教室は視聴覚室、普段の教室のような1人一つの机ではなく長机だ。椅子も固定されており動かすことはできない。対して座り心地の良くない椅子に腰をかけて、私は大して興味のない授業を聞く。
正直言って暇だ。物知りのつぶやきのような授業だ。前で話している先生も自分の好きな範囲の話ができて満足なのか楽しそうに授業をしている。
周りの生徒の反応は様々だ。先生の話をメモする者、寝ている者、他の教科の宿題をする者…その中でもやはり何人かはチラチラと私と先輩の方を見てくる。それもそうか、先輩と一緒に入ってきて、さらに隣同士で座っているんだから。周りの目にはどのように映っているのだろうか。
『先輩、暇です』
私はサラサラと先輩のノートの隅っこに書いた。
『授業聞きなよ』
律儀に先輩もメッセージを返してくれる。
『えー、だってつまんないんですもん』
『なんでこれ受けたのさ…』
『勝手に入れられてました』
『それは…お気の毒に』
『だからー、ひまですー』
『そんなこと言われても』
『先輩に無理やり連れてこられたんですから先輩が暇つぶしに付き合ってください』
『そんな無茶な…』
『先輩って周りの目とか気にしないんですか?』
『人並みには気にすると思うけど』
これは予想外の答えだ。人の目を気にするのならば私と一緒にいることなんて一番目立つはずだ。やはり何か私に近づく目的があるのだろうか。
『私と一緒にいると目立ちますよ?』
『ああ、そりゃね』
なんだ、やっぱり私がどう思われているのか知ってるのか。
『大園さん、金髪だし』
思わずずっこけそうになる。何を言ってるんだ本当にこの人は。
『いや、そうじゃなくて…』
『私、理事長の孫なんで教師とか生徒からも厄介者扱いされてるんですよ?』
確かに自分でも好き勝手しているとは思っている。好きな時に休むしサボるし、それを教師は理事長の孫だから強く言えない。それをよく思わない教師と生徒もたくさんいる。
『うーん…それ僕と関係ないし…』
「…」
だめだ、本当に理解できない。ここまでわざわざ言ってあげてるんだから察してほしいものだ。
『私と一緒にいると悪目立ちするってことです。友達無くしますよ?』
『友達ほとんどいないよ』
またずっこけそうになる。そういえばそうだった。移動教室も1人だったし…こういうのは気の合う友達と何人かで受けるものだ。でないとテストや課題が大変だ。
『それに、やっぱり退学になるところを僕は大園さんに助けられてると思ってるよ。他の2人もそうじゃないかな?』
「…」
『そうですか』
なんとなく落ち着かなくて、そっけなく返してしまう。
『先輩、今日の放課後は?』
『帰るだけ』
『暇なら放課後、昨日の相談したいです』
『わかった』
先輩と私は単なる利害の上で成り立つ関係だ。私のやりたいことのために働いてもらう関係でしかない。それでも、向こうがこちらに好意的ならばそれに越したことはない。
『先輩、来週も教科書見せてください』
『教科書どうしたの?』
『無くしました』
『なにしてるのさ…』
もちろん嘘だが、先輩なら信じてくれると思っていた。退屈な授業に楽しみが一つできた。私は満足げに頷いて授業終了のチャイムを待つのだった。