「
ドドドドドドッ!
重装備の兵が一気に通路を駆け抜け、ゴブリンなどの魔物を蹴散らし、あっという間に入口広場を占拠。狩りの拠点とする。
「ここはよしっ! 中継に物資を置いていく」
「「はっ!」」
重量物である糧食に水は一時残置。
必要最低限の装備だけをもって、ゲーツ分隊とベンウッド分隊は奥を目指す。
「道はわかるな?」
「は、はいぃ!」
そして、道案内の冒険者を前に立てると、先行の偵察員とともに追い立てるようにダンジョンを駆けていく。
「そこを見張れ!」
「あそこも見張れ!」
──総員、敵を殲滅せよ!
「「うぉぉおおお!!」
戦場に場慣れした空気を纏った教導部隊の騎士たちは、それぞれがどう動くか完全に理解したい動きで、次々にダンジョンの通路に小部屋にと順次制圧していく。
しかし、今のところ異常はなし。
そして行方不明者の気配もなし──。
「ふーむ。ゴブリンにスライムか、つまらンな」
ブンっ!
それらの体液がこびりついたランスを血振りし、ゲーツは得物を肩にすると鼻息荒く吐き捨てる。
しかし次の瞬間、
「た、隊長ぉぉぉお!」
けたたましい足音ともに、先行させていた偵察員が駆け戻ってくる、
「何事だ?!」
「こ、こちらを! み、見ていただいたほうが早いかと!」
ぬぅ??
言われるままに同行すると、その先には異様な空間が広がっていた。
「な、なんだこれは?!」
「わかりませんが……い、異様です」
あぁ、それはそうだろう。
なにせ目の前に広がっているのはいくつもの空き部屋と──……まるで地上の設備がそのままダンジョンに持ち込まれた様な、人工的な部屋があったのだから。
「むぅぅ……酒場に、錬金工房だと」
「たーいちょ。こっちには、休憩スペースっぽいところがありましたねー」
先行していたベンウッド卿も異常を聞きつけたのか、油断なく周囲に目を配りながら、報告を返してきた。
「ほう……」
少し偵察しただけでこれだ。
この分だと、どうやら他にもありそうだな。
しかし、なんなんだこれは──? こんなもの地図には乗っておらんぞ?
「……おい、貴様ぁ!」
念のため冒険者に聞いておくか。
「ひぇ?! お、俺かよ。……いや、俺だってこんなのは知らねぇよ!」
「チッ。使えン奴だ。嘘を言っておるとわかったらただでは置かンぞ!」
まぁ、嘘をついているわけでもなさそうなので、冒険者への追及はこの場ではやめておくがな。
「だ、だから知らねぇって! 俺らがここで活動してたころはこんなのねーよ!」
あぁ、
わかったわかった。
「……まぁいい。それよりも、これはあれか? これが噂に聞く
「どうでしょうねー。僕もダンジョンでこういうの見るのは初めてですし」
それはそうだろう。
ゲーツもベンウッド卿も歴戦の戦士ではあるが、冒険者ではない。
戦場ならば無数の経験があるが、ことダンジョンに至っては数えるほどの経験しかないと言える。
「ふむ。一応、調査しておくか? しかし、そうすると、ベンウッド卿が見つけたという休憩スペースはともかくとして、錬金工房やら酒場のような部屋はいったいなンだ?」
元からあったのだろうか?
しかし、そんな話は聞いていないし──なにより、こうして地元の冒険者が見たこともないと言っている。
「……まぁいい。まずは生徒の痕跡を捜すのが先決か」
答えがないなら探すまでよ。
──よーし。
「総員、地図を頼りにするな! 些細な痕跡も見逃さぬように気を配れよ!」
「「「はっ!」」」
「……そして、気をつけろ。なにかおかしい。少しでも怪しいと思ったら、報告しろ。それと単独行動は現に禁ずる」
「「「了解!」」」
ザザンッ!
総員の綺麗な敬礼に答礼する。
さて、ここで視点を変えて捜索開始だ。
「あ、隊長ー。いっそ、怪しい部屋はみんな片っ端から、吹っ飛ばしてしまうのも手ではないですか」
「むっ!」
爆破とな??
ベンウッドの過激な意見。
……だが、ありかもしれん。
「ふむ。いいだろう──調査が終わり次第、順次、それらの部屋を吹き飛ばせ。死角が多くてかなわン」
それに部屋に散らばっているアイテムがどうもな……。
家具はともかく、壁際なんかに飾られている装備類は、どうみても中古品──誰かが使っていたであろう品だ。
……血の匂いがして気分がいいはずがない。
「「了解しました!」」
「おい、いくぞ!」「「おーう!」」
言うが早いか、数名が物資集積所に戻り、すみやかに爆薬を携えてくる。
やはり、
どこに魔物やらトラップが隠れているかわからないのなら、最初っから吹っ飛ばしてしまえばいい。
「よーし、偵察員、内部の状況を報告ッ!」
そして、一応の確認だ。
万が一ということもあるが、生徒たちが──……いや、生徒たちの遺留品がある可能性もある。
最悪死体だってある可能性もな。
「確認ッ! こちらにはアイテムが少量とトラップ──あとは、木箱等です!」
「こちらも同様です! ただし、こちらには小型の宝箱あり!」
ふんっ。
ドロップ品というやつか。
「構わン! まとめて吹っ飛ばしてしまえ!」
生徒や皇子の遺留品がないなら、それは等しく無価値。
そして、トラップがあるならなおのこと。わざわざ正面切ってひっかかることもない!
「やれぃ!」
「「了解ッ」」
錬金工房らしき内部を調べていた偵察員が離れると、爆薬を携えた精鋭騎士が、進み出て、導火線に点火する。
そして、
「
3、2、1──……。
「──
ドドーーーーーン!!
ダンジョン中に響き渡る大音声に、
全員が慣れた様子で、耳を塞いで口を開ける。そのあとでブワッ! と熱風を伴った硝煙が流れてきた。
「く、くくくっ」
くははははははは!
「どーだ! これぞ勝利の香りだ! ダンジョンを焦がす火薬の香りだぁぁ!」
わーはははははは!
「あはは、ゲーツ隊長ってこういうの本当好きですよねー」
なにをいうか、ペンウッド卿は。
「当たり前だろう。俺は戦場に生き、戦場で死ぬ男よ。……第一線を退いて久しいが、この香りこそ、生き甲斐よー!」
ぐわーはははは!
「あーあ、やだやだ。この人、ホント戦いになると性格変わるよなー。……っと、それはそれとして、偵察員、内部の
「はっ!……異常なし、アイテム、宝箱ともどもバラバラです」
冒険者なら泣いて喜びそうなドロップ品がまとめて消し炭だ。
これなら、何かが潜んでいても関係ない。
「あーあー、もったいないなー。隊長、先にお宝だけでも回収してはどうです? ほら、キャルトールとかが入っているかもしれませんし」
「ふン。知ったことか。……ともかく、見つけたなら即破壊だ」
我らは精鋭騎士!
近衛騎士団の教導隊ぞ?
「冒険者でもあるまいし、いちいちアイテムだの気にする必要もない」
「あー。でも、中身とか興味ないんです?」
ふんっ。
「国宝キャルトール以外のアイテムに価値なし。それと生徒たちの遺留品にだけ気を使っていればよい」
「いやいや、まだ死んだと決まったわけじゃないんですけどねー。ま、りょーかいです。……それに『キャルトール』なら、爆発くらいでどうこうできませんしね──じゃ、そういうことで皆さん引き続きよろしくねー」
「「はっ!」」
次々に運ばれてくる爆薬。
そして、順次点火して内部を蒸発させる!
「よーし! 次だ! 生徒の姿は絶対に見逃すな! そして、蟻の出る間もなく捜索し、しらみつぶしに爆破しろッ!」
捜索するなら、ローラー作戦こそが肝である!
「いけぃ! まずはダンジョン内を掃討する!」
捜索第一。
次に安全化!
「──後続のひよっこどものためにも、ダンジョン内を片づけてくれるわ!」
右を爆破せよッ!
左を爆撃せよッ!
「前後を阻む障害を等しく発破し、我らが進路を塞ぐ障害を粉みじンにしてやれぃ!」
「「おおーう!!」
ゲーツの命令のもと、
ベンウッド卿の指示にきびきびと動いていく精鋭騎士たち。
こうして彼らは怪しげな部屋を見つけるたびに、内部を調査し、生徒達の痕跡がないとみるや否や、すぐさま爆破していくのでった。
それは果たして、
どこかの誰かさんが一番嫌うやり方 なわけで──……。
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次回、
軍隊の戦い方を御覧あそばせ!
ミミックと軍隊の相性やいかに──!
感想も返してないけど、みてます!
ありがとうございます