ミミック転生~人食い箱の食味記録~   作:LA軍

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第8話「ミユちゃん」

『しくしくしく……』

 

 さめざめと泣く赤髪の美少女。

 革の胸あてに冒険者の衣装と、ミユちゃんで間違いないのだが、活発そうな印象は失せて──どころか、ちょっと透けている。

 

 なんなら、膝を抱えたミユちゃん越しに地面が見えるほどだ。

 これってあれ(・・)だよなー。

 

「え~っと、ミユちゃん?」

『しくしくしく……』

 

 うわお、無視されたー。

 

 それとも、あれか?

 この世界では『しくしくしく』が「HELLO♪」みたいな感じだったりする?

 

 ……しないか。しないね。

 

『ううう、おうちに帰りたい……』

 

 えー。

 喋れるやん……。

 

 しかも、結構グサッとくることをピンポイントで言うなー。

 

「そのー。「私」の声は聞こえるかなー?」

『…………。……し、しくしくしく』

 

 ガン無視やん。

 そんで一瞬、間があったから絶対聞こえてるよね?

 

「まぁいいや。そのー……悪いんだけど、君がいるとさ。ほら、なんか不自然じゃん?」

『…………しくしくしくしくしくしくしくしく』

 

 ちっ。

 

 コイツわざとやってやがるな。

 

 しかし、どーすんだよ、これ。

 せっかく部屋をレイアウトしたのに、半透明のミユちゃんが宝箱の(そば)にいたら違和感どころの話じゃねーよ。

 

 なんだよ、ミユちゃん付きミミックとか。

 誰も騙されてくれねーよ。

 

「とにかくさー。どっか行ってくれないかなー」

『……どこにもいけないよー』

 

 えー。

 

「な、なんで?」

『体が……身体がないの、私の身体がどこにもないのー』

 

 あー。

 まー。

 うーん。

 

 ……ちょ、ちょっとだけなら残ってるよ?

 美味しいからゆっくり食べようと思って──……。

 

『体が、身体無くて寒いの! 寒くて、痛くて痛くて痛くてぇぇえええ!』

 

 

 ──うわぉ!!

 

 

 こっち、むいたミユちゃんの顔、こっわ!!

 ホラー映画張りに顔面が真っ青で、眼窩の部分が真っ黒──そんで血だらけ!!

 

 ……でも、咀嚼したから、しょうがないじゃん。よく噛んで食べろっていうしさー。

 あ、美味しかったよ。

 

『痛いよー。痛いよー。お兄ぃ、お兄ぃぃい……助けてよー』

「あー。うん。……なんかゴメン」

 

 お兄ちゃんはもう食べた。

 だって、『建築』を頑張ってるとお腹すいてさー。

 

 うん。

 ゴメン。

 

 ……あ、骨ならあるけどいる?

 

「つーか君、あれだよね? ゴーストってやつ?」

『ご、ごーすと……? わからない。気が付いたらここにいたの──』

 

 そりゃまぁーね。

 マジでいつの間にかいたもん。びっくりしたわ。

 

 ってか、これあれか?

 

 冒険者食べると、全部ゴースト化するとかいうクソゲー仕様か?!

 いやだぞ、この部屋いっぱいのゴーストとか!

 

 とくにお兄ちゃんのほうは、なんかメッチャ怒ってたからやだ!

 

『ねぇ、お兄は?……お兄はどこ──お兄ぃに会いたい』

「えー……」

 

 食べちゃったよ。

 もう、一日二日早く言ってくれないからー。その時なら半分くらいは残ってた思うけど。

 

「あ。ほ、骨ならあるけど」

『ほ、骨? ど、どうして?』

 

 いや、食べたから!!

 お兄ちゃんも美味しかったよ!! でも、ボカぁ、ミユちゃんが一番だよ。

 

「んー。見る? ストレージに入ってるけど……」

『お兄ぃ! お兄に会う!』

 

 や、会うつーか、

 ある意味再会っつーか。

 

 ……お腹の中で会わなかった?

 

 まぁ、いいや。

 

「はい。多分、全部そろって────……えぇ?」

 

 ぺっ。

 

 ストレージから取り出したのは、ゆっくりとお腹のなかで消化したお兄ちゃん。

 彼の場合はほら、完全体だったからほぼ丸飲みしたのん。

 

 そしたら、おかげで見事な骨格標本になったよ──なったんだけど……。

 

『お兄! お兄ぃぃ!』

 

 まるっとした白骨にしがみつくミユちゃん。

 しかし、そのミユちゃんは当然骨には(すが)りつけずスカッ! と、(かす)るのみ。

 いや、それどころか──おや? お兄ちゃんの様子が……。

 

 

  ──ウギギギギ……!

 

 

「わーお、動いた」

 

 こりゃービックリ。

 お兄ちゃん大復活…………じゃないな、これ。

 

『お、お兄ぃ? お兄?! ど、どこいくのお兄ぃぃいいいい!』

 

 あー。

 こりゃあれだわ。……スキル『凝視』

 

 

 

   《スケルトンLv1》

 

 

 

「やっぱり……。完全にモンスター化してるわ」

 

 どういう理屈かは知らない。

 ただ、「私」の中で消化されたお兄ちゃんは、完全な骨になり、そのままモンスター化してしまったらしい。

 

 Lvがついているのがその証拠だ。

 だって、冒険者連中は、凝視してもLv見えないもん。

 

 ついでに言えば、

 

   《ミユちゃんLv1》

 

 うん。

 ミユちゃんはミユちゃんという存在になってしまったらしい。

 

 ゴーストって出ないところをみるに、この凝視というスキルは「私」の認識によるところが多いのかもしれない。

 

 

 

 

 しかし、参ったな。

 快適(?)なミミックライフに、妙な隣人ができてしまったよ……。

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