ミミック転生~人食い箱の食味記録~   作:LA軍

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第83話「ロックダウン(※)」

 ──ギャィーーーーーーン!!

 

 

 ダンジョン中に轟くダイアーウルフの悲鳴。

 それは、ひときわ大きく響き、それからも断続的に、断末魔の悲鳴がまろび聞こえてくる。

 

「ちぃぃ! もう犬がやられたのか?!」

「まぁまぁ、想定内でゲスよ──おい、場所はこっちか!」

 

 苛立たしげな声を上げる元ギルマスをなだめながら、余裕の表情で答えるのは手下の出っ歯のシーフ。

 奴が言う通り、その先で控えていた一団が、元ギルマスらに場所を譲る。

 

 どうやら、すでに偵察は終えているようだ。

 

「──たしかにこの先なんですが……。旦那方、中はヤバそうですぜ」

 

 斥候顔負けの技術で、獣の気配を辿っていたテイマーであったが、そっと指をさす。

 すると、その先には血痕もそぞろな部屋が一つ……。

 

「うっ。こ、ここか──」

「みたいでゲスね。……地図でいくと、やっぱり王女様から絞ったあの情報通りでゲス」

 

 ん?

 ハバナ王女から絞ったあの情報……?

 

「あぁ! 例の休憩所のような人工部屋か」

「そうでゲス、そうでげす!」

 

 な~るほど。

 ここが、奴の(ねぐら)だったか。

 

 トラップ多め、

 隠し通路付きのミミック部屋。

 

 情報が正しければ、奴はこのどこかに潜んでいる──。

 

「──くくくっ。ならば勝ったも同然だな。あとは追い詰めるだけか」

 

 ニヤリと笑う元ギルマス。

 実際、そっと部屋を覗き込めば予想通りの光景が繰り広げられていた。

 

 ちょっと焦げた部屋の中には、

 犬の死体が数体ある。

 

「あとは、燃えたタペストリーに、焦げあとのあるアイテムの棚か」

 それと部屋の隅に木箱と水場。

 そして、そのどこかに箱が収まるスペースがあるっと……。

 

 ──間違いない情報通りだ!

 

「よーし、やるぞ! 準備しろ」

 

 ここまで追い詰めればあとは、仕上げを詰めるだけだ。

 見てろよ、クソミミックめー。

 

 テメェが苦手なことはなんだって掌握済みなんだよ!

 

 隠れ場所の暴露に、

 位置の特定。

 

 そしてぇぇ……。

 

「爆撃用意!」

 

 はーはっはっは! 爆弾だー!

 細かい位置が分からなくても、これさえあれば同じ(おんなじ)ことよ!

 

「ん?? 待ってください、旦那」

 

 しかして、そこで元ギルマスにブレーキを掛けたのが手下の出っ歯シーフ。

 ……ここに来て何だというのか?

 

「どうした? まさか、爆弾を忘れたとかいうんじゃねーだろな?」

「まかさ! そうじゃなくてあれ(・・)を──」

 

 あれぇ?

 

「……犬の死体か?」

 

 出っ歯シーフが上げで差す先には、ダイアーウルフの死骸が転がっている。

 それが何だというのか。

 

「いやぁ。ひーふーみー……ううむ、犬の死体の数が少ないでゲスよ? これはどういうことでしょう?」

「あん? 数ぅ?」

 

 犬の数がどうしたってんだ?

 

 だしかに、放った獣の数は10匹以上。

 だのに、ここには数匹程度、数が合わない。

 

「それが何だってんだ? 食われたか……あるいは、あの隠し通路とかじゃねーの?」

 

 相手はミミックだ。

 人食い箱といえど、犬だって食うだろうさ。

 

 そも、元ギルマスは犬の末路になんぞ興味はない。

 いまはそれよりも、ここに奴がいて、仕留めるチャンスがあるというだけ──……。

 

「いやぁ、そうなんでしょうが。なんか違和感が──……ううむ?」

 

 出っ歯シーフが首をかしげる。

 しかし、喰われた以上に何があるってんだか──。

 

「どうでもいい。それよりも、たしか罠があるんだったな?」

「あー。そうでゲシたね──ってことは罠に飲まれたんでゲスかねぇ?」

 

 そういいつつも納得していない表情の出っ歯シーフであったが、元ギルマスとしてはここまで追い詰めたらさっさと勝負を仕掛けたいところだ。

 

 なにせ、これまでなんども苦渋を舐めさせられ子飼いの冒険者を散々食われたのだ。

 なんとしてでも、ケリをつけたい相手がここで無防備に待ち構えているのだ。

 

「いい! そんなのかまわねーから、さっさと準備しろ!」

 

 何があっても、爆撃すればそれで終わりだ。

 突入するまでもない。

 

「旦那方ぁ、こっちはおーけーですぜ」

「こっちも」「アタシらもだねぇ」

 

 そうするうちに、気の早い連中がハバナ王女が持つ荷物からクリアリング用の爆薬をポンポンとお手玉しつつアピールする。

 

「お、おい、お前らなにを勝手にしてやがるでゲス!」

「いいんだよ」

 

 ほれみろ。

 誰だって、こんな暗くて辛気臭い、ダンジョンからおさらばしたいんだよ。

 

「しかし、旦那ぁ……」

 

 出っ歯シーフはしつこい。

 いいから、やればいいんだよ!

 

「ったく、敵がそこに待ち構えているのがわかっているなら、なにも乗ってやる義理はねーんだよ」

 

 ミミック対策は、先手必勝!

 それも、遠距離からならなおのこといい!

 

 だから、さ。

 こうするのさっ!!

 

「あぁ、いいぞ! 総員、景気よくやってくれ!」

 

 そして、元ギルマス自身も爆弾を手にして勝利を確信する。

 そうとも、この爆撃で決めてやると──!

 

「よーし、野郎ども点火ぁ!」

「点火ぁ!」「点火ぁぁぁ!」

 

 ボッ!

  じじじじ……!

 

 いくつもの爆弾に灯がともり、内部に投げ込まれるその瞬間を待ち望んでいた。

 

 これで一撃。

 

 そして、ぶっ殺してから、悠々と安全化し死体を確認。

 これで終わり。

 

 この先の人生はバラ色だぁぁぁあ!

 

「──よーーーし! 放てぇぇぇええ!」

 

 3

  2

   1……!

 

「「「てぇっぇええ!」」」

 

 ブンブンッ! と放物線を描いていくつもの爆弾が投げ込まれる。

 それらが、ドスンゴトン! と室内に落ち、いくつかは部屋の中でくたばっているダイヤーウルフの死体にあたり鈍い音を立てる。

 

 そうだ。

 これでいい。

 

 トラップだろうが、ミミックだろうが、インドアでの戦いは爆弾が基本────────……。

 全部まとめてぶっ飛ばしてやればいい…………!!

 

 

 

 

 

  ……そう思った、まさにその瞬間。

 

 

 

 

 チュバーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!

 

 

 ……まとめて投げ込んだ爆弾がさく裂すると、

 それ以上の爆発(・・・・・・・)が起こり──……通路で待機していた元ギルマスもろとも、吹きとばされてしまった……。

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