「さて、目当てのものは手に入ったし…そろそろ戻ろっか。頑張ろうね、日向君!」
「う、うん…」
不自然なほどテンションが高い。これって…
「本庄さん、無理してない?」
「え!?そんなことないよ!?」
「声が上擦ってるよ…」
僕が指摘すると、本庄さんは苦笑いを浮かべる。
「あはは…あのね、ちょっと怖くて…それで無理やり元気を…」
「空元気ってやつね」
「うん…でも、大丈夫!」
「本庄さん、無理に元気を出さなくてもいいよ。僕だって怖い。きっと大園さんも林君も怖いと思ってるよ」
「…そうかな?」
「うん、きっとそうだよ」
「日向君…お願いがあるの」
「うん、何かな?」
「少しだけ、手を繋いでくれない?」
「手を…?」
突然の申し出に思考が止まりかける。本庄さんと手を繋ぐのはこれが初めてではない。しかし、あれはなんというか緊急事態であって…
「ダメかな…?」
「だ、ダメじゃないです!」
僕は右手で本庄さんの右手を掴む。優しく、そっと包むように。
ピクンと本庄さんの肩が動いた気がした。
「…」「…」
お互い無言の時間が続く。何か話すべきだろうか。でもこういう場面で何を話したらいいかわからない。そういえば今日大園さんとも手を繋いだな、あの時は背中を叩いてあげたけど女子の背中を叩くのはNGって言ってたし…
「手、温かいね」
頭の中でどうするべきか考えていると、本庄さんが口を開いた。
「そうかな?僕ちょっと体温高いからかも」
「それもあるかもしれないんだけどね、なんだか落ち着くっていうか…」
「ありがとう…?」
そう言われるとなんだか照れるな…
「…」「…」
僕はほんの少し本庄さんの手を強く握ってみた。
「んっ…!」
本庄さんの肩がぴくりと動く。
「ごめん、痛かった?」
「ううん、大丈夫。もっと強くてもいいよ…?」
2人きりの保健室で本庄さんと向かい合って手を繋いでいる。本庄さんの顔は真っ赤になっており、きっと僕も赤くなっているだろう。顔を赤く染めてそう言われると何か自分の中のいけない扉が開いてしまいそうだ。本庄さんは守ってあげたくなるような魅力がある。こういうのを庇護欲というのだろうか。
「…」
「ありがとう、そろそろ行こっか」
「う、うん。そうだね」
本庄さんはゆっくり手を離す。
「勇気たくさんもらっちゃった」
「そうかな?それならよかった」
「でも、なんとなくだけど手を繋ぎ慣れてる気がしたなー。もしかして日向君、私以外の女の子と手を繋いだことあるの?」
「い、いやー…どうだろうね」
今日、なんならつい先ほど大園さんと手を繋いでいる。
「…」
ジトーっとした本庄さんの目が僕を見つめてくる。
「あはは…」
「…」
「えっと…さっき大園さんと…」
愛想笑いで逃げ切れるかと思ったが無理そうなので観念して白状する。
「へー、怖がる大園さんの手を繋いであげたんだ。日向君優しいもんねー」
「ご、ごめんなさい…」
どことなく不機嫌そうな本庄さんに対して僕は謝るしかできない。
「ふふ…!あはは!」
突然笑い出した本庄さんに僕は唖然とするしかできなかった。
「あはは!いや、ごめんね!ちょっと前助けられた時も日向君その顔で謝ってたなって思って!」
「前謝ってた時のこと?」
「うん、私達が理科室から逃げる時。あの時私を抱えて逃げてくれたよね。その後私に対して同じ顔で謝ってたよ」
「そうだったっけ?」
「うん、日向君は何も悪くないんだからそんな謝らなくていいよ」
「う、うん…わかったよ」
「さて、そろそろ行こっか」
どうやら機嫌を直してくれたようで、一安心だ。
「あ、最後に一つだけ」
「何かな?」
「私も、手を握ってもらえるの安心するんだ。だから…その、また不安になったら手を繋いでもらっていい?」
「うん、いいよ」
僕で不安が解消するのならばそれくらいお安いご用だ。
「ありがと!さてと、改めて行こっか」
僕達はそれぞれの荷物を持って保健室を後にした。