放課後、放送室
放送室には、宿題をしている僕と、暇そうにしている大園さんしかいない。本庄さんと林君は今は自分の部活に行っているため今はいない。僕と大園さんだけだ。
「せんぱーい、ひまですー!」
「そんなこと言われても…」
僕は課題をしていた手を止め、顔を上げる。
「課題ばっかりして構ってくれない先輩にも落ち度があります」
「そんな無茶な…大園さんも課題くらいあるでしょ。やろうよそれ」
「もちろんありますよ、やってませんけど」
「…やろうよ」
「ひーまーでーすー!」
短い付き合いだからわかるが、駄々っ子モードに入った大園さんはなかなか元に戻らない。このまま放置すると拗ねてしまうのだ。
「構ってくださいー!」
…大園さんの居場所宣言をしたからだろうか、大園さんは僕の前では取り繕わなくなった。こうなると、手のかかる妹のようだ。
「何かしましょうよー…」
「わかったよ…」
しかし、何をするのだろう。2人でできることは限られてくる。
「何する?」
「愛してるゲームしましょう!」
「愛してる…ゲーム?」
「お互い愛しているって言って照れた方が負けです!」
「それって楽しいの?」
「さあ?やったことないですけど楽しいんじゃないですか?」
「うーん…恥ずかしそうだけど…」
「いいからいいから!さあ、始めますよ!」
半ば強引に話を進められてしまい、やる流れになってしまった。
「じゃあ私から。先輩愛してますよ」
「…!」
先に言っておくと大園さんはかなり美少女だ。そんな子から愛してるって言われると思わず顔が緩みそうになってしまう。しかしそこをグッと堪えた。ここで照れてたら先輩の威厳どころかあまりにもちょろい先輩になってしまう。
「ふむ…これは反応なしですか。仕方ありませんねー。じゃあ次は先輩で!」
「うん…い、いくよ…大園さん、愛してる」
「…!!」
大園さんの目が見開かれ、くにゃくにゃと身悶えしている。
「大園さん…?」
「ふう!危なかった!なかなかやりますね!」
「あれって照れてるカウントじゃないの?」
「照れてませーん!くにゃくにゃしてただけです!」
なるほど、照れてるという範囲は予想以上に複雑なようだ。
「じゃあ、次は私です!先輩…」
大園さんは僕に近寄ってくる。何をするのだろうか。
「愛してますよ」
ぼそっと耳元で囁く。甘い吐息が耳にかかり、ゾクゾクした感覚が押し寄せてくる。
「先輩耳弱いんですね、弱点みっけー。ふー」
大園さんが僕の耳に息を吹きかけてくる。
「それは趣旨違うくない!?」
なんだか変な気持ちになってくる。これ以上は危険だ。
「むー…だって先輩私の愛してるで反応なかったんですもん。それなら少し搦手を使ったほうがいいでしょ?」
「反応してないわけじゃないんだけど…反応したら負けのゲームなんだし…」
「むー!反応されないのむかつきます!先輩のくせに生意気です!」
なんか前も言われた気がするな、その言葉…
「じゃあ、次は僕か…」
しかし、どうしたものか、ネタがない。このままだと攻められっぱなしだ。仕方ない、僕も姉に教わったとっておきを切るしかない。
「大園さん」
僕はゆっくりと大園さんに向かって歩く。
「せ、先輩…?」
じっと見つめる僕に思わず大園さんは後退りして壁にまで追いやられる。
僕はそのまま大園さんの顔の横に手をつき、耳元で囁く。
「愛してるよ」
俗に言う壁ドンというものらしい。姉曰く、
『結局王道が一番。無難だとかベタとか言うけどこれが一番効くの。わかりましたか?京君』
らしい。
「ふぁあああ…!」
よじよじと大園さんの体が揺れ動く。
僕も恥ずかしくて顔が赤くなるが、それ以上に大園さんの顔は真っ赤だ。
「せ…」
「せ?」
「先輩のくせに!生意気ぃいいい!!!」
「あ!ちょっと大園さん!?」
大園さんは走ってどこかにいってしまった。
戻ってきたのは数分後、顔が少し濡れていることからどうやら水道で顔を洗ってきたらしい。
「今回は負けを認めますが次は負けませんからね!」
謎のライバル意識と共にリベンジを誓われるのだった。
おまけ
「林君、愛してるよ」
「…すまない、日向。俺には心に決めた人がいるんだ…!」
「そ、そんな苦しそうな顔しないで、ゲームだから!」
ピッ
「本庄さん、愛してるよ」
「ふぁあああ…!恥ずかしいよ!私から言うなんてむ、無理!」
「そうだよね、ゲームとはいえ照れるよね。あ、僕もういかないと。またね!」
「うん、またね。ばいばーい」
「…」
ピッ
『本庄さん、愛してるよ』『本庄さん、愛してるよ』
「えへへ、録音できてた…!」