ミミック転生~人食い箱の食味記録~   作:LA軍

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第62話「ウィークポイント」

 ゲーホゲホゲホッ!

 

 

「あ、あっぶねー!」

 

 な、ななな、なんちゅうことをしてくれんねーん!

 まさか、まじで初手で爆破してくるとは思わなかった。

 

 おかげで一歩間違えれば巻き込まれてお陀仏だったぜー。

 

 なんとか「配置モード」を起動して爆破から免れたものの、まさか内部を確認もせずに爆撃してくるとは……。

 

 あー死ぬかと思ったー。

 

「しっかし、やっぱ建築画面からの『配置』はいざという時の脱出に使えないなー」

 

 頭ポリポリ。

 

 ミミックに転生してから、こちら、移動手段というのには常に悩まされてきた。

 一応、建築モードには、清掃や回収のほか、「私」の初期位置を決める『配置』があるのだが、これがまた緊急時には使いづらい代物なのだ。

 

 なにせ、

 手間が何通りもある。

 

 ステータスオープン、

 ●設計を起動し、それから『配置』を選択。

 

 さらに、そこからダンジョンの支配領域を俯瞰図でみつめながら、グリッドで位置を指定して、配置場所を決定……と、まーこんな感じだ。

 

 ──聞いているだけで面倒くさいでしょ?

 

 当然、こんな面倒くさいなら戦闘中に使うのも無理だ。

 ゲームよろしく、都合よくステータスを開いている間だけ、敵が行動を止めるようなこともなし。

 

「わかってたことだけど、ステータスを開いている間はすっごい無防備だというわけかー」

 

 これは参った。

 

 今回はたまたま、ギリギリで逃げれたのはよかったが、休憩スペースが落ちたとなると連中のことだ。

 他の、部屋も同じようにするに違いない。

 

「うーむ、どうしたものか」

『あ、帰ってきた──ぷぷっ、焦げてるし』

 

 ちっ。

 まーたミユちゃんだよ。

 

「うっせーなー! つか、なんでここにいるのー?」

『いちゃ悪いー』

 

 消えたと思ったらしれっといるし……。

 どうやら、呑気で気ままにフヨフヨしているらしい。

 

「悪かないけど、ここは一番の傑作部屋の魔法学校の教室だよ?」

 

 君みたいな、低能で低俗な冒険者には一番用がなくて似合わない場所やで?

 

『誰が低俗よ!』

「いや、言ってないから」

 

 思っただけだから。

 

「それよりこっちは危うく、焼きミミックになるとこだったッつーの」

 

 いつもの場所(・・・・・・)で待ち伏せと思ったけど、やっぱりそう簡単にはうまくいかなかった。

 

 一応、

 敵が手ごわそうだったので、休憩スペースの奥の隠し通の先で待ち伏せしておいたんだけど、まさか、初手から爆撃とは……。

 幸いにも、隠し通路の先が狭いので爆風よけになって助かった。

 

『ちっ。そのまま焼けちゃえばいいのに』

「なんてことを!……それより、邪魔だからあっちいっててよー」

『やーよ。アンタがヘマしてくたばるところを特等席で見てやるんだから』

 

 趣味悪いなー。

 

「はいはい。かなわない夢でもみてなー。……あ、そういや一瞬ではあるが、奴等を見たよ。思った通り、国の騎士団っぽいね」

『あ、見たんだ?』

 

 見た見た。

 会話も聞いた。おかげでなんとなく、正体と目的が判明した。

 

『どうだった? あれなら、アンタも年貢のおさめどきでしょー』

 

 にゅふふふと、

 可愛らしくない笑みをうかべているミユちゃんだけど、残念。

 

「まっさかー。よゆーだよ、よゆー。そんなことより、奴等、生徒と遺品を捜索しているっぽい。あと、ギャル……なんとかを捜してるみたい?」

『ギャル?……あたし?』

「おめーはお呼びじゃねーよ」

 

 あと、ギャルじゃなくて、おめーはメスガキだよ!

 

『誰が雌ガキよ! そんな歳じゃないわよ!』

「知らんし、言ってないよ」

 

 あと、君は0歳だよ。

 生まれたてのゴーストじゃん。

 

「だいたい、あんな連中に「私」が負けるわけないじゃん。そも、こっちはとっくに方針は決めてるんだよねー」

『強がり言っちゃってー』

 

 ちゃうちゃう。

 マジで言ってんの。

 

「奴等、たしかに強いよ? 冒険者的な強さで言えば、いつぞやのAランクと同等かもね」

『おー!』

 

 いや、「おー!」じゃなくて……。

 Aランクくらいなら、即返り討ちにしてるがな。

 

「まぁ、言うても──それがひとりかふたりじゃなくて、複数いるのが……ね。ちょっと、やっかいと言えば厄介だねー」

 

 見た感じAランク同等が二人。

 あとは、せいぜいせいぜいBかCランク程度だけど、問題はそこじゃあない。

 

『ぷぷー。さっきは勝てるとか、さっきはよゆー()いてなかった?』

「よゆーは扱いてない」

 

 こちとらミミックやで?

 よゆーなんかあるわけないよ。

 

『えー。Aランク楽勝ぉぉ~、よゆーよゆー負けるわけな~い♪──とか言ってたじゃーん』

「そんな言い方してねーわ!」

 

 顎をしゃくって煽るミユちゃん。

 むっかつくなー。

 

「前にも言ったと思うけど、こっちに切れるカードは奇襲だけ。最近は罠とかも使えるようになってきたけど、根本は同じ──つまりね」

『つまり?』

 

「……相手は冒険者と違って軍隊だよ? 個々の戦闘力よりも総合戦闘力で換算すると、正面から(・・・・)じゃ「私」は、逆立ちしたって勝てないのー」

 

 ミミックがやられると一番困るのが、遠距離攻撃と先制攻撃。

 そして、損害覚悟の多人数戦闘だ。

 

 今回は、そのうち二つを敵が多用してくる。

 まともにやって勝ち目はない。

 

『ん? でも、さっき負けないって言ったじゃん』

 

 言ったよ。

 

「言ったし、その通りだよ?」

『は? 意味わかんない。……負け惜しみ~?』

 

 なわけないない。

 負け惜しみもなにもボカぁ、今のところ無敗だよ無敗。

 

「そも、以前の冒険者との戦闘見ててもまだ気づかない?」

『気づくって?』

 

 アホ面したミユちゃんが首をかしげる。

 可愛いけど、なんか今はムカつくな。

 

「ホントわかんないの?……ほらぁ、純粋な戦闘目的でない限り、なんらかの「別の目的がある」ってこと。それってばつまり自らの行動に(かせ)を掛けているようなものだからね?」

 

 そんな連中に負ける要素がないじゃん。

 

『枷って?』

「いや、枷は枷だよ。つまり、敵にとって枷──弱点(ウィークポイント)のことだよ」

 

 ──この場合は、連中の捜索対象そのものだ。

 

 アイツ等、容赦なく爆破しているようにみえて、実はそうじゃない。

 気配探知でわかるのだが、なんだかんだで慎重に偵察を出して爆破すべき部屋を見定めているのだ。

 

『えー? 弱点?? そんなのある?』

 

 あるある。

 めっちゃあるがな。重装備かて無敵ちゃうよ。

 

「簡単にいうと、奴等には勝利条件(・・・・)があるのさ。まずは「私」の殲滅──」

 

 これはまぁいい。

 

 「私」さえ倒せれば、あとは余裕だろう。……ただし、向こうはまたこっちの存在を知らないので、これはなーし。

 

「次が、生徒──ないし、その遺留品の捜索だね。そのほかに、何かを探しているっぽいけど、この探しているものがある(・・・・・・・・・・)ってのがネックってわけ」

『ネックもなにも、それが人間ってものでしょ』

「それが度し難いって言ってんのー」

 

 まったく馬鹿な話だね。

 死んだ者になんの価値があるというのやら。それに遺留品もなにも、それを持ち帰ってどうするんだろうね?

 

『えっとつまり……?』

「え? ここまで言ってわかんないの?」

 

『わ、悪かったわね』

 

 はー……。

 

「つまりさー。探し物がある以上──アイツ等、無差別に爆破(・・・・・・)はできない(・・・・・)んだ」

『え?…………あ!』

「そ」

 

 ようやく気付いたかな?

 

「そして、その探し物が本当にあったなら、どうすると思う……?」

『ま、まさか……』

 

 うん、そのまさか。

 探してるものがあるなら出してやればいい。

 

 死体だか遺留品だか何だか知らないけど、それが命より大事ならそうしてやる(・・・・・・)までだ。

 

  矜持?

  郷愁?

 

 よくわからんけど、仮に、そんなもん持って帰って何になるのさ?……腹の足しにもならないよ。

 

 まぁ、それでこっちが勝てるなら最大限利用させてもらうまで。

 そして、そのための待ち伏せポイントがここ(・・)だ。

 

「あはは! 半分、趣味で作っただけだけど、まさか役に立つ日が来るなんて」

 

 あー、作っといてよかったー。

 

「敵は十人以上がひと塊(・・・)

 

 そして、

 そいつらを呼び込むに、ちょうどいい広さの空間!

 

「いやー。生徒達に感謝感謝!」

 

 死んだ後も、こ~んなに役に立ってくれるんなんてねー!!

 

 ありがとう、

 そして、ありがとう!

 

「君たちの血と肉と骨のおかげで勝利への道筋が見えたよー!」

 

 

 

 ──キラーン♪

 

 

 

 見上げるダンジョンの天井に、生徒たちが笑顔で手を振っているのが見える気がするぜー。

 

 

 

「…………さて、食うか」

 

 

 バリボリ、バキッ♪

 

 

 こうして、笑顔(?)まま手を振っている生徒達を数人ストレージから取り出すと、頭から丸齧りしつつ、腹をこなし満腹ボーナスをつけておく。

 それが終われば、最後の仕上げの準備に取り掛かるのであった。

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