日向京介(ひなたきょうすけ)
この物語の主人公。運動神経は普通、勉強も普通。友達は少なく、あまり人と関わらない。しかし、一人が好きなわけではなく単に話しかける勇気がないタイプ。話しかけられたら話せる。
趣味は読書。姉が二人いる。
「はい!話つけてきましたー!」
「はっや!」
思わず僕は驚きの声を上げる。
「はいこれ、校長先生直筆の退学取消届です」
大園さんが見せてくる紙には、校長印とともに、退学を取り消すと書かれている。
「さて、ここから本題に入りましょう!先輩達には一つ、お願いがあるんです!」
「お願い?」
「私と一緒に、都市伝説を調査して、そして都市伝説を作って欲しいんです!」
「都市伝説を調査して…」
「都市伝説を作る?」
それはもはや二つお願いがあるのではないだろうか、というツッコミは飲み込んでおく。
「先輩たちの調書、読ませてもらいました」
「それ、警察しか見れないんじゃ…」
「もちろん原本ではないですよ、写しです」
「なんでそんなもの持ってるの?」
「細かいことはいいじゃないですかー!話を続けますよ?今回先輩達は夜の校舎に忍び込み、最近亡くなった人物にあった。間違いありませんね?」
「うん、そうだよ」
「先輩は不思議に思いませんか?なぜ最近亡くなった人ばっかりなんだろうって。私はそれを、噂を信じる人が多かったからと仮説を立てました。噂を信じる人が多かったから、噂が現実になってしまったんです」
「話が見えてこない」
「七不思議が事実だったからみんなが信じたのではなく、みんなが信じたから七不思議の内容が現実になった。そう言いたいってこと?」
「その通りです!」
「うーん…そうも考えられるかもしれないけど、あまりにも突拍子もなくない?」
本庄さんのいう通りだ、それならば信じる人が多ければどんな願いや噂も叶うってことだ。
でも…僕はこの前地下で壊した石像を思い出す。
『君に力を貸してあげよう。君の望むままに、あの男に復讐したいだろう?願いを叶えてあげよう。さあ、君の大切な友達の仇を今とろうじゃないか』
「原理はわからない、理由もわからない。でも、願いや欲望を叶える何かはあるかもしれない」
「日向君は信じるの?」
「実はね、僕が石像に触れた時、声が聞こえてきたんだ。願いを叶えてあげるって」
大園さんは満足そうに頷き、僕を見る。
「先輩のいう通り!先輩達には私と一緒にこの仮説を実証して欲しいのです!」
「実証するのはいいが、具体的にはどうするんだ?」
「そうですね、適当に何か噂を広めて欲しいんですよ。この噂が広まり、実現したら私の仮説は実証されたことになります!」
「噂を広めるって…一体どうやって?てかなんの噂広めるの?」
「うーん…そうですね、みたい夢を見る噂とかどうですか?」
「いいけど…なんで夢の噂?」
「いいじゃないですか、実害なくてみんなが信じそうな噂ですしー」
大園さんはあっけらかんとしている。
「皆さんのことを調べさせてもらいました。本庄先輩は新聞部なんですよね?だったら記事を書いたら広まるんじゃないですか?」
「停止中だけどね…わかったよ、書くよ…嘘の記事を書くのは気が引けるんだけど…」
「嘘の記事かどうかは分かりませんよ?私の仮説が正しければ現実になるはず!多分…」
「信憑性のない…」
「そして…林先輩はオカルト研究会なんですよね?それならそういうの、好きなんじゃないですか?」
「噂とやらを広めるのは助けるが、部活ではしない。先輩に嘘をつくのは嫌だ」
「ふーん?まあいいですよ。噂が広まれば。そして日向先輩は…うーんと…」
大園さんが悩むのも仕方ない、僕には友達と呼べる人間が少ないため噂を広めるのは向かないのだ。
「私のお手伝いということで…」
大園さんに少し気を遣われてしまった…遠回しに戦力外宣言をされた僕は肩を落とすことしかできなかった。
「それじゃ!明日から活動をしましょう!うーんと…あ、何か集まれる場所が必要ですね…明日から放送室を活動場所にしましょう。確か誰も使ってないはず…」
「別に適当な教室を使えばいいんじゃないの?わざわざ放送室に行かないでも」
「うーん…それは皆さんに都合が悪いですよ。だからとりあえず放送室で。定期的に連絡したいので2日後の放課後に放送室集合で!明日は皆さん噂を広めるようにお願いしますね!」
なんとなく気になる言い方に、僕はひっかかってしまう。大園さんは言うだけ言うと、ひらひらと手を振って出ていった。
「…」「…」「…」
「なんだか大変なことになっちゃったね…」
「うん…」
「仕方ない、やろう」
「俺はクラスで、本庄は部活を使って広めていく。日向は…」
「日向君は…できる範囲でいいんじゃないかなー…」
2人から生暖かいフォローが入る。正直逆効果な気がするが…まあ僕もできることをしよう。