大園高校不思議調査隊   作:かんおみ

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大園さんの秘密

 

図書室には様々なエリア、読書エリア、勉強エリア、そして交流エリアの三つに分けられている。予想通り、大園さんは読書エリアで夢に関する文献を読んでいた。

 

その大園さんはチラリと僕をみて…目を逸らした。

 

あれ、無視された?気がつかなかったのかな?

もう少し、近づこうとして、声が聞こえてきた。

 

『あれ、この前一緒に授業受けてた人』

 

『別の男にもう手出してるんだ、キモー』

 

『学校来なければいいのにね』

 

数人の女子生徒がヒソヒソと話している。多分だが、わざと聞こえるように言っているようにも思える。

 

『好き勝手して女王様気取りなのマジムカつくよね』

 

『なんでも、ウリしてるらしいよ』

 

『え、まじ?ほんとにキモイんだけど』

 

「…」

 

大園さんは何も言わずに、本を読んでいる。疑うべくもなく、大園さんに向けて言っているのだろう。

 

「…」

 

きっとこの女子達と大園さんは何かしらの因縁があるのだろう。しかし、3人で1人の陰口を言う光景は見ていて気分のいいものではない。そして何よりも

 

『お姉ちゃん達と比べて弟の方は何もできないよね』

 

『すごいやつの弟だから陸上に勧誘するつもりだったけど大したことないな』

 

『日向弟に会ったけど期待外れだったよ』

 

過去の自分と重なったのだ。

僕は脇目も振らずに大園さんに近寄った。

 

「出よう、大園さん」

 

「ちょっと、せっかく知らんぷりしたのになんで寄ってきちゃうんですか!?」

 

「いいから行こう」

 

僕は大園さんの手を引っ張って図書室を飛び出した。去り際、こちらをジロジロみてくる女子生徒達を睨みつける。これが僕ができるせめてもの抵抗だった。

 

 

廊下

「もー、先輩。調べ物終わってないのに出てきちゃいましたよ」

 

「ごめん…」

 

大園さんを引っ張る手を離すと素直に謝った。

 

「…先輩が気にすることじゃないですよ。私だって学校で好き勝手してます。それで後ろ指刺されることだってあり得るでしょ。あんなの慣れっこですって」

 

「…」

 

「慣れっこ慣れっこ、小学校はまだ友達と呼べる人いましたけどー、どんどん離れちゃったし。中学じゃボッチですよ。別にいいですけどねー」

 

「寄ってくるのは利権に目が眩んだ大人と欲望丸出しの男だけ。ほら知ってます?私のおじいちゃんって結構地域の有力者なんですよ?その孫娘に気に入られたらそりゃー融資にも融通が効きますもんね」

 

「……」

 

「こないだ私に告ってきた男がいたんですよ。その子当時彼女がいて、その彼女を振って私に告ってきたんですよ。もちろんそんな男振ってやりましたけどね。後から聞いた話ですけど、なんでもその男は女の子取っ替え引っ替えして、貢がせて。飽きたらポイしてたみたいです」

 

「………」

 

「そんなクズ男から解放されたんだから次の恋を見つけたらいいのに、私に逆恨みしちゃって。でもまあ、恨まれるのなんか慣れっこです。慣れっこ慣れっこ」

 

「…………」

 

「人からどう思われていようが、もうどうでもいいんでーす!」

 

「……だろ」

 

「はい?どうしたんですか?」

 

「いいわけ!ないだろ!!!」

 

「うひゃっ!」ビクッ

 

予想以上の僕の大声に大園さんの方がビクッとなる。

 

「後ろ指刺されて!陰口言われて!!そこまでされる謂れはないだろ!!!」

 

「せ、せんぱい…?」

 

「理事長の孫だから教師から腫れ物扱いされて、同級生からは後ろ指を刺されて、そんなの許されるはずがない!」

 

「せんぱい…」

 

大園さんは一種の諦観を覚えていたんだ。クラスの居心地が悪いから学校にあまり来たくなかったのだろう。

ずっと大園さんが人目を避けていた理由がわかった。僕たちと大園さんが関わっているのを他の生徒が見たら僕たちにも良からぬ噂が立つかもしれない。

それを避けるために放送室であったり、1人で行動していたりしたのだ。

 

「…後ろ指を刺されるのは、苦しいことなんだよ」

 

「先輩、何かあったんですか?」

 

「…僕にはね、お姉ちゃんが2人いるんだ。1人はめちゃくちゃ勉強ができて、国公立の医学部に現役で合格するくらい頭がいい。もう1人はスポーツ万能で陸上でインターハイに行くくらい。実業団や大学からも声がかかってる。それに比べて僕は何もできなくて…周りから散々言われてきたよ、出来損ないって。親も2人に期待して僕には何の期待も寄せていない。あの家にいたくなかったんだ」

 

姉ができるせいで、僕に対して逆恨みをしてきた人間もいるのだ。

 

「そうだったんですね…」

 

「だから、この学校に来たんだ。寮暮らしであの家から離れられる。誰も僕のことを知らないところで生きたかった。まあ…コミュ力がなくて友達作りには失敗したけど…それでも、この学校は快適だったよ」

 

「退学になるところを大園さんは助けてくれた。それだけで十分感謝してるよ」

 

「私は別に…都合よく私の思い通りに動いてくれる人が欲しかっただけで…私達は利害の関係で…」

 

大園さんの言葉が詰まる。

 

「大園さんは、こんな日常が嫌で部活を作ったんだよね?今の日常、居場所がないのが嫌なんだよね?」

 

「…」

 

大園さんはついに何も話さなくなった。

 

「この学校に、大園さんの居場所がないというなら!僕が大園さんの居場所になってみせる!」

 

「な!?はあ!?な、何言ってるの!?私は別に友達なんていりません!」

 

「それは、嘘だ。大園さん、部活でみんなでご飯を食べてる時楽しそうだった。僕も最近本庄さんや林君とご飯を食べて楽しかったからわかるよ。人とご飯食べたり話したり、何かしたりするのって楽しいよね」

 

「…」

 

「これは僕の余計なおせっかいだ。でも、同じような目に遭ってる人を見て無視はできない」

 

僕は本心から思っている。大園さんと一緒に過ごした時間は短い。でも、大園さんは僕たちに気を遣えるくらい優しい心を持っている。それだけは強く感じた。

 

「はあ…本当に…変な人。私と関わって大変なことになっても知りませんからね」

 

「大丈夫、それくらいは覚悟してる」

 

「これから、他人の目があっても絡みに行きますからね」

 

「うん、いつでもどうぞ」

 

「裏切ったら、タダじゃおかないですからね」

 

「裏切らないよ」

 

「はー、全く。先輩ってよくそんな恥ずかしいことを堂々と言えますよね」

 

「そ、そうかな…?」

 

「そうですよ、僕が君の居場所になってやる!なんて」

 

「や、やめてよ」

 

「えー、いいじゃないですかー。もっかい言ってくださいよ」

 

大園さんはいつもの調子を取り戻し、僕を揶揄ってくる。

 

「言わないってば!」

 

「ふふん、仕方ないですねー。今は大人しく引き下がってあげますよ。やらないといけないことがありますからね」

 

大園さんは微笑む。年相応(と言っても僕と一つしか変わらないが)の笑顔だった。

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