後日、その2を投稿予定
「あぇ?」
醜悪な姿から、汚ねー声を絞り出しやがったクソミミック。
俺はその一瞬の隙を見て、剣をさらに突き出してやった。
遠くに潜み、壁に耳をつけ、拙いながらもローグの技術でもって状況を確かめる。
そして、今のこの瞬間を見出し、貫いたのだ!!
──そう、あのミミックを!!
「てっめぇぇ……」
は、はは。
はははは……!
「あ、あたった! あたったぞ!!」
俺の剣が通じた!
俺の技が通じた!!
俺の思いが────!!!
「俺の名はシギンス!! お前を滅ぼすものだぁっぁあああああああ!」
ゴリリリリッ!
ボーリボーリボリ!
……い、いいぞ、一撃が決まればあとは追撃だ!
先の戦闘を監視し、
そしてあのダークボーンナイトの最期の戦いを遠くで伺い、ローグの技術で見守っていた俺にはわかる!!
(──ミミックの急所は
打撃武器がなく剣撃のみならば、狙うは一点!
箱、本体と蓋のつなぎ目、
「おぁぁぁあああああああああああああ──────勝てる、勝てるぞ、あっ?!」
え?
は?
「……バーカ、効いてねーよ」
んなぁ?!
「ぐぁぁぁああああああああああああ?!」
ブシュゥゥゥウウウウ!!
刹那、
勝てるはずの必殺の一撃のはずが、吹き出したのは、なぜか、なぜか、お、俺の血ぃぃいいい?!
「ば、馬鹿なぁぁぁぁあああ!」
「いや、こっちのセリフだよ、バーカ。何を馬鹿正直に正面から突っ込んできてるんだっつーの」
ボーリボーリボリ。
ペッ!
「んなぁっぁああ! そ、それはぁっぁああ?!」
そう言って奴が吐き出したのは、なんと俺の……俺の剣だ!
あのダークボーンナイトから譲り受けた近衛の剣だ!
それがどうして──。
う、
「……うがっぁぁあああ!」
ブシュウウウ!
ぐぅぅ、その剣がそこにあるってことは、やはりー!
「み、右手がぁぁああ!」
吹き出す血潮に、右手が食いちぎられたと今更気づく。
一撃すら与えられずに、だ!
「いやいや、分かるでしょー? 舌が無くても、ブレスじゃなくても、「私」はそもそも人食い箱だっつーの」
「ぐがぁぁっ!」
そ、そうか、必殺必中のつもりで放ったあの一撃が、一瞬で食いちぎられていたのか!
……真正面からいけばそういうこともあるのか!
(──だ、だが、そんなぁ?!)
「はーん。満を持して奇襲を狙ったって感じかい? ま、中途半端なローグの技術しかないっぽいから、背後やら死角やらを回り込むより、隙をついて速攻を選んだってところなんだろうけどさー」
くっ。
その通りだが、あのタイミングでどうやって気づいた?!
「俺の攻撃は完全な奇襲だったはず……! 気付く
「やー。それは
「ぐぅぅ………、な、ならば、なぜ?! す、寸瞬の間さえあれば、俺の技なら貫けたはずなのに──」
「うん、それはそう。……ま、純粋な冒険者としてなら、君のほうが、そこのクソ骨よりよっぽど強かったし、奇襲も完ぺきだったよー。つーか、背後からなら、多分反応できずに死んでたわー」
くっ!
だから、奴が……この醜悪なミミックが恩人を滅して、勝ち誇ったその一瞬を狙ったのだ!
部屋に入る前にワンステップ! そのままの勢いで急所を刺突!
すでに恩人の一撃で、いくつかあるうちの急所に致命打を負っていたならば倒せるはずだったのがぁっぁあ!!
「ふ、不覚ぅ……!」
「ぎゃは! ざんね~ん! 今日はもう奇襲でお腹いっぱいなのさー。そして、右手うまうまっ」
ボーリボリ♪
く、くそ!
馬鹿にしやがって!
だがまだだ!
まだ左手がある、まだ
まだ──!!
「つーか、あれだね。……君も見覚えがあると思えば、な~~~~んってこったい! こりゃ、同窓会かぁぁ! まさか、骨野郎みたいに、いままでずっとここにいたのかーい?!」
ぐっ!
にちゃぁぁと笑うクソミミックが図星をつく。
薄汚れた今の恰好からそれのくらいはわかるらしい。
そして、奴の言う同窓とは
長年の仲間が殺され、
組んだはずのAランクすら敵わず──無様にも逃げた所で…………うがぁぁああああああ!!
「……あぁ、そうだ!! そうともさ! 俺はずっとここにいた。あの日、あの時、あの瞬間に貴様に仲間を食わて、無様に逃げたあの刹那からずっと!」
そして、今日、この日、このタイミングでのみ、脱出の機会はあったのだ!
だのに、なぜ逃げなかったのか?
──そんなの、そんなの知るか!
知るもんかッ!
ただ、見てしまったのだ。
あぁ、そうだとも!!
「彼女だ!! 彼女がいたから、俺は逃げなかった……!」
逃げようとはしたんだよおぉぉぉおお!
──畜生ぉぉおおおお!!
「だけど、鎖でつながれた女の子を見捨てて、俺一人生還してどうしろって言うんだよぉぉぉおおおお!!」
うがぁっぁああああああああああああああああああ!!
あああああああああああああああああああああああ!!
──見なければよかった!!
あのまま、ダークボーンナイトと別れて、地上に向かえばよかった!
千載一遇のチャンスだった。
むしろ、階段は上った、少しは出口に向かったんだよ!!
だってそうだろう?!
渇望していた地上への帰還!
それも、監視しているかもと警戒していた、あのクソギルドマスターが突入していくのを見てしまったら、もう安心だろう!?
だからさ、
だからさ────!!
「一度は俺は逃げようとしたんだよぉぉぉおおおおお!」
そして、見てしまった。
あの時、俺の手から腕から奪われ、攫われてしまった唯一の生存者の顔を、ハバナを──この美しい少女のことをぉぉおおおおあああああああああああ!!
「だからぁっぁああああ!」
シャキンッ!!
俺は覚悟を決める。
右手が咀嚼されても左手がある。剣もある。
……そして、コイツがある!!
「あーん? まーーーーーた爆弾かよ」
は!
そうだ爆弾だ!!
ボロを剥いで見せればそこにあるのは、体中に巻き付けた
これだけあれば、いくらキサマとてー!!
「そして、聞いていたぞクソミミックめ!! さっきの奥の手はもう二度と使えないってな!!」
人の胃から抜き取りし、酸の液。
それは人からしかとれずに、そう量も多くもあるまい。
「だから、俺ごと貴様を滅してくれるわぁっぁあああああ!」
そして、逃げろッ!
俺の屍を越えて、どこまでも逃げろ────。
「──ハバナぁぁぁあああああああ!」
もう、左手はいらない!
剣もいらない!
だから彼女を戒めから解き放つ!!
鎖を断ち切り、クソギルマスの腕を切り落とし、彼女を自由にして俺は最期の特攻をかける!!
「うぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!」
彼女の鎖を断ち切り、その返す刀で特攻!──そのまま、左手を囮に、一気に速攻を掛ける!!
(……食われて上等!!)
もう手も技もいらない!
前に進む足が一本あればいい!!
そして、死ね!
しね! しね!
しねぇぇぇええええええミミックーーー!!
「し──
その言葉を最後に、
俺はもう、何も考えられなくなった。