2年1組の教室に来たのはよかったのだが…本庄さんと林君は当然僕のクラスメイトのことを知らない。声をかけるのは当然僕の役目なのだが…
どのように声をかけたらいいのだろうか…
「普通に噂の話を教えてよでよくない?」
「今までそんな感じで話しかけたことないのに?」
「でも…仕方ないよ。それしかないよ」
「うーん…」
僕たちはクラスの扉から中をチラチラ伺う。ええい、仕方ない。ここまで僕は何も働いてないんだ。やるしかない。
「あのー…藤田君?」
「ん?ああ、日向か。どうした?」
「いや、ちょっと、えーと…夢を見る噂について僕も知りたくて」
「ああ、あの噂か。お前も興味あったんだな。いいぜ」
「あ、ありがとう!」
案外すんなり教えてもらえることになり拍子抜けしてしまう。人間関係とは意外とこんなもんなのかも。
「寝る前に、見たい夢の内容を強く頭に思い浮かべるんだ。そして、仰向けに手を組んで寝る。これで見たい夢が見れるらしい」
「へー、そうなんだ」
「このやり方を破ったり、強く念じきれないと失敗して悪夢を見るんだとさ」
「…そうなんだね」
「俺は試してねえけどな。昨日吉野が試してみたい夢見たらしいぜ」
その話は盗み聞きしてたから知っている。しかし、この方法は誰が広めたのだろうか。
「そのやり方間違ってない?」
「え?」
突然クラスの女子生徒、遠山さんに声をかけられた。
「みたい夢の内容を紙に書いて、枕の下に入れてうつ伏せで寝るって聞いたけど」
「おいおい、誰から聞いたんだよそんな方法」
「俺の聞いた方法とも違うな、見たい夢の内容を声に出して3回唱えるって聞いた」
「うちが聞いたのは見たい夢の内容を絵に描くって聞いたけど」
わらわらと人が集まってくる。話の中心というか、こんな大人数で会話をしたことがないので戸惑ってしまう。ちらっと扉の方を見ると本庄さんが手招きをしている。そろそろ潮時だろう。
僕をのぞいて盛り上がるクラスメイトの間をこっそりと抜けて本庄さん達の方へ帰還した。
「はああー…」
「お疲れ様日向君、どうだった?」
「夢の見方にはいくつか方法があるってのと、やり方を間違えると悪夢を見るって言ってた」
「やっぱり変な噂が広まってるみたいだね…これらの方法のどれかがもしかして、悪夢を見るとか…?」
「うーん、そうかもしれないしそうじゃないかもしれない。あまりにも体調不良が多すぎるからね」
「どういうこと?」
「本庄さんのクラス、何人休んでた?」
「えっと…7人くらい?」
「僕のクラスでも8人休んでたよ。多分他のクラスを合わせたらもっと多くなる。その人たちが全員同じ方法で夢を見る噂を実践したとは思えないよ」
「じゃあ、悪夢を見る方法が何パターンかあるとか?」
「いや…方法は問題じゃないのかも。夢を見る方法を間違えると悪夢を見る、この部分が重要なのかもしれない」
「どういうこと?」
「これだけたくさんの方法があるんだ。どれが正しい方法かなんてみんなわからないよ。なんなら、どれも正しくないかもしれない。今、体調を崩している人は何かしらの方法で夢を見る方法を試して、そして…」
「悪夢を見たと…つまり、夢を見る方法を試した人は体調を崩したってこと?」
「そうなのかもしれないね。具体的に悪夢の内容を聞くことができたら…」
「あ、もしかしたらオカルト研究会の部長さんなら話してくれるんじゃない?」
「確かに、聞いてみる価値はありそうだね。ねえ林君、先輩に連絡取れる?」
さっきから一言も話さない林君に話題を振る。
「あ、ああ…わかった」
林君は僕に声をかけられて我に返ったかのようにスマホを取り出した。
僕と本庄さんが見守る中、林君はオカルト研究会の部長、斑鳩先輩に連絡を取る。
『はい、斑鳩です』
「体調不良のところすまない先輩。少し聞きたいことがある」
『ええ、なんでしょうか?』
「…日向、頼んだ」
「え!僕!?」
「すまん、頼む」
『あの…』
「ああ、えっと…2年生の日向と申します。体調が悪いのにごめんなさい。聞きたいことがあって」
『いえいえ、なんでしょうか?』
「先輩は夢を見る方法を試しましたか?」
『…!はい、興味があったので…』
やはり夢を見る方法を試していた。
「どんな方法でやりましたか?」
『眠る前に深呼吸をして、見たい夢を頭に思い浮かべながら見たい夢がありますので見せてくださいと三度唱えるという方法です』
初めて聞いた方法だ、やはり方法自体は関係があまりないのかもしれない。
「どのような夢を見たんですか?」
『…ええと、小人に殺される夢です』
「小人に殺される夢?」
『電車に乗っていて、私の横に座っている人達が徐々に殺されていくんです。それも目を抉られたり体をバラバラにされたりと悲惨な方法で…それを二日連続で見てしまって』
「なるほど…先輩はどんな夢が見たかったんですか?」
『ええ、とりあえず不思議な夢が見たいと願いました』
夢の内容はだいぶアバウトだ、これで絞るのは難しいだろう。
手に入れた情報は二つ。夢を見る方法を試したということ、悪夢を連続で見ていること。これくらいだろうか。
「先輩、ありがとうございました。お大事になさってください」
『はい、それでは失礼します』
僕は通話を切り、スマホを林君に返す。
「もう少し情報が欲しいね。悪夢の内容とか」
学校に来ている人で誰か知ってないかな…
「保健室」
「保健室?」
「今日も何人か体調不良で保健室に行っていた。もしかしたら体調不良の人がいるかもしれない」
「確かに、行ってみる価値はあるね」
「よし、行こう」