大園高校不思議調査隊   作:かんおみ

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番外編 とある入試の日の出来事

 

私はそっと息を吐く。白い息はたちまち消えて見えなくなった。

今日は大園高校の入試の日だ。私は私立専願組なのでこの試験が本番だ。

 

学校の門をくぐり、試験教室へと向かう。受験番号は147番。これはあくまでも申し込んだ順番で割り振られた番号なので少なくとも、147人はいるということだ。この全員がライバルということになる。地元の学校への進学も考えたが、私の地元はそこまでレベルが高くない。それなら新しくできてきれいな大園高校に進学したいと考えたのだ。

 

試験開始15分前。私は机の上に受験票と筆箱を置いて準備する。周りの人は参考書を読んだり、瞑想したりと様々だ。

私は緊張する心臓を落ちつかせるためお茶を口に含む。

 

お手洗いを済ませ、試験開始の合図を待つ。試験開始5分前にもなると、ほぼ全員が席についていた。そろそろ私も筆記用具などの準備をしよう。

 

「あれ…」

 

筆箱から鉛筆、シャーペンを取り出す。しかし、どこを探しても消しゴムがない。

 

「しまった…!」

 

昨日夜に最終確認をしたとき机の上に消しゴムを置きっぱなしにしてしまったのだ。

カバンの中を漁るが、やはりどこにもない。今から買いに行く?それじゃ絶対間に合わない。試験官に言う?多分貸してくれないだろう。まうい、さすがに消しゴムなしで試験に挑むのは無謀すぎる。冷や汗が背中を伝う。どうしよう、どうしたら…

 

「あの…よかったら」

 

何か策はないかと私が考えていると斜め後ろに座っていた男の子が消しゴムを差し出してきた。

 

「いいの…?」

 

「うん、僕二個もってるから。それ使ってください」

 

「本当にごめん!助かりました!後で返すね!」

 

「いや、いいよ。それあげるよ」

 

「いやいや、必ず返すから!」

 

「試験開始1分前なので私語は謹んでください」

 

試験監督に言われ、私たちは黙る。男子生徒はそのまま自分の席に戻っていった。

 

男子生徒から消しゴムを借りたおかげなのか、私はいつも以上の力を発揮してテストに臨めた。

 

最終教科の社会の試験が終わる。手ごたえはばっちりだ。

ちらりと私は後ろを向く。さっきの男の子は肘をついてボーっとしている。席の順番からして受験番号は141番だろう。試験も終わったし返さなければ。

 

「それでは、これより退室してもらいます。廊下が大変混雑するので時間を分けて退席してもらいます。それでは、受験番号121から141番の方は荷物をまとめ、忘れ物のないように退席してください。今日はお疲れさまでした」

 

「」

 

しまった、これは予想外すぎる。まさか、受験番号ごとに帰らされるとは…あの男子生徒が出て行ってしまう。

 

「それでは、残りの方も退席してください。お疲れさまでした」

 

私はあわてて廊下に飛び出すが、すでに彼の姿はもうなかった。

私は手元に残った消しゴムを見る。そこには、ペンで小さく日向と書かれていた。

 

「日向君…」

 

みんながみんな自分のことしか考えられないこの状況下で人に優しくできるというのは凄いことだ。彼がこの学校を選ぶかどうかはわからない。でも、できればこの学校を選んでいてほしいと思う。そして、この消しゴムを返したいと思った。

言っておくが、私は惚れっぽい人間ではない。多少優しくされたからといってコロッと落ちるほど軽くはない。かつて隣の学校の男子生徒に一目ぼれをしたと騒ぐクラスメイトの女子を内心では馬鹿にしていたほどだ。一目ぼれなんてありえない。

 

それでも…

 

『あの…よかったら』

 

私を助けてくれた彼の瞳に惹かれ、恋に落ちてしまったのだ。自分が馬鹿にしていた一目ぼれというやつだ。恋のきっかけなんてわからないものだ。

 

 

彼と一緒の学校に行けたのならきっと幸せだろう。神様がいるのなら、今後一目ぼれとか、運命というのを馬鹿にしません。ですからどうか、彼と一緒の学校に通わせてください。

 

私はそう願いながら、学校を後にした。

 

 

合格発表の日、私の番号があったことよりも彼が受かっていたことを喜んだ。

 

いざ入学式の日、必ずこの消しゴムを返そうと思い、大切にカバンに入れて持ってきた。新品の制服に身を包み、身だしなみもばっちり整え、私は学校に向かう。

 

いた、あの人だ。一目でわかった。ドクンと心臓が高鳴る。きっとこの心臓の高鳴りは緊張だけが原因ではないのだろう。私は、彼に近づこうとして…ふと足を止めた。

 

なんて声を掛けたらいいのかわからない。

 

『消しゴムありがとう。同じ学校になったね!』

 

とか?

 

『あなたと同じ学校にあれてうれしい!』

 

とか?

 

『あなたのこと、一目会った時から…!』

 

って、何考えているんだ私は!

 

そんなこと考えてると、すでに彼いなくなってるし…はあ、まあこれからいつでも機会はあるしそんな慌てることはない。そのうち返す機会や仲良くなる機会もあるだろう。

 

そんなこんなしている間に、1年以上の月日が流れた。

 

「ぜんっぜん機会がない!!!」

 

私は自分の部屋の机に突っ伏す。あれから何度も話しかけようとしていたのだ。しかし、なかなか勇気は出ず、撤退する日々…

情けない、碌な恋愛生活を送ってこなかった私の落ち度だ。

 

「…」

 

私は消しゴムを眺めながらため息をつく。ああ、恋愛の神様でも運命の女神さまでもいいからチャンスをください。彼とお近づきになるためのチャンスをください…

 

「あ…!」

 

ふと手に持っていた消しゴムを落としてしまう。慌てて下を見るが、どこにもない。

 

「あれ、どこいったんだろ…」

 

消えるはずはない。しかし、床のどこにも見当たらないのだ。

あれがなくなってしまったら、本格的に話しかけるチャンスを失ってしまう。

 

運命の女神も恋愛の神様もいないんだな。そう思いながらちらっと時計を見る。時刻は夜9時40分。今日は学校のセキュリティが落ちる日であり、七不思議を調べるために学校に忍び込む日だ。

また帰ってきてから探そう。そう思いながら私はカバンをつかみ、寮の部屋を後にする。こっそり抜け出し学校に向かう。そこには…

 

「えっと、なんで2人はここにいるの…?」

 

思い焦がれていた彼が立っていた。

運命の女神か、はたまた恋愛の神様かわからないがありがとう!私はこの機会を大切にします!

 

「もちろん、スクープのため!」

 

この機会を逃したらきっともうチャンスは訪れないだろう。きっとこの機会をものにして、日向君と仲良くなってみせる!私は内心若干邪なことを考えつつ、日向君の質問に答えるのだった。

 

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