大園高校不思議調査隊   作:かんおみ

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暗がりのホーム

「電車止められたのはいいけど…ここどこだろ」

 

よくみると、先頭車両の前の扉が駅のホームに差し掛かっている。この扉をなんとかすればホームに降りられそうだ。

 

僕と林君は物干し竿(さっきのいざこざで遠くに飛ばされていたのを回収した)を用いて、てこの原理で扉を開く。

 

ギギギ…という鈍い音と共にドアは開いた。

 

「ホームに降りられそうだ、行こう」

 

「ああ、ちょっと待って!こんなに暗いのに歩くのは危ないですよ」

 

大園さんはゴソゴソと持ってきていたポーチから小さなライトを取り出し、林君に渡した。

 

「用意がいいな、ありがとう」

 

林君を先頭にして僕達はホームに降り立つ。地下鉄なのか、どうやら室内だ。外は見えない。そういえばさっきもトンネルみたいなところを通ってたな。

 

ホームはひとっこ1人いない。なんなら電気もついていない。

 

「ここが、夢の終わり…?」

 

ホームの看板を読んだ本庄さんが呟く。

 

「思えばここは小人の本拠地。あまり離れるな」

 

「う、うん。そうだね」

 

僕は物干し竿を持つ手を強める。

 

「日向」

 

「なにかな?」

 

「先頭を頼む。俺は最後尾を守る」

 

「わ、わかったよ」

 

戦いにおいて最後尾、つまり殿(しんがり)は非常に危険だ。僕には確かに荷が重い。

 

ライトを受け取り、僕は前を歩く。僕、大園さん、本庄さん、斑鳩先輩、そして林君の順番だ。

 

「…」

 

ホームには駅名の書かれた看板と、上に上がるための階段のみ。

今思い返せば僕が先頭で歩くことはなかった。ずっと、林君や新山先生が最初を歩いてくれていた。学校の時はどこからか狙われているという不安がなかった。しかし今は違う。今にもどこかから小人が飛びかかってきそうだ。もし僕が下手をしたら他のみんなにも危険が及ぶ。

 

「…」

 

カタカタとライトを持つ手が震える。暗闇全てに何かが潜んでいるように感じる。これが先頭のプレッシャー、暗闇に心が支配されそうだ。

 

「先輩」「日向君」

 

突然声をかけられた。びっくりしすぎて叫びそうになったがなんとか堪えたのは男としての最後の矜持だろう。

 

「な、なにかな。2人とも」

 

声をかけてきたのは大園さんと本庄さんだ。2人の声だとわかったから叫ばずに済んだというのもある。

 

「大丈夫ですか?」

 

「うん、顔色悪いよ…」

 

「あはは…ごめんね」

 

まずい、僕がこんなんじゃ後ろの人も不安がる。

 

「日向、お前の後ろは俺が守る」

 

「林君…」

 

「恐怖を感じることは悪いことじゃない。ここは開けている。奇襲の心配はないだろう。お前は前に何もないかを確認することに専念しろ」

 

「私達もいますよ!」

 

「頼りないかもしれないけど…頑張るよ!」

 

「あの、本当にすみません。私のせいで…こんなことに巻き込んでしまって」

 

斑鳩先輩が申し訳なさそうに謝る。

何をしているのだ僕は、自らの意思でここにきて何を怯えているのだ。

 

「ありがとう、もう大丈夫」

 

気持ちが少し楽になった、まだ頑張れるはずだ。

 

「あ、そうだ林先輩」

 

「なんだ?」

 

「先頭って何人でも良いんですか?」

 

「まあ、良いんじゃないか」

 

「なら!えい!」

 

「うわ!急に何!?」

 

「な、、何してるの!?」

 

大園さんが林君に何かを確認した途端、大園さんが僕の左手に抱きついてきた!

 

「ほら、これなら視野も2倍ですよ!」

 

「ちょ!ちょっと大園さん!近い近い!」

 

「えー、近寄らないと私も危ないですしー。ほら、行きましょ!」

 

「お、大園さん。そんな引っ付いたら日向君が危ないんじゃないかな?」

 

少し言葉に怒気を含んだ本庄さんが大園さんに向けて言う。確かに、何かあった時に咄嗟に行動できないかもしれない。

 

「逆にくっついてる方が安全じゃありません?何かに気がついたら引っ張れますし。本庄先輩も右手の方、空いてますよ?」

 

「…で、でもいきなり何か現れた時に武器振れないし…」

 

「いきなり隣から現れるならまだしも、離れたところに現れたら流石に間に合うと思います」

 

「…そうかな?」

 

「そうですよ!」

 

大園さんに言い寄った本庄さんだが、うまいこと丸め込まれてしまった…

 

「そ、それじゃあ…私が右側見るね!」

 

きゅっと本庄さんが僕の右腕を掴む。完全に僕は両手を塞がれてしまった。片手には懐中電灯、もう片手には物干し竿を持っているので、その上腕まで拘束されてしまったらもはやなにもできない。とというか、僕の意見は?

 

「…まあいい。後ろはまかせろ日向」

 

「私も見ていますので」

 

「ありがとうございます…」

 

この光景を斑鳩先輩と林君はどう見ているのだろうか。何も反応しないのは単に呆れているからなのか、それとも緊急事態の対応としてはこれは間違っていないということなのだろうか。

 

両腕を柔らかさが包んでいる。女子の体は柔らかいのだ、すっごくすっごく柔らかいのだ。高級な布団とかこんな感じなのだろうか。余計なことを考えなければ邪な考えが浮かんでしまう。意識を腕から切り離せ、感覚を消すんだ、僕。

 

「…」

 

「…?どうかした?大園さん」

 

「…やはりこちらでは私が不利ですね」

 

「なんの話?」

 

「いえー、なんでも?神様って不平等だなって思っただけでーす」

 

大園さんの話はよくわからない。とりあえず僕は前のことに集中しよう。

 

「先輩」「うひゃ!」

 

大園さんに耳元で囁かれて思わず声が出る。続々とした感覚が全身を伝う。

 

「あ、ごめんなさい。驚かせちゃいました?」

 

「う、ううん。ごめんね、どうしたの?」

 

流石に耳元で囁かれてゾクゾクしてましたとはいえないので適当にお茶を濁して答える。

 

「あれ見てください」

 

階段を登った先には改札と駅長室と書かれた扉があるのみだ。

改札の向こうはシャッターが降りており、塞がれている。僕の予想では、この改札から出ることが氏神様のいうルールに則ることだと思うのだが…

 

「うーん…反応はなさそうだね。先輩の切符はどうですか?」

 

「…だめです。改札を通りません」

 

「電気自体が通ってないな」

 

「どうやらそうみたい。どこかにブレーカーボックスとかあるのかな?」

 

「あるとしたら…やっぱりそこじゃないですか?」

 

大園さんが僕を掴んでいない手で駅長室を指差した。

 

「可能性はあるかもね。よし、行こう」

 

僕達は駅長室に向かった。

 

駅長室の扉は一般的な扉で、ノブを捻ってあげるタイプだった。

 

「大園さん、本庄さん。僕の後ろに」

 

2人は素直に腕を離した。僕は物干し竿をギュッと握る。

 

懐中電灯を大園さんに渡して、照らしてもらう。

僕はドアノブに手をかけて…一気に開いた!

 

開いた先には…

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