえでしょー。生徒達からどれだけポイント()貰ったと思ってんのー」

 

 部屋の一つや二つで満足するわけがない。

 

 それに、前回の戦闘で十分学習したのだが、狩り場が一個だとどうしても後続に気づかれやすくなると。

 

「だから、たくさん作って、順次移動しながら狩りをしようかなーって」

『げー。嫌なことするわねー』

 

「しょうがないっしょ。一か所で狩りをすると、どーしても、血とか臓物の匂いが残るじゃん?」

 

 人間ってのは、綺麗に殺さないと血とか内臓が飛び出てスゲー匂う(いい匂いがする)のだ。

 

「だから、一回の戦闘に一部屋くらいに狩りをしたほうがいいと思ってさ」

 

 一人一部屋。

 まさに1DK(1Day Kill)であーる!

 

「まぁ、どれだけ部屋を増やしても、結局のところ「私」しかいないので、移動と再配置をしている暇なんてないだろうけどね」

 

 それでも、予備(・・)の狩り場はいくつあってもいいと思う。

 

「なので、ゆくゆくはこのダンジョンの部屋全部繋げていろんな部屋を作ろうかなーって」

 

 錬金部屋しかり、休憩ポイントしかり、教室しかり。

 実はここ以外にもいっぱい作っている。

 

 冒険者からドロップした武器やら装備やらで武器庫風にしたり、

 彼らが落とした嗜好品だの糧食だのお酒だのを設置して、粗野な酒場風の部屋も作ってみた。

 

 あとは、なんちゃって雑貨店なんかも作ってみたけど、

 このあたりからちょっと作るのが楽しくなって趣味に走ったので、一旦ストップ──いかんいかん、「私」の目的はあくまでも獲物を騙して油断させることなので、ダンジョンメイカーになることではないのだ。

 

「あ、ちなみにだけど、「私」のこのミミックという特性上さ。どうも自分の支配下(・・・)にある部屋に設置という形でしか移動できないみたいなんだよね」

 

『へ? 繋げた部屋しか移動できないって?』 

 

「やー。だから、最初の部屋と繋がってない場所は移動できないの。通路とかで途切れてると、そこは支配外──なので、全部独立しているようで、実はどの部屋も隠し通路でつながってはいるんだよね。ほらっ」

 

 ガコンッ!

 そう言って教壇下の隠し通路を見せる。

 

『うーわ。ホントだ……。穴で通路に繋がってるんだ』

 

 そゆこと。

 それぞれ独立した部屋にみえて、実は裏でつながっているのだ。

 

「あと、ダンジョンの特性なのか、完全な密室は作れないみたい。ただ、一か所でも繋がってたら元の入り口は塞いでいい仕様だから、結構融通は利くよ」

『あー。それであの乾燥室が密室みたいにみえたんだ』

「そーいうこと」

 

 あそこも、元の入り口を塞いでおいた。

 だから、ミユちゃんも最初は気づかなかったんだろう。

 

「ちなみにこの先は武器庫に繋がってるよ」

『武器庫?』

 

 うん、武器庫。

 

「ほら、生徒達の装備とかもそうだけど、フルプレートアーマーの奴とか、野武士いたじゃん?」

『Bランクパーティの『石清水』とAランクのサンダースさんね』

 

 や、知らんけど。

 多分それ。

 

「そそ。そいつらの装備が結構充実してたから再利用しようかなーって」

『また飾るのー?』

「使えそうなのは体内のストレージに入れてるけどね。ただ、」

 

 それにしたって量が多すぎ。

 主にフルプレートアーマーとか。

 

「鎧とか盾はさすがにねー」

『まぁ。嵩張るわよね』

 

 そそ。

 

『ん、んー……。アンタが暇に明かせて色々やってるのは分かったし、趣旨も理解はしたけど。ここまで凝って作る必要ある? そりゃー、これだけあったら戸惑いも、油断もするだろうし、普通の何もない部屋よりは騙しやすいかもだけど……』

 

「まぁ、言いたいことは分かるよー」

 

 だってダンジョンにこんな構造物があったら普通は疑う。

 そして、賢明な人間なら入らないだろう──そう、賢明な人間ならね。

 

「──でも、君ら冒険者は馬鹿だからさー、絶対入ると思うんだよね」

『馬鹿ですか……』

 

 うん、バカだ。

 

「そして、それは捜索隊にせよ、討伐隊にせよ同じだと思う」

 

 むしろ何かを探しているなら、入らないという選択肢はない。

 

「そもそも、冒険者なんて、そう言ったアイテムを求めてダンジョンに入ってくるわけだから、多少怪しいと思いつつも、調べたくなるっしょ?」

『そ、それはまぁ……』

 

 うん。

 それで充分。

 

「人間の認識ってそういうもんだからね。宝箱しかない部屋より、こうしていろんな家具があったり、アイテムがあるほうが、そっちに意識が行くってわけ」

『んー。ならいっそ宝箱ばっかりつくればいいじゃん』

「いや、それこそバレバレじゃん」

 

 まぁ、そう言う部屋も作ってみようとは思うけどね。

 

「それに、冒険者はともかく、「私」の討伐隊だとしたらどうするー?」

『……あー。宝箱の化け物がいるってわかってたら、わざわざ開けずに全部まとめて攻撃する、か──』

 

 そーいうことー。

 

「なので、まずは認識を分散させる必要があるの」

『それで謎空間をこんなに……』

 

 謎いうなし。

 まぁ、多少趣味も入ってるけど。

 

「それにさ。家具とかアイテムがあるとそれ自体が死角になるからね。そんで、そこにトラップを仕掛けたり、潜んだりと色々工夫はできるでしょ?」

『そういえば、そう言う使い方してたわね』

 

 うん。

 錬金工房の家具配置とか、休憩スペースの隠し通路はめちゃくちゃ有効だった。

 

「なにより、ローグの対策にもなるでしょ? アイツ等罠とかの感知はできるみたいだけど、ただのアイテムには探知が働かないっぽいからね」

 

 だから、室内には普通のアイテムもたくさん置いておく。

 そしてその中に本命の罠を仕込むのだ。

 

「──例えば、毒瓶や揮発性の高い薬品なんかをアイテムに紛れ込ませて配置する。あとは、狙ったタイミングでそれを狙撃するとか、槍罠で誘爆させるなどすれば、どう?」

『あ、あぁー……二重のトラップとなるわけか」

 

 そゆこと。

 

『……うわー。いやらしいー』

「えへへ。ローグだって、まさか室内のアイテムが罠とは思わないっしょー」

 

『だから褒めてないっつーの』

 

 そのほかにもいくらでも思いつく。

 

 ポーションや毒瓶でなくとも、剣や槍などの武器をそのまま射出式の罠にしてもいいし、

 飾った鎧のなかに、生み出したスケルトンを仕込ませるなんて手もあるだろう。

 

「ま、だから、こうして一見なんでもないように部屋を装うことに意味はあるのさー」

『むー……。悔しいけど、アタシなら見抜けないわね』

「だろうねー」

 

 これが毒瓶がポツンと置かれていたり、剣に槍に弓矢が刃先を向けたまま束になっていたらどうだろうか?

 

 ……それこそ怪しい。

 まさにバレバレというものである。

 

『くっそー。……ホントいやらしいわねー。マジでなんでそういうこと思いつくわけ? アンタほんとうにただの魔物??』

「そういわれてもなー」

 

 なんでだろ?

 ユニークモンスターとやらだから?

 

「あ、でも。ちゃんと君たち冒険者のことも考えてるよ?」

『へ?』

「いや、そんな意外そうな顔する? そりゃー、罠ばっかじゃ誰も近づかないでしょ? 最初の何回かは間抜けを仕留めても、前みたいに取りこぼすかもしんないじゃん。そうなったらどうなると思うー?」

『まー、ビビって二度と近寄らないか、忍者さんの時みたいに、室外から攻撃するわね』

「そそ」

 

 仮に、そうなれば最悪だ。

 

 ダンジョン内の怪しい空間が罠だと知れ渡れば、なりふり構わず部屋ごと破壊されるのは目に見えている。

 

「──外から爆弾とか魔法使われたら、動けない「私」は詰むからねー。なので、初手で破壊されないようにしなければならないってわけ」

 

 ま、自分がそこにいなければ、いくら部屋を破壊されても、ログ機能ですぐに復旧できるから問題ないんだけどね。

 

「だから、初手で破壊されないように、有用なアイテムもたま~~~には置いとくのん」

『あー、なるほど。……つまり、時には()も準備するってことね』

「そゆこと」

 

 ミユちゃんにしては()えてるね。

 

「たしか、こーゆうの飴と鞭(・・・)っていうんだっけ? 狩ってばかりじゃ、餌も増えないしねー」

『いや、多分使い方違うと思うわよ。……知らんけど』

 

 まぁ、雰囲気雰囲気。

 

「だから、たま~には美味しいアイテムを持って帰ってもらって、冒険者諸君美味しい思いをしてもらわないとね」

 

 悪評ばかりたつと、こっちが飢える。

 だから、アイテムに釣られてドンドン仲間(ご飯)を呼び込んでくれー。

 

『……つまり撒き餌かー」

「それそれ」

 

 つーか、結局ダンジョンってそういうもんじゃない?

 命を落とすかもしれない場所にわざわざ潜るのも、結局のところ宝やアイテムがドロップするからだ。

 

『くっ。方針変更してきやがったわコイツ」

「そりゃー、食べるためなら苦労は惜しみませんよー。転ばぬ先の杖ってやつだね」

 

 箱だから、転ばないけどぉ。

 

「どうどう? いい考えでしょー」

『それをアタシが肯定すると思うの……?』

「思わなーい」

 

 つーか、ミユちゃんってばジト目してるけどさ。

 ──君がその宝に釣られた第一号だってこと忘れてるよね?

 

「ま、それよりも、今一番の問題はー……」

 

 うん。

 

 生徒たちを大漁捕獲して以来、こうして数日経過しつつも色々部屋を作ったり、干物作ったりと、のんびりできているのも──……。

 

 

 

 

「だ~~~れも来ないんですけどぉぉぉぉおおお!」

 

 

 

 そう。

 それが一番の問題!

 

 どうやら、悪い噂が噂を呼んだのか、現在の新月のダンジョンには誰ひとりとして訪れることはなかった。

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