「え? あれ? ミユちゃん、なんでいるの?」
『いたら悪い?! つーか、さっきからずっといたわよ!』
えー、またそれかー。
嫌なストーカー。
「……って、そうじゃなくて!!」
ほらぁ、
……あ、舌がないから指せないー。
『これぇえ?……って、あれ?』
「ね、やっぱし、おかしいじゃん」
ミユちゃんがバグってなくね?
『ほ、ホントだわ。アンタと会話が成立してる……いつもは、ぜんぜん聞こえてないのに』
でしょー。
生きてる人がいたら、邪魔にならないのがミユちゃんのいいとこなのに、それがこれとは──いかに?
「あ、もしかして、ミユちゃんって進化した?」
『進化?』
「そうそう。進化進化。ゴーストだって、人間襲う奴いるし、そういうのに進化した可能性も微レ存──……って、いや、胸みてどうすんねん」
お前の胸はもう一生サイズ変わんねーよ!
『んなぁぁ! 馬鹿にされた!』
「してるしてる、ミユちゃんのことは
胸もねーし、
そもそも、見れば早いのよね。
──はぁぁぁ!
凝視ッ!
──ミユちゃんLv1
うむ!
絶賛の雑魚だったわー。
『あ、何よ、今の! ま、また勝手に見たなー!』
「いや、安心し、君はそのままの君だわ──」
胸も一生そのまま、そのまま。
「ん? ってことは、あれか」
ミユちゃんが進化したというより……。
「もしかして、君のせいかなー?」
部屋の隅でガタガタ震える少女をジロリと見つめる。
念のため、凝視──……うん、ただのガキ肉だったわ。なんかLvは高かったけど。
「つーか、やべーな。……やっぱうまそうだなー」
ジロジロ見てたら、涎が止まら―ん!!
「い、いやぁぁああ!」
ジョロー!
「おほーっ♪」
焦点の合わない目をしていた少女がついに出汁を漏らしやがった。
その香りが食欲を刺激するぅ!
「うー! やばい、辛抱堪らんでぇぇえ!」
貴重なガキ肉だし、
すぐ食べちゃダメなのに!!
だけど、
一口サイズで、肉汁たっぷり!
──オマケになんか知らんけど、匂いからしてすでにボッコボコで熟成完了しとるしー!
「む、むむー。どうしよう。今すぐ、食べたくなってきたぁぁ!」
ジュルリ……。
でもなぁ、貴重なガキ肉かつ情報源だし、色々聞きたいこともあるし──……。
「うー、でも、でも、でもぉ! お腹が空いてきたー!」
あーダメだ。
食欲には抗えない!
「ぐぅ……捕虜を捕まえて、情報をとるぅ?」
そして、ボッコボコにして熟成するぅ??
これから、長い時間をかけて……?
…………うん、むりぃぃ!!
「ぐはぁぁあ!」
もわぁぁあ!
もう、今すぐにでも喉奥で圧搾して、
内臓と血を吐き出す悲鳴を聞きながら、長く長く、胃の中で暴れさせたーーーーーーーーい!!
「あーもういいや!! やっぱし、熟成とか尋問とかもうどうでもよくなってきたー!!」
そして、
今すぐ踊り食いにしてぇっぇええええ!
「あああああああ、もう食いてー」
もう、それを一回考えただけで──もう、食べたくて食べたくて食べたくて!!
食べたくて食べたくて食べたくて食べたくて食べたくて食べたくて食べたくて食べたくて食べたくて食べたくて食べたくて食べたくて
食べ食べ食べ食べ食べ食べ食べ食べ食べ食べ食べ食べ食べ食べ食べ食べ食べ食べ食べ食べ食べ食べ食べ食べ食べ食べ食べ食べ食べ食べ
食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食食
──あああああああああああ、食ってやるぞ、
ガキ肉ぅぅぅううううううううううううううううううううううううううう!
「うひゃはぁぁああああ♪」
もう、足の一本や二本とかケチなこと言わんから、半分食わせろぉぉおお!!
「というわけで。やっぱし、いっただっきまーーーーーーーす!」
『ちょ! やめー!』
あーーーーーーーん!!
もーう我慢できん!!
ミユちゃんが身体で庇っているが、知ったことか。
お前なんぞ、誰にも干渉できない雑魚のゴーーーーーースト!!
一方、そっち高級肉のキングハーーーーム!!
「こちとら、全身ボコボコにされてるせいで腹減ってたまらんのだぁぁ!」
だから、君の血肉で回復して、
これからも、世のちびっ子を食べる方向にシフトするってことで勘弁してねぇぇえ!
大丈夫大丈夫!
寂しくないよ! これからドンドンちびっ子丸呑みして、夢の王国を胃の中につくるからねー!
と、いうわけでー。
切り飛ばされた舌を精一杯伸ばして、足を掴んで──……。
いっただっきまーす。って、
「……あー、逃げるな逃げるな!」
くっそがー!
こっちは今、満身創痍なんだよ!!
「もー! 抵抗しないで、できればそのまま、口の中に入ってくれると嬉しいぞー!」
こっちは動けないし、舌も満足に使えない。
なんなら、蝶番にナイフが詰まったままで口が閉じられない!
なので──。
「ほーら、こっちこっち。おいでおいで~、この大きいお口が見えるぅ?」
ぐぱぁぁぁ!
もわぁっぁああ!
「どうどう、大したことないでしょ? なので、ほ~らほら、入って入って!! 大丈夫、大丈夫!! 遠慮しないでいいから! 楽しい楽しい、楽しいって!! ほーらほら、お兄様もまだ入ってないけど、級友たちが中で待ってるよぉぉ!」
見てごら~ん!
口の中の暗がりで、学生たちが手を振っているのか見えるだろー。
「だから、ほーら怖くない怖くない。「私」の口に、自分から入っておいでぇ!」
そしたら、
優しく、むーしゃむしゃとしたげるからぁぁ♪
「あ! だ~いじょうぶだって! こう……いい感じに柔らかく優し〜く噛んであげるからさー」
かみかみ、もぐもぐ!
痛くない痛くなーい。
まぁ、ちょーっとだけ、少しばかし喉奥で圧搾されて口から内臓吹き出して、聞いたこともない声を上げるだけ!
君の後輩のリーンちゃんなんか、
しばらく喜びの余り、「痛い痛い痛い痛い痛い痛いいぎゃああああああああああ」って感じで、無茶苦茶泣き叫んでたくらいだぞぉぉおお!
「ひ、ひぃぃい」
「うひひーーーー♪」
ほれほれー。
どこに行こうというのだね。
少女が首輪についた鎖を引きずり、元ギルマスの焼死体を蹴り飛ばし、必死で逃げる逃げる!
少女が逃げるー!!
キングハム君の妹が必死で逃げるぅぅ!!
「……ま! その鎖がある以上、どこにもいけないだろうけどねぇぇええ!」
ぎゃーっはっはっは!
抵抗できないガキを追い詰めるのは、たーのしいねぇ♪
焼け死んだ禿げマッチョの手には今も鎖が握りしめらており、少女はそこから先一歩も動けないし、
そもそも、この「私」の部屋からはぜ~~~~ったいに逃げられなーい!!
「だから、安心して口に中に飛び込んでおいでぇっぇえええ!」
ぎゃははっはははははははははーーーーーーーーーガスッ!!
「ぐげッ?!」
へ?
あ、あがが??
「あがーーーーーーー?!」
が、がはっ。
「……はに、ほれ(なに、これ)?」
え??
──け、剣?
「え? な、なんで?」
うそ?
(え、つーか、誰??)
一瞬、あまりの激痛に意識が遠のきかけて、グルンと目が白目をむきかけた「私」であったが、なんとか意識をつなぎ止める。
しかし、一体なに事だ?
何が起こってこうなった??
「……いや、そも! て、てめぇ……今までどこに隠れてやがったー?!」
いっっってぇぇ……。
よりにもよって、ハゲ戦で傷ついた
「くそがぁ……!」
激痛に絶えながら、なんとか視線を向けたいが、貫かれた勢いとダメージが多すぎる。
しかも、コイツ!
適格に「私」の死角である真後ろにいやがるしー!
「なろぉぉ……! 「私」の感知を潜り抜け、ミユちゃんバグセンサーにも反応しないだとぉ?」
そんなのいるわけが……!
だが、事実ここにいる!!
しかも、コイツからは、
おかげで全く気づかなかったじゃねーかよ!
「て、てめぇぇ……! マジで一体何者だあっぁぁあ!」
ギョロリと視線を周囲に動かし、なんとか視界に収めようする。
しかして、キングハムの妹を追い詰めてゲラゲラしていた「私」の一瞬の隙をついたソイツは姿すらみせない。
まるで死人。
まるでゴースト。
まるで亡霊のようじゃないか!!
それだけでなく、
この正体不明の敵は、「私」のわずかな隙をつき、暗がりを探りながら部屋に侵入してきただけでなく、
なんと、そのまま背後に回り込み、致命的な一撃を加えてきやがった!
それだけでも脅威的だというのに、この野郎ぉ。
人間特有の体重移動でもなく、
体臭もなければ、息遣いもないときた!
そして、息を吸わないならば、すなわち命もないということ!
つまり、命がないなら、肉も血も魂もない!
すなわちコイツは──…………!!
『お、お兄ぃ…………?』