ミミック転生~人食い箱の食味記録~   作:LA軍

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第91話「塩味」

 きーーーーーーーーん……!

 

 

 耳をつんざく大音声に、一瞬意識が飛ぶ。

 そして、肌を貫く爆圧に思わず、鼻奥がツンとする。

 

 ま、

「耳も鼻もないんですけどねぇぇええ!」

 

 ぎゃーっはっはっは!

 だけど、見事成功ぉ「私」は元気でーす♪

 

 なんせ、こちとら箱だからね、箱ぉ!

 直撃やら至近弾ならまだしも、少々の爆発なら問題なーし。

 

「だけど、生身のお前ら(・・・)はそうはいくまーい?」

 

 ぎゃはははー!

 

「(げほっ! ごほっ! な、何が起こった?!)」

「(わ、わかりやせんが、爆弾でげすかね?!……あぁ!! 火炎放射器がぁぁ!)」

 

 おっほー。

 なんと、連中も見事生存しているらしい。

 

 ──や~るねー。

 

「まぁ、所詮は粉塵爆発だからねー」

 

 密閉された空間などで、空気中に散布された微細な粉が連鎖的に延焼して起こる現象が──粉塵爆発だ!

 もっとも、爆発と言葉にはあるが、いわゆる急速爆燃現象なので、見た目の派手さと音以上に威力は乏しい。

 

 ──とはいえ、至近距離で食らったら人間程度だと無事ではないだろうけどー。

 

「だけど、そこは「私」! 超、頑丈です!!……フレーム歪んだけどねー」

 

 いってててー、さすがに密閉空間でこの爆発はきっついわー。

 まぁ、爆弾をくらうよりは遥かにいいけどさ!

 

「そしてぇぇ!」

 

 テメェらのほうは、生きてはいても装備品も無事とは限るまーい。

 

「(くそっ! 火炎放射器は放棄──故障で引火するかもしれねぇ!)」

「(だったら、どうするんで?!)」

 

 はっはー!

 こっちが聞いているとも知らずに──……だけども、予想通~り!

 なにやら通路の先で、連中がもにょもにょ言っているけど、狙っていた通りに火炎放射器が破損したらしいぞ!

 

(──ま、あんなもん、構造的に噴霧器はどうしてもチャチになるからね!!)

 

 そして、油火災を起こす器材は取り扱う側も危険なのだ。

 そんな状態で無事に使うなんてできるはずもない────なのでぇ!

 

「(決まってるだろ!──総員抜刀!!)」

 

 ほーら来たぁ!

 

「ま、そー来るわな!!」

 

 最後の武器、

 最後の手段、

 最後の策を使いつくしたなら──……次は最期(・・)の手!!

 

「特攻しかねーわなぁぁ!」

「いくぞぉぉぉお!」

 

 ──うぉぉぉぉおおおおお!!

 

 言うが早いか、連中、死角から飛び出し一斉に殺到してきた!!

 

「ひゅー♪ 判断がはやーーーい!」

 

 火炎放射攻撃が無理と悟るや否や、今度は白兵戦を挑んできやがった。

 

 しかも、どうやら破れかぶれではない様子。

 こいつらはかなりに手練れ──そしてプロだ!!

 

「──や~るねぇぇ!」

 

 遠距離がダメなら、白兵。

 その判断が超はやーい! おまけに、「私」の苦手とすることをことごとくぅ!

 

「──ッ! ミミック視認!」

「生存者はゼロ!」

 

 部屋に突入するや否や、動きを止めずに、簡潔に状況を後方に伝える。

 

 ってゆーか、あったり前だろ!

 どっちもあったりまえだろー!!

 

「──「私」が占拠した部屋で生き残った物はいねーんだよぉ!」

 

  がおー!

 

 みーんな食ってやったわ!

 つーか、お前ら燃やしまくってたやんけ!

 

 しかして、そんな「私」の威嚇にも関わらず、黒装束のいかにも裏社会で生きてますーって感じの、軽戦士級が短剣を手に突っ込んできた!

 

 そして、それと連携して、フォーメーションを組んだ暗殺者や盗賊がさらに来るわ来るわ!

 

「一気に行けぇぇえ!」

「「「おおおおおお!」」」

 

 ──ちぃぃい!

 

「やっぱ、軍人と違って厄介だなッ!」

 

 アホな軍隊の多人数攻撃と違って、

 今ここに攻めてきた連中のような多人数攻撃は、「私」がもっとも苦手とすることでもあーる。

 

「なにせ「私」は動けないからねー!」

 

 奴等は突っ込みがてら、飛び道具をそれぞれ一閃!!

 ボウガンに短弓、投擲具!!

 

「「「ってぇぇえ!!」」」

 

 ビュンビュンビュン

 

「ご、がっ!」

 

 あだ、おげっ!

 ……いってぇー!

 

 ガンガンと当たるそれらに、思わず目(?)を閉じたくなる。

 

「だが、一発一発は貧弱貧弱ぅぅう!!」

 

 んなもん数発貰ったところでー。

 

「──そして、貰ったあぁぁあ!」

 

 最低でもまずは一人を仕留める。

 確かに、多人数同時攻撃は苦手だけど、だからといって黙ってやられるというわけではない。

 

 多人数同時攻撃は「私」の対処としては最適だが、仕掛ける側にも必ず損害が出る。

 そして、必ず損害を出してやらねばならぬ! 出さねば一方的に狩られるだけさッ!!

 

 ──だからぁぁぁ!

 

「食ってやるぞぉぉぉお!」

 

 うまそーな、女暗殺者!

 てめぇぇだ!

 

「っ!」

 

 一瞬、「私」と目が合った女暗殺者が死の恐怖に怯みそうになるが、すぐに覚悟を決めたのか突っ込んでくる足を止めない!

 

「ひゅー! いいねぇ!」

 

 覚悟ガンギマリの連中はマジ手強いッ。

 ちぃぃ!

 

(……これで怯んでくれれば勝ち目も見えたけど、そう上手くはいかないか!)

 

 だから仕留めるしかない。

 なにより、舌撃とグラハム君ソードの組み合わせは、相当な手練れをも一撃で仕留める自信があるからね!

 

 ──いいともさ!

 

「よーし、こーいッ! てめぇぇえは、確実に「私」の胃の中じゃぁぁあ!」

 

 そのまま喉奥で圧殺されて胃袋の中で悲鳴をあげるがいいわー!

 ぎゃはははぁ!

 

「一対一なら絶対に負けないもんねー!」

 

 逆にいえば、どう頑張っても一人しか相手にできないということなんだけどねぇぇえ!!

 それでも、口をパッカー!!

 

「おらぁぁぁあああ!!」

 

 脳みそ(すす)って、内臓食い散らかしてやるわ。

 いっただっきまーーーーす!!

 

 

 

   あーーーーーーーん♪

 

 

 

「チェストーーーーーーーー!」

 「怯むな、いけぇっぇえええええ!」

   「死ねぇぇえええ、はぁぁあああああ!」

 

 

 ──うぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!

 

 

 確実に一人が死ぬとわかっていて雄たけびを上げて突っ込んでくる集団!

 そして、そんな中でも最低でも、一人を確殺しようと食らいつく箱!

 

 その両者が、いま、激突するッ!

 

 

 ──ドシュ!!

 

 

「がはっ!」

 

 よーし、予定通りまずは一匹~!

 

「うんめぇっぇええ!」

 

 舌撃で貫くと、あまーい血の味が口に広がる。

 

「ぎゃはははははっ! 顔面をむさぼりくってやるぜぇ!」

 

 バキボキガリィ!

 

 残虐に、残酷に!

 骨を砕く音をわざと立てて、血飛沫までもまるで見せつけるかのように食らいついたその死体を貫く、ぶん回す!

 

  どーだぁ!

  ボカぁ強いだろう。怖いだろうと!!

 

 そして、うまくすればその恐怖が伝播して他の連中の腕鈍れば儲けもの────……と考えていたんだけど!

 

(ちぃぃ!!)

 

 そうはいかねーか!

 死体を弄んだところで奴らが怯む様子は一切なし!

 

 つぇーわ、こいつら!!

 

「「ぅおおおおおー!!」

 

 そして、そのまま特攻継続!!

 予想はついたが、残り二人になってもまだ突っ込んでくる敵集団!

 

「だー、くっそーがぁ! だから冒険者級はイヤなんだよー!」

 

 コイツ等、ガンギマリで損害を一切気にしていなーーーい!

 つーか、プロ根性で一人は確実に死ぬのをすでに受け入れてやがったな。

 

「やるなぁぁ……!」

 

 じつにミミックを、

 そして、「私」のことをよく研究していやがるぜー。

 

「だが、数が減ったら、それで十分だ!」

 

 こう見えて、「私」は結構強ーい!

 昔ならいざ知らず、ガキ肉くいまくってパゥワーアップを果たした今なら、複数相手でも勝てる勝てる!

 

「だので、死ねぇぇぇえ!」

 

 一匹仕留めたなら、次は二匹目!

 そう考えて、その返す刀でもう一匹ー……と思ったのだが!

 

 

  あ、あれ??

 

 

「げ、げげぇーっ!! な、なんでだ?!」

 

 う、うごかねぇ!

 舌と剣が動かせねぇ!

 

「あ!!──こ、こいつー」

 

 なんてこった……。

 なんと、殺したはずの暗殺者が、食いちぎった血まみれの顔でグルンと白目をむきながらも、がっしりとグラハム君ソードを抱え込む形で絶命しやがった!

 

 おかげで重いったらねぇし!

 これじゃあ切れねえ!

 

「くっそー! はなせー!」

 

 ぶんぶんぶん!

  ぶんぶんぶーん!!

 

「げげー。は、はなれねえぇ!!」

 

 何ちゅう覚悟!

 死体のくせにガッチリと舌とグラハム君ソードを抱え込むとそのまま抑え込みにかかりやがったー。

 

「くそがぁぁ! 剣でやらずに、初手で食い殺せばよかったかー」

 

 舌撃でもう一匹は仕留める気でいたのが災いしたらしい。

 

 まずい!

 よくばった結果がこれかーーー?!

 

「くっそー! ならば、貫いた舌ごと食ってやるー!」

 

 舌撃が妨害されているだけで、舌そのものは健在!

 行ける!!

 

「させるか!」

「そこだ! 急所を押えろ!」

 

 こっちが苦戦している間に、残り二名の攻撃がガスガス! と表面を貫く。

 

「……いっでー!」

 

 ちぃ!

 コイツ等動きがいい!!

 

 出っ歯のシーフに、

 貧乳で表情の乏しい軽剣士の二人が取りつきやがったー!

 

「は、ははっ! 旦那ぁ、やりやしたぜ!! マジでミミックげすねー」

「言っただろう! 所詮は箱の化け物!……複数で襲い掛かれば、対処できなくなるってな!」

 

 はい、その通り!

 そしてテメェが指揮官か!

 

 手下風のシーフが背後を振り仰ぐと、そこには最後に悠々と室内に入ってきた筋骨隆々の禿げ親父がいやがった。

 手にはゴッツいダンビラをぶら下げ、もう片方の手には鎖──首輪付きのガキ肉を引き連れていやがる。

 

(ひゅ~! ガキ連れでダンジョンとはっ)

 

 いい趣味してやがるぜ──…………って、

 

「あああああ、そのガキ肉っ!!」

 

 な、な~んか見たことあるぞー。

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