ざわざわと生徒達の話し声が聞こえる。日本には毎週朝集まって話を聞く時間がある。全校朝礼というらしい。
校長先生が何か話している。正直何を話しているのかわからない。きっといい話なのだろう。あ、だれか倒れた。3年生の方だ。もしかしたら、先輩かもしれない。大丈夫だろうか。
そんなことを考えていると話している先生が変わった。あれは八島先生だ。
「みなさんおはよう。本日夜から明日の朝にかけて、学校のセキュリティ点検のため本日22時から明日の明朝にかけて学校のセキュリティが使えない。貴重品は必ず本日中に持ち帰ること」
学校のセキュリティが使えない?それって要するに夜に入れるってことか?それはいい話だ。この機会に、ずっと考えていたことを実現してもいいかもしれない。早速放課後に先輩に相談しよう。
放課後
放課後、俺は部室に行く。ノックをして教室の扉を開く。そこには先輩が座っていた。
「こんにちは、林さん」
「こんにちは、斑鳩(いかるが)先輩」
この人はオカルト研究会の部長、斑鳩先輩だ。
「今日もご出席、感謝いたします」
そういって微笑む先輩の席に座る。オカルト研究会といってもほとんどの部員は幽霊部員。俺と斑鳩先輩くらいしか活動をしていない。その活動というのも放課後に教室に集まり本を読んだり雑談をしたり、先輩が紅茶を入れてくれたのを飲んだりと様々だ。
「先輩、大丈夫か?朝倒れたか?」
「ええ、お恥ずかしながら…」
「先輩はあまり頑丈じゃない。無理するな」
「お気遣い感謝しますね」
先輩は体が弱い。だからよく貧血を起こしてしまうのだ。
「先輩」
「はい、どうかしましたか?」
「今日、学校のセキュリティが落ちる。俺は七不思議を確かめたい」
「セキュリティが落ちる?どういうことでしょう?」
そうか、先輩はあの時間保健室にいたから話を聞いていなかったのか。俺は事情を説明する。
「なるほど、だから先生が貴重品を持って帰るように言っていたのですね」
「今日しかない。今日学校に忍び込んで真相を確かめる」
「危険ではないですか?それこそ、ばれてしまったら大問題です」
「ばれないようにする」
「うーん…上級生としては止めるべきなのでしょうけど…そうですものね、気になりますものね。わかりました、くれぐれもお気をつけて」
「ありがとう、先輩。土産話、期待しててくれ」
「でも、どうやって入るつもりですか?」
「窓から入る。どこか開けておく」
「それは、閉められてしまったら困りますし…あれはどうでしょう。1階の非常口を使うのは?」
「…?それはなんだ?」
「実は、非常口の鍵が壊れていて針金で巻かれているだけなのです。そこから中に入ることができますよ」
「それはいいことを聞いた。そこから入る」
「ええ、それが一番安全でしょう。でも、無理はなさらずに…」
作戦は今夜、準備を整えて噂を確かめよう。
現在
「好奇心旺盛なんだね…」
「昔から怖い話が好きだ。中国のキョンシー、韓国の卵鬼人、日本の天狗…いろいろな妖怪の話を聞いて育った」
林君はずんずん進んでいく。何の躊躇もない。本当に怖くないのか?
「林君、こ、怖くないの…?」
本庄さんがまったく僕と同じ疑問をぶつける。
「怖い、でも知りたい。怖い話やオカルトの話をすると先輩が喜ぶ」
「先輩?」
「オカルト研究会の部長、斑鳩先輩」
「もしかして、斑鳩先輩が喜ぶから先輩のために来たっていうのもあったり…?」
ずんずん進んでいた林君がぴたりと止まる。
「ない、そんなことない」
もしかしたら、僕が適当に言ったことが何か林君の触れてはいけない部分に触れてしまったのかもしれない。
「え、でも、先輩が喜ぶって…」
「ない、断じてない」
そのままこちらを振り向かずずんずん進んでいってしまう。暗くてよくわからないが、林君の耳が赤い気がした。
「…あまずっぱー」
本庄さんがぼそりとつぶやく。
「あはは…」
僕は苦笑いをすることしかできなかった。