ミミック転生~人食い箱の食味記録~   作:LA軍

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第63話「生存者(※)」

「隊長ぉ! こちらをぉぉお!」

 

 ぬ?

 

 景気よく部屋部屋を吹っ飛ばしていると、ついに偵察員が血相を変えてゲーツを呼びつける。

 通路を曲がった空きで大きく手を振っていた。

 

「どうやら、みつけたらしいな」

「みたいですねぇ」

 

 後方を警戒するベンウッド卿も改めて部下を掌握して、通路を固めてくれた。

 よーし、完璧だ。

 

「どこだ! なにがあった?」

「は、はい! こちらです!」

 

 偵察員が指さす先は、まさに異様な空間だった。

 それも相当に広い──。

 

「な、なンだここは」

 

 目にした空間はダンジョンにはあまりにも似つかわしくないものであった。

 いや、それまでにだって、粗末な酒場だの休憩スぺースだのと色々あったのだが、これは──。

 

「ぬぅぅ──……これは『教室』か」

「あ、隊長にもそう見えます?」

「あぁ」

 

 油断なく周囲に騎士たちを配置したペンウッド卿も、ゲーツの肩越しからそこを覗き込む。

 

 それはやはり、何度見ても『教室』だった。

 

「ぬー。しかも、あれはもしや……」

「えぇ、行方不明の生徒の服ですね」

 

 ッ!

 やはりか。

 

 薄暗い教室の中は静まり返っており、そしてその静けさの教室の中には30~40ほどの椅子が長デスクに配置されている。

 ……そして、もれなくその座席には制服がかかっていた。

 

「……偽物の可能性は?」

「いやー、ないと思いますよ? 魔法学校の制服はオーダーメイドです。当然、そこらに出回るものでもないですし、そも、こんなダンジョンにあるわけないですよ」

 

 ……だな。

 

「しかし、異様だな。目測で30着はあるか?」

「それ以上ですよ」

 

 ほう。

 つまり、ほぼ全員分、か。

 

「ちっ。誰か知らんが悪趣味な……」

 

 こんなの……どう見ても、生徒が自主的に脱いで放置したわけではないだろう。

 とすると、

 何某かがここにわざわざ置いたということだ。

 

「嫌な予感しかしませんねぇ」

 ベンウッド卿も顔を引きつらせている。

 まぁ、同感だ。

「……だが、確かめンわけにはいかンだろう」

「ま、そうなりますよね──偵察員前へ」

 

 うむ。

 ここはまずは偵察だな。

 

「俺の部隊からも出す。ローグは前進! 残りは、防御態勢──及び全周警戒!」

 

 はっ!

 

 命令一過、各分隊からローグの出来る軽装騎士が前に進み出て、仲間に武器を預けると代わりに短剣を抜く。

 

 罠の捜索に長物は不要なのだ。

 

「……隊長! トラップあり。大物です!」

「わかった。照明を増やしつつ、マーキングして、先に進め」

 

「「はっ!」」

 

 次々に上がるトラップ発見の報告に顔を(しか)めるしかない。まるで、教室を守るように無数のトラップで埋め尽くされているではないか。

 

 だが、そこは練達の偵察員。

 大量の罠など、ものともせずに前進していく。

 

 そうとも。近衛騎士団の教官を兼ねる老練な騎士に、こんな低ランクダンジョンのトラップにかかるはずもない。

 魔道具の照明を設置しながら光源を確保する偵察員は、鮮やかな塗料でトラップの位置を表示しながら先へ進んでいく。

 その足取りに迷いはなかった。

 

 彼らはトラップを誘発させないように、一歩一歩確実に慎重に進んでいくのだが──しかしまぁ、その道中にあるわあるわ。

 実に多種多様な大量のトラップがあるわあるわ。

 

「うわー……えぐいですね」

「あぁ、床には『クロスボウ』に『ベアトラップ』。あとは床だけでなく天井にも『槍罠』に『ガストラップ』か」

 

 死角になりがちな天井にもトラップとはな。

 

 しかも、どれも強力な威力だし、一部は毒付きだ。

 まともに食らえば、重装甲といえどただでは済まないだろう。

 

「まぁ、注意していればかかるような罠ではないな」

「足元は注意が必要ですけどねー」

 

 さもありない。

 

 だから、偵察員に罠の位置をしっかりと表記させておく。

 そして、その後ろを、前後左右を装甲でガチガチに固めて亀のようになって、ドロドロドロと一塊になって前進するのだ。

 

「……いっそ、爆破したいな」

 侵攻ルート上の仕掛けられた罠の多さをみて、顔を(しか)める。

「そうもいかないですよ。なにせこの遺留品の山です。キャルトールだってあるかもしれませんよ」

「わかっている」

 

 見逃して爆破したならまだしも、

 これだけ山のように遺留品が積まれていてはな……。

 

「あ、ゲーツ隊長ぉ、見てくださいよ。珍しい……こっちは『煮え湯』に、『落とし穴』ですよ」

「あぁ見えている」

 

 どっちも装甲が役に立たないタイプの罠だ。

 

「他にも、危険性のない物もあるみたいですね──あ、これなんか凄くないです? ほら『落とし(たらい)』ですよー」

 

 はっ!

 笑わせるな、盥のトラップとは。

 

「馬鹿にしているのか? そんなものに引っかかる奴がどこにいる」

「さー」

 

 ふんっ。まぁどうでもいい。

 危険度の高い罠だけをピックアップしておけば、危機は避けられる。

 

 こちとら戦争のプロだ。

 こんなあからさまなで見え見えのトラップになんざ、引っかかるかよ。

 

「しかし、やはり生徒達はここにいたのか? 貴様なにか知らンのか?」

 終始ビクビクしている案内役(?)の冒険者に水をむけるも全力で否定するのみ。

「し、知らねぇよ! こんなもんあったら、地図に載ってるわ!」

「それはそうか」

 

 まぁ、念のため確認しただけだしな。

 しかし、まったく役に立たんな、この冒険者は……。

 

「それより隊長。あれを見てくださいよ──あの制服」

「……あぁ、わかっている」

 

 ベンウッド卿が顎で示す先。

 全員が部屋の中ほどまで進んだところで、血で汚れた制服が目に留まった。

 

「名前の刺繍付きか。リーデル・エーベルト……公爵令嬢のものだな」

 

 椅子から取り上げたそれは、

 いったい何をされたのか、腹の部分がざっくりと切り取られて周囲が真っ黒な血にまみれている。

 

 少女の残り香もさることながら、

 刺繍どころか死臭付きだ……。

 

「ゲーツ隊長。……こんな状態の制服ってことは、もう──」

「言うな」

 

 ベンウッド卿がみなまで言わずとも誰もが理解している。

 その汚れ方と破れ具合からして、どう見ても元の持ち主は致命傷を負っているはずだ。

 それが数日前なわけだからな、生きているはずが──。

 

 

 

 

「──た、隊長ぉ! せ、生徒です! 生徒の生存者らしきものがこちらに!」

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