ミミック転生~人食い箱の食味記録~   作:LA軍

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第65話「VS 精鋭騎士」

  ズズ--ン……!

 

 

「よーーーーーーーし、大物仕留めたぞぉ!」

 

 いぇーい♪

 

 満足気に、刃についた血を舐めるとまさに勝利の味だ。

 

 うまいっ!

 やっぱツェー奴の血はサイコーだぜ!

 

 そして、定石通りのリーダーを仕留められたのは大きいねー。

 

「いやしかし、まさか、こんなに見事に引っかかってくれるとはねー」

 

 ぎゃは♪

 

 隠れていた最前列のさらに先。

 教壇の真下から顔を出すと、地響きを立てて倒れた隊長格を見てほくそ笑む。

 

「な?! た、隊長ぉ?!」

「き、貴様、なんだぁ?!」

 

 そして、今更驚くアホどもを眺めながらも、返す刀で追撃!

 

「はい、うっさーいっ」

 

 「「がひっ?」」

 

  「「ぐぁぁぁ!」」

 

 ズバシ、ドバシッと、月並みな発言しかできないアホ面の数名を切り飛ばす。

 

 これで半分撃沈~!

 ぎゃはは、どいつもこいつも無防備極まりないわー!

 

 ま、重傷の衛生兵と冒険者を後送しようとしてた奴等だし、大した抵抗もあるわけないんだけどねー。

 

「さて、まずは数を減らすっと……」

 

 その血と脂で塗らつく刃を、ヒュヒュン♪ と、血振りし、指折り──おっと舌折り数える。

 

「ひーふーみー……うん」

 

 これで、ゲーツ君とかいうリーダー格を含めて5匹撃沈かな!

 重傷の2名を入れたら7匹だ!

 

 まー。欲を言えば、奥にいたもう一人のリーダー格も仕留めたかったけど……手近にいた奴だけでも良しとしようかね。

 

「しっかし、バカばっかだねー。軍隊って言ってもたいしたことないね」

 

 君ら隙だらけだよー。

 ぎゃはははは!

 

「な?! は、箱型のモンスターですか?! いつの間に──」

 

 は?

 何言ってんの?

 

「いつも何も、最初からいたよー?」

「バカな!」

 

 いや、バカなと言われてもなー。

 

 ぽりぽり。

 

 舌で頭を掻きつつ。な~んか、奥にいる細目の騎士が驚いてるので答えてやる。

 

「いやほら、あそこ。──君らが部屋に入ってきたときから、ず~~~っと、奥の教壇のとこにいたっつーの。……まー、気づかないのもしょうがないかな」

 

 慎重に進む君等が奥まで見通せるはずもなし、

 なにより、トラップだなんだと気を取られまくってるからね。

 その意識の外ってやつですよ。そら気づかんわな。

 

「つーかさー。一番の原因は、君らがリーデルちゃんの尻ばっかり追っかけてるから見落としただけだよー」

 

 ま、人間はいくつもの事象に注意を払えないからねー。

 しゃーない、しゃーない。

 

「名付けて『リーデルちゃんブービー作戦』でーす。……お尻なだけにブービー♪」

 

 うけけけ。

 

 あ、ついでに、問答無用攻撃(無差別爆撃)防止も兼ねてまーす!

 

「どーゆー、あんだすた~ん(理解したぁ)?!」

「くっ! なるほど、そういうことでしたか」

 

「そーゆーことでーす!」

 

 ぎゃーはははは!

 次から気を付けよーね。……次はないだろうけど。

 

「なるほど。狡猾な罠だと思えば……アナタ、俗に聞くユニークモンスターですね」

 あーん??

「……またそれぇ? つーか、それ(ユニーク)とか今関係なくなーい?」

 

 「私」がユニークかどうかよりも、

 君らの頭のユニークさを呪うべきなんだよ。

 

「だいたいトラップを避けるだけの危機感は働く癖に、生徒(リーデル)を発見したとたん、警戒態勢がおざなりになってや~んの──ぷぷー!」

 

 だから、ひっかかる。

 

 切られる。

 そして食われる。

 

 食い残したリーデルちゃんの残骸を見た瞬間、思考放棄してんじゃないよー。

 

 だいたい、生徒肉を入手してから何日たってると思ってんの?

 そんなとこで、生徒がたった一人でいたら怪しいとか思えよ、ふつー。

 

「──そんなん、どー見ても囮に決まってんじゃーん! バーーーーーーカ」

 

 ま、それでも、こいつらは確かめずにはいられないんだろうけどね!

 

 それが任務!

 そして、君らの勝利条件だもんねぇ!!

 

「な、なるほど、生徒を囮を使うとは……。たしかにこれは一本取られましたねぇ。──ちなみに、彼等達は、皆、アナタが?」

「ん? あー、食った食った。美味かったよー」

 

 煮たり焼いたりと、サイコーだったぜ。

 今思い出しても涎がでるわ。

 

「とくに、ガキの踊り食い……あれは、またやりたいねぇ」

 

 ジュルリっ♡

 

「は、ははっ! まさか、あの人数を全部食べるような化け物がいたとはねぇ。……あー、ときに生徒の行方は知れたので、我々は一度帰還したいところなんですが、お暇させてもらうというのは無理でしょうかねぇ?」

「そりゃねぇー」

 

 全員食うしー。

 

「つーか、君さー。………………喋りつつ、隙を狙ってるのがバレバレだよー!」

「ッ!」

 

 ──あ~らよっと!

 

「ぐぁぁぁああ!!」

 

 こっちの気を引きつつ、机などの死角をついた一人が突っ込んできたが、そんなの余裕で切り倒ーす。

 

「あはは、無駄無駄ぁ!! ここは僕のテリトリーだよ」

 

 血振りしつつ、

 そいつの首を切り飛ばし高笑い。

 

「どこに死角があって、どこに移動経路があるかなんて百も承知だっつーの」

 

 奇襲できると思ったら大間違いだ。

 

「くっ! こ、こいつは、かなりやりますねぇ! まさか、一瞬で戦力の半分をもっていかれるとは……」

 

 あーん?

 ……なに言ってんの?

 

「半分死んだからって何さ?……あ、まさか、今さら数で押したら勝てるつもりだったのー??」

 

 ばっかでー。

 

 たしかにミミックは数で押されると弱いけどね。

 それは冒険者みたいな個々が特化したプロフェッショナルの場合の話ー。

 

「君らじゃ、無理無理。その程度の半端な戦力なら、部屋の中だと何人いても相手にならないよー。むしろ、ベテラン冒険者と違って、君らみたいな軍隊ってのは、一番やりやすいんじゃないかなー?」

「な、なにぃ?」

 

「いやー。『なにぃ?』っていうかさ。冒険者はそれぞれが個で動けるけど、軍隊というのは、一個の部隊で、ひとつの『個』でしょ?」

 

 そんなの一人と戦ってるのと大して変わらない。

 指揮官がしっかりしていたらなおさらだ。

 

「つまり、雑ぁ魚♡ デカイだけの一個人だもん。そんなのに負けるわけないじゃーん」

 

 ま、だからこそ、この全員が収容できる『教室』で奇襲を選んだけどねー。

 

「あとは、意表をつくブービートラップを仕掛ける。(リーダー)を混乱させる。そして、(リーダー)()ねる」

 

 すると、どうでしょう~?

 

「実際、びっくりしたでしょー? そして、動けなくなったでしょー? どーすればいいか分っかんないでしょ~?」

 

 だけど、まぁここまで見事に嵌るとはね!

 

 いやーリーデルちゃんはいい仕事をしてくれたよ。

 味もいいし(今んとこ堂々の1番!)、可愛いし、囮にも最適!

 油で煮立って、匂いもと~ってもイイ♪

 

 それに比べて、コイツ等ときたら……ほんと、ザコ!

 

「──そんなの、あとは美味しく食べるだけじゃーーーーーーん」

 

 ギャーハハハハハ!!

 

「ちぃぃ、舐めるなぁぁあッッ!」

「お、おぉっとー!」

 

 キーンんん……!

 

「おー、あっぶねー。いきなりなんな~ん? 人様が話してるのを遮るなって、習わなかったー?」

「箱と喋る舌など持ちませんねぇ」

 

「お、言うじゃーん」

 

 確かに、人様じゃなくて、箱様だわ。

 

 そして、この細目の騎士……挑発に乗ったかと思い切り、意外に冷静だわ。

 一応は喋るモンスターこと「私」に少し驚いていたようだが、それでもすばやく切り替えて牽制として投げナイフを投擲するくらいに頭は働くらしい。

 

(ちぇ、アホみたいに突撃してくれたら楽だったんだけどなー)

 

「……ま、そうこなくちゃね」

 

 ゴトリと、隠し持っていたボウガンを床におく。

 たぶんこれは効かない。

 

 なにより、冷静な細目の騎士に率いられた残る騎士達は、ひと筋縄ではいかなさそうだ。

 ガッチガチに盾と装甲で構えて防壁を成していやがる。

 

「いいねいいね。まるで要塞だねー」

 

 やっぱ、

 そうこなくっちゃ面白くなーい!

 

「くっ! ベンウッド卿! どうしますか?!」

「奴は一体です!」

「我等なら──!」

 

 お、それそれ!

 後方で防御態勢を敷く騎士たちが、ベンウッド君とやらの指揮官(副長?)に指示を仰いでいる。そのまま、突っ込んでこーい。

 

「そうそう。「私」はひとりですよー!」

 

 みるからに、

 ザッコで~す!

 

「挑発に乗らないのッ! 向こうの思うつぼですよ、まずは、ゲーツ隊長を収容し、その後に撤退!──あとで、爆撃し、数で押せば勝てる相手です!」

「あ、たしかに、それが今一番やめて欲しいやつー」

 

 なるほど。

 

 やっぱり、コイツは多少は頭が切れるみたいだ。

 そして、情報を持ち返られたらそれで詰む可能性がある。……爆撃も勘弁してほしい。

 

 な・の・で──。

 

そうされる(・・・・・)前にしとめまーす!」

 

 せっかく全員が部屋に入ったんだ。

 もちろん一網打尽コースだぜぃ!

 

「いっくぞー!」

 

「ッ! 来ますよぉっ! 総員、隊長を守れ! 前列防御!」

「「おおう!」」

 

 ズンッ!

 なんと、盾が前列に集中し、隙間を完全になくす!

 

「お、おぉー……」

 

 これはファランクスってやつか。

 初めて見た。

 

「あはッ! 上等ぉ」

 

 キン、カーンッ♪

 おー。かたいかたーい!

 

「こ~れは手強いぞー!」

 

 斬撃を加えていくが、いくらグラハム君ソードの切れ味が鋭かろうとも、分厚い盾に籠った騎士の防御は侮れない。

 全力で振り下ろした舌撃もあっさり弾かれてしまった。

 

「よーし、いいですよ! 奴の攻撃は通りません。そのまま防御態勢のまま、衛生はゲーツ隊長を収容し応急処置を!……このまま撤退し、増援を呼びます!」

「「おおう!」」

 

 号令一下。

 

 ベンウッド君の適格な指示のもと騎士たちがよく反応している。

 そして、そのまま、ゲーツ隊長とやらだけ(・・)を盾の陣地に引き込むと、そのままずるずると後退していくではないか。

 

「収容完了!」

「──よしっ。総員、後退防御!!」

 

 おぉ!

 あの状態で動けるのか。

 

「やっるー♪」

 

 ろくに周囲も見ないだろうに、一糸乱れる部隊行動。

 ズシンズシンズシンッ! と、まるで一糸乱れぬ盾と鎧の一個生物のように動き出す。

 

 さすがは騎士!

 さすがはベンウッド君!

 

 まさに移動要塞だ。

 こりゃー。正面からじゃ、手出しできないなー。

 

「敵はミミックタイプのユニークモンスターです! 通常、あの手のモンスターは動けないでしょう。……正面からの攻撃にのみ留意してください!」

「へぇ。よく見てるね」

 

 あの細目のベンウッド君、意外とやる……。

 冷静だし、統率力も優れている。

 

「脳筋っぽい隊長格を仕留めたせいで、逆の冷静な指揮官が場を継いでしまったのはちょっとした誤算だったなー」

 

 普通ならもっと動揺してしかるべきところを、適格に騎士を指揮して一糸乱れぬ動きで統率していやがる。

 これは困った。

 

「んー……なら、ちょっと揺さぶってみるかな?」

 

 例えば、そうだね。

 こーいうのはどうかな~?

 

「あ、いたいた。生きてた」

 

 シャーキーン!!

 

「ベンウッド卿、あいつ……!」

「ま、まさか」

 

 はい! そのまさかだよー。

 

「ちゃんとさぁ、軍隊が負傷者を回収するには意味があるんだよー」

 

 例えば、こういう風(・・・・・)に使われないようにするために、ね!!

 

 ──おらっぁああ!

 

「うぎゃぁぁぁあああああ!!」

 

 配下の兵が、事態に気付いて目を見開くのを確認するや否や、

 重傷のまま放置されていた衛生兵の背中に思いっきりグラハム君ソードを突き刺してやった。

 

 あはは、いったそー。

 あ、もちろん、急所は外してるよー、ぐーりぐり。

 

「あががががが、がぁぁああーーーーーーー!!」

 

「くっ! み、見てはいけません! か、彼はもう、救えません!」

「し、しかし!」「まだ生きてます!」

 

 そーそー。

 そうなるよねー。

 

 部下の手前、見捨てるわけにはいかないよねー。

 

 

 

 ぐーりぐりぐり!

 

 

 

「ぐぎゃぁっぁああああああああ!」

「さぁどーする? 仲間がいたがってるよー」

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