ミミック転生~人食い箱の食味記録~   作:LA軍

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第72話「責任の所在(※)」

「くそ! なんて日だ……!」

 

 まさに最低の日!

 まさに軍隊の汚辱!!

 

 よりにもよって訓練課程の最終段階の見習いたちが誰一人。

 そう。誰一人として……。

 

「……なーんで誰一人として戻ってこんのだぁぁああ?!」

 

 深夜から日出に差し掛かるころ。

 黎明の空のもとでレイラは顔面を真っ青にさせていた。

 

 だってそうだろう?

 

 これで送り込んだ小隊が3個……。

 計75人(・・・・)が、未だ誰一人として戻ってこないのだ。

 

 ──どーなってんだよ!!

 

「あ、あれほど、気をつけろと! 何かあったら引き返せと──! 最悪は一人ででも帰ってこいと……!」

 

 あ。

 いや、最後のこれは言っていなかったか?!

 

 って、ち、違う違う!

 そんなの言わなくてもわかるだろ!!

 

「くそがぁぁあ! どいつもこいつも無能の塊か?! な~~~んで、全員が全員で消えるんだよぉぉおお!!」

 

 死ねボケ。

 くそ馬鹿どもがぁっぁあああ!

 

「はー、はー、はー」

 

「あ、あのレイラ副長……?」

「うるさい! 話しかけるな!」

 

 不安そうな顔をした第4小隊長が、おずおずと話しかけてきたがその手を払いのける。

 今は冷静でいられるほうがどうかしている。

 

 ……だって、75人だぞ、75人!!

 小隊換算で3個!

 

 先遣隊はゲーツ隊長の指揮下だとして、未だに帰ってこない3コ小隊75名は、レイラが独断で送り出した人員だ。

 

 つまり、責任問題だ。

 なにせゲーツ隊長は、そんな指示を一言足りとも発していないからだ!

 

「ぐぅぅ……ど、どうする?! どうする?!」

 

 どうすればいい?!

 

 最後に技量優秀の第一小隊送り出して、もう何時間たった?

 真夜中に送り出したから、最低でも、二刻……。そして、連中には、何があってもまずは半刻で戻れと言い置いておいた──つまり、予定時刻を4倍以上は過ぎている計算だ。

 

 だのに……!!

 

「どうなっているんだ?! なぜ誰も戻らないのよ?!」

 

 こ、こんなの想定していない。

 そして、どうすればいいんだ?

 

 あとどのくらい待てばいいのか?!

 

「……くぅぅ。せ、せめて王都かその近郊であれば応援を呼べるものを──」

 

 ここは王都から離れすぎている。

 そして、王国軍の駐屯は一切ない。王都の権力からは大きく離れた土地なのだ。

 

「なら、外部に伝令を出す? いや、それでどうなる? そも、何と言えばいい」

 

 

  ──近衛騎士の教導隊を調査に出したものの、誰一人未帰還。

  支給増援をおくられたし。……ってか?

 

 

「馬鹿か!! そんな子供のお使い以下の伝令があるか!」

 

 何もわかりません。

 そして、誰お帰ってきません。どうしましょーって文章だぞ?!

 

 

   「なんの成果も得られませんでしたー♪」

 

 

 ……って、そんなのを公然と言えってのか?!

 

「そんなのできるわけねーだろ!!」

 

 だったい、言ったとしてどうなる?

 実質、兵隊が一日と絶たずに行方不明になったって言ってるだけだ。

 

 そんなもん、どうせしばらく様子身か、まずは自分で確認しろって言われるに決まってる! 

 

「そして、私は確認しているんだ! すでに、すでに、すでに、」

 

 何度も何度も何度も、

 

「──何度もぉぉおぉおお!」

 

 そのための偵察と伝令だろうがっぁぁあああああ!

 

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

 見習い騎士団の指揮官クラスように割り当てられた天幕の中で猛牛のように叫ぶレイラ。

 そこ声が漏れているのは百も承知だが、知るか!

 

 ──知ったことかぁぁぁああ!

 

「……はぁはぁはぁ」

 

 くそっ!

 

 最後に怒気を吐き出して今一度頭を整理する。

 

 そうだ。

 整理だ。現状をよく見直せ!!

 

 ──今、レイラは窮地に立ってる。独断専行と、無意味な確認作業のせいで貴重な人員を75名も消息不明にしてしまったのだ……。

 

「いや、まだだ! まだわからないともさ」

 

 だって、そうだろう?

 まだ、誰も帰ってきてないんだもんな!

 

「そーさ、まだ内部で迷っているだけだ!! そうだろう?!」

「え? あ、あの……」

 

 ちっ。

 まだいたのか!!

 

「なにか!!」

「い、いえ!? なんでもありません!」

 

 はっ!

 なら黙ってろ!!

 

 なんでもないわけないのになんでもないなら黙ってろぉぉぉおおおおおお!!

 参謀にもなれんか、こんな女のガキ一人じゃ!

 

「がー!! うがぁぁああああああああああああああああああ!」

 

 わかった、わかった! もういい。もういい!!

 

「良し、決めたぞ! 諸君」

 

 ……王都に伝令は出せない。

 そして、他の戦力にも頼れない。

 

 なにせここはクソ田舎だからな。

 本来、こういう時は地元の貴族を頼ればいいのだが、ここは見てとおりのクソド田舎中のクソオブクソのクソ村だ。

 

 そして、クソ田舎には、クソ在郷の騎士がクソひとりいないときた。

 いるのは、クソ村民の代表のクソ村長のみ。つまり、クソが収めるクソ僻地だ。

 

 ……ならばどうする?

 

 通常ならば、こういうときは金を積んで民間を頼るとかあるだろう。

 商業ギルドとか──って、そんなもんねーし! クソ田舎だっつってんだろうが!!

 

「なら冒険者ギルドか?」

 

 …………はっ!

 うはははははははは!!

 

 

  バーン!!

 

 

 ぼーけんしゃギルドだぁぁあ?!

 

「それが一番ありえねーよ!」

「ひっ!」

 

 ガキが怯えるなか、テーブルにあった書類を跳ね飛ばす。

 

 だって、冒険者ギルドだぞ。

 ぼーーーーけんしゃぁ!

 

「馬鹿が!! そもそも、そのギルドが一番の問題じゃねーか!」

 

 クソが!

 クソが!!

 クッソがぁぁぁあー!

 

「あーもう、いい!!」

 

 わかったわかったわかったつーの!

 

 結局、自分の目で見るしかないってことだ。

 

「こーのクソ頼りない、後方支援担当の技量未熟の、女子率の高い第四小隊を引き連れてな!」

「は、はいぃぃ!」

 

 ふんっ。

 

 ……っていうか、こういう時のためにベンウッド卿がいたんじゃねーのかよ!

 あのくそ隊長が、よりによっても、伝令最適の紋章官をつれてダンジョンに潜ってんじゃねーよ!

 

「クソが!」

 

 散々脳裏で怒気を吐き出しておいてなんとか怒りを鎮めると、小さく嘆息。

 そして、

 

「おい、貴様ぁ!」

「は、はいぃぃぃいッ!」

 

 ふんっ。

 返事がおせーんだよ。

 

 ……だが、まぁ、こんなんでもいないよりはマシか。最悪盾にはなるしな。

 

「今すぐ、全員を集合させろ。……これより、隊長以下、未帰還の小隊を捜索する。──復唱!」

「は、はい! 集合ののち、隊長以下の捜索任務を開始します!」

 

 うむ、結構!

 

「わかったら、駆け足! 朝飯までにはケリをつけるぞ!」

「りょ、了解です!」

 

 すでに上り始めた朝日を背景に、駆け出していく少女を見送る。

 これで第4小隊の準備はいい。

 

 さて、

 

 

 

「いくか……」

 

 

 

 なーに、すぐに戻れるさ。

 隊長だって、中にいる。あのベンウッド卿だって、どうせヘラヘラ笑って中でサボってる。

 

 そして、ウチの子供たちもどーせ迷ってるとかだ。

 

 ……まったく、そろそろ実戦に出せるところまで来ていると思ったが、まだまだだな。

 

「全員、戻ったら再訓練してやる」

 

 もちろん隊長もベンウッド卿もだ。

 全員で、王都まで駆け足だ。

 

 よーし、そうしよう!!

 

 そして、

 そして──そのあとは、いつものように練兵場に汗だくで戻って、兵舎でシャワーを浴びて…………。

 

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