大園高校不思議調査隊   作:かんおみ

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多目的室にて

林君が多目的室の扉に手をかけると、すーっと横に開く。

 

「ほらな」

 

「なんで…開いてるんだろ」

 

「わからん、七不思議にまつわる場所の鍵が開いている」

 

「…」

 

理由はいくつか考えられる。

一つ目はオカルト的な理由。幽霊がいるところは目に見えない力が働いて鍵が開いていました、というもの。これに関しては僕には説明ができない、そういうものだと考えるしかない。

二つ目は誰かが人為的に開けているというもの。何かしらの目的を持って鍵を開けている人物がいた。でも一体なぜ?理由がわからない。

 

「おい、日向…!」

 

林君に声をかけられ、意識を現実に戻す。

 

「どうした…の…」

 

多目的室の中を見た僕は、唖然とした。床には大きな穴が開き、黒板には僕達3人の名前が書かれている。

 

「…!」「いや…!」

 

本庄さんが僕の服の裾を掴む。多目的室の死の黒板、黒板に書かれた人物は死ぬという内容だったか。それならば、次に死ぬのは我々ということになる。

 

「とりあえず消さないか?」

 

「うん、そうだね。気味が悪いもんね」

 

僕と林君は黒板消しで僕達の名前を消す。意外にもすんなり消えた。

 

「…?」

 

消しているときに、違和感を覚えた。僕と本庄さんと林君の名前が書かれているのに、新山先生の名前はないのだ。僕達と何が違うんだろう…?先生だから?

 

「ど、どうしよう日向君、床の穴…お、降りてみる?」

 

床に空いた穴は階段のようになっており、下に降りられそうだ。暗く、先は見えない。

 

本庄さんが怯えながら僕に聞いてくる。

 

「降りるかどうか決める前に、少しいい?先生、いくつか質問しもいいですか?」

 

「ああ、いいぜ」

 

ここまでの探索で積もった疑問を解決したい。行くかどうかはその後決めても遅くないだろう。

 

「今回のセキュリティが落ちる件についてです。会議か何かで生徒にも伝えようってなったんですか?」

 

「あ、ああ。間違って入られても困るってなって、会議でそう決まった」

 

「誰が見回りに残るっていうのはそのときには決まってましたか?」

 

「いや、決まってないぞ。決まったのはギリギリだ」

 

今までの情報、そして僕が見てきたものを組み合わせて推理(というほど大層なものでもないが)をまとめ上げる。

 

「これはあくまでも仮説なんだけどね、明らかに人為的な要素が多いと思うんだ」

 

「人為的?」

 

「うん、たとえば…本庄さん。このスイッチ絶対に押しちゃダメだよって言われたらどう?」

 

「それはフリかなって思って押す」

 

「だよね?押したくなるよね?だから、本来はセキュリティが落ちることを言うべきではないんだ」

 

「確かに…」

 

「それに、夜10時以降でしょ?なおさら言う必要はないよ。でも、あえて言ったのは…僕達みたいな夜に忍び込むような人間を出すためじゃないかな」

 

「俺達が誘われていたということか?」

 

「うん、どういう意図や理由があるのかはわからないんだけど…だから会議をそう仕向けた人が僕は怪しいと思う」

 

「先生、誰が発言したのか覚えてないのか?」

 

「覚えてねえよ…会議なんて退屈なもんじっくり聞いてねえ」

 

それもそれでどうかと思うが…という言葉はグッと飲み込み、推理を続ける。

 

「会議の中にそう仕向けた人がいるってことは、日向君は犯人は先生の中にいるって考えてるの?」

 

「あくまでも予想だよ。でも、そう考えた方が都合がいいんだ。たとえば、教師なら非常口の扉の鍵を直さないように放置することもできるんじゃない?お金がないからとか時間がないからとか。普通鍵が壊れているならすぐ直すと思うよ」

 

「まあ、確かに。忍び込み放題だもんな」

 

「それを、あえて直さずに針金を巻くことで修理をしたことにしていた。忍び込めるルートも作っていたんだ」

 

「そういえば、先輩が非常口のこと知ってたよ。てことは、結構みんな知ってる話だったのかも?」

 

「もしかしたら、意図的にそういう話を流したのかも。非常口の扉が壊れてるって」

 

「それに、七不思議がこの学校の、それも最近起きた事件にまつわる内容がほとんどというのが気になるんだ」

 

「どういうこと?」

 

「本庄さんって中学校とか小学校で七不思議とかあった?」

 

「うーん、なんか理科室の人体模型が動くとか、階段の数が増えるとかそんな感じ。あ、トイレには花子さんがいるとかもあった気がする」

 

「有名どころとしてはそんなところだよね。でも、この学校の七不思議ってそれこそ、花村にまつわることとか、金森先生にまつわることとかだったよね?」

 

「それは学校ができて新しいからじゃないか?まだ数年だろ?できて」

 

「そうかもしれませんが、それでもこの噂はここ数ヶ月で広まっているものばかりです。あまりにも最近すぎる」

 

「それにどの事件も夜に起きているし、夜の時間にいてもおかしくない人物は教師くらいしか考えられないよ」

 

「そして…その人物はこの下にいると思うんだ」

 

「それはなぜだ?」

 

「さっきの黒板を思い出して欲しいんだけど、僕達3人の名前はあったのに新山先生の名前はなかったよね?」

 

「うん、確かに」

 

「なんでかなってずっと考えてたんだけど、それは僕達がここに来た時に新山先生と一緒にいなかったからだと思うんだ」

 

「僕達は、10時に学校に集まった。そこから学校に忍び込み中に入った。犯人はその様子をどこかで見ていたんだ。だから僕達3人のことはわかったけど後から合流した先生のことは分からなかったんじゃないかな?」

 

僕は一呼吸おいて説明を続ける。

 

「例えば、僕達3人を見てこの黒板に名前を書く。名前を書いた後この下に降りて行った。」

 

「だから、後から合流した新山先生の名前は書けなかったと…」

 

「うん、これで僕の推理は終わりだよ」

 

穴だらけでツッコミどころが多い推理だ。なんの確証もなく証拠もない。しかし、なぜかこの穴の先に犯人がいるという確信がある。

 

「僕は先に進むよ。花村を殺した犯人を見つけたいんだ」

 

「俺も行くぞ。もし日向が言ってることが正しいなら俺にも関係がある」

 

「俺も行く」

 

「わ…私は…」

 

「花村さんは残っておいた方がいいんじゃ…」

 

「…」

 

「この先本当に危ないかもしれない。それこそ、何人も殺した犯人がいるかもしれないんだし」

 

「ううん…私も行く…!」

 

「本庄さん…」

 

「私だって、花村さん達を殺した犯人が許せないよ。少ししか話せなかったけど、花村さんはいい子だったよ。そんな人を殺したなんて…許せない!」

 

「腹は決まったみたいだな、俺はもうお前らを止めない。協力してくれ」

 

「はい」「了解」「わかりました」

 

新山先生の発言に僕達は三者三様、返事をする。

 

「よし、いくぞ…!」

 

僕達が意を決して下に降りようとしたそのときだった。

 

「お主らまだおったのか…早く帰れと言っておるのに…」

 

「うわっ!」「きゃっ!」

 

突然後ろから声をかけられ僕と本庄さんが飛び上がる。

 

「なんだこの子」

 

「氏神様だ」

 

「氏神様ぁ?どういうこった?」

 

「この学校に住む神様らしいぞ」

 

「にわかには信じ難い話だが…幽霊もいる中で信じないという方が難しいか…」

 

林君が新山先生に向かって淡々と説明している。

 

「危ないからさっさと帰れと言っておるじゃろ」

 

「この先に友達を殺した犯人がいるかもしれないんです。だから…」

 

「ふうむ…その穴の下は負の気配で満ちておる。自ら死地に赴くようなもんじゃぞ。それでも行くというのなら…」

 

氏神様は僕に近寄ってくる。

 

「おい、しゃがめ」

 

「は、はい」

 

氏神様が指を下にしてしゃがめのジェスチャーをする。僕は言われた通り床にしゃがみ込む。

すると、氏神様は僕の肩に足をかける。ちょうど肩車のような感じだ。

 

「前の2人は腕っぷしに自信がありそうじゃがこちらの2人はみるからに貧弱じゃ。こっちはわしが面倒を見てやる」

 

氏神様から守られているのはもちろん僕と本庄さんだ。なんだか情けない…もう少し体を鍛えようかな…

 

僕は氏神様を背負い、下に降りる階段を進む。一番前は林君が、その後ろを新山先生がついていっている。

 

この先に何が待ち受けているのだろう。薄暗い道を歩くたびに口の中が干上がっていく気がする。

本当に犯人がいるのだろうか。それすらも不安になってきた。

 

犯人がいるとしたら、どのような人物なのだろうか。少なくとも教員で間違いない。そして、教員だとしても新山先生とは違う発言力を持った人間だろう。

…何かを見落としている気がする。しかし、それが何かわからない。モヤっとしたものがずっと僕の頭を支配している。

 

「まさか、こんなことになるとはね…」

 

本庄さんがおもむろに口を開いた。

 

「そうだな、まさかここまで大ごとになるとは。朝には想像していなかった」

 

「朝…?」

 

「ああ、朝礼で今日セキュリティが落ちると聞いてここにきたのがきっかけだろ?」

 

「…」

 

そうだ、僕も朝セキュリティが落ちることを聞いたからここにいるのだ。

 

「…この学校でそれなりの発言力を持ち」

 

「日向君?」

 

「夜遅くまで残っていても怪しまれない人物」

 

「日向、どうした?」

 

「そしてなにより、わざわざセキュリティが落ちることを明かした人物」

 

階段を降りきると、開けた空間に出る。ご丁寧に松明のようなものがかけられており、赤々と燃えている。

開けた空間の先に誰かがしゃがんでいる。その前には何かの石像があり、誰かはまるで祈っているかのようだ。

 

「あんたが元凶だったんですね、八島先生…!」

 

誰かはこちらを向く。不自然なほど瞳を爛々と輝かせ、こちらを見る男、その正体はこの学校の生徒指導主事であり、朝礼でセキュリティが落ちることを伝えていた八島先生だった。

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