30メートルくらいの広さの空間の中には、アニメでしか見たことのない巨大な機械。周りには大量の本や資料が堆く積まれて置かれている。その前には3人のローブを被った人が立っており、目元を押さえてもがき苦しんでいる。きっとあの人達がレンさんの機械を奪った人達だろう。そのレンさんはというと、高く積まれた本の影に隠れている。きっと死角に隠れて機械まで近寄るつもりなのだろう。こっちを見てサムズアップをしている。そういうのいいから早くしてほしい。
そしてこちらはというと、ローブの人達に向かって林君が弾丸のようなスピードで近寄っていく、もはやなんの躊躇もないのが逆に怖い。味方で良かったと思う。
ブゥン!
「!!!」
ローブの下から長い爪が出てきた。というか、爪が伸びている…?メキリメキリという音を立てて爪がどんどん伸びていく。よくアニメや漫画でこんな詰めを持つ敵キャラが出てくるけど、実際に見ると不気味だ。林君は間一髪で爪をかわすと距離をとった。
「爪に気をつけろ、かなり鋭い」
相手は3人、こちらはというと4人いる。しかし、4人いるだけだ。本庄さんと大園さんを戦わせるわけにはいかない。実質3対2である。
視界が回復したのかローブの3人はこちらを見ている。
「目的はなんだ!どうして悪夢を見せる!」
僕は時間を稼ぐために問いかける。
「グググググ…」
相手は何も答えない。不気味な声をあげてこちらを威嚇している。もしかしたら言葉が通じていないだけで何かを話しているのかもしれないが僕にはわからない。
「日向、俺が2人を引きつける。だから…」
「もう1人は、僕が引きつけるよ」
さっきの小人とは違うプレッシャー、まず小人とは大きさが違う。明らかに僕を殺そうとしている姿を見て血の気が引いていくのを感じる。
「えーい!」
すると、僕の影から大園さんが何かを投げた。もしかして、フラッシュボール?もしかして二つあったのかな?
僕は慌てて顔を伏せる。ローブの男?も同じように顔を伏せている。
カランカラン…
あれ、光らない。不発弾…?
「単なる石ころですよ!それよりも先輩!」
「あ!うん!」
僕は持っていた物干し竿を振りかぶって思いっきり叩きつけた!
ぐしゃっという嫌な感覚が手を伝ってくる。この感覚は慣れることはないだろう。というか、慣れてはいけない気がする。
「ウググググ!!!」
ローブの男の不気味な声が響く。
「先輩、私が隙をつくります!その隙をついてください!」
「う!うん!わかった!」
大園さんの援護があればもしかしたらできるかもしれない。チラリと僕は横目でレンさんの位置を確認する。レンさんは今積み上げられた本の影を四つん這いで進んでいる。まだ時間はかかりそうだ。でも、これならいけそうだ。僕は手に力を込めた。肩が痛むが今は気にしてられない。僕は思い切り振りかぶった。
「ど、どうしよう…私何もできてないよ…!」
日向君と大園さんが1人を相手にして、林君が2人を相手にしてる。どちらかの手助けをしないといけないとは思うんだけど私みたいなのが入っても足を引っ張るだけだ。
「なにか、何かできることは…!」
辺りをキョロキョロ探すけど本の山ばっかりで何も役に立ちそうなものはない。手当たり次第に投げる?それでこっちに襲ってこられたらもっと足を引っ張ることになるし…でもでも、ただ見ているだけっていうのもできない!何か私にできることは…
「うん?これって…」
乱雑に置かれた本の山、その側の机にはマッチのケースが置いてある。よく見れば机の上には燭台が置いてあり、それをつけるためのものなのかもしれない。また、本の影に隠れて何か落ちてる。これはさっきレンさんが投げたボール?
ふと私は肩にかけている救急セットの中のとあるものを思い出す。もしかしたら、これは使えるかもしれない!
私はマッチケースとボールを取り、本の影に隠れて作業を始めた。
戦いは、こちらが優勢だった。大園さんが暴漢撃退用のスプレーを使って隙をつくり、僕がその隙をついて叩く。他のローブの男がこちらに来ようとするのを、林君がうまいこと止めている。
「いける!」
このまま押し切ったら時間を稼ぐのではなく倒すこともできるだろう。勝てる!これで悪夢を見せる奴らがいなくなれば悪夢を見る人もいなくなるだろう。それで解決する!斑鳩先輩も助かる!
そんな考えを持ったことが間違いだったのかもしれない。