ミミック転生~人食い箱の食味記録~   作:LA軍

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第81話「復讐者(※)」

「どわーーーーーーーー!」

 

 

 あち、あち、あち!

 

 

「あっちーーーーーーーー!!」

 

 な、なんだぁ?!

 何が起きた?!

 

『……見て来たわ』

「おん? ミユちゃん??」

 

 珍しい。

 攻め手が来た段階で、なんとミユちゃんが再登場だ。

 

 普段なら、決して報われない警告とやらを発しにいってるはずがこれとは──……。

 

「なに? どんな奴等だったのん?」

 

 教えてプリーズ。

 

『言えない……。絶対に言えないわ』

「あーん?」

 

 またかよ、

 なら出てくんなよ、クソごみ。

 

『だけど──』

「……おい」

 

 なんだ、このガキ。

 

「てめぇ……、ま〜たくだらねぇこと言うつもりじゃねーだろうな?」

 あーん?!

『ッ!』

 

 ……ふんっ。

 

 見ての通り、「私」はご機嫌斜めなんだよ。

 理由はわかるな?

 

「おめぇの、く~だらねぇ矜持に付き合う気はねーつってんの! 役に立たねぇならさっさと成仏しろ、肉のカスの分際でよー!」

 

 なにがゴーストだ。

 鬱陶しいだけだっつーの。肉にもなれない、カスはだぁーってろ(黙ってろ)

 

『くっ!……そ、それでも──』

「ふん」

 

 なにがそれでもだ。

 こっちはいきなり初手で部屋を燃やされてんの!

 めっちゃ、イライラしてんの、わかれやボーーーーケェ!!

 

『それでもお願い!……お願いだから、小さな子だけは──』

「おーん? またそれぇ」

 

 

 …………って、ちょい待ち。

 

 

「なに? 小さい子いんの?」

『う゛……!』

 

 ほうほう

  ほうほう

 

「──ほっほーーーーーーう!」

 

 そーれはいいことを聞いたぞ──……それになんだろうね?

 

 ジュル~リ。

 

「この唾液の湧き出る感じよ! 言われて見れば、たしかに、さっきダンジョン入り口あたりで、な~~~~~んか、知ってるよう気配がしたんだよなー」

 

 なんだっけ?

 この美味しそうな感じ。

 

 それに、この爆炎にのって漂う香りはどこかで──……。

 

「……まぁいいや。みて、確かめようっと」

 

 どうせ来るんでしょ?

 なら、捕獲一択じゃーん。

 

 それに、

 なにせ、ミユちゃんのいう小さい子ってことは、つまりこの子(ミユちゃん)よりちっこいってこと……。

 

 

  つまーーーーーーーーーーーーり!!

 

 

「一口サイズってことかぁぁぁあ!」

 

 ぎゃはあぁぁあ♪

 

 ついに、

 ついに!

 ついにチビッ子をボコして、味染みが試せるってことかぁぁあ!

 

「うひゃはははは! これは超〜楽しみッ」

 

 ミミック冥利につきるというものさー。

 いやー、どうやって楽しもうかなー。

 

 生?

 焼き?

 煮物ー?

 

「あ! でも熟成期間とかあるし、全部ためしてみてもいいかもー♪」

 

 どーせ長い時間かけていたぶるのだ。

 なら、なんでもできる!

 

「最低でもレイラちゃんコースだね!」

 

 なんなら、その2倍、3倍でもいいなー……ジュルリ♪

 

「おっと、想像しただけで涎が……」

 

 うひひ。

 

 だって、筋肉質なレイラちゃんであれだけうまかったんだから、やーらかい(柔らかい)ガキをボコしたらどれほどか──ぐひひっ。

 

 これは楽しみ過ぎる!

 反射的に垂れ続ける涎をぬぐいつつ、ニヤリと笑う。

 

 そうとも、何が来ようが知ったことか。

 どーせ、ただの肉だ。

 

 それよりも、チビっ子が混じってるというのが一番デカいね!

 

 どのみち、最終的には「私」が勝つしね。

 そしてその時に小さい子とやらを見てくれようじゃないかー。

 

 じっっっっっっくりと、

 文字通り舐めるようにな!

 

「へっへっへ、これは腹が鳴る鳴る」

 

 おっと、腕が鳴る鳴る!

 

「よーし、決めた! ミユちゃん!」

『ッ……。な、なによ!』

 

 ニコリ。

 

「大丈夫。生かしてあげるよ、その子は──」

 

 

 …………ボコす間だけね!

 

 

『あ、アンタまさか……!』

「にこーっ」

『く! し、しまった!! よ、余計なことを言ったかもアタシ』

「いやいや、いい情報をありがとう! ありがとう!! そして、ありがとう! 君のおかげで、俄然(がぜん)やる気が沸いてきたよぉぉおお!」

 

 ひゃはぁぁ!

 

「よーし、チビッ子の生捕り作戦──もとい、侵入者の迎撃開始だー!」

『くぅ! くそっ、くそっっ! もっかい行って来るー!』

 

 はいはい。

 お好きにしてくんなましー。

 

「いってらっしゃーい♪」

 

 無駄な足掻きを頑張ってー。

 

「…………さて、ミユちゃんも消えたことだし、「私」は準備すっかー」

 

 今回の敵はかなりの準備を整えてきているのは初撃で分かった。

 まさか、いきなりダンジョンごと滅してくるとはねー。

 

「だけど、その慎重さが仇になったね」

 

 さっきのじゃあ、派手だけど「私」を仕留めるには力不足。

 そして、トラップだって燃料爆破程度では作動しないよー。

 せいぜい設置した家具やアイテムは燃えるか焦げた程度だ。

 

 ──それはそれでむかつくけどね!

 

「ま、保存食は無事だし、まだまだ許容範囲!」

 

 ドロップ品として配置したアイテムや家具なんかの一部が燃やされたのはちょっと痛いけどね。

 吊るして保管してる生徒の干し肉は比較的無傷だ。

 あれを燃やされたらブチ切れる自信しかないから、そこだけはホンマよかったー。

 

 食い物の恨みは恐ろしいっていうでしょー。

 よかったね!

 

「しっかし、馬鹿な侵入者だねー。初手から範囲攻撃でまとめて爆殺しようとしたんだろうけどさー」

 

 それはつまり、こっちの手の内を知って準備してきたということを表しているのだよ!!

 

 つまーーーーーり!

 

「今回の侵入者は、「私」を多少なりとも知っているということだね」

 

 ぎゃはっ!

 

 馬~鹿め。

 準備万端のつもりか?

 

「それなら、最初の一撃で仕留める手を考えて攻撃をするんだな!! 愚か者めがぁぁああ!」

 

 二撃目、三撃目を考えている時点でもそれはもはや奇襲ならず!

 ただの強襲であーる!!

 

「そしてぇー! その情報を得た以上「私」がただ待ってるだけだと思ったか!」

 

 甘い甘い!!

 甘いわ!!

 甘くて、べろんべろんと舐めてくれるわー!

 

「手の内を知られているというのが、すでに、情報の暴露だと知るがいいわぁぁぁああ!」

 

 

 

  ぎゃーーーーーーーっはっはっはっはっはっはー!!

 

 

 

「………………さーて、まずは腹ごしらえといこうかねー」

 

 ひとしきり笑ったところで、満腹ボーナスボーナスっと。

 

 んー。

 今日は、騎士団見習いの小隊長セットといきますかー♪

 

 まさにお子様セット!

 

 ズルーリとストレージから引き出すと、おーまだまだ新鮮〜♪

 

 そんじゃ!

 手のかわりに、蓋を合わせて、

 

「いっただっきまーーーーーーす♪」

 

  バキッ

 

   ゴリリリ─ゴキンッ♪

 

「んまーーーい」

 

 やっぱガキはうめーわ。

 熟成なしでこの味だもんなー。

 

 こうして、レイラちゃんをおちょくった時に使った生首を4つと、

 腹を開いて、内臓を抜いて開きにした小隊長の4羽カラスを賞味するのであったー。

 

 美味(びみ)ぃ♪

 

※ ※ ※ ※ ※

 

「けほ、けほ」

 

 少女が小さく咳払いをしている。

 その身が激痛と酸欠に震えるが、動けないほどではない──……それよりも先の休憩中での仕打ちのほうが酷い扱いだったのか、新しいあざが増えて、見るも痛々しい恰好となっていた。

 

 服だって──もはや、ボロともいえないありさまだ。

 

「旦那ぁ、ガキは無事。中は問題なさそうですぜー」

「よーし、上々だな! 魔物はさっきので一掃できただろうし──安全に進めるぞ」

 

 こうして、カナリア(少女)を先頭にして悠々とダンジョンに入ってきた元ギルマスは、あちこちに魔力灯を設置し、前進拠点を作ると、次々に物資を運び込んでいく。

 

 爆薬、油──回復資材に糧秣。

 そして、その他(・・・)もろもろ!

 

「つぎぃ!……獣を放てぇぃ!」

「あいよー!──ほら、いけ!……。あ、こら! そこのガキはお前らの喰いもんじゃねーよ! それは、」

 

「「「おれらのだぜー、ぎゃはははは!」」」

 

 相変わらずの品のなさを発揮する元ギルマスの手下ども。

 少女の首についた鎖を引いて脇に下げると、かわりに、持ち込んだ檻を次々にあけ放つ──。

 

「いけいけ!」

「魔物を食い殺せ!」

 

 グルルルル──!!

 

『ウォンウォン!』

『グォォオオン!』

 

 それは4本足の獣。

 森や山岳地帯に多く生息する人食いの獣、ダイアーウルフであった。

 

「けけけ! まる一週間、喰わしてねぇからな! 今なら、なんでも襲って食うぜー」

「俺たちは獣除けをた~~っぷりつけてるから大丈夫だけどなぁぁ!」

 

 そこのガキを除いてなー!

 

「「「ぎゃはははははははははは!」」」

 

 最初に足を食いつかれたのか、かなり出血している少女──あぁ、ここに至り、もはや誰も少女と呼ばない。

 

 お姫様だの、高貴な女だのという通り、

 彼女はそう──あの時、ギルマスに連れ去れてた行方不明の王女──ハバナ殿下その人であった。

 

 その彼女の脚からは真っ赤な鮮血がほとばしり、その血にダイアーウルフの群れが興奮していたが、手下が槍を手に追いやると渋々と去っていき、その足でダンジョンの奥へと駆けて行った。

 

 そして、どこかしらで魔物の悲鳴なんかが上がる。

 

「おぉ? 今のってゴブリンか??」

「そのようで──」

 

 おいおい、話が違うだろ!!

 

「ちっ! 全滅してねぇじゃねーか」

「旦那ぁ、無茶言わんで下さいよ、ダンジョンの深さ次第で、全滅するかどうかは五分五分だって言ったでしょう。げへっ」

 ……何が五分五分だ。

 適当こきやがって。

「ふんっ。まぁ、いい──だいぶ、減ってるのは間違いなさそうだしな」

 

 そう。

 元ギルマスの作戦はこうだ。

 

 燃焼ガスでダンジョン内の雑魚を殲滅し、そのあとで雑に使役した獣を放つ。

 その獣が、空腹のままにダンジョン内に残る魔物を襲い──うまくすれば、件のミミックと戦う。

 

 それで成功すれば討伐可能だし、失敗しても場所はわかる。

 なにより、最低でも、トラップを獣が誘発してくれればそれでもいい。

 失うのはその辺で捕まえた獣だから誰の懐も痛まないって寸法だ。メリットオンリーでデメリットのない策だ。

 

 燃焼ガスの一撃で死んでくれるなら、なおのこといい!

 

「よーし! 前進──獣のあとを追えぃ!」

「あいよー! 野郎ども、警戒しながらすすめ。ローグは前だ! トラップに注意しろ!」

 

 暗殺者ギルドから雇われたテイマーが魔物を使役し、

 盗賊ギルドからはシーフに斥候にレンジャーが、ローグとしてトラップを探りながら前へ進む。

 

 そして、少女は──……ハバナ王女は足を引きずりながら、黙ってうつろな目で荷物を担ぐ────……。

 

 

 

  『ギャワーーーーーーーーーン!』

 

 

 

「「っ?!」」

 

 な、なんだ、今のは?!

 

「お、おぃ! 聞いたか?!」

「奥にいった獣がやられまやした!……ぜ、全滅です!」

 

 なんと、十数頭は放ったはずの獣が全滅?!

 一瞬で?!

 

「ちぃ……! やっぱり生きてやがったか。おい、場所はわかったか?!」

「もちろんです! マーク済み、すぐに特定できます!」

 

 テイマーもローグも、太鼓判を押す。

 それで充分だ!

 

「よーし、次だ! 次の策で、今度は確実にやるぞ!」

「「「おうよ!」」」

 

 さぁ、行け!!

 

「ミミック狩りの始まりだっぁああ!」

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