ミミック転生~人食い箱の食味記録~   作:LA軍

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第60話「捜索開始(※)」

(まい)()ぇぇ!」

 

 ドドドドドドッ!

 

 重装備の兵が一気に通路を駆け抜け、ゴブリンなどの魔物を蹴散らし、あっという間に入口広場を占拠。狩りの拠点とする。

 

「ここはよしっ! 中継に物資を置いていく」

「「はっ!」」

 

 重量物である糧食に水は一時残置。

 必要最低限の装備だけをもって、ゲーツ分隊とベンウッド分隊は奥を目指す。

 

「道はわかるな?」

「は、はいぃ!」

 

 そして、道案内の冒険者を前に立てると、先行の偵察員とともに追い立てるようにダンジョンを駆けていく。

 

「そこを見張れ!」

「あそこも見張れ!」

 

 ──総員、敵を殲滅せよ!

 

「「うぉぉおおお!!」

 

 戦場に場慣れした空気を纏った教導部隊の騎士たちは、それぞれがどう動くか完全に理解したい動きで、次々にダンジョンの通路に小部屋にと順次制圧していく。

 

 しかし、今のところ異常はなし。

 そして行方不明者の気配もなし──。

 

「ふーむ。ゴブリンにスライムか、つまらンな」

 

 ブンっ!

 

 それらの体液がこびりついたランスを血振りし、ゲーツは得物を肩にすると鼻息荒く吐き捨てる。

 しかし次の瞬間、

 

「た、隊長ぉぉぉお!」

 

 けたたましい足音ともに、先行させていた偵察員が駆け戻ってくる、

 

「何事だ?!」 

「こ、こちらを! み、見ていただいたほうが早いかと!」

 

 ぬぅ??

 言われるままに同行すると、その先には異様な空間が広がっていた。

 

「な、なんだこれは?!」

「わかりませんが……い、異様です」

 

 あぁ、それはそうだろう。

 なにせ目の前に広がっているのはいくつもの空き部屋と──……まるで地上の設備がそのままダンジョンに持ち込まれた様な、人工的な部屋があったのだから。

 

「むぅぅ……酒場に、錬金工房だと」

「たーいちょ。こっちには、休憩スペースっぽいところがありましたねー」

 

 先行していたベンウッド卿も異常を聞きつけたのか、油断なく周囲に目を配りながら、報告を返してきた。

 

「ほう……」

 

 少し偵察しただけでこれだ。

 この分だと、どうやら他にもありそうだな。

 

 しかし、なんなんだこれは──? こんなもの地図には乗っておらんぞ?

 

「……おい、貴様ぁ!」

 

 念のため冒険者に聞いておくか。

 

「ひぇ?! お、俺かよ。……いや、俺だってこんなのは知らねぇよ!」

「チッ。使えン奴だ。嘘を言っておるとわかったらただでは置かンぞ!」

 

 まぁ、嘘をついているわけでもなさそうなので、冒険者への追及はこの場ではやめておくがな。

 

「だ、だから知らねぇって! 俺らがここで活動してたころはこんなのねーよ!」

 

 あぁ、

 わかったわかった。

 

「……まぁいい。それよりも、これはあれか? これが噂に聞くセーフポイント(・・・・・・・)というやつか?」

「どうでしょうねー。僕もダンジョンでこういうの見るのは初めてですし」

 

 それはそうだろう。

 

 ゲーツもベンウッド卿も歴戦の戦士ではあるが、冒険者ではない。

 戦場ならば無数の経験があるが、ことダンジョンに至っては数えるほどの経験しかないと言える。

 

「ふむ。一応、調査しておくか? しかし、そうすると、ベンウッド卿が見つけたという休憩スペースはともかくとして、錬金工房やら酒場のような部屋はいったいなンだ?」

 

 元からあったのだろうか?

 

 しかし、そんな話は聞いていないし──なにより、こうして地元の冒険者が見たこともないと言っている。

 

「……まぁいい。まずは生徒の痕跡を捜すのが先決か」

 

 答えがないなら探すまでよ。

 

 ──よーし。

 

「総員、地図を頼りにするな! 些細な痕跡も見逃さぬように気を配れよ!」

 

「「「はっ!」」」

 

「……そして、気をつけろ。なにかおかしい。少しでも怪しいと思ったら、報告しろ。それと単独行動は現に禁ずる」

「「「了解!」」」

 

 ザザンッ!

 総員の綺麗な敬礼に答礼する。

 

 さて、ここで視点を変えて捜索開始だ。

 

「あ、隊長ー。いっそ、怪しい部屋はみんな片っ端から、吹っ飛ばしてしまうのも手ではないですか」

「むっ!」

 

 爆破とな??

 

 ベンウッドの過激な意見。

 ……だが、ありかもしれん。

 

「ふむ。いいだろう──調査が終わり次第、順次、それらの部屋を吹き飛ばせ。死角が多くてかなわン」

 

 それに部屋に散らばっているアイテムがどうもな……。

 家具はともかく、壁際なんかに飾られている装備類は、どうみても中古品──誰かが使っていたであろう品だ。

 

 ……血の匂いがして気分がいいはずがない。

 

「「了解しました!」」

「おい、いくぞ!」「「おーう!」」

 

 言うが早いか、数名が物資集積所に戻り、すみやかに爆薬を携えてくる。

 やはり、閉所(インドア)ではコイツよな。

 

 どこに魔物やらトラップが隠れているかわからないのなら、最初っから吹っ飛ばしてしまえばいい。

 

「よーし、偵察員、内部の状況を報告ッ!」

 

 そして、一応の確認だ。

 

 万が一ということもあるが、生徒たちが──……いや、生徒たちの遺留品がある可能性もある。

 最悪死体だってある可能性もな。

 

「確認ッ! こちらにはアイテムが少量とトラップ──あとは、木箱等です!」

「こちらも同様です! ただし、こちらには小型の宝箱あり!」

 

 ふんっ。

 ドロップ品というやつか。

 

「構わン! まとめて吹っ飛ばしてしまえ!」

 

 生徒や皇子の遺留品がないなら、それは等しく無価値。

 そして、トラップがあるならなおのこと。わざわざ正面切ってひっかかることもない!

 

「やれぃ!」

「「了解ッ」」

 

 錬金工房らしき内部を調べていた偵察員が離れると、爆薬を携えた精鋭騎士が、進み出て、導火線に点火する。

 そして、

 

点火ぁぁぁ(フラグ・アゥッ!)!」

 

 3、2、1──……。

 

「──今ッ(ファイアインザホール)!」

 

 

 

   ドドーーーーーン!!

 

 

 

 ダンジョン中に響き渡る大音声に、

 全員が慣れた様子で、耳を塞いで口を開ける。そのあとでブワッ! と熱風を伴った硝煙が流れてきた。

 

「く、くくくっ」

 

 くははははははは!

 

「どーだ! これぞ勝利の香りだ! ダンジョンを焦がす火薬の香りだぁぁ!」

 

 わーはははははは!

 

「あはは、ゲーツ隊長ってこういうの本当好きですよねー」

 

 なにをいうか、ペンウッド卿は。

 

「当たり前だろう。俺は戦場に生き、戦場で死ぬ男よ。……第一線を退いて久しいが、この香りこそ、生き甲斐よー!」

 

 ぐわーはははは!

 

「あーあ、やだやだ。この人、ホント戦いになると性格変わるよなー。……っと、それはそれとして、偵察員、内部の再確認(クリアリング)を」

「はっ!……異常なし、アイテム、宝箱ともどもバラバラです」

 

 冒険者なら泣いて喜びそうなドロップ品がまとめて消し炭だ。

 これなら、何かが潜んでいても関係ない。

 

「あーあー、もったいないなー。隊長、先にお宝だけでも回収してはどうです? ほら、キャルトールとかが入っているかもしれませんし」

「ふン。知ったことか。……ともかく、見つけたなら即破壊だ」

 

 我らは精鋭騎士!

 近衛騎士団の教導隊ぞ?

 

「冒険者でもあるまいし、いちいちアイテムだの気にする必要もない」

「あー。でも、中身とか興味ないんです?」

 

 ふんっ。

 

「国宝キャルトール以外のアイテムに価値なし。それと生徒たちの遺留品にだけ気を使っていればよい」

「いやいや、まだ死んだと決まったわけじゃないんですけどねー。ま、りょーかいです。……それに『キャルトール』なら、爆発くらいでどうこうできませんしね──じゃ、そういうことで皆さん引き続きよろしくねー」

 

「「はっ!」」

 

 次々に運ばれてくる爆薬。

 そして、順次点火して内部を蒸発させる!

 

「よーし! 次だ! 生徒の姿は絶対に見逃すな! そして、蟻の出る間もなく捜索し、しらみつぶしに爆破しろッ!」

 

 捜索するなら、ローラー作戦こそが肝である!

 

「いけぃ! まずはダンジョン内を掃討する!」

 

 捜索第一。

 次に安全化!

 

「──後続のひよっこどものためにも、ダンジョン内を片づけてくれるわ!」

 

 右を爆破せよッ!

 左を爆撃せよッ!

 

「前後を阻む障害を等しく発破し、我らが進路を塞ぐ障害を粉みじンにしてやれぃ!」

「「おおーう!!」

 

 ゲーツの命令のもと、

 ベンウッド卿の指示にきびきびと動いていく精鋭騎士たち。

 

 こうして彼らは怪しげな部屋を見つけるたびに、内部を調査し、生徒達の痕跡がないとみるや否や、すぐさま爆破していくのでった。

 

 

 

 それは果たして、

 どこかの誰かさんが一番嫌うやり方 なわけで──……。

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