ミミック転生~人食い箱の食味記録~   作:LA軍

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第73話「101匹目」

 じゃーーーーー♪

  じゃーーーーーー♪

 

 暗闇のダンジョンの奥。

 

「……グビ、グビ、グビッ!」

 

 ぷはーー♪

 

「あー、うめーーーーーー!」

 

 天井から(したた)る血のシャワーを大口を開けてうけて、美酒のようにぐぃっと舌で口元をぬぐう。

 

 いやー……。

 この一杯のために生きてますなー!

 

『……なにしてんのよ?』

「あん? あー、ミユちゃん、こんちゃーっす♪」

 

 ご機嫌いかが~?

 

『こんちゃー♪ じゃないっつーの。何してんのよ、これぇ!!!…………うっわ、ひっどい死に方』

 

「そう? そんな酷いかなー? マシな方じゃない?」

 

 ちゃんと原型残ってるしー。

 そんで見てのとおり、血飛沫もびゅーびゅー♪ 噴いてるしー。

 

『マシの基準がおかしいのよ! 見てたわよ! 即死させないように、トラップ発動させてギリギリのところで……おえぇぇ』 

 

 えへへ。

 見てたんだー。

 

『……照れるな。褒めてねーよ、一個も褒めるとこないっつーの』

 

 吐き気(?)をこらえるミユちゃんの前には、槍罠に真下から貫ぬかれて全身穴だらけになり、

 それでもまだ、ビックンビックンと痙攣している新鮮な少女兵士がいた。

 

 首から下がっているドッグタグには第4小隊長の文字。

 

「みてみてーどうやら、この子、このなり(・・・・)で小隊長、指揮官なんだってさー」

 まぁ、もう関係ないけどね。

 

 雑魚の指揮官は結局、雑魚ということで──。

 その雑魚からあふれる甘美な血を、あますことなく受け止め、

満足気にグルーミングする「私」。

 

 うん、ガキは血もうめぇわ。

 

 じっさい、美味く仕留めたでしょー?

 内臓のなかでも、胃とか胆嚢を貫くと途端に苦味がでるんだよね。そこを躱して、即死しないギリギリを狙う──。

 

「──これが実際、難しんだよー? なんせ、ガキってすーぐ死ぬからね。……こう、即死と死なないギリギリのライン(?)を狙ってだね、サクッとうまく串刺しにするのってマヂで技術ぅ~」

 

 まーた、微調整が難しいんだこれが。

 

「あ。でも、あれかー……! ミユちゃんがでてきたってことは……。げーー、これ、もう死んでるのかー。残念……」

 

 ツンツン突くと、ガキんちょ小隊長はビクビク動く。

 反射かなー?

 

 ミユちゃんが出現するのは、意識の有無とかにかかわるみたいだしね。

 

 あーあ、

 泣き言を言うガキを見ながら、甘~い血を賞味したかったのになー。痛いよー、ママーママーって言わしたーい。

 

『なに残念がってんのよ、このド変態がーーー!』

 

 変態~?

 

「失敬だなー。ボカぁ、何もやましいことはしてませんよ!」

 キリッ。

『曇りなき(まなこ)で宣言すんな!……目ぇキラッキラじゃねーかよ!! つーか、死体を弄ぶような奴はすべからく変態っていうの!』

 

 だから失敬って言ってんの!!

 

「死体じゃないよ! ギリギリ生きてたしー」

 

 うまく半殺しにして、

 血を絞るのが今回のテーマですからね!

 あと、これ、ご飯だからね!!

 

『今は死んでるでしょ!』

「そりゃそうだけどさー。それも、ミユちゃんが出てきたせいで死んだんじゃんー」

 

 つーか、

 死ねよ。

 

『…………いま、アタシに言ったー?』

 

 言った。

 超言った。

 

「君が来ると死んじゃうだもんー」

『ち、ちがっ! アンタが殺したんでしょー!! アタシが出てくるのは不可抗力だし! つーか、ずっと見てたって言ってるでしょー』

 

 あーはいはい。

 

『ムッカー! なんか人を死神扱いしてな〜い?! 言っとくけど、アタシまだ、誰も殺してないからね!! ゴブリンですら倒せないわよ!』

「つまり、ゴブリン以下ー」

 

 

 ぷぷー。

 

 

『ッッッ……コ、コイツ、むっかつくわねー!!』

 

 地団太地団太!

 あはははは、ゴーストダンスだー。

 

「だいたい、この子もほら。……ミユちゃんがうっせーから、サクっと仕留めてあげたんでしょー?」

『嘘つけ! めちゃくちゃ、ビクビクしてたじゃん!』

 

 そりゃね。

 急所外して仕留めたしー。

 

「でも、丸飲みはしてないよ!」

 

 キリっ!

 えっへ〜ん!

 

『えばれることか! アホッ! サイズが大きいから飲み込めなかっただけでしょ』

 

 チッ。

 ばれてーら~。

 

「まー、たしかに身長が140を超えるとさすがに入らないからねー。……せめて、半分にするか、頭か足を落とさないと、一口にパクっと入らないし」

『入れるな、入れるな! 人間をナッツ感覚でパクつくな! どうしても食べないなら、せめて、きっちりかっちり殺してから食べればいいでしょ!』

 

 えー。

 やだー。

 

「それじゃ、生きたまま喉の奥で暴れてくれないじゃん!」

 

 そんなん。

 ガキを生きたまま食う意味なくね?

 

 ボカぁ、ガキがさー。

 暴れて叫んで、ぎゃーぎゃー泣きわめきながら、手足で必死に喉奥でもがきながらも、ついには喉奥で圧搾されて口から内臓を吐き出し、自分のモツとゲロでおぼれながら死んでいく様を口の中でじっくり味わうのが、最高に楽し……ごほんっ、美味しいのだー!

 

 頭を落としたら即死だしー、

 半分にしてもほぼ即死だしー、

 

「……あ。待てよ、足はありかも!」

『思いつくな、思いつくな! そして、止めろ止めろヤメロー!』

 

 えー。

 一回くらいいいじゃん。

 

 ちびっ子サイズにぶった切ったら、喉で暴れるかどうか────よし、今度やろう!

 

『やめろっての!!』

「いーやーだー」

 

 まぁ、多分期待したほどでないとは思うけどねー。

 

 こう、チビっ子を丸飲みするのはさ。

 間抜け面した五体満足なガキがさー、

 無垢で純粋で汚れをしらない、可愛い可愛いガキがさー、

 わけもわからず、なんにも悪いことしてないのに、無慈悲に圧搾機のような喉奥に押し込められて、そこから必死に抵抗するのが美味しいのだーーーーー!

 

 ギャハハハハー!

 

 そう、無垢で穢れを知らないガキがさー……げっへっへー。

 

『……何ちゅう顔してんのよ』

 

 してる?

 どんな顔だろ。

 

「ま、その点、足を落としただけだと、ただの抵抗なんだよねー」

『抵抗に、ただもなにも、ないわよ』

 

 ちっちっち。

 まだまだ分かってないねミユちゃんは。

 

「踊り食いってのはさー。こう、命を喉だけで圧殺する楽しみが──」

『あーあーあーあーあーあーーーー! 聞きたくない、聞きたくなーい!』

 

 聞けよ、ったくもー!

 

『丸飲みしなきゃいいってもんじゃないの! みてよ、この子──まだ子供なのよ!!』

 

 あーん?

 

「……あぁ、たしかに若いね」

 

 罠から外した──第4小隊長とかいう少女兵士の首を、ベキッっと! ひねりちぎって、至近距離でまじまじ観察すると確かに若い。

 苦し気に血の涙を流したその生首は……歳の頃は10代前半か、中頃くらいかねー?

 

 見た感じ、ミユちゃんと同年齢ッポイね。

 

「…………え? もしかして、だから見逃せとかいうつもり?!」

 

 攻めて来たのコイツ等やで?

 

『そ、そうは言ってないけど──』

「いやいやいやいや、言ってる言ってる! ほぼ言ってるから!」

 

 ないないないない!

 さすがにないわー。

 

「えー。ドン引きぃ。向こうから攻撃して来たのに、正当防衛すら認められない感じ~?! じゃあーなに?! 「私」に死ねっていうの?!」

『そ、それは──……あ、いや、ちょっとまってまって!』

 

 ん?

 なに?

 

『……いや、死ねよ!! いま、一瞬納得しかけたけど、お前は死ねばいいじゃん!!』

「ひ、ひっど……」

 

 えー……?

 なんなん?

 

「──「私」ってなんかしたぁ?! とくに君にそこまで言われるほど、なんかしたっけー?!」

『いや、食っとるがな!! ガッツガツと食っとるがなぁぁああ! アタシも、人類も、チビッ子たちもぉぉお! なにをガーーン! みたいな顔しとんねん』

 

 えーーーー……。

 食っただけでここまで言われるとかぁー……。

 

「さすがにショックー」

『いや、なーーんでこいつはショック受けてんのかなー』

 

 いや、受けるでしょー。

 

「君は今までに食ったパンの枚数覚えてるのー?」

『どっか聞いたセリフはやめろ!!』

 

 むー。

 年頃の子は難しいねー。

 

「まぁいいやー。ミユちゃんと話てると疲れるだけだしー」

『……え? なんでアタシが聞き分けのない恋人みたいな雰囲気で否定されてんの?』

 

「こっちのセリフだなー」

 

 なんか疲れて来たので、ぽーい、と弄んでいた生首を保管場所に投げる。

 すると、ドスンッとガキ頭のくせに中々重厚な音を立ててその山(・・・)の上に鎮座した。

 

「……おー、ナイッショー♪」

 

 見てみて、ミユちゃ〜ん!

 

『見ない見ない、見な〜い!!』

 

 そう言わずにさー。

 ほらぁ!

 

「ちょうど100匹目。──本日の成果100匹の騎士見習いの首でつくった、生首ピラミッドの完成で~す♪」

 

 いえーい!

 

「──これぞ、まさに首塚ッ」

 キリリッ!

『…………そーいうとこやぞ』

 

 さ、さーせん。

 食べ物で遊んじゃダメですよね……。

 

『だから、そーいうとこやぞ』

 

 はいはい。

 ごめんごめん。

 

「あ、でも、一個訂正」

『あーん?』

 

 ……だから、そんな目で見るなや。

 

「ほら、正確には最後の小隊は26匹だったので、合計で101匹の騎士団だったわ」

 

 ワンちゃんもビックリだね!

 

『そんな訂正どーでもいいわ! なにが101匹だ! 子犬じゃねーんだから!……ってあれ? 100……え? 101人?』

 

 ん?

「…………あぁ! 合ってる合、ってるよ」

 

 間違いに気付いたように、

 ミユちゃんが生首を指折り数えている。

 

『ひーふーみー……あれ?』

 

「──や、何回数えても、101匹で合ってるよ」

『え? でも……100人分しか」

 

 うん。

 そーだよ。

 

そこの生首(・・・・・)は100匹分だよー。あと一匹は、」

 

 ……ほら、これこれ(・・・・)

 

『いやいや、これこれって…………うきゃぁ! な、なによそれぇっぇえ!』

 

 え?

 なにって言うか……。

 

101匹目(・・・・・)だけど?」

 

 ズルリ……。

 

 しめった音とともに生首の下から引きずり出したのは、豪華な鎧を着た美人さーん。

 

『うえ? だ、だれぇ?!』

「え? 知らない? ほら、この子らの総指揮官。見ての通り女騎士さんでーす! いえーい♪」

 

 ブイブィ!

 

「はい、ポーズ!」

 

 意識のない彼女をズルーリと舌で釣り上げてから、敬礼の恰好をさせてみたー。

 

 えへへ、程よく鍛えられてて、やーらかいね~。

 ペロリと舐めちゃうぞー。

 

『ちょ! ちょっと、なにしてんのよ! し、指揮官って、まさか、さっきまでこの子たちを引率してた人?!』

 

 そそ。

 たしか、副隊長さんだっけ?

 

「いや、引率の先生かな?……ま、なんでもいいけど、偉そうに子供たちを指揮してたくせい、コイツが一番ザコで間抜けだったよねー」

 

 ぷすすーっ。

 

 今思い出しても、ホント雑魚過ぎて笑いそうになったわ。

 ガキどもが次々にトラップに嵌っていくのをみて、この女騎士もパニックになってやんの。

 

 そして、そうなったらそうなったで、一人ででも逃げればいいものを……。

 

 案の定──『騎士の矜持だー!』とかなんとか騒いで、

 そんで捕まっているんだから、世話ないぜー

 

「おかげで、一発ケーオーさせてもらったよ」

 

 まったく、矜持でやられてちゃ、世話ないね。

 こっちとしては扱いやすいからいいけど。

 

『そ、そんな……。この人が指揮官って、ことは、ま、まさか──』

「うん。コイツで最後ぉ。……突入してきた騎士団は見事に全滅でーーーーーーーす!」

 

 ぎゃーはははは!

 騎士団肉の100人前、デリバリーさ~んきゅー!

 

「やー。どれもこれも、美味しそうだこと。これで100匹のガキを心置きなく好きに食べれるってもんですよー」

 

 魔法使いほど、ポイントは高くはないけど、それでもほどよく鍛え上げられた肉はかなりの上質。

 そこらの冒険者には出せない味だ。

 

 なにより、どいつもこいつも若くてピチピチ!

 超美味そ〜う!!

 

 それをさー、へへっ♪

 100人前とか、もはや夢のようじゃね?

 

「贅沢にビュッフェスタイルで食い散らかしてやるぜー!」

 

 オマケにメインディッシュは女騎士ときた!

 

 ──あ、ビュッフェいうても、「私」立ち食いはできないんでしたっけー。

 

 箱だけにー。

 ぎゃははははは!

 

「それより見てよ、これ! この子って、いわゆる女騎士ですよ、女騎士! つまり、騎士! ナ~イト!!」

 

 さっき、「私」の部屋をボッコボコにしたあのクソ騎士の隊長と同じ騎士ですよー。

 

『き、騎士って。それを強調するってことは、ちょっとまさか……』

 

 うん。そのまさかです!

 

「ボカぁねー……。コケにしてくれた奴と部屋をボッコボコにした奴は、ぜっっっぅたいに許さないと決めてるんだよねー」

 

 なので、この女騎士もそりゃもう、じっっっっくり、ゆっっっっっっっくり、たっっっっっっぷりといたぶりますよー。

 

 ──うひひひっ。

 

 足からバリバリ程度じゃすまさねーぞぉ。

 

 時間をかけて、かけて、何日も何ヶ月も何年も、じっくりじっくり、じっっっ〜〜〜くりと、丹念に……ね♪

 

「そのために最後にとっといた(・・・・・)んだしねー」

 

 さーて、どうしてやろうかなー。

 

  煮よかい。

   焼こかい。

    揚げようかーい!

 

『うっげー。……前から思ってたけど、アンタ趣味悪いわよ。なに、どうする気よ!』

 

 どうするって、そりゃもー……。

 

「──まぁ、最低でも部屋と同じ目にあわせてやりたいねー」

 

 爆弾で吹っ飛ばすとか、

 爆弾でぶっ飛ばすとか、

 爆弾でかっ飛ばすとか?

 

「まぁ、それだとあっさりすぎるから──ほら、ここは時間をかけて、た~~~~っっっっっっっぷり、身体にお仕置きしてやろうかなーってね」

 

 うひひひっ。

  ぅひゃ~はははは!

 

「ぎゃーーーははははははははは!!」

 

『お、おぇぇ……。コイツはマジでやるからなー。つーか、この騎士さんは関係ないじゃん』

「いやいや、関係大ありやで?」

 所属同じで、

 見習い連中と違って爵位のあるれっきとした騎士やで!

「あー、あとミユちゃんが勘違いしてそうだから、今のうちに教えとくけどさ」

 

『へ? 勘違いって……』

 

 うん。

 すっごい勘違いしてると思うけどさ。

 

 

 

「コイツさ────」

 

 

 

 

 

 

 

 ────まだ生きてるからー。

 

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