「な、なにこれ…」
僕は夢を見ているのだろうか。いや、夢は見ているのだが…
今までの駅とは違い、さまざまな機械が並べられている。さっきまでの空間とは違う景色に思わず現実を受け入れられない。スーパーコンピューターといえば良いのだろうか、見たこともない大きな機械が並べられている。
大きな機械の他にはもう一つ扉があり、その前に1人の男性が倒れている。
「えっと…どうしよ」
「もしかしたら、斑鳩先輩みたいに迷い込んだ人なのかも…?」
「こんな場所にいてですか?」
「だが、何か知っているかもしれない」
僕は恐る恐る近づく。見た目的には人間だがここでは何が起こるかわからない。
僕は物干し竿でツンツンとつつく。
「…!」
突かれたことで起きたのか、男性は体を起こして辺りを見渡す。
「…!!…!…!!!」
僕達を見て男性は何かを話している。何かを話しているのだが…
「全くわからん」
「日本語、少なくとも知ってる言語ではないですね…」
「…!…!!!…!あーあー」
「あれ、声が」
「あーあー、どうかな?これでわかるかな?すまない!この星の言語設定に慣れていなくてね!君達の会話音声からこの言語を設定しているのだが!」
「つ、通じてます…えっと、あなたは?」
「うん!通じてるようでなにより!僕はそうだな、僕の名前は君たちの言語技術では発音は難しいだろう、レンと呼んでくれ!」
「レン…さん、あの、あなたは一体何者なんですか?」
「私はそうだな、君達の星でいう科学者と呼ばれるものだ。エネルギーを研究している」
だめだ、何も理解できない。というか、この人って本当に人間か?
「あの、レンさんって何者なんですか?」
大園さんがなかなか切り込んだ質問をした。確かに気になるが、聞いて良いのかどうか悩んだのだ。
「もし君達の星の言語で言うなら未確認生命体、宇宙人と呼ばれるものだ」
「う、宇宙人ー!!!?!?」
一同の驚きの声が重なり、大きく反響するのだった。
「ま、僕から見たら君たちが宇宙人なんだけどね!それにしても、僕は君たちのことを知らない。僕も質問して良いかい?」
「あ、どうぞ」
「君達はどうしてここに?見たところ、あのにっくき奴らの一味じゃなさそうだが」
「僕達は、この斑鳩先輩が悪夢を見るので助けに来ました」
今思えばとんでもない説明だな…
「もう少し詳しく」
そりゃその反応になるよね。
僕は改めて状況を1から説明した。
「なるほど、悪夢を見る斑鳩先輩を君達は夢の中に入り、解決しようとしているんだね」
「はい、その通りです」
「もしかしたらあいつらが余計なことをしてそうだな…」
「え、何か知ってるんですか!?」
「そうだね、まずは僕の研究から話さないといけないね。僕は今、エネルギーに関する研究をしているんだ」
「エネルギー?」
「ああ、僕は夢があってね。宇宙を旅すること!そして僕が崇める神にお会いすることなんだ!」
なんだか壮大かつきな臭い話になってきたぞ…?本当にこの話を聞いて大丈夫か?ちょっと不安になってきた…
「太陽のエネルギーというのは素晴らしい!しかし、途中で太陽が遮られたりエネルギーの変換効率が悪かったりと少々不都合がある。そこで僕が目をつけたのは、夢をエネルギーに変えられないかということだ」
「あー…まず前提としてですね…夢をエネルギーに変えることは可能なんですか?」
「よく聞いてくれたね!えっと君の名前は…」
「大園です」
「大園さん!生き物はエネルギーで満ちていると聞いたら信じるかい?」
「そりゃー、生きるためにはエネルギーを使いますし満ちていると言われたらそうなのでしょうけど」
「うむ!素晴らしい考えだ!だがそれは生命維持エネルギー、つまり食物を食べたり眠ったりすることによるエネルギー変換だ。僕が言いたいのはね、感情パワーのことさ!」
「…」「…」「…」「…」「…」
「あーお!意味がわからないって顔をしているね!しかし不思議な話ではない!たとえば人間は怒りを感じたら普段より力が入るだろ?楽しいことがあれば普段より頑張れることがあるだろう?これは何も気のせいではないんだ」
言われてみたら確かに…走る前に頭を殴られたら怒りで足が速くなった、というのを何かの本で読んだ気がする。
「で、でも夢って…そんな摩訶不思議なパワーがあるんですか?」
「ふふ、よく聞いてくれたね?夢というのはいくつもの利点があるのさ!夢は記憶の整理、脳が記憶や感情を整理するために見るものとされている。つまり!いろいろな感情が渦巻いているのさ!たとえば君たちに今すぐ怒ってくれとか、悲しんでくれというのは難しいだろう?毎日毎日楽しいことがあるわけでも、ムカつくことがあるわけでもない」
「要するに、夢の中でいろいろな感情が渦巻いているからそれをエネルギーに変えちゃおうってことですか?」
「その通り!さらにここから2つの利点があるのさ!何かわかるかい?」
「うーん…人は眠らないといけないから集めやすいとか?」
「いい線いってるね!しかし、眠るのは何も人間だけではないだろう?動物や植物すらも眠るのさ。母集団が多いのさ!多ければ多いほどエネルギーが集められる!あとは夢という特性にある!夢とは君達にとってどういうものだい?」
「…別に見なくてもいいもの、ですか?」
「御名答!君の名前は?」
「あ、日向です」
「日向君というのかい!そうだ、夢は別に見る必要がない。夢の内容なんて忘れてしまうだろう?エネルギーを吸収するにあたってどうしても夢を忘れてしまうのさ。もしこれが普段の感情であることを想定してみてくれ?怒りの感情や楽しさを忘れてしまったら実生活に影響がでるだろう?しかし、夢の内容を忘れても実生活には影響は出ないのさ!」
まあ確かに、見た夢なんてお昼には忘れていることが多い。覚えていようがいまいがあまり気にはならないだろう。
「夢を集め、エネルギーに変換し、そして宇宙船のエネルギーにする!これが僕の研究さ!この世で最もクリーンで環境に縛られず人を害さない、完璧なエネルギーなのさ!」
「あ、あのー…そんな研究をしている人がなぜここに倒れていたんですか…?」
「いい質問だね、名前を聞いても?」
「本庄です」
「本庄さん、君の質問に答えよう。僕の研究を乗っ取ろうとした愚かな奴らがいたのさ」
「研究をのっとる?」
「ああ、そうさ!僕の研究は夢を吸い上げる。吸い上げられるということは逆に夢を送ることもできるにはできるんだ」
「も、もしかしてそれって…悪夢を見せているとか?」
「ああ、その通りさ!僕の研究を奪っただけでなく悪用までして!許せない!」
レンさんが怒りでプルプルと震える。研究者として成果を横取りされあまつさえ悪用されるのはやはり許せないものがあるらしい。
「もしかして、悪夢を見せていたのは私達のせいじゃない…?」
「もし悪夢という点に関してなら、君達が噂を流したからとはいいきれないだろう」
「よかったあ…」
「ただ…」
「ただ?」
「この地域、特にこの大園高校の周辺に関しては少々夢のデータが歪でね。だから僕もこの地域を研究とサンプル集めに選んだんだ」
「それはどういうことですか?」
「うーん、なんといえばいいのか。さっき言ったように夢は記憶や感情の整理をする時間なんだ。だから少しくらいは本人の記憶に関する夢を見るはずなんだが…でもここの子達は全く関係のない夢を見ている。そんな夢を見る確率もゼロでは無いがここの子達は割合が高い」
「それってつまり、夢を操って全く関係ない別の夢を見ようとしているってことですか?」
「そこまではわからない。だが君たちの話を聞いた上での僕の考えは、外部の要因が働いて夢の在り方が歪んでしまった。このままこれが続けば、君たちの言った通り見たい夢を操ることもできるようになるかもしれないね」
「今はまだ悪夢を見せているのが私たちのせいじゃないけど、このままこの状態が続けば本当に夢を操れるようになるってことですね」
「この地域は本当に謎だねえ…なぜこのようなことが起きるのか…君たちの話を信じるならば、噂が本当になるということだが…果たしてそれはなぜなのか…」
噂が実現する可能性があるというのはわかった。今はまだ、噂が実現するところまではいっていないがこのままだと噂が実現することもわかった。あの七不思議のようになるということだろう。しかし…なぜそのようになるのかがわからない…
「仮説も検証も足りない。はっきり言ってこれ以上ここで悩んでもわからないだろう。それよりも今はその先輩の夢を解消する方に努めた方がいいんじゃないかな?」
「それもそうだ、どうしたらいい?」
「まずはあいつらから機械を取り返す。どうやら日向君の仮説によると改札から出る必要がありそうなんだね」
「はい、根拠も薄いのですが…」
「いや、問題ない。仮説をもとに実証していくのが研究の一歩さ。そして目標があればこの後の行動がわかりやすい」
「まずはレンさんの研究成果を取り返す」
「そう!研究を取り返したらマシンから電力を供給できる。改札を動かすくらいはできるだろう。しかしだ…問題があってだね…」
「問題?」
「ああ、マシンの停止キーを奪われてしまってね…」
「マシンの停止キー?」
「ああ、僕の夢を集めるマシン。マシンの停止キーがないんだ。いざという時のために停止キーを用意していてね。でないとまた悪用されて同じことが起こるかも…」
「あの…それって…これですか?」
僕は電車の中で小人が落とした鍵を渡す。
「おお!これだよこれ!なんで持ってるんだい?」
「電車の中の小人が落としました」
「それは幸運だ、ありがとう!よし、これで準備は整った。さあ、行こう!」
そういってレンさんは奥の扉の前に立つ。一見普通の扉のように見えるが…
「これも僕の発明の一つでね、通称どこにでもつながるドアだよ」
「どこでもドア?」
「ああ!本庄さん!どこにでもつながるドアだよ!間違えないでくれたまえ!」
「は、はあ…」
「登録した場所に繋げられるんだ。本当は僕の研究室につながってたんだけど乗っ取られてしまってね。命からがらここに逃げ込んだってわけさ」
「だからここで倒れてたんですね。というか、夢の中にも入れるんですね…」
「さて、それじゃメンバーだが…」
「斑鳩先輩はここにいてくれ」
「でも…私のせいで皆さんを危険に巻き込んだ上に、私だけ安全な場所で隠れているわけには…」
「大丈夫だ」
「でも…」
「退路の確保も大切な仕事さ、見たところ、あまり運動は得意じゃないんだろう?」
「…はい、わかりました」
「残りは…」
レンさんはチラリと僕達をみる。正直な話、大園さんと本庄さんにはここに残っていてほしい。やはり危ないことはしてほしくない。いや別に、林君にも危ないことはしてほしくないけど多分僕が心配なんてしてたら鼻で笑われてしまう。
「もちろん行く!」「行きます!」
女子組2人の力強い返事を聞き、止めても無駄だと悟る。
ふと、本庄さんと学校を探索した時のことを思い出した。あの時は幽霊に怯えていたのに。試練が人を育てるというのは本当らしい。
「決まりだね。さて、それじゃ行くよ!僕がこれを投げ込んだら合図だ!僕が隠れて機械まで近寄るから君たちは暴れ回ってくれ!」
「なんですかそれ?」
レンさんは手にゴムボールのようなものを持っている。一見普通のボールにしか見えないが…?
「これはフラッシュボール。強い衝撃を与えると光るんだよ。さて、いくよ!」
レンさんは扉を勢いよく開くと、中にボールを投げ込んだ。
強い光が辺りを包む。想像の5倍は光っていた気がするが…中から叫び声が聞こえる。僕達は意を決して中に飛び込んだ!