大園高校不思議調査隊   作:かんおみ

66 / 66
館の主

廊下を挟んで隣の部屋、もう探せそうな部屋はほぼ残っていない。障子を開けて中に入ると…

 

「ここは子ども部屋ですかね?」

 

「子ども部屋というか、誰かの部屋に子どものおもちゃが置かれているみたい」

 

一言でいえばまとまりがない部屋だ。壁には厳かな掛け軸と子どもが描いたかのような絵が飾られている。床の間には日本刀が置かれている横には、透明なガラス張りの箱があり、なぜかけん玉が飾られている。

そしてこの部屋で何よりも目を引くのは…

 

「これって…仏壇ですよね…」

 

「そうだね」

 

仏壇には老夫婦の遺影が飾られている。戒名が書かれた位牌もないため質素だがしっかり手入れされた仏壇だ。横には花も添えられている。

 

「…この二人、あの記憶?で見た二人ですよね」

 

「うん…」

 

この仏壇が用意され、そして手入れされているということは、やはり老夫婦以外の誰かがいたことになる。しかしなんだ、この違和感…言葉で言い表せないが、あべこべな気がする。

 

「…私、この二人を知っている…」

 

「そりゃ、記憶で見たからね」

 

「いや、そういう意味じゃなくて」

 

「会ったことがある気がするんです…」

 

「紅葉、もう少し探索してみよう。何かわかるかもしれない」

 

「…そうですね」

 

最初であった時の元気さは影を潜め、不安げな瞳でこちらを見てくる。これは僕ができる精一杯の励ましだ。先ほどから、二つの人魂に言われたことが頭の中をちらついている。ダメだダメだ、疑心暗鬼になるな!もう少し信じると決めたのならば、もう少し信じてみよう。

 

「といっても、この部屋にはあのガラス板はなさそうですね」

 

紅葉があたりを見渡す。確かに、収納と呼ばれるものはなさそうだ。

僕は念のため、壁の掛け軸の裏を見る。漫画やアニメではよく掛け軸の裏に何か隠されているものだが…

 

「うん、何もなさそう」

 

当然のごとく何もなかった。僕は掛け軸を戻しながら言う。しかい、これは和歌だろうか。学がないので誰が読んだとか、何に書かれているなどは全く分からない。

 

三輪山を しかも隠すか 春霞 人に知られぬ 花や咲くらむ

 

五月待つ 花橘の 香をかげば 昔の人の 袖の香ぞする

 

白露の 色はひとつを いかにして 秋の木の葉を ちぢに染むらむ

 

ふるさとは 吉野の山し 近ければ ひと日もみ雪 降らぬ日はなし

 

「古今和歌集ですね」

 

「え!紅葉分かるの!?」

 

「あ、なんとなく知ってただけですよ。誰が読んだとかは分かりません」

 

「すごーい…」

 

「五月待つ 花橘の 香をかげば 昔の人の 袖の香ぞする…か」

 

「どうかしたの、紅葉」

 

「これ、昔にあった人を懐かしむ歌なんですよ。京介さんはいますか?そんな人」

 

「…昔ってほどじゃないけど、僕もふと思い出す人はいるよ」

 

「そうですか、また逢えたらいいですね」

 

「…もう亡くなっていて、いないんだ」

 

「あ、ごめんなさい…」

 

「ううん、でもね、すごい偶然が重なって幽霊になったその子と話すことが出来たんだ」

 

「そんなこと…あり得ないって言ったら笑われちゃいますね。今この状況で」

 

「それくらいかな」

 

「私には、いるんですかね」

 

「きっと、いるさ」

 

「ほんとに思ってます?」

 

「うん、本当に思ってるよ。この僕にいるくらいだから」

 

「何ですかそれ」

 

紅葉に笑みがこぼれた。少しでも元気になってくれたのならそれでいい。

さて、次が最後の部屋だ。鬼が出るか蛇が出るか…はたまたお化けがでるか。それは、神のみぞ知るというわけだ。

 

左奥の部屋、二階の部屋はここで最後だ。部屋の中に入ると

 

「どうしよう…どうしよう…」

 

青色の人魂がぐるぐると回っている。こちらには気が付いていないようだ。

 

どうしたんですか…?」

 

思わず廊下から声をかけてしまった。

 

「ギクゥ!どどどどどちら様でしょうか!?」

 

「僕たちはここに迷い込んだ者でして」

 

「ひ、ひええ!!私は落ちていた小物を拾って箱にしまっただけなんですう!キラキラ光っていて綺麗だったから大切に保管しようとしていただけなんです!?どうか!お命だけはお助けをぉ!」

 

「落ち着いて…きらきら光ってたガラス板みたいなのでした?」

 

「は、はいぃぃ…ガラスの破片のようなキラキラしたものを見つけたので箱にしまって保管しようと…でも、カラクリ箱だったのか箱が開かなくなってしまって…」

 

よく見ると人魂の下の机には何かの箱が置かれている。

 

「どうしましょう、開けられるんですかね?」

 

ひょこっと紅葉が僕の陰から顔を出す、その時だった。

 

「ひ、ひえええ!!!あああああるあるあるじさま!!!」

 

「え?」

 

「主人様!どうかお情けを!!ここを追い出されたら!!!!」

 

「え、いや。ちょっと」

 

「うわああああああああ!!!!!」

 

人魂は叫び声をあげて見えなくなった。どこか別のところに行ったのか、はたまた我々に見えないだけなのか、それはわからない。そんなことよりも

 

「私が…主人…?この屋敷の化け物…?」

 

「紅葉、落ち着いて」

 

「私は人間じゃない…?」

 

「紅葉、まずは落ち着いて話をしよう」

 

うっすらと感じていたもう一つの可能性。紅葉が記憶の中の視線の主じゃないとするならば、最初の記憶の中にあった黒い影、あれが主なのかは分からないが、良くないものというのはなんとなくわかる。

 

「私は、化け物…!いやああああああああああああ!!!!!!!!!」

 

「紅葉!待って!」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

TS転生した俺は魔法少女になれないらしい(作者:環状線EX)(オリジナル現代/冒険・バトル)

 キャラクリで好みの女を作ったら昨今流行の魔法少女が題材のゲームにそのキャラとして転生した話。でも、魔法少女って言うのは一見さんは良いけどイチモツさんはお断りらしい。


総合評価:5624/評価:8.14/連載:70話/更新日時:2026年08月22日(土) 14:16 小説情報

本好きの魔女、闇の帝王を読書仲間にする。(作者:パラプリュイ)(原作:ハリー・ポッター)

本が好きなのに、司書になる目前で死んでしまった本須麗乃。何故かハリーポッターの世界に転生するも、身体は虚弱で10年も生きられないと言われてしまう。▼『本好きの下剋上』の主人公がマルフォイ家の娘として転生して本狂いとして周囲を振り回していくお話。▼※闇の帝王は読書仲間です。▼半純血のプリンス編完結済▼最終章本好きの魔女編連載中


総合評価:11921/評価:8.98/連載:155話/更新日時:2026年08月27日(木) 12:04 小説情報

TSミステリアスダウナーお姉さんとして少年少女を惑わし続けてきた転生者の末路(作者:ソナラ)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

ミリナは、ミステリアスダウナー低身長巨乳長命種お姉さんだ。▼冒険者としての実績と、長命種故のなんとなく頼りになりそうな雰囲気から醸し出されるそれっぽい言動で、周囲の少年少女を惑わし続けてきた。▼しかし実際は、呑気に応援してるだけのロクデナシお姉さんだったのだ!▼そんなミリナが、ついに観念する時がやってきた。▼ミリナが背中を押した少年少女が成長し、世界を救って…


総合評価:9715/評価:8.88/連載:9話/更新日時:2026年04月07日(火) 07:05 小説情報

ホラー世界の狂言回しになったので、怪異どもをボコして回ることにした(作者:暁刀魚)(オリジナル現代/冒険・バトル)

物語の世界には、時折胡散臭い狂言回しが出てくることがあるだろう。▼なった、それに。▼気づいたらそんな狂言回しになっていた男は、狂言回しの役割を放棄して人々を害する怪異をボコボコにして回ることにした。▼いっそお前の方がやばい怪異だろという勢いで暴れ散らかす狂言回し、阿鼻叫喚の怪異と被害者。▼除霊師達からは怪異と同類扱いされる男の行先やいかに。▼「カクヨム」様に…


総合評価:16018/評価:8.91/連載:25話/更新日時:2026年07月13日(月) 07:05 小説情報

面倒なので黙っていたら天才参謀と誤解されました(作者:濃厚とんこつ豚無双)(オリジナルファンタジー/戦記)

後年、ノルトマルクの軍史家たちは、クラウス・フォン・ライフェンベルクを「沈黙の天才参謀」と記した。▼諸邦の利害を束ね、敵国の思惑を見抜き、ただ一言で戦役の方向を定めた男。と。▼だが、その大半は誤解である。▼確かにクラウスは名門ライフェンベルク家の嫡孫にして、陸軍高等軍学院首席、若くして統帥府(参謀本部)に配属されたエリートだった。▼とはいえ本人に言わせれば、…


総合評価:12564/評価:8.81/連載:70話/更新日時:2026年08月22日(土) 05:38 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>