みんなが噂を広め始めてから一週間後、異変が起き始めた。
「今日の欠席はー…5人か。これまた多いな…体調不良には気をつけろよ?それじゃ今日も一日ぼちぼちやれよー」
朝のホームルーム、数日休んでた新山先生が復帰し出席を取る。確かに欠席が目立っている。何かあったのだろうか。
ブーブー
携帯が震える。あまり堂々と出していると先生に没収されてしまうのでこっそりカバンの中で見る。
どうやら、大園さんからの連絡のようだ。
大園:今日はお昼に放送室で!他の先輩達にも伝えてください!
この前の一件、大園さんと四つ辻を探索した際に連絡先を交換していたのだ。僕は了解と一言だけ入れて、他の2人にも伝えた。
授業中
「で、あるからしてー」
「…?」
居眠りをしているというか、うつらうつらしている人が多い…?
「こら、起きなさい」
おじいちゃん先生の声が響く。確かに、先生の声は眠くなる。それでも…これはちょっと多いのではないだろうか。いくら4時間目だとしてもだ。
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り、お昼を告げる。僕はカバンからパンを取り出し、放送室に向かった。
放送室には、すでに林君と本庄さんがいた。どうやら大園さんはまだのようだ。
「お疲れ様日向君」
「お疲れ、日向」
「うん、2人ともお疲れ様」
あまりこういうことをしたことがないのでちょっとだけ嬉しい。お昼ご飯を友達と食べられるというのは、恵まれたことなのだ。
「ねえ、なんだか今日居眠りしてる人多くなかった?」
「僕もそれ思ったよ。あと、欠席も多くなかった?」
「確かに」
「ごめんなさい、遅れましたー!」
大園さんがパタパタと扉を開けて入ってくる。これで全員揃ったようだ。
「それじゃ、定例会といきましょー!さっそく、お二人の進捗を教えてくださいな!」
見たい夢を見る噂を広めたというのは聞いているが、具体的にどのような内容を広めていったのかわからない。僕も気になるところだ。
「うん、私の方は新聞記事にしてみたよ。といっめも、小さくポップみたいなものを作って掲示板に貼り付けただけだけど」
本庄さんが差し出したものは、可愛く丸型に切り抜かれたポップだった。ポップには
最近流行りの噂!
みたい夢を見る方法がなんでもあるんだとか…?
と書かれている。
「これをいくつか作って、いろいろな場所に貼り付けたよ」
「すごいね、本庄さんこういうの作るの上手」
「ありがとう、手先は器用な方なんだ」
「俺の方は、クラスメイトに噂を広めた」
「どんな内容?」
「みたい夢を見る方法があるらしいとだけ伝えた。方法まで詳しく言うとボロが出るかもしれない。だから言ってない」
「なるほど…」
予想以上に2人がしっかりと噂を広めていてびっくりした。僕だけなにもしていないのではないだろうか…いや、一応大園さんと四つ辻は探索したけども…
「うんうん、積極的に取り組んでくれているようで何よりです!」
「ところでちょっと気になったことが…」
僕は大園さんに体調不良者が多いこと、そして眠たそうな人が多かったことを伝えた。
「…?気のせいじゃないんですか?」
「うん、そうかもしれないんだけど…ちょっと気になって…」
「うーん、まあ様子見で!」
「そうだね」
眠たそうな人が増えているからといって別に夢の噂が関係しているとは限らない。体調不良者も季節の変わり目でただ体調を崩しただけなのかもしれない。
「今日の活動はこれくらいにして、私はもう帰りますねー」
「え、午後の授業は?」
「サボります!」
「それは良くないよ…」
「お堅いこと言わないでくださいよー、午前中来ただけでもう飽き飽きなんですから」
「今日の放課後は特になにもなしで!それじゃ!」
大園さんはそれだけ言って外に出ていってしまった。
「…俺たちも戻るか」
「そうだね」
僕たちはお昼ご飯を片付け、それぞれの教室に戻った。
教室
基本的に僕は休み時間は特になにもしていない。本を読むか課題をやるか、たまにスマホをいじるかだ。誰かと会話することは基本的にない。
だから、クラスメイトの声が聞こえてきたのはたまたまだった。
『なあ!言われた通り試してみたけど本当に見たい夢が見れたぜ!』
『まじかよ!あの噂本当だったんだな!』
僕の隣の席でクラスメイトの吉野君と藤田君が2人で話している。内容はどうやら見たい夢を見ることができる噂についてだった。
『でもよ、ミスったら悪夢見るんだろ?なんかリスキーじゃね?』
悪夢を見る…?藤田君の言葉に僕は引っかかった。
『いいじゃねえか、所詮夢だろ』
『悪夢見ると寝た気がしねえんだよな』
見たい夢の話はきっと僕たちが広めようとした架空の噂だろう。でも、悪夢を見ることや夢の見方までそんな話までは聞いていない。今日のお昼、本庄さんと林君から聞いた内容にもなかった。
もう少し内容を聞きたい。具体的に噂の内容と夢の見方を聞いておきたい。聞いておきたいのだが…あいにく僕に2人の会話に割って入る勇気はない。とりあえず大園さんに報告を…と思ったがもう帰ってしまっている。どのみち明日まではなにもできそうにない。
自分のコミュ力の無さに小さなため息が出るのだった。