イフストーリー もし調査部が家族だったら!
ピピピピピピ
アラームが聞こえる。僕はそっとスマートフォンに手を伸ばしアラームを切ろうとした。
「おっきろー!おにーちゃん!」
「ぐえぇえ!!」
人間サイズの塊が僕の腹部に飛び乗ってくる。
「えへへ、起きた?」
「うぐぅおおおお…!」
痛みで悶えている僕を横目に、飛び乗ってきた犯人は満足そうにしている。
「もっと優しく起こしてよ、睦月ちゃん…」
「えー、だって、起きないもん」
「今も起きようとしてたよ…アラーム止めようとしてたし」
僕はお腹の上に乗っかっている睦月ちゃんを横に下ろすとベッドから立ち上がった。
「おねーちゃんが朝ごはん作ってるから顔洗って歯を磨いて早くおいでって」
「はーい」
僕はお腹をさすりながら睦月ちゃんに引っ張られて部屋を後にした。
「おはよ、京くん。大きな音したけど睦月ちゃんまた飛び乗ったでしょ。もっと優しく起こしてあげて」
「はーい!」
なぜか睦月ちゃんは姉の怜ちゃんのいうことは素直に聞くのだ。兄としての威厳が僕にはないのかもしれない。
「おはよう、京」
「おはよう、墨君」
墨君はトレーニング後でシャワーを浴びた後なのだろう、頭にタオルを乗せて拭いている。
「全員揃ったね、それじゃ、いただきます」
「「「いただきます」」」
僕は怜ちゃんが作ってくれたご飯を口にする。トースターに目玉焼き、キャベツの千切りとオーソドックスながら理想的な食事が並ぶ。朝からこれだけ作れるのはすごいと思う。
お父さんとお母さんは今いない。学校の理事をしている2人は出張が多い。今週一週間はいない予定だ。
「京」「京君」「京にーちゃん!」
ぼんやり朝ごはんを食べていると、突然3人から名前を呼ばれた。
「どうかした?」
「久しぶりにトレーニングに付き合ってくれ」
「買い出しに付き合ってくれない?」
「帰りにゲームセンター行こうよ!」
「お、おう…」
「最近一緒にトレーニングをしていなかっただろう、健全な精神は健全な肉体からだ」
「今晩はちょっと豪華にすき焼きでもしようかなって思って。だから、ご飯の買い出しを付き合って欲しいな」
「帰りゲームセンター行こうよー!最新の音ゲー台が出てチェックしたくて!」
「体を鍛えるのは大切だ。今回は俺に譲ってもらう」
「晩御飯の買い出しの方が大切でしょ?晩御飯がないの困らない?」
「2人とも部活で帰るの遅いじゃん!私に付き合って!」
3人の間で僕の意思関係なく取り合いが発生している。困ったことにこうなると3人は意見を変えないのだ。そういうときは…
「わかったよ、帰り睦月ちゃんとゲーセンに行って、帰ってきたら怜ちゃんの買い出しに付き合うよ。ご飯作ってる時に墨君のトレーニングに付き合うよ」
こうやって時間をやりくりし、3人の妥協ラインを作るのだ。
「いいぞ」「わかった」「仕方ないなー、いいよ!」
3人は納得したらしい。まあ、それならいいか。僕の自由時間はほぼ消えたけど…
放課後…
僕は教科書を片付け、校門前に向かう。門にはすでに睦月ちゃんが立っていた。
「おっそーい!時間がないんだからもっと早くきて!」
これでも急いで来た方なのだが…それをいうと睦月ちゃんが怒るので何も言わない。ごめんごめんと謝り、一緒にゲームセンターに向かう。ゲームセンターは駅前にあり、ここから少し歩く。
「えへへ!」
睦月ちゃんが腕に抱きついてくる。
「睦月ちゃん!?」
「いいでしょ?家族なんだから」
睦月ちゃんが僕の腕をすりすりしてくる。なぜかそれに対して僕は言い表せない感情が込み上げてくる。僕たちは家族だ、こんな感情を抱くはずがない。
軽く頭を振り、僕は邪な考えを振り払う。睦月ちゃんを無理やり払うこともできるが、それをすると臍を曲げてしまうので無理だ。
僕たちはこのままゲームセンターに向かうことにした。十数年間生きてきて学んだことは、睦月ちゃんの機嫌を損ねると非常にめんどくさいということだ。
ゲームセンター
ゲームセンターはそれなりに賑わってる。制服を着たカップルが何組もいる。
僕たちも側から見たらそう見えているのかもしれない。僕と睦月ちゃんは髪の色が全く違う。睦月ちゃんは金髪、僕は真っ黒なのだ。
…うん?そういえば怜ちゃんは茶髪より、墨君は若干髪が灰色がかっている。髪の毛の色がきょうだい全員違うってありえるのか…?
「おにーちゃん?」
「あ、ごめんごめん。どのゲーム?」
「これだよ!dance avatar(ダンスアバター)! 」
おそらくだが、画面に合わせて踊るゲームなのだろう。
「見ててね!」
睦月ちゃんは100円を入れると、大きな音と共に画面が切り替わる。
「名前はどうしよっかな?」
どうやら最初は名前を入力しなければいけないらしい。
暫しの思考ののち、睦月ちゃんは
kyolove
と打ち込んだ。
「なんで僕の名前使うのさ…」
「まーまー、いいからいいから」
名前の入力画面が終わると今度は選曲画面だ。聞いたことない曲から聞き馴染みのある曲までたくさんある。最近の音ゲーはすごいんだな。
睦月ちゃんが曲を選び、いよいよゲームが始まる。
ゲームの画面に合わせてポーズを取ったり、ジャンプしたり、なかなかアクロバティックなゲームだ。
だからこそ、問題が生じてしまう。
「よっ、ほっ!」
睦月ちゃんが動いたり跳ねたりするたびにスカートがヒラっと動き、非常に危うい。
今はこの近くに僕しかいないが他の人がいたらどうなることか…僕は睦月ちゃんを見つつ周りを警戒していた。
ゲームが終わり、睦月ちゃんがこちらを向いた。
「どうだった?」
「どうって…スカート危うくてそれどころじゃなかったよ」
「えー…お兄ちゃん見てなかったの?」
「うん、周りに人が来ないように警戒してたから」
「別に見られても大丈夫だって、ほら」
「ちょっ!」
「下にスパッツ履いてるよ」
睦月ちゃんはスカートをめくる。確かにスパッツを履いているので下着は見えない。
「ほらほら、もっと見たい?お兄ちゃんのエッチー!」
睦月ちゃんは僕をよくからかってくる。というか墨君や怜ちゃんをからかっているところは見たことがない。ただ、今回はやりすぎだ。他の人の目もある。
「睦月、やめなさい」
「あ…は、はい…」
僕は低い声で注意する。ビクッと肩を揺らした睦月ちゃんはすぐにスカートを下ろした。
「ごめんなさい、お兄ちゃん…」
これも昔からそうなのだが睦月ちゃんは僕に怒られるととんでもなく狼狽えるのだ。睦月ちゃんは僕以外の家族に怒られたことがないので耐性がないのかもしれない。そして、こうして行き過ぎた行動をしたら僕はいつも注意をするのだ。
「ごめんなさい、だから、怒らないで…睦月を嫌いにならないで…」
これも僕に怒られるといつもいうセリフだ。睦月ちゃんは動揺すると私ではなく睦月と自分の名前を呼ぶのだ。
「怒ってないよ」
「本当にほんと?」
「うん、本当だよ。睦月ちゃんが心配だから。他の人もいる時にそんなことしちゃダメだよ?」
僕は声のトーンを戻し、睦月ちゃんに言う。
「うん、もう二度としない」
「ならよかった」
「本当に怒ってない?」
「本当に怒ってないよ」
「睦月のこと好き?」
「うん、大好きだよ」
「えへへ、よかった」
睦月ちゃんは安心したのか、僕に抱きついてくる。これも僕が睦月ちゃんを怒った時のお決まりだ。睦月ちゃんは僕に怒られたあとは必ず僕に好きかどうか確認してくる。そして、その後必ず抱きついてくるのだ。
睦月ちゃんは僕の胸元に頭を擦り付けている。その頭を僕は撫でてあげる。こうすると睦月ちゃんは落ち着くのだ。
「睦月ちゃん、ゲームセンターに行く時は僕を誘ってね?」
「いいの?」
「うん、いいよ」
ガードの緩い睦月ちゃん1人でゲームセンターに行くと、よくないことが起きそうだ。兄としてしっかり見守っておかなければ。
「うん!絶対に誘うね!お兄ちゃん大好き!」
「睦月ちゃん、もうゲームはいいの?」
「うん、もう満足!帰ろ、お兄ちゃん!」
僕達はそのまま手を繋いで帰った。先ほど腕を組んでいた時よりも密着して、なんなら睦月ちゃんは僕の肩に頭を乗せながら歩いている。
睦月ちゃんの形のいい胸が僕にぐいぐい押し付けられている。
睦月ちゃんは上機嫌で様々な話をしてくるが、正直気が気でない。歩くたびに柔らかい感覚に僕の理性が少しずつ削られていく気がする。
って、僕は妹に何を考えているんだ。
「お兄ちゃん?」
「ああ、ごめんね睦月ちゃん。なんの話だったかな?」
「うん!あのね…」
睦月ちゃんと繋いでいない逆の手で頭をかきなが家路につくのだった。