ガタンゴトンガタンゴトン
僕は電車の振動で目を覚ました。薄暗い電車の中のようだ。ぼーっとする頭を振って僕は周囲を確認する。手には物干し竿が握られている。どうやら夢の中にも持って来れたらしい。
僕の右隣には林君がいる。まだ意識がないようだ。そのさらに右には…これまた意識のない斑鳩先輩が見たこともないような機械で今にも押しつぶされそうになっていた。
「林君!!!右!!!」
「…!!!!」
僕は大声で林君の名を呼ぶ。両目を開いた林君は即座に右手を確認し…すかさず斑鳩先輩を自分の方に引っ張った。
間一髪、機械は斑鳩先輩の座っていた座席を押しつぶすだけで済んだ。
「あー、お客さん。切符も持ってないのに乗ってきちゃだめじゃないですかー」
謎の機械を押していた小人がこちらを見る。身長的には小学生くらい?いやもっと小さい。なんというか、顔は成人なのだが、身長は小さい。それこそ、幼稚園児くらいかもしれない。
「無賃乗車発生、無賃乗車発生ー。対応しますー」
小人は懐からナタを取り出した。また、後方車両からは棒を持った小人が入ってきた。どうやら挟まれてしまったようだ。
「いいか、日向。ナタは俺が相手をする。距離を取れ」
「う、うん!わかった!」
ぎゅっと力一杯物干し竿を握りしめる。チラリと見ると大園さんと本庄さんも席に座っている。どうやらまだ意識はないようだ。僕達でやるしかない。
「いくぞ」
林君の声を合図に、僕は小人に物干し竿を突き刺した。
しかし、所詮素人の突き。小人には全く当たらない。
今度は小人が笑いながら僕に棒を振り下ろした。
とっさに物干し竿でガードしたが、腕に電流が流れたかのような衝撃が走った。
「うぐっ!」
そのまま小人は何度も棒で殴ってくる。それをガードするので精一杯だ。
「日向!相手を!よく見ろ!相手の土俵で戦うな!」
「わ、わかった!」
僕は無理やり小人を押し飛ばして距離を取る。身長差もある、武器の長さもこっちが長い。距離を取れば有利なはず…!
小人が距離を詰めようとしたらリーチを生かして距離を取る。お互いジリジリと間合いを測っている状態だ。
林君の方を確認する余裕はないが、きっと林君はもう1人の小人に勝ってくれるだろう。それまで時間を稼げば最悪それでもいい。
しかし、そう甘くはいかなかった。
「きひひ!」
小人は突然車内の吊り革を掴み、それを渡るように僕に迫ってきた。
「!!!!」
とっさに物干し竿を振るったが吊り革を飛び移り、小人は僕の一撃をかわすとお返しとばかりに僕の頭に向けて棒を振り下ろした。
とっさに首を横に振って頭への直撃だけは避ける。その棒は僕の肩にめり込んだ。
「いっづ!!!!!」
肩が痛い、というか熱い。もしこれが刃物だったらと思うと背筋が凍る。再び距離をとった小人はケタケタと笑いながらこちらを見ている。
「うう…!」
「日向!大丈夫か!?」
「だ、大丈夫!そっちに集中して!」
なんとか僕は虚勢を張る。肩はとてつもなく痛いが、今は言ってられない。アドレナリンが出ている間に決着をつけないと。
そんなときだった、ふと僕は大園さんの手の位置が先ほどと違うことに気がついた。
もしかしたらこれは…こうなれば一か八かだ!
「おい!お前をあと3秒以内に倒してやる!」
「きひひ!きひひ!何をいうかと思えば…!」
小人はケタケタと笑っている。
「3!」
僕はぎゅっと物干し竿を握りしめる。
「2!」
姿勢を低くして突進の体制をとる。
「日向!だめだ!落ち着け!」
林君の声が聞こえる。だが、もう構っていられない。
「1!」
僕の1のカウントと同時に大園さんは目を開き、隠し持っていた暴漢撃退用のスプレーを小人に振り撒く。
「ぎぇああああああああ!!!!!」
「先輩!今です!」
「おらあああああ!!」
渾身の力で小人の頭めがけてフルスイング!ぐしゃっという嫌な感触が伝わってくる。そのまま小人は地面に倒れ伏し、ピクリピクリと痙攣したのちにドロドロに溶けて消えていった。