次の日
クラスメイトがゾロゾロと教室から出ていく。今から4時間目、選択授業の移動教室の時間だ。
「…」
私は特に何も持たずに立ち上がった。特に興味のない授業、勝手に割り振られただけの選択授業に時間を取られてるなんてごめんだ。
私は適当にどこかでサボることにした。
「あれ、大園さん」
「ん?あ、先輩!こんにちはー!」
適当にサボる場所を探していると、教科書を抱えた日向先輩が声をかけてきた。今は周りに誰もいないし、話していても大丈夫だろう。
「先輩も移動教室ですか?」
「うん、そうだよ。今から文学論」
「へー、先輩も受けてたんですね」
「大園さんも?」
この学校の選択授業は1年生の時と2年生の時、2回ある。だから、1年生と2年生が同じ授業になるのだ。
「もう始まっちゃうよ?」
「えー、どうしよっかなー?めんどくさくって、先輩も一緒にサボりません?」
「ダメだよ…ただでさえ僕問題起こして学校の先生から目をつけられてるんだから…」
「安心してください!私もですから!」
「なんの励ましにもなってないよ…」
先輩は真面目ちゃんだからガードが固い。こういうサボりの誘いは絶対に受けないだろう。でもそれじゃ面白くない。
「えー?じゃあ先輩が男らしくエスコートしてくれたら行きますよ?」
「わけがわからないよ…」
「ほら、まずは手を差し出してー、『いくぞ、睦月』って言ってくれたら行きますよ」
先輩が渋ーい顔をしている。林先輩や本庄先輩よりもからかいがいがある先輩だ。
もう少し何かからかいたいな…できたら休み時間が終わるまでは引っ張りたい。なんてことを考えていると
「睦月、いくぞ」
「…!」
先輩は照れて顔を赤くしながらも私を見つめて手を差し出してきた。思いもよらない、というかまさかするとは思わなかった先輩の行動に不覚にもドキッとしてしまう。先輩のくせに生意気だ。
「お言葉に甘えて!よいしょ!」
ぎゅっ!
私は先輩の手ではなく腕に抱きつく。
「ちょっと!?」
「ほらほらー、エスコートしてくださいよー?」
私はわざと体を押し付ける。その度にあわあわしている先輩を見て愉悦に浸る。
「遅刻しちゃいますよー?」
私は先輩を引っ張って教室に向かった。
「流石にもう離して…」
教室の前、先輩が私に言ってくる。
「仕方ないですね、これで許してあげますよ」
「ありがとう…」
学校の爪弾き者の私と一緒にいると先輩も白い目で見られる。これ以上は勘弁してあげよっと。
「それじゃ、私は行きますんで」
「え?授業受けないの?」
「教科書とか何も持ってきてないですしー」
「別に見せてあげるけど?」
「…」
この先輩は何言ってるんだろう。私が周りからどういう目で見られているのか知らないのだろうか。一緒にいるだけで弱みを握られるとか、脅されるとか言われるような人間なんだけど私。
「悪い噂立っちゃいますから、私といると」
あー、自分で言ってて本当に馬鹿馬鹿しくなっちゃう。
「なんで?」
「…」
本当に何も知らないのだろうか、キョトンとした顔が私の神経を逆撫でする。こちらが優しさで言っているのにこの人は…
「私、先輩を脅してるんですよ?私の言うこと聞かないと退学にするって。そんな奴なんですって私」
「でも、退学になってたところにチャンスをくれたのは大園さんだよ。その見返りとして大園さんに協力するのは当然だよ」
「…」
「ほら、行こうよ」
「…はい」
今までにない扱いを受けて少々混乱してしまう。私と先輩は利害で動く関係のはずだ。少なくとも私はそう思っている。だから必要以上に私に優しくする必要はないのだ。
分からない。何を考えているのか本当にわからない…
何か裏があるのかもしれない。少し探りを入れてみよう。私は先輩の後に続き、一番後ろの席に座った。