うぎぎぎぎぎぎ……!
ヴぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛……!
「ちぃぃ!──全周防御! 全周防御! 近づく敵は殲滅してください!」
──バッシーン!!
言うが早いか、近づいてきた小さなスケルトンを容赦なく盾で弾き飛ばすベンウッド君!
その声に我に返ったのか、周囲を囲まれた騎士達が素早く隊形返還!
そのまま、シールドバッシュやパリィでスケルトンにゾンビを跳ね返す。
「ひゅー! さすが、ベンウッドくーん!」
細目なだけあって、つよーい。
(※注: 関係ない)
「な、舐めないでもらいたいですね! 我々は近衛騎士──これしきー」
はは!
そうだろうね。
「だけど、いいのかーい? よく見てみてよー。その子たちってば、たしか君たちが探してた生徒たちだよー」
スケルトンはともかく、
食べたばかりの生徒や、半溶けの生徒ゾンビにはまだ面影がある。
そもそも、ダンジョンにこんな小さな子なんか、生徒以外にいるはずもなし──!
生徒の遺骸なだけに!!
「ベ、ベンウッド卿!」「いかがしますか!」
「クッ! 総員、耳を貸さないでくださいッ! これはただのアンデッドです。後退しつつ、全周防御を維持せよ!」
……そして、切れ切れ切れぇぇえ!
「「お、おおぅ!」」
「おーさすがは騎士」
判断が早い。
そしてベンウッド君に至っては、騎士たちに率先垂範すべく、自ら剣をふるってアンデッドの首を切り飛ばしていく。
すると、
その姿を見た騎士達が、我も我もと次々に剣をふるって生徒たちを切り伏せていく。
「や~るねぇー」
ま。
これが、
生徒肉だから多少は躊躇するかと思ったが、そううまくはいかないらしい。
バラバラと吹っ飛ぶ骨を見て、ちょっと感心する。
「だ・け・ど、まだまだいるよー!」
いけいけー!
腹の中にため込んだ生徒肉に、冒険者の骨がだいたい十数体。
この教室だけに限って言えばかなりの数だ。
その大群をもって、騎士に果敢に挑んでいくアンデッドは中々頼もしい!
いいねいいねー。
普段は「私」のいうことなんかガン無視するけど、今日の突撃は格別だ! 獰猛な叫び声をあげて果敢に騎士に飛びかかっていく。
「いいぞ、いっけー。突進! 「私」のために突撃だぁぁ!」
──う゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛!
もちろん、こっちの指示なんてまったく聞いていないんだろうけど、アンデッドは本能的に生者を襲う。
だから、唸り声も頼もしく、数で圧殺せんとする生徒アンデッドたち!
「──……とはいえ。やっ〜ぱり、腐っても騎士は騎士だね。態勢を立て直すと強いなー」
部隊が半数近くが死傷したというのに、いまだ士気を保ったままなのも驚愕。
そして、最初はあれほど優勢に見えたのだが、十数体もいたアンデッドが見る間に打ち取られていく。
さらには、防御戦闘を継続しつつも、じりじりと焦ることなく後退していく様をみて、感心を通り越して感動すら覚える。
「はー……。ちょっとこれは予想外」
「はっ! 舐めないでほしいですねぇ! 我らは近衛騎士の教導隊です! アンデッドごとき遅れをとると思いましたか!」
うん、まぁ──ね。
ズバーン!!
「おぉー!」
言うだけの剣技を見せるベンウッド君。
容赦ない剣裁きで、小さなゾンビも、女性型骨格のスケルトンも躊躇なく切り飛ばして、寄せ付けない。
「いやー、さすがは騎士様だね」
パチパチ!
重装甲に重武装!
そして、
「だけど、まぁ……
「な、なにぃ! 負け惜しみを」
や。
ちゃうちゃう。
負け惜しみでもなんでもないしー。
そもそも、君たちはなにか根本的に、重~大な勘違いをしているよ。
「生徒アンデッドは確かに奥の手だけどね。それはあくまでも
「は?」
つまりー。
使うのは大前提ではないということ──。
本命は別にあるってこと。
「ようするにさー。勝ち筋ってのはさ、最初から決まってるものだよ──」
例えば、
間抜けどもが部屋に入ってきた時点とかにね、
「──つまり、もう勝負はついてるってことー」
「は? な、なにを言って?」
「いや、何を言って──とかじゃなくてさ。ほら……、もう忘れてるかもだろうけど、
よーく見てよ、ね♪
「は?」
「「「あ、あしもと??」」」
全員が、足元……??
と、「私」の言葉に、首を傾げたまさにその瞬間。
カチッ♪
……軽やかな音が部屋に響く。
「な! し、しま──」
瞬間、
細目のベンウッド君が目を見開くほど驚愕してくれた。
「あー……これこれ。この瞬間だよ」
この間抜け面!
はー、ほんまミミックやっててよかったー。
「──と、いうわけでー。ちゃんと前見て歩こうね~♪」
ばいばーい。
「ちぃぃ!」
「つーかさー、後ろ向いて防御しながら後退したら、そら踏むって」
そこら中にトラップがあったのもう忘れたのー?
そも、わざわざ自分らで、注記までしたくせにさー。
「……ま、次から気を付けてねー」
次はないだろうけどさ♪
「
「ぐ、ぐぉぉお! 全員、たい──ぐぁぁあ!」
ジャキジャキジャキーン!
「ひぎゃぁぁああ!」「むぎゃゃぁぁああ!」
刹那、
床に設置してあった『槍罠』と『ベアトラップ』が同時多発動。
そのまま、一塊になって後退していた騎士をまとめて貫いて床から天井に打ちつけた。
あのベンウッド君さえもベアトラップに思い切り食いつかれて血だらけになっている。
「ぐぁぁぁあああああ!」
「あははー。いったそー」
そして、美味いっ!
──ぺろ~りと、天井から降り注ぐ血肉を舌で受け止めると、美味なる味に舌つづみを打つ。
「いやー……。苦戦した後の一杯はたまりまへんなー」
ぐび、ぐびっ!
「うめ、うめっ♪」
ぷはー。
「サイコー」
「が、ぐが……」
「げほっ……」
その舌で受け止める血の先には、未だ天井でピクピクしている騎士たち。
もはや血をしたたらせるだけの肉袋と化しているが、
装甲のおかげで即死とはいかなかったみたい。でも、あれじゃーねー。
「──ま、トラップ増々の部屋だからね。入った時点でもう負け確定なのよー」
今回は連中が勝手に見落として踏んでくれたけど、
他にもこっちから起動される方法もある。
そして、トラップの配置はそれを見越して、ほぼ全てが連動連携している。火力と連携させるのは、罠を仕掛ける基本なのだ。
というわけで……。
「たいした種明かしじゃないけど、こーいうことー」
納得した??
「は、はは……。ぜ、全滅? 見過ごしたトラップに引っかるとは、なんたることでしょうか」
「お。YOUはまだ生きてるんだー」
息も絶え絶えのベンウッド君。
まぁ、食らったのはベアトラップだしね。
そして、彼だけは辛うじて生きのび、自分たちの判断ミスに気づいてくれた。
「いやはや、くくっ。まさか、最初から詰んでいたとは驚きました」
うんうん。
「いい線はいってたよ。他の部屋はあれで正解」
罠と爆破の相性は最悪なのだ。
「なるほどなるほど。であればこれはなんとしても報告したいところですねー」
「あはは、させると思うー? そも、その状態でどうやって帰るのさー?」
片足は完全にベアトラップに食い込まれ身動きできないベンウッド君。
生きてはいるけど、それだけだ。
しかし、あれだね。いっそ、全部『槍罠』にしてもよかったかな。
ま、これはこれでありか。
「はは! これしき、我が騎士団のシゴキに比べれ──ぐぅぅう……」
「あーあー。無茶しないの。肉が千切れるよー」
まーあとで、どのみち引きちぎるけどねー♪
ベアトラップに足をガッチリ食いつかれたベンウッド卿が、顔中から脂汗をたらしながら皮肉げに顔を
挟まれただけとはいえ、人間用のそれは超頑丈だし、構造上自分ひとりでは絶対に外せないようになっている。
「しかし、こうなると騎士も形無しだねー」
「えぇ、まったくです。見苦しい所を……。しかし これを全部アナタ一人で?」
「えへへ♪」
自慢の一品です!
「な、なるほど。これでは生徒が丸々行方知れずとなるわけですね。……ちなみに生存者は? まさか、全部食べたなんていいませんよねー?」
「いや? 食ったけど」
みんな美味しかったよー。
残りは干物にした。
「な、なんたる!!……くっ、これでは最初から何の意味もないことをしていたことになるではないですか! オマケに捜索にきた我々が、このざま──なんとまぁ、間抜けなことでしょうか」
「やー。そりゃしょうがないよ」
そのために皆殺しにしてるんだもん。
あと、
四方八方からアンデッドに襲われちゃ、意識もおろそかになるってものだ。
そして、そのための罠だ。
そのためのミミック軍団だ。
そうして意識を別に向けさせて嵌めるのは、「私」、ミミックの得意とするところだよ。
なにせ、それが商売なもんでねー。
「ふ、ふふふっ。しょうがない、ですか……なるほど、たしかに仕方がないですね」
うん。
「で──どうする? せっかく頑張った記念に、お話には付き合ってあげたし、最期に選ばせたげる。……一瞬でバリバリ食べられるコースか、じっくりバリバリ食べられるコースかー、どーするぅ?」
おススメは、
じっくりバリバリのコ~~~~スぅ!!
「は、ははは。食べられるコース以外は?」
「んー。干物とか?」
あとは、煮物とか焼き物か揚げ物。
どのみち食うけど。
「なるほど──干物ですか」
「うん、ベーコンとかジャーキーとかスルメー。色々あるけど、希望はー?」
どれも一長一短。
みんな違って、みんなうまい!
「ははは! それはそれは────ま、どれもゴメン被ります、ねッ!!!」
ん?
急にどうし────って、うそぉぉ!
「そ、そー来たか!」
「最初に言ったでしょう!」
ブチぃぃッッ!
「──舐・め・る・な・とォォオオオ!!」
「ヒュゥ♪」
なんとまぁ、ベンウッド君ってば、ベアトラップに食いこまれた足を自分で切断!
そのまま、ワンステップだけで、盾を大きく構えて一気に突っ込んできやがった!!
たしかに、片足がなくとも動けなくはない。
そして、この教室は広いと言えどもせいぜ15×15程度。騎士が本気で間合いを詰めればまさに一瞬だ。
「──ははーん。特攻する気だなー!」
「柄じゃなんですけどねぇ!!」
ははっ。そうみたいだね。
斜に構えて
「だけど、その意気や、よーし!
「おぁっぁあああああああああ!」
苦悶の脂汗を流しながら、シールドバッシュ気味にケンケンッと、突撃するベンウッド君。
「ちぃっ、意外と速い!」
片足と侮るなかれ!
しかも、被弾面積が減った分、彼の盾が身体を完全に覆って弱点を貫けない──!
……否ッ!
「そこだぁぁあ!」
バキィ!
突撃するベンウッド君を舌撃&グラハム君ソードで真っ向から
「ん、なぁにぃー!」
た、盾だけ?!
いない?!
「ははっ、囮です! 真似をさせてもらいましたよー!」
「んな?!」
──う、上だとぉ?!
いつの間にと見れば、
盾を足場に、高々と跳躍したベンウッド君が片足がない状態で、天井すれすれを舞い飛び──……そのまま肉薄してきたではないか!
「おま! リーデルちゃんブービーのやり返しってことか──……ムギュー!!」
いでで!
の、乗るなー!
「ふ、ふふふ、どうです?! これだけ接近すれば、その舌は使えないでしょう!」
「ぬがー!」
や、やられた!
いつぞや、野武士にやられたあれだ!
「ど、どけー!」
「どきませんよ!」
ガスガスガス!
「いだ、いだ、いだだだ!」
至近距離で何度も剣を突き立てられ、穴が開く。
「どーだ。死ね。死ね! 死ね! しねしねしねしねしねしね!」
──ドガスガスガスガスガスッ!!
いで、いで、いでででで!
「あ、穴があくからやめー!!」
ゼロ距離で剣を突き立てるベンウッド君!
彼の剣は、グラハム君ソードほどではないが、これも結構な業物らしい──結構な勢いで身体に穴が開いていく……。
「死ぃねぇぇええ!」
くっそー!
「いってーなー、この野郎!」
「ぐぅぅ。これだけ刺してもまだ?! な、なんなんですこのミミックは! 不死身ですか?!」
ちゃうわ、ボケッ!
「ぜ~んぶ、子供たちのおかげだよ!」
なんのために食い溜めしたと思ってんだ!
主に血肉が美味しくてね!
満腹ボーナス中って奴だっつーのー!
「そして、どけ、ばか!」
──ドスっ!
「ぐがぁっぁ!!」
口を塞ごうとのしかかってきたベンウッド君を、箱の中から
「うぐぐ……!」
「へ、へっへーん。同じ手は食わねーんだよ!」
おーいてぇ。
だけど、その乗っかり攻撃への対処は前の野武士の時に学習したっつーの。
つまり、
「口を閉じられたら、中から攻撃してやればいいのだー!」
あーっはっはっは!
いずれも回復していくが、それが追い付かない孔もあるので、その穴から舌撃を繰り出せば死角からカウンターできるのだー!
「ゆーて、「私」も結構いたいんだけどね!」
なんせ自分の口を内側からぶっ刺してるわけだし!
「が、は……こ、これは、不覚……」
そして、真下から引き裂かれたベンウッド君がついに撃沈。
ズシャリと倒れた。
「あーもー……。いってーわー」
勝てたからいいけどさー。
「上に乗られて、穴だらけにされたぜー」
な~んか言葉尻だけで見ると、すっげーやらしいな……!!
「ま、それでも──しょーーーーーーーり!」
お読みいただきありがとうございます!
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次回、
最期の最後……?!
感想も返してないけど、みてます!
ありがとうございます