ミミック転生~人食い箱の食味記録~   作:LA軍

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第78話「捕虜取り扱い条項」

 しーはー

  しーはー

 

「げーっぷ♪」

 

 おっぷ、ちょっと喰いすぎたー。

 

『ゲーーップ、喰いすぎたー……じゃないっつーの!』

「お! ミユちゃん、久しぶりー♪」

 

 最近全然見なかったミユちゃんが、かかと落としの姿勢で、目の前にいた。

 ……パンツ見えるぞ?

 透けてるけどー。

 

『久しぶり〜♪ じゃないわよ!! ずっといたわよ!!』

「あ、そうなん? 全然しらなんだわー」

 

 なんせ、最近はずっとレイラちゃんと一緒だったしー。

 

 いやー充実の日々。

 朝起きて仕事(・・)、夜ねるまえも仕事(・・)

 人間──……もとい箱は仕事してなんぼだよねー。

 

『嘘つけーー!! 見せつけるみたいに、ゲラゲラ笑いながら甚振(いたぶ)りやがってー。……うっげぇ、なんてひどい』

「いや、見せつけてはいないよ? 面白いから笑ってただけでさー」

 

 やー。

 だって、生命の神秘を感じたというか?

 

 レイラちゃん、めっちゃ頑張ってたもん!

 みてよ、これ!

 

「ぅ……ぁ、……は、ぃ」

 

 凄くね?

 

 ……………………まだ生きてるんだよ!

 これ(・・)で。

 

『ぅおえーっ! い、生きてんのこれ!?』

「うん、びっくりだよねー」

 

 つーか、これ(・・)言うなし。

 

 しかし、あれだね。

 ミユちゃんが出てきてるってことは、ほぼ死んでる?

 それか、意識がないっぽいねー。

 

『ひ、ひどすぎる。……い、生きたまま──内臓、うぉぇぇええ!!』

 

 うぉえぇえ。って君吐くもんないでしょ?

 あと、ここ「私」の部屋なんだけどなー。

 

『な、なにをしたら、ここまでできるのよ……!』

「えー? いや、そこまでじゃないでしょ? 痛くはないはずだし──」

 

 だって、麻酔……というか、ブレスが成長してそれなりの効果を発揮しているのだー。

 なんと、今は熟練度3!!

 

「い、痛くないわけないでしょ!」

「大丈夫、大丈夫! こうみえて、『毒の息』『麻痺ガス』の二種類をゲットしたのだー」

 

 毒でボロボロ。

 麻痺でビリビリ。

 

 その二つでとっくに痛覚なんか死んでるはず──知らんけど。

 

『そんなのわかんないでしょ!!

麻痺してるだけで痛いかもしれないじゃん!!』

 

 それはそう。

 そういや、すげー叫んでたな。

 

『そもそも、痛いとか痛くないのレベルじゃないから!……なんでブレスだけじゃなく食べてんのよー!』

「は? 食うでしょー?」

 

 肉やで?

 新鮮な生肉やで?

 

「生きたまま内臓食ったりとかしてみたかったしー。あと、どんだけカジカジして鮮度を維持できるかくらいは、試すっちゅうねーん」

 

 ガキ肉とかを、ゆっっっくり食う時の参考にしたいやーん?

 

 今度ガキを捕まえたときは、味わって食いたいしね。

 なるべく、こう……長時間、ピーピー泣かして食ったほうが絶対美味いと思うのよねー。

 

 野武士のときとは腹立ってたから味わかんなかったけど、やっぱり美味しい物は長時間味わいたいのが、人情ってもんでしょ。……あ、箱情か。

 

 まー、死んだら元もこうもないし、

 そんなしょっちゅうはやらんけどねー。

 

 あ、でも、

 レイラちゃんは別ー。

 

 コイツは騎士だもん。

 部屋とかボコボコにした隊長とかの責任はとってもらわんと──。

 

「しかし、そういわれてみると、たしかに『毒の息』も、『麻痺ガス』も単体だとイマイチだねー」

『いやいや、効いてる効いてる。どうみても効いてるから!』

 

 そりゃねー。

 

「だけど、威力はトラップに比べるとイマイチやん?……もしかして、熟練度とか、対象の耐性とかが関係してるのかもしれんけどね」

 

 つーか、一丁前に近接専門のくせにレイラちゃん、魔力あるんだよね──……ジュルリ。

 

『涎!』

「おっと、ついつい食べそうに」

『もうッ! けっこう食べてるじゃん! いっそ全部食べてあげて──みてらんないわよ!!』

 

 別に見てくれとは頼んでないよー。

 

「ま、そういうわけでブレスは主体で使うもんじゃないね」

 

 これありき(・・・・・)で戦うと、効かなかったときに手痛い反撃を食らうだろうし、せいぜい戦闘時の手コマ程度に考えたほうがよさそう。

 

 あんまし使い勝手がいいとはいえないね。

 

『ならもういいでしょ……。情報だってあらかた聞き出したじゃん』

「あーね」

 

 なかなか口の堅かったレイラちゃんも、「私」がじっっっっくり丹念に、丁寧に丁寧に丁寧に丁寧に丁寧に──聞くことで、次第に心よく話してくれるようになった。

 

 それによると、未だに「私」の存在は外には明るみになっていない様子──つまり、あの時逃したガキ肉は途中くたばったということだ。

 

 シギンス君もだね。

 

 ……ま、それはそれとして、

 外では結構な騒ぎになっているんだってー。

 

 まぁ……、王族(キングハム)が行方不明だしね。

 

『グラハムな』

 

 そのキン……グラハム君の捜索の第一波が近くにいたレイラちゃんたちだったそうだ。

 つまり、今後もドンドン来る可能性は高いみたい。

 

 ──望むところだね。

 

 あとはこのダンジョンのこととか周辺の話とかを長く談笑してくれた。

 最後あたりは、なんか聞いてもいないのに喋ってたね。

 なんか「ぁッ、ぁッ、話してないと、ぁッ、変になるー、ぁッ」とか、涎をたらしながら言ってた。

 

 ……なんでかなー?

 

『はぁ……。おおよそ、嘘はなかったわよ──だから、』

「えー。まだ話足りなーい」

 

 久々の女子との会話だよ?

 

 しかも、ボカぁこんなに生身の人と喋ったの初めてだもーん。

 さすがにレイラちゃんにちょっと愛着沸いちゃったー。

 

 あ、てめーは女子枠じゃねーからな? 生きてもいないし。

『なんも言ってねーわ!』

「あっそ」

 

 こっちのセリフだよ。

 

『……そんなことより、お願い。お願いだから……! アタシで知ってることなら、もう何でも話すから──』

 あーん?

「やー。ゆーて、ミユちゃんてクソ雑魚アホ冒険者やん?」

 

 その情報とトレード?

 は! ちゃんちゃらおかしいわー。

 

『ク、クソ雑魚アホ……って、な、なんも反論できないのがむかつくぅぅ』

 

 あと、貧乏な低ランクで、肉もイマイチー。

 

『……そして、味まで(けな)してきやがったわー。完食したくせにー』

「いや、お残しはしない主義なんで──」

 

 そう言う意味では、たしかにレイラちゃんもそろそろかなー。

 

 …………う~~~ん。

 そうだね、もういっかー。

 

「わかったー。じゃー、食べるけどさ。ミユちゃんは「私」が確認することあったら、ちゃん答えてよー」

『努力はする……』

 

 はいはい。

 

 まぁ、ゴーストとの約束なんて、泥棒と契約する並みになんの確証もないけどねー。

 ……ぶっちゃけ、ミユちゃんごときで知ってる程度の知識、レイラちゃんにかなうべくもないだろうし。

 

 よしっ。

 

「──じゃ、レイラちゃん」

 

 ニコッ。

 

「ぁぅ……?」

 

 足のほうからカジカジと

 頭のてっぺんからカジカジとどっちがい~い?

 

「……なるべく、おいしく食べてあーーーげるねっ!!」

 

 

 今までありがとねー。

 そんじゃ、いっただっきまーーーーす♪

 

 

「あーーーーーん」

「……ぁー」

 

 

 

  ブシュッ!!

 

 

「んっ!!」

 

 んんんー……!

 

「こ、これは────────」

 

 う、

(……う、うまーーーーぃ……)

 

 え?

 あれ?

 

「なにこれ──?!」

 

 もっぐもっぐもっぐ。

 もっぐもっぐもっぐもぅぐもっぐ…………もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐぐぐぐぐッッ!!

 

「ん……んんー!!」

 

 なにこれー!?

 

 ジュ、

 ジューーーースィィィイ……かつ、芳醇んんんー!!

 

「え? ええー、びっくりー。なんだろう。これ?!」

 

 もぐもぐ!

 

 え?

 ちょっとぉぉ!

 

「そ、想像以上にうまーい!」

 

 下半身をガブッ! としただけなのに、なんかすっごいうまみの爆弾ーーーーーー!!

 

「ええーうそぉ……。これ、あれかな? 味が濃縮されてるぅ──みたいな!」

 

 いやー。これは珍味枠だわ!!

 新発見だわー。

 

 レイラちゃんの味?

 

「いやいや、そんなはずは……」

 最初の何回か脅して千切って食ったときはここまでうまくはなかったぞ!

 

 ってことは、ここに至って旨味が爆発した??

 

「えー? もしかして、甚振(いたぶ)ると味が変わる的なぁぁ?!」

 

 あ、ありえるぅ!!

 

「……そういえば、タコとか、殴る柔らかくなって味がしみるって聞くなー」

 

 それと同じかな?

 タコがなにか知ら──以下略。

 

『ち、ちょっと……変な顔やめてよ』

「してねーよ」

 

 どんな顔だよ。

 ちょっと感動に打ち震えてるだけだよ──。

 

 今度、ガキを捕まえたら同じくしてやろう(・・・・・・・・)とか全然考えてないよー!!

 

『な、なら早く食べちゃいなさいよ!! みてよ、レイラさん、まだ上半身アンタから突き出してるからー!!』

「……ぁ、……ぁぁ……、ぁー」

 

 あー。

 ごめん。

 

 ガブッとした瞬間、あまりの美味さに、ちょっとフリーズしちゃったー。

 でも、ゆっくり食べさせてよー。レイラちゃん、今まで頑張ってたから、ほら慰労を兼ねてだね。

 

「あむあむあむー」

「ぁ、ぁ、ぁ、ぁ、……、……」

 

「──あんむッッ」

 

 ブシュ!!

 

「────っ」

「げーーーぷっ」

 

 

  ふぅ。

  サイコー

 

 

「ミユちゃん」

『……なによ?』

 

 

 にこり。

 

 

「ゲーーーーップ♡」

『んぎゃぁぁぁああ! な、なにすんのよ!』

 

 やー。

 ごめんごめん。

 

「ほら、幸せの御裾分け―」

 

 い、いや、

 マジうっめーわ。

 

 レイラちゃんさいこーーーーーー!

 

「見てた? 最後口から内臓吐き出して間抜け面してたけどさー」

 

 正直、

 みくびってたわー。

 

「ぶっちゃけ、多分、味の方はそんなだろうなーって思ってたわけよ!」

 

 時間はかけたけど、

 所詮、脳筋の女騎士やん?

 ジナちゃんや、リーデルちゃんとかみたいに魔法使いちゃうやん?

 

「それがビックリ──超うめぇ!」

『聞きたくないわ! 知るか、馬鹿ーー!!』

 

 いや、ごめんごめん。

 いじめ過ぎてたの謝るわー。

 ミユちゃんに謝ってもしゃーないかもだけど。

 

『いじめたのは自覚しとるし……』

 

 そりゃね!

 だって、レイラちゃん騎士だったもん!

 なら、「私」の部屋をボコした代金は身体で払ってもらわにゃー。

 

 でも、今回のレイラちゃんのこの味と色々な献身──そう、文字通りの「献身」に免じて、騎士のことはゆるーーーーーーす!

 

 ……なので、次に騎士みつけらサクッ食べるだけにしとこう。足先から食うのもやめたる。

 

 レイラちゃんそれくらいに頑張った!!

 レイラちゃん、えらい!!

 

「味は珍味枠で1位でーーーーーーーす!!」

 

 お肉単体では、リーデルちゃんが堂々の1位だけどね!!

 

「…………うん、よしっ! 次にリーデルちゃんみつけたら、ボッコボコにしてみよう!!」

 

 肉で一番のリーデルちゃんに、熟成が加わる!

 

 それすなわち、

 レイラちゃん並みにいたぶったら、リーデルちゃんなら絶対世界を取れる味になる!!

 

(さらに、干したらどうなることやら……!)

 

 

  ──ゴ、ゴクリ!

 

 

『いや、なんでリーデル公女に飛び火してんのよ!! あと、喰ったら二度と食えませーん!』

「そんなんわからんやん」

 

 人間ほら、似たような人が何人かいるっていうし──。

 

『そんなことで、食べる人間選別しないでよー……はぁ。これで、情報も得てブレスも成長──か。こいつどうやったら倒せるんだろう?』

「知らね」

 

 だって、雑魚しかいねーーーーーもーーーーん。

 

 

 

 

「……さて、腹も膨れたし、次の仕込みをしようかねー」

 

 

 

 

 レイラちゃん情報なら、次々に軍隊が来てくれるっぽいし、お出迎えしないとねー。

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