大園高校不思議調査隊   作:かんおみ

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穴の開いた切符

危なかった…って安心している場合じゃない。早く林君の援護に行かないと!

 

後ろを振り向くと、そこには…

 

「よくやったぞ日向!」

 

何人もの小人が床に倒れており、最後の一匹の髪の毛を掴んで遠くに放り投げている林君の姿があった。

 

「さっきまで、こんなにいなかったよね…?」

 

「ああ、前の車両からゾロゾロ出てきた。すまない、手間取って助けにいけなかった」

 

「いや…ううん。大丈夫…」

 

一匹であれだけ苦戦してた僕とは違い、林君は息も上がっていない。なんなら僕は1人で倒せてすらいない。ここまでくると多分だが林君がおかしいのではないだろうか。

 

「それよりも…やりましたね、先輩!」

 

「ありがとう、大園さん。助かったよ」

 

僕と大園さんはハイタッチをする。

 

「ごめんなさい、もう少し早く気がついてたら…ちょうど先輩が殴られてるところで気がつきました」

 

「めちゃくちゃカッコ悪いところで気がつかれたね…」

 

「いえいえ、そんなことありませんでしたよ。それにしてもナイス合図でした。よく私が起きたって気がつきましたね?」

 

「うん、手の位置が変わってたし懐に手を入れてるってことは何か武器を取り出そうとしてるんだと思ったんだ」

 

「さっすがー!」

 

「うーん…」

 

「あ、本庄さん大丈夫?」

 

「うう…あれ、ここは?」

 

「夢の中ですよー。それよりも、本庄先輩、日向先輩が怪我しちゃって早く手当してあげてください!」

 

「え!?うん!わかった!」

 

「寝起きなのにごめんね…」

 

「何か大切な時に寝ちゃってたみたい…ごめんね…」

 

「日向は任せる。大園、手を貸してくれ。斑鳩先輩の様子を見る」

 

「はい!」

 

「どこを怪我したの?」

 

「えっと、肩を…」

 

僕は肩を治療してもらおうとして…止まった。

 

「…これって、上の服脱がないといけない?」

 

「え、そりゃー…治療のためだし?」

 

「…少し恥ずかしいな」

 

「だ、ダメだよ!怪我してるなら治療しないと!」

 

やや興奮した本庄さんが僕に詰め寄る。

 

「う、うん…わかったよ」

 

僕はその迫力に押されて仕方なく服を脱いだ。

 

「…」ゴクリ

 

「あの…そんなまじまじ見られると…本当に恥ずかしいというか…」

 

「あ、ご、ごめん!早速治療するね!どこらへんかな?」

 

僕は殴られた肩を指差した。

 

「この辺なんだけど…」

 

「特に異常はなさそうだけどね。腫れてるとか色が変わってそうでもないし」

 

そう言われて僕も肩を見る。確かに何も異常がない。いや、異常がなさすぎる。

 

「もしかして…!」

 

僕は指先の絆創膏を外す。お昼に切った指先は何も異常がない。傷口は消えている。

 

「傷口がなくなってる…もしかしたら、ここでは怪我自体はしないのかも?」

 

僕は指先を軽く押す。するとズキっと痛みが走った。

 

「いたっ!でも怪我の痛みはあるみたい…」

 

「怪我はしないけど痛いんだね…なんか気持ち悪いね…」

 

「うん…」

 

「とりあえず、冷やして包帯巻くね」

 

「ありがとう」

 

こうやって押されて本庄さんに治療されるのは今日で2回目だ。先ほどとは違い、命がかかっている場面だが…

 

「…はい、これでどう?」

 

「うん、ありがとう。大丈夫だよ」

 

「あの…日向君。無茶、しないでね…」

 

心配そうに僕を見る本庄さんの瞳に心が揺れる。僕は色々な人に心配をかけてばかりだ。

大園さんも僕には責任がないから来ないでいいと言ってくれた。新山先生も危ないことはするなと言ってくれた。林君も自ら戦いながら僕を心配してくれていた。そして、今本庄さんに心配をかけている。人にあまり心配をかけるものではない。できる限り、人に心配をかけずにいたいものだ。

 

「うん、わかったよ」

 

僕は服を羽織り、立ち上がる。本庄さんも続いて立ち上がった。

 

「先輩、斑鳩先輩が目を覚ましました!」

 

「本当?すぐ行くよ。行こう、本庄さん」

 

僕は少し離れたところにいる斑鳩先輩と、それを囲んでいる大園さんと林君の方へ向かう。

 

カツン

 

「うん?なんだ?」

 

何か固いものを踏んだ。なんだこれ、鍵?円筒状の差し込む鍵のようだが、あまり見覚えのない形をしている。

プレートには見たことのない文字が刻まれており、ますます謎だ。

とりあえずそれをポケットに入れて僕は改めて斑鳩先輩に近寄った。

 

「皆さん、きてくださったんですね。ありがとうございます」

 

「先輩、大丈夫か?」

 

「ええ、大丈夫です」

 

「うん、異常なしですね。夢の中で殺戮を繰り返す小人も倒したし、もう十分暴れたんじゃないですか?」

 

「まだ足りない、電車をぶっ壊すくらいでないと」

 

「過激だよ、林君…」

 

少々暴走気味の林君の発言に本庄さんが呆れる。

 

「少なくとも、この列車の中には小人がいないようにする」

 

「それは一理あるね。今は…うん、3号車だって。進行方向は1号車になるかな?」

 

「先に後方車両を確認しよう」

 

僕は林君に続き、後方車両である4号車を確認した。

…特に誰もいないようだ。それに、どうやらこの電車は4両編成、そんなに大きいものではないようだ。

再び3両目に戻った僕たちは、改めて先頭車両に向かう。

 

「あの、ちょっと宜しいですか?」

 

そう声をかけてきたのは斑鳩先輩だ。

 

「どうかしたか?先輩」

 

「あの…皆さんはこれをお持ちですか?」

 

そういって、差し出してきたのは一枚の切符だ。

 

「切符?」

 

僕たちはポケットを探る。しかし何も出てこない。

先輩の切符をよく見ると、端の方に穴が空いている。目的地も料金も何も書いていないが、ただ一言だけ。

 

「夢の終わりまで有効…?」

 

「なんだそれ?」

 

大園さんが切符に書かれている文字を読み、林君が反応する。

 

僕はあの小人が言っていたセリフを思い出す。

確か、切符も持ってないのに乗ってきたとか、無賃乗車とか言われてた気がする。

斑鳩先輩だけが持っていて僕たちが持っていない理由。そして小人の言葉。

 

「もしかしたら、僕達が正規手段で来てないから持ってないだけで、正規手段で連れてこられた斑鳩先輩だけが持っているのかも」

 

「正規手段?」

 

本庄さんが首を傾げる。

 

「見て、ここ。端に穴が空いているでしょ?これって改札を通した証拠なんだ。もう確認しようがないけどもしかしたら猿夢を見てた人たちはみんな持ってたのかも。僕達って氏神様の力を借りて入ってきたからさ」

 

「正規の客じゃないってわけですね」

 

「これは一体どうすればいいのでしょう」

 

穴の空いた切符、夢の終わりまで有効という言葉…僕は氏神様の言葉を思い出す。ルールを探せと言っていたがもしかしたらこれかもしれない。

 

「氏神様が言っていた通り、これがルールなのかも」

 

「切符を持っていることが?」

 

「多分、斑鳩先輩はルールに則って猿夢に招かれた。だから切符を持ってるんだと思う。それなら、ルールに則ってここから出たらいいんじゃないかなと思うんだ」

 

「そんな方法あるの?」

 

「うん、あくまでも予想だけどその切符を使って改札から出るとか。夢の終わりまで有効って書いてるし」

 

「なるほど、実際の駅のルールに従うということですね。氏神様もルールに則れば手出しはできないって言ってましたし暴れ回って壊すよりも確実かもしれませんね!」

 

大園さんが大きく頷く。

 

「そうと決まればその駅に向かいたい。電車は自動的に止まってくれるのかが問題だな。」

 

「あ…確かに…」

 

その駅に向かっているという確証も、止まるという確証もない。

とりあえず今の場所がどこかわからないことには何も手の出しようがない。せめて目印や手がかりになるものがあれば…僕はそう思って窓の外を見た。電車の外は暗闇が広がりまるでトンネルの中を走っているみたいだ。

 

「あれ…?」

 

ふと気づいたのだが、こんなにこの電車は速かっただろうか。先ほどよりも揺れている気がする。

 

『まもなくーあの世行きーあの世行きです。お客様全員もれなくあの世行きー』

 

僕の疑問をよそにアナウンスが聞こえる。聞き覚えのある小人の声だ。

 

「せ、先輩!なんか速度上がってません!?」

 

「やっぱりそうだよね!小人が速度を上げたのかも!」

 

「電車って、速度が早すぎると脱線するんじゃなかったっけ!?」

 

「先頭車両に急ぐぞ!」

 

「は、はい!」

 

僕達は先頭車両に向かった。




Q.どうして本庄さんは日向君の治療をしたがったの?

「べ、別に他意はないよ!そ、そんな日向君の裸見たかったとか邪な思いは一切ないから!」

「…本庄先輩、半分くらい本音が出てません?」

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