大園高校不思議調査隊   作:かんおみ

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理科室の濃硫酸女

どれくらい時間が経ったのだろうか。はっきりとはわからないが少なくとも10分は泣いていた気がする。

 

「もう、大丈夫です。ご迷惑おかけしました」

 

「かまわない。落ち着いたか?」

 

林君が僕を気遣ってくれる。

 

「もう大丈夫?お水のむ?」

 

「しんどいなら、もう少しゆっくりしてもいいんだぞ?」

 

「うん、本当に大丈夫だよ。それよりも先生、お願いがあります」

 

「なんだ?」

 

「七不思議の真相を確かめたいんです。僕は。花村を殺した人間を許せない。子の七不思議は、もしかしたら花村の死に関係しているのかもしれない」

 

「…なんでそう思うんだ?」

 

「さっき、音楽室で木枯さんの幽霊に会いました。その木枯さんの首にも花村と同じ首を絞められた縄の跡がありました。何か関係があるのかもしれません」

 

「はあ…まったくお前は…本当に変に行動力があるんだからよ…」

 

「…理科室。おそらく木枯が待っていた人がいるはずだ。ついてきてくれるか?」

 

「先生、何か知っているんですか?」

 

「…まあな。ま、俺とお前は似た者どうしってことだ」

 

先生の言っている意味が分からない。どういうことだ、僕と先生が似ているって…

 

「行こう」

 

さっきまでのどこか適当で飄々とした態度は鳴りを潜め、どこか緊張した面持ちで先生は歩き出す。僕はこれ以上先生に質問することができずに、後についていくことしかできなかった。

 

 

 

「そういえば、本庄さん。花村がありがとうって」

 

「そんな、大したことはしてないよ。なんとなく花村さんは日向君と二人きりでお別れの時間が欲しいんじゃないかなって思っただけ」

 

「女のカンか?」

 

「そんなたいそうなものじゃないよ。でも、なんとなく、本当になんとなくそうしてあげた方がいいんじゃないかなって思って。花村さんが日向君を見つめる目っていうのかな?何か伝えたいことがありそうだったから。日向君も伝えたいことあったでしょ?」

 

女性って鋭い、あのわずかな時間で何か伝えたいなんて分かるものなのだろうか。

 

「わざわざ中で二人で話してたけど、花村と何話してたの?」

 

「それはナイショ。ガールズトークの内容を聞くなんてルール違反だよ。日向君も、花村さんと二人で話していた内容話したくないでしょ?」

 

「た、確かにね…」

 

図星をつかれた僕は、苦笑いを浮かべることしかできなかった。

 

「ほら、もう少しで理科室だよ」

 

そういって本庄さんは、僕のシャツをつかもうとして…やめた。

 

「…?シャツをつかまなくていいの?」

 

「さすがに私もこれだけ幽霊とかに出会ったんだから慣れたよ」

 

「そっか、分かった」

 

なんとなく、名残惜しい気もする。もちろん、やましい気持ちはない。僕は林君みたいに男らしいタイプではないので、このような感じで人に頼られたことがないのだ。だから、もう頼られなくなったのかと、少し寂しくなっただけで…女の子と触れ合う機会がなくなったということを憂いているのではない。断じてない。

 

「日向君…?どうしたの?」

 

「あ!いやいや、あはは…何でもないよ」

 

誰に対して言い訳をしているのだろう、僕は…そんなバカなことを考えている間に理科室前にたどり着いた。

 

「開けるぞ…」

 

先生はポケットからマスターキーを取り出して、理科室の鍵を開けようとする。

先生が鍵穴に鍵を差し込もうとしたその瞬間だった。

 

ビタン!

 

理科室の扉の透明ガラスの部分にナニカが張り付いた。そのナニカは、よく見れば口、鼻、そして目がある。しかし、その皮膚は赤黒く焼けただれ、一部はドロドロに溶けている。

 

「…!!!」

「うわああああああああ!!!!」

「きゃああああああああああ!!!!!!!」

 

本庄さんが僕の体に思いきり抱き着いてくる。正確に言えばこれはしがみついていると言っても過言ではないかもしれない。

 

「先生!危ない!」

 

林君は先生を後ろに引っ張り、ドアから距離を取らせた。こういうときに、彼の反応と行動力は本当に頼りになる。

 

先生はそのまま後ろに尻もちをつく。

 

「あ、ああ…!ああああ…!!!!」

 

「先生、落ち着け。大丈夫だ。日向と本庄も大丈夫か?」

 

「う、うん…」「無理、これは無理!!!!!」

 

パニックになっている本庄さんを引っ張り理科室の扉から距離を取る。距離を取ったのだが…

 

「あれ、消えた…?」

 

先ほどドアに張り付いた何かが消えているのだ。窓ガラスに張り付いていた形跡も何もない。本当に、一瞬のうちに消えてしまったのだ。

 

「ゆ…ゆめ…?」

 

「4人が同じ夢を見ることはない。俺も見た」

 

「じゃ…じゃあ、あれは…?」

 

「理科室の濃硫酸女だろう。理科室に不用意に入った人間に硫酸をかけて殺してしまうらしい」

 

「そ、そんな物騒な…!」

 

その話が本当だとしたら、僕たちはとてつもなく危ないのではないだろうか。

 

ビタン!

 

再び何か、いや濃硫酸女が窓に張り付いた。

 

「うひゃああああ!!!!!」「きゃあああああああああ!!!!!」

 

「ここは、危ない。濃硫酸女が外に出てくるかもしれない。離れよう。俺は先生を連れていく。日向は本庄を頼む」

 

「う、うん!分かった!本庄さん、立てる?」

 

「ごめん!!!無理!!!!」

 

本庄さんは完全にパニックになってしまい、また腰が抜けてしまったようだ。僕の体にしがみついて離さない。

僕は、ぐっと体に力を籠める。

 

「ごめんね、本庄さん!」

 

「え、ちょっと!!」

 

僕は本庄さんの膝裏に手を入れ、もう片方の手を背中に回す。俗にいうお姫様抱っこというやつだ。

林君は、なんとか立ちあがった新山先生を引っ張って走っていく。

 

「ちょっと我慢してね!!!」

 

僕も最高にテンパっているのか、無駄に大きな声で本庄さんに話しかける。

 

「は!はい!!」

 

そのまま僕達は理科室を離れたのであった。

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