本庄さんと大園さん
放課後 放送室
「…」
「(はあ…本庄先輩っていいな。あんな胸大きくて…やっぱり胸大きい方がいいのかな…)」
「…」
「(はあ…大園さんのスリムさが羨ましい…やっぱり男の子ってすらっとしてる方がいいよね…)」
「「はあ…」」
「なあ日向、あの2人はお互いを見つめあってなぜため息をついてるんだ?」
「…わからない。でも何か悩み事なのかな」
「2人とも、悩み事か?」
「なんでもないですよー」「なんでもないよ…」
「…そうか?」
「2人とも、何かあれば相談に乗るよ」
「(一番相談できなさそうな人が言ってきましたね)」
「(君のせいで悩んでるんだけど…)」
コンコン
「うん?はい」
「あ、いたいた。おい日向」
「新山先生、どうかしました?」
「お前、屋上にプランター運んだだろ?排水溝塞いでるみたいで水漏れしてるんだ。少し動かしてくれ」
「うわ!それは申し訳ないです!急いで動かしに行きます!」
「俺も手伝おう」
「それは悪いよ…」
「構わない。もうそろそろ部活の方に行こうと思っていたからな。終わり次第部活に行く。そのついでだ」
「それならお言葉に甘えるよ。ちょっと行ってくるね!」
「いってらっしゃいー」「気をつけてね」
バタン
「本庄先輩ちょっといいですか?」
「どうかしたの?」
「参考までに先輩の胸を揉ませてください」
「なんの参考!?」
「お願いします先輩、今から一年間でどれくらいの成長幅なのかを知っておきたいんです」
「えー…恥ずかしいよ…」
「お願いします!パフェ奢ります!」
「う…そ、それじゃあ…私も一つお願いしていい?」
「なんでしょう」
「大園さんの腰回りの肉付きを確かめたいんだけど」
「に、肉付きですか…いいですけど…」
「ありがとう!」
「それじゃ、立ってもらって…行きますよ先輩」
「う、うん!どんとこい!」
スッたゆん
「」「う、く、くすぐったいね…」
「(何この重量感…!超巨大なスクイーズでも入ってるの!?)」
「大園さん?」
「は、いえいえ、ありがとうございます。確か腰回りでしたっけ?どうぞー」
「う、うん。いくね…!」
スッ
「」「あわっ!腰回り触られるとゾクってしますよね…!」
「(何これ!?同じ内臓入ってるの!?細すぎてびっくりするんだけど!)」
「先輩…?鼻息荒いですよ?」
「あ、ごめんね!」
「先輩、もう少し触っていいですか?」
「う、うん。いいよ。私もいい?」
「はい、いいですよ」
「(あと一年でこの大きさまでするには…牛乳、鶏肉、そしてキャベツもいいって聞いたけど)」モミモミ
「(この細さにするには…やっぱり腰回りの運動?フラフープとか?)」さわさわ
「ただいまー」
「」「」
「…失礼しました」
「待って日向君!誤解!誤解だから!」
「先輩待って!話を聞いて!」
「ごめん!お邪魔しちゃった!何も見てない!」
「だから!」「違うんだってばぁ!」
しばらく、大園さんたちと目を合わせられない日が続いたのだった。
放課後 放送室
放送室には今日は珍しく4人最初から集まっている。普段は本庄さんか林君どちらかの参加であったり二人とも自分の所属する部活に行ったりして来ないことがあるのだ。
「日向」
「うん?どうしたの?」
林君が読書を、大園さんと本庄さんはおしゃべりを、僕は宿題をしている。そんな中、突然林君に声を掛けられた。
「日向は本を読むか?」
「うん、それなりには」
「この登場人物の心情が分からない。教えてくれ」
「僕に分かるかな。どんなの?」
林君が差し出したのは一冊の漫画だった。恋愛漫画なのだろうか。表紙には二人の男女が描かれている。
『今日の髪、かわいいじゃん』
『か、かわ…!もう、ばか!』バシン!
『いってえ!』
「この女はなぜ主人公からかわいいと言われて主人公を殴ったんだ?褒められてうれしいんじゃないのか?」
「ふむ…なるほど?」
「他にも理解できない点がある。この次のシーンだ」
「ちょっと見せて」
『おい、せっかくあったんだから一緒に学校にいこうぜ』
『いやよ!変な噂になったら困るもの!でもあんたがどうしてもって頼むのなら仕方なく一緒に行ってあげてもいいわよ?』
「この前のシーンで女は男のために身だしなみやヘアセットを何時間もかけてやっていた。ようするに男に見せるためだろう。なのになぜこの誘いを断ったんだ?」
「なるほど…」
林君は訳が分からないといった顔をしている。確かに、留学生の林君にとってなかなか読み取りにくい内容だろう。
「林君、それはね…」
「ああ」
「実は主人公のこと、本当は嫌いだということを読者に伝えるためだよ」
ズデン!ゴン!
突然本庄さんと大園さんが机に激突した。どうしたのだろうか?
「それはどういうことだ?」
「人を殴るっているのはやっぱり敵対の証、お前のことは嫌いだという表現だよ」
「ふむ、確かに好きなら暴力を振るわないだろう。しかし、この前に身だしなみを入念にセットしていたのはなぜだ?」
「それはね、林君。林君はばっちりセットした人の横にぼさぼさ髪で立っていたら目立たない?」
「確かに、見た目が悪く見えてしまう」
「つまりこれはね、主人公を悪く見せるための作戦だったんだよ」
ゴン!ガン!
また大園さん達の方から机にぶつかる音が聞こえた。大丈夫だろうか。
「自分はよく見せて相手を下げる。まさに悪魔の所業だね…」
「なるほど、本当は嫌いで相手を下げるための罠だったのか。納得いった」
「うん、なかなか分からないよね。日本の漫画の独特な描写かも」
「そういえば、他の場面でも」
『あんたのことなんて全然好きじゃないんだから!』
「と言っていた」
「ああ、もうそれが答えだよ。好きじゃないって言っているということは好きじゃないんだよ」
「そうか、ありがとう日向」
「いいよいいよ、どういたしまして」
「ち…」
「ち?」
大園さんがおでこをさすりながら震えている。ぶつけたところが痛かったのだろうか。
「ちっがーう!!!!!」
「うわ!」
突然大園さんに叫ばれ僕と林君はとびあがった.
よく見ると本庄さんもおでこをさすりながらこちらを見ている。心なしか、あきれた表情をしている。
「殴ったのは照れ隠しの為!好きな人からかわいいって言われて恥ずかしくて!朝行くのを断ったのも素直になれなかったから!乙女心!素直になれない本音を言えない乙女心!」
「え、でも…」
「だってもでももない!乙女心を勉強してください!」
横で本庄さんもうんうんとうなずいている。どこかで読解を間違ったのだろうか。本文に書いてあること以外は答えにしてはいけないというのは国語の常識なのに…
乙女心って、よくわからない…
おまけ
「(先輩には、ストレートに言わないと分からないんですね…)」
「(思いは正直に伝えるようにしよう…)」
人知れず、二人は心に誓うのであった。