大園高校不思議調査隊   作:かんおみ

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人を励ますのって難しい

今度は左側の部屋に入ってみる。中には誰もいない。生活感のある部屋に、布団が敷かれている。

 

「誰もいませんね」

 

「うん、本当に人が消えたみたい…」

 

僕の目の前には布団が三枚敷かれている。ちょうど川の字のようだ。二枚の大人用布団に挟まれて子供用の布団が敷かれている。

 

「三人家族だったんですかね」

 

「うん、そうみたい。ガラスを触ったときに見えたあの二人の家なのかも?」

 

「…そうかもしれませんね」

 

そう言いながら、僕はちらりと紅葉の様子を見る。紅葉は何かを考えているようだ。

 

「ねえ、紅葉。何か気になることがあるの?」

 

「…実は、あの二人、どこかで見たような気がするんです…」

 

「他人の空似じゃなくて?」

 

「もしかしたらそうかもしれません。でも…なんとなく引っかかるんですよね…」

 

もしかして、紅葉はこの家の関係者とか…?少なくともこの家には3人住んでいた形跡がある。僕は目の前の布団を調べる。両サイドの布団はあの老夫婦のものだろう。そしてこの真ん中の布団は明らかに子ども用、それも5歳児くらいのサイズの布団なのだ。紅葉は年齢的には中学生くらいだろうか。少なくともこの布団のサイズには合わない。

 

「…今は考えても分からないし、もう少しこの場所を調べよう。何かわかるかも」

 

「そうですね…」

 

紅葉が不安げな表情を見せる。それもそうだろう。見知らぬ場所に記憶もない。きっと不安なはずだ。何とかして元気づけてあげたいが…そんな方法この僕に思いつくはずがない。何か、何か方法は…あ、そうだ。

 

「も、紅葉!見てみて!」

 

「はい?」

 

紅葉が僕を見た瞬間、僕は布団に飛び込む。

 

「…え?」

 

「…マ、マグロのせりの物まね…」

 

「…」

 

昔テレビ番組で見た僕が大笑いした芸能人のネタを実践する。あれはもっとずざーっと滑ってたが…正直畳の上でやることではなかった。全く滑っていかなかったのでこのままだとただ単に布団に飛び込んだ人になってしまった。

 

「…」

 

「…」

 

「…あ、あの…その…」

 

「ぷ…」

 

「あはは、あはははは!!な、なんですか急に!!」

 

「い、いや…元気づけようと…」

 

「そ、そうですか!あはははは!!」

 

お腹を抱えて紅葉が笑っている。僕は恥ずかしい思いをしたが少しは元気になったようだ。それならば僕の目的は果たされたとも同義だ。

 

「はー。笑った笑った。京介さん。ありがとうございます」

 

「ううん。元気になってよかった」

 

「京介さんって優しいんですね」

 

にこっと笑う紅葉に僕はドキッとする。僕はこういう屈託のない笑顔に弱いのかもしれない。

 

「さて、次は机の上を調べるか」

 

机の上には、一冊の本が置かれている。日記だろうか。ぺらぺらとめくって中を確認する。

 

 

子宝に恵まれなかった私達を、天は見離さなかった、まさに天からの恵だ。この子を大切に、それこそ我が子のように愛していこう。そう婆さんも望んでいるはずだ。しかし、ここ最近体調が悪い、婆さんも同じ様子だ。私たちも若くないからだろう。

 

 

今日は道に迷ったという旅人が家を訪ねてきた。なんでも予想以上に深い山だったのでなかなか下山できずに困っていたらしい。確かに慣れていないとなかなか下山するのは難しいだろう。しばらく休ませた後麓まで連れて行った。そのお礼として一冊の本を置いていった。異国の言葉で書かれているので全く読めないが、せっかくのお礼なので大切に置いておこう。

 

この子が本が好きなのは私達の影響だろうか。しかしまさか異国の本まで読めるとは、驚かされることばかりだ。それはそれとして、私も久しぶりに本でも読もうか。最近は体を崩してしまって和歌集を読むこともできなかったから。

 

婆さんが倒れた。麓の医者にももう長くないだろうと言われた。そして、同じ症状の私もきっと長くないだろう。思えば恵まれた人生だった。幸せだったかと言われたら、幸せだったと答えられる。しかし、私や婆さんがいなくなった後、この子はどうなるのだろうか、それだけが心配だ。この子はこの家を離れたくないと言っているが、きっとこの子のためにはならないだろう。どうかもっと自由に生きてほしい。私達はそれだけを望んでいる。

 

 

 

あの映像の中に出てきたおじいさんの日記だろうか。年代が書かれていないのでいつ頃のものなのか分からないが…それにしても達筆な字で、お手本のような文字だ。しかし、なんだろう…何か引っかかる。

 

「ねえ、京介さん」

 

「あ、うん?どうしたの?」

 

「見てください、これ」

 

紅葉に話しかけられたことで僕の思考が止まる。どうやら紅葉は本棚を調べていたらしい。

 

「あの、見てくださいこれ」

 

紅葉は一冊の本を指さしている。どうやら本棚にはたくさんの和歌集や伝記が並べられている中で、一冊真っ黒な背表紙の本がある。

 

「なにこれ」

 

僕はその本を取り出して表題を読む。

 

「Book of Eibon…?」

 

聞いたことのないタイトルだ。というか、この家の雰囲気に不釣り合いだ。もしかして、これが日記に書かれていた旅人が置いていった異国の本なのだろうか。

 

僕は何の気なしに本の中を見ようとして…

 

ボッ!

 

 

「うわあ!」「きゃあ!」

 

突然本が燃え上がった。

 

慌てて僕は本から手を放す。本は燃えて、灰になった。

 

「な、何が起きたの…?」

 

「さあ…」

 

不自然なことに床に灰は散らばっているのに床が燃えた形跡がない。

 

「び、びっくりしたよ」

 

「ケガはないですか?」

 

「うん、大丈夫だよ」

 

「不思議なことがありすぎて頭が痛いですね…」

 

「もうこの部屋から出よう」

 

「そうですね、行きましょう」

 

僕たちは部屋を後にした。

 

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