エセデータキャラ(※文系)がゆく! 作:鮫島事件簿
転生して一番最初の発言は、「髪の色が派手だなあ」だった。
俺が三歳の頃の話だ。
そのとき、ショッキングピンクの母が怪訝な顔をしていたのをよく覚えている。
比喩でもなんでもなく、本当にショッキングピンクだった。
ちなみに父は原色ブルーだ。
二人並んでるとマジで目がチカチカする。目が悪くなりそう。
しかし、どうやら染めているわけでは無いようで。
両親曰く、髪の色が派手なのはカードの精霊様に愛されているから、らしい。
ふ、ふーん……?
それなんてホビアニ?
流石に信じられないので、証拠として母の相棒だというカードを見せてもらった。
普通にカードゲームのカードだった。効果テキストもギチギチに書いてある。
すげー、キラカードだ。めっさキラキラしてる。カラスに取られそう。
俺の思考が横道に逸れたのが分かったのか、母は思案げな顔をした後、俺の頭を撫でた。
「いつか、雪彦にも雪彦だけの相棒ができるわよ」
なんか誤解された気がした。
あ、ちなみに雪彦というのは俺の名前だ。
前世の名前はキラキラネームだった。今世はかなり良ネームだ。やったね。
◇Side Mother◇
私たちの息子は、天から愛されている。
そう確信したのは、まだ息子が三歳の頃だった。
「まま、かみ、へん」
静かな声だった。
息子は、自身の髪の毛を引っ張りながら私の方を見上げた。
──爽やかな、大空の色彩を宿した髪。
私は、その鮮やかな色に息を呑んだ。
どこまでも鮮やかで、どこまでも明るい、特別で大きな寵愛の色。
もともと黒かったはずの髪の毛は、跡形もなく寵愛で染められていた。
……この子は、選ばれたのね。
私は、息子を抱きかかえ、その美しい髪を指で梳いた。
「あのね、雪彦。この髪の色はね、カードの精霊様に愛されている証なのよ」
「あい?」
息子はきょとんと私の方を見上げた。
きっと、なぜ愛されているのか不思議でたまらないのだろう。
もしかしたら、愛というものが何なのかすら、分かっていないかもしれない。
「愛──そうね、カードの精霊様が雪彦のことが大好きで、一緒に遊びたいってこと」
「んん〜?」
まだ雪彦には難しかったかしら、私は苦笑混じりに息子の頭を撫でた。
この子はまだ三歳。
背負わされた宿命の意味も、その重さも、理解しなくていい齢なのだ。
「……かーどのせいれいさまってなあに?」
息子は私の顔を覗き込んだ。
カードの精霊様がどういう存在なのか……改めて聞かれると難しい質問だ。
私たちと一緒に戦ってくれて、守ってくれて……。
友達、という言葉が一番近いかもしれない。
「カードの精霊様はね、雪彦やママたちのお友達なの。──そうね、ほら。この子がママの相棒でお友達」
私は、胸元から唯一枚の相棒を取り出した。
『聖なる乙女ソーテイラ』。
白布を纏った神々しい少女のカードだ。
心做しか、ほんのりと暖かで嬉しげなオーラを放っている。
最近、一緒に遊ぶこともなかったものね。
ソーテイラに悪いことをしたかしら……。
後で一緒に遊んであげようと心に決めつつ、私はソーテイラを息子に手渡した。
息子は、ソーテイラを手に取ってぼんやりと眺めていた。
おそらく、自身の心にぽっかり空いている穴を認識したのだろう。
私も、子供の頃……ソーテイラがいなかった頃は、常にどこか心に穴が空いているような心地だった。
「いつか、雪彦にも雪彦だけの相棒ができるわよ」
あなたはいっとう特別だから。
これから、運命に翻弄されていくことになるのでしょうけれど。
そのときには、きっと。
あなただけの相棒が、あなたの隣で誰より輝いていることでしょう。